〜 a piece of "a story"...

#2 Yuiko

強い風…
少年は風の中、佇んでいた。
なにをするわけでもなく、ただそこに『在る』

強い風は、嫌いじゃなかった。
風の思い出は心を暖めてくれるから。

強い風は、好きでもなかった。
風の思い出は今の自分を壊すから。

その思い出は、常に一人の少女と共にある…

「唯子はね、しんいちろうはしんいちろうだから好きなんだよ?」
風の中で告げられた、精一杯の少女の想い…
(唯子…)
少女の声、表情、仕種、香り…
なにもかもが脳裏から離れることはない。
…片時も。

胸が熱い。
胸が痛い。

心が痛い。
心が熱い。

引き裂かれる。
記憶に心を引き裂かれる…
弱い今の自分が壊れていく…

しかし、もう、戻れない。
いや…『戻らない』

目を閉じて、空を仰ぐ。

強い風…
(風はやはり…)
それでも風を嫌う事は出来なかった…

To be continue... かけら #2 Yuiko かけら