空。
青くて遠くて
そして、白い塊
それは雲。
流れるわたがし
子供っぽい幻想も、私を考えるのなら
それは、普通。
歩く道がただ揺らめいて
今日の暑さを思い起こされる。
今日は……
良い日になって欲しいな
と、思った。



蜃気楼。






 思うなら
昨日のこれこそが、
私の不運なのかも

「はぁ……
 そうですか
 いえ、そう言う事情なら仕方ないですよ。
 はい、はい……また、いずれ」

井上さんの突然の電話は
約束の反故。
いわく、
例の頼まれ事だそうで
何時もの事ながら
損を得として取る人だなぁ
なんて
少しばかりの失礼さを思いついてました。

「一日あいちゃったなぁ……」

抱いていた枕を所定の位置に置く……いやさ、これは捨てるが近い。
まぁ、そんな事して
あいた予定よりも
『私』の予定より優先された事への
私を捨てられたような消失感が
うっすらと心に残った。


 当然、目覚めは最悪だった。


休みの日の始めからこんな感じなら
突然の電話は何時もの一族の事
たまには出て来いなんて言って
出て行っても顔を見れば満足するような人。
つきあってらんないと言いつつも
今朝は……寝ぼけてたのが悪かったのか
つい

「うん」

と、言ってしまった。
エルザが電話の相手ってのも悪かったのかもしれない。
まぁ、そんな事で
電車にゆらりゆらり
近くと言っても行くのは遠い
今時に、領主なんて言ってる方の所へ
忍でもつれてくれば良かったのかもしれないけど
話相手としても
あの、まだ園児と言った年齢では
つれてこない今のほーが良かったのかもしれない。

「今日は日が高いのかな……」

お気に入りの黒いワンピース
ではなく
季節柄に合わせた
うすーく赤みがかかったワンピースと
おそろいの帽子に機嫌を良くした私が歩く。
田んぼすらある田舎道。
じーわっ
じーわっ
と、鳴いてるセミ?
時期的に梅雨入り直前の今ならきっと別の虫であろうものは
耳にうるさいと言うより
情緒を感じさせるようにこの風景に彩をあたえていた。
時間はお昼にさしかかろうと言うのか
同じ一族なのに日中に畑や水田で働いてるのを想像して笑ってしまう。
遊あたりの純血は、きっと意味もなく怒るのだろう
だからこそ
私はなんとなく好感を持っている。

「わん」

道すがらに犬がいる。

「虫よけのお勤めかしら?」

「わん」

舌をだし
体温を調節してる
ある意味、『こちらにこなかった』同属は
奇妙な縁で『まねいてくれた』同属までの案内をかってでてくれた。
道すがら
このへんの他愛も無い地域の話題を聞きつつ
お昼のサイレンがなる頃に丁度
目的地についた
この四本足の同属は、こちらに使えていたようで
私が敷地に入ると駆け足で戻っていった。
また、野鳥や虫が来ないように番をするのだろう。
四つ足の同属が親切だったぶんが消えたような
この地域の二つ足な同属長は、
私の顔を見たら用件は済んだのであろうと
この地域で取れたものではない……けど、私らにとても大切な食だけを置いていった。
本当
何しに来たのやら
食事が終わると
暑さに倒れるように縁側に寝転び
日が暮れて
二つ足な同属長が帰ってくるであろう頃に
私は帰路についた。
帰路についた時も四つ足の同属は私を送ってくれた。
心づくしには心で返したかったけど
心に持ち合わせの無かった私は
小さな地酒……と、言っても故郷(国)のワインを振舞う
小さなペッドボトルに口をつけつつ
地面にワインの水溜りをつくりつつ
私達は奇妙な友情を得たと思う頃
それは、当たり前で当然な別れに会い
これまた当然と言うべき事で
別れた。

 子供を産む。

最後にそう聞いた気がしたのに
私は駅の改札をくぐってしまった。
もうしわけない事に
私は彼女……が、彼であるとずっと思っていた。
それを詫びながら
電車は四つ足の同属から遠ざかっていったのだった。





 翌日はそれなりの目覚めであった。
朝の弱い私からしたら、これは良い事であろう
いくぶん余裕のあるように学校の自分の席につくと
昨日の事をわびると井上さんがこう言った。

「で、昨日はどうしました?」

私は、こう答える。

「親戚が赤ちゃん産むって言うんであってきました」

井上さんは笑いながら

「どうせなら、生まれてから会いたかったですよね。
 ごめんなさい」

私は笑うというより微笑みながら

「いいえ。
 生まれるって知ったのは昨日のおかげですから。
 そうだ、
 生まれたら井上さんも会いに行きませんか?」

「はい。それは是非に」

私はこの人になら
自分を話しても良い気がしていたのに驚いた。

「ありゃ?
 社交事例でした?」

「いいえ。
 井上さんが驚くと思ったのを想像してました。
 ごめんなさいね」

「いえいえ
 って、驚くような人なんですか」

「ええ。『人』だと思ってたら驚きますよ。
 とっても凛々しい方ですから」

「楽しみですね」

「ええ、楽しみです。
 夏が来るのが……」

「予定日がそれくらいなんですね。
 それはきっと楽しみです」


黒ずんだ雲を二人で見つめながら

来るべき夏の予定に思いを寄せていた。






後書き
まぁ、何時もの理由で書き始めました。
が、しぶいなぁ(笑)
ってか、さくらってこんなんだっけ?(ぉ)
さくらと言うか音夢が近い気もしますが
イメージはさくらで書いてるのでさくらSS
私らしくはない気もしますが
これはこれで良いと思うのですよ。
よろしければご感想お願いしますねm(_ _)m





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