〜 a piece of "a story"...
#7 Nanase
忘れられた場所。
閉ざされた校舎。
本来の役目を失った建物。
そんな場所で、少女は踊る。
くるり、くるり、くるり……
物語に出てくる赤い靴。
まるでそれを履いているかのように、少女はだたひたすらに踊り続ける。
くるり、くるり、くるり……
そんな少女の表情は、その時々によって違っていた。
笑顔であったり、無表情であったり、哀しみであったり……
ただ、たとえどんな表情をしていても、少女は踊ることを止めなかった。
踊ることが、それだけが、少女の存在意義であるかのように……
今は笑顔だ。
少女の胸の中に溢れるものが、思い出であるから。
「ねぇ? ただ見てるだけで、楽しいの?」
「楽しいよ。こう、楽しそうに踊っている七瀬を見てると、元気になるんだ」
「……ばか」
暖かい、思い出。
今はもう、失ってしまった光景。
その映像に、心は、暖まると同時に引き裂かれる。
くるり、くるり、くるり……
それでも少女は止まらない。
雨の日も、風の日も。
心の痛みでさえ、少女を止めることは出来ない。
くるり、くるり、くるり……
朝も昼も夜も……
光の中、少女は踊り続ける。
昼間は太陽の下、夜は月と星の光のもとで。
「せめて、もう一度……あたしは待つよ、真一郎……」
それは、少女の願い。
そして、少女の絆。
すべては……まだ見ぬ未来のために……
To be continue...