PeaceDay 〜ある日常の昼休み

 昼休み。
 クラスメートと一緒にお弁当を食べたあと、私は放課後のことを考えていた。
 今日は金曜日なので、先輩の家に二日間お泊まり。
 夕食はいつも先輩に作ってもらってるから、今回は私が作ってあげようかなぁ…
 作ってあげるとしたらどんなのが良いだろう?
 先輩好き嫌いは特にないし…
 等といろいな考えが浮かんでは消えていく。
 「……ら」
 それでも、それだからこそ余計に先輩の好きなものを探して……
 「……くら?」
 でも、先輩の料理はおいしいし……やっぱり先輩に作ってもらっちゃおうかな?
 「……えてないのかなぁ?」
 なんだか私の近くで声がする様な……
 「お〜い、さくら!聞こえてますかぁ?」
 気がつくと私の目の前にはクラスメートの古崎 香奈(こざき かな)さんの顔が間近に迫っていました。
 「ひゃぁ!?」
 思わずひっくり返りそうになりましたが、何とかバランスを保って私は机にしがみつくことが出来ました。
 「お、驚かせないで下さい!」
 私の非難の声を聞いても古崎さんはただ苦笑し、
 「あたしも驚かせるつもりはなかったんだけど、ねぇ」
 同席していた他のクラスメート−伊東 洋子(いとう ようこ)さんと坂城 利恵(さかき としえ)さんに向かって言っていた。
 「そうですよ、綺堂さん。古崎さんは何度も呼んでいらっしゃったのですから」
 伊東さんも苦笑しながら古崎さんの言葉を肯定していた。
 「ねぇねぇ……さくらちゃんってさっきの間、相川先輩のこと考えてた?」
 突然の坂城さんの言葉が、図星だったもので顔が真っ赤になってしまうのを私は感じました。
 「あ、やっぱりぃ……じゃぁさ、二人とも。さっきの話の続きさくらちゃんに聞いてみない?」
 「さっきの話…?」
 坂城さんの声がなんだか楽しそうだったのは私の気のせい……であってほしかったです。
 「うん。さくらちゃんが愛しの相川先輩のことを考えている間、あたし達『キス』について話し合ってたんだ」
 ……………え?キス?
 「…油で揚げるとおいしいんですよね」
 「それは『鱚(きす)』!……さくら、それめっちゃくちゃ寒いわ」
 古崎さんの言葉を聞かなくても、自分自身で寒いことはわかっていました。
 でも、いきなりキスの話と言われても、何故そんなことを……
 実際、三人の話を聞いていなかった私が悪かったのかもしれませんが、不思議に思うしかありませんでした。
 「やめてあげた方が良いのではありませんか?綺堂さんも困ってらっしゃるみたいですし」
 伊東さんが助け船を出してくれそうだったので、何とかこの話題に終止符が打たれるかなぁと期待したのですが……
 「なぁに言ってるんだか。洋子がさっきの話の間中興味津々だったくせに」
 「そうそう!洋子ちゃんったら顔が『続きを聞きたい』って言ってたよ♪」
 「そ、そんなこと……(ポッ)」
 ……どうやら無理みたいでした。
 「ってなわけで、さくら。さっさと話した話した!」
 「そうだよぉ。情報(ネタ)はいろいろと挙がってるんだからねぇ♪」
 「ね、ネタって一体何ですか?」
 伊東さん……そんな瞳を輝かせないで下さい。私も気になりますが…
 と、私までペースに乗せられている場合ではありません。何故このような話になったのか聞かないと…
 「あの…」
 「お、ようやく話してくれる気になったんか?」
 「いえ、何故このような話になったのか聞きたくて……」
 言葉を聞いた途端に落胆した顔にならないで下さい。古崎さん。
 「さくらちゃんは聞いてなかったもんねぇ」
 「一応話して置いてあげた方が心構えが出来るのではないですか?」
 「うん。そうだね!そうすれば話しやすいだろうし」
 い、伊東さんまで……私が話すというのはもう決定事項なのですか?
 等と思っている間に、坂城さんが私が聞いていなかった話を始めてくれました。
 要約すると、最近話題になっている少女漫画(作者は『草薙まゆこ』と言う人らしい)でヒロインのキスシーンがあり、その描写が妙に艶めかしかったらしく、
実際まだ経験したことなかったのでどんなものか、と想像していたとのことでした。
 確かに古崎さんは男性との付き合いよりもクラブ活動の方が大事!と豪語している方なのでわかりましたし、
坂城さんはどちらかというと噂話が好きらしく、自分自身で付き合うって事を考えていなかったみたいですし、
伊東さんに関しては「異性に恐怖を感じる」と以前に聞いたことがあるので、なるほどと納得してしまいました。
 「と、言うわけで理由も話したことだし……さ・く・らちゃん?心の準備は出来ましたかぁ?」
 坂城さんが芸能リポーターのごとく手にしたスプーンをマイクにして迫ってくる。
 うぅ。あまり先輩とのことは恥ずかしいから話したくないのに……
 心の中で絶体絶命のピンチを感じていた私は言い逃れる術を思案していたところ、思わぬ所から救いの手が差し伸べられました。
 それは……

 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン

 昼休み終了のチャイムでした。
 「あ、もう終わっちゃったの?もう少しで聞き出せたのにぃ」
 「坂城さん、次の授業の準備をしませんと……」
 「え?なんだっけ??」
 「体育ですよ」
 「あ!?着替えないと!!!」
 どうやら危機は回避できたようです。
 ホッとした状態で、私も体育の準備をしようとしました。
 が、まだ私の受難は終わってなかったようです……
 「さ・く・ら♪この続きは帰りに聞かせてもらうからな?」
 振り向いて見ると、いつの間に着替えたのか古崎さんが少し微笑みながら立っていました。
 「あ、そうだね♪じゃぁ、今夜私の家族居ないから来る?洋子ちゃん、カナちゃん」
 「連絡をすれば大丈夫だと思いますから…行かせてもらいます♪」
 「あ、あたしはいつでも大丈夫だから、もちろん行くよ♪」
 ………………………え???
 「「「今度は逃がさないからね♪」」」
 こ、今夜は先輩と一緒に過ごすはずなのにぃ……
 私は逃げられないというのを心のどこかで実感していました。
 ぐすっ。先輩に言って、明日からお泊まりさせて貰えるようにしないと……

<一方そのころの真一郎は……>

 「むぅ。チャイムに救われたな。相川」
 「いずみちゃん。なら続きはしんいちろうの家で聞かせてもらおうよ♪」
 「な、なんでだ!?」
 こ、今夜はさくらが泊まりに来るってのに……
 「そ、そうだよぉ、唯子。真くんがかわいそうだよぉ」
 お、いいぞ小鳥!そのまま二人を説得するんだ!!
 「でも、野々村も聞きたいんだろう?」
 「…………………………うん」
 「じゃぁ、決まりだな。相川、そういうことだから用意しておくように!」
 「な、なんだでだぁぁぁぁぁ!!!!」

………どうやらこちらも似たような事が起きているようである(苦笑)

初夏が過ぎ、夏の日差しとへ変わる風芽丘。
今日もどうやら平和なようである……

                                                      〜Fin

あとがき(のようなもの?)

 この話で考えたのは、やっぱり女の子同士はこんな話題が出るのかな?
 さくらはクラスにいるときどんな雰囲気なんだろう?
 といったことから発展させて考えました。
 でも、さくらの一人称になっているのかどうか……(最後は真一郎サイドですが)
 まぁ、こんなのでも喜んでもらえたら幸いです。


書いてる本人は楽しんでましたが(笑)











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