春の日の昼下がり。
私達は二人
手を繋いで歩いていました。



こんにちは。先輩




 たとえばこんな夜。 当たり前といえば当たり前の電話。
二人で続ける夜の逢瀬
会いたい気持ちと愛しい気持ち
心にふっくらとしてくる暖かい思い
電話なのに言葉を交わすことよりも
ただ繋がってる事にだけ愛しさを信じて
でも、そんな時間も『明日』という時間には勝てない
今日だけじゃないから
明日もちゃんとあるから
私達に限らず
全て恋人たちはこの言葉に負けるのだろう
でも、そんな『明日』にさえ
先輩は『約束』と言う言葉で勝ってくれた。



「うん。それでね。さくら
明日なんだけど」

「はい。先輩。
海鳴公園で午後4時ですね」

「うん。
何時もの事だけど
午後ってつけるよね。さくら」

「だって……ちゃんと繋がってる時間にしたいじゃないですか」

「別に文句とかじゃなくてさ
俺の周りは……アバウトだなぁ……と思って」

「ふふ。鷹城先輩とかなら
夕方ー
とかで済んじゃいますか?」

「そ、そんな感じ。
まぁ、唯子だけだけど
小鳥なんかだとちゃんと時間……
いや、だいたいだな」

「なんとなく想像つきます。
遅れたり早くなって待ってたりするのを悟られるが嫌なんですね。きっと」

「小鳥だからなあ……
ななかちゃんあたりは細かいんだけど」

「そうですね。井上さんは細かく合わせてきますよね」

「でも、大輔が遅刻とか気にしないからなぁ……」

「あれれ?
井上さんは、細かいみたいな事言ってましたよ?」

「ああ……女の子の時はねぇ……」

「ああ……
見た目というか……想像通りというか……」

「あ、やっぱりさくらから見てもそう見える?」

「見えると言うか
見ちゃいますね。どうも野々村先輩がお気に入りみたいですが」

「後輩の面倒見が良いからね。
その延長なのかも」

「野々村先輩が怒りますよ」

「大丈夫。小鳥だから」

「ふふっ。酷いですね」

「そろそろ時間かな?
さくらおやすみ」

「あ、先輩。
ごまかしてません?」

「違う違う
さくら、時計見て」

「ふふ。見てますよ。
そうですね。明日の時を心待ちにして……おやすみなさい」

「うん。おやすみ」


 ちょっとした長話。
愛してる人の言葉はどんな時も胸をあったかくしてくれる。
心にそまる事に何も恐れは無く
忌み嫌うべき朝も今は嬉しい
目を閉じて……
朝を待つ
深き深くまどろみの中で……



 目覚める時
まだ、ぼんやりとする頭と瞳に力を入れて
洗面台に顔をつける
水の冷たさでもまだ覚醒しない思考は
可愛いと言ってくれる人が出るまで嫌いだった。
 先輩が教えてくれた
急ぎでもちゃんとおいしく食べれる朝ごはんを試して

「やっぱり、先輩の手が入ってる方が美味しい」

ちょっと惚気が入ってるかな?
と、思いつつ
授業にそまったカバンをつかむ
先輩のいない学園は大分寂しいけど
良くしてくれる子がいてくれるから
懐かしい気持ちと会うためにも
私は学園に足を抜けた。



「おっはよーございます♪
綺堂さん。今日も時間ぴったりで」

輝かしい笑顔と言うんだろうか
井上さんがさわやかに笑顔を向けてくる。

「おはようございます」

「おや?
どうしましたー? 顔が笑ってますよー?」

昨晩の電話の内容を思い出して
少し笑ってたらしい

「えっと……実は……昨晩に先輩との電話で……」

軽く話をする
教室までの道のり
去年と比べると幾分違うのは隣に居る人が変わったから
ううん、きっと井上さんだから
思い出すと先輩と並んで教室まで歩いた事はほとんどない
そのへんは残念かな……?

「最近の綺堂さんは良く物思いにふけますね。
やっぱり相川先輩?」

「今は井上さんの事」

「私ですかー?
何考えてたんです?」

「端島先輩と朝こうして歩きたいと思ってたのかなぁ?
って」

「あ、朝ですかぁ?!」

真っ赤になって
井上さんが大声をあげる。

と、思ったけど
合点が行った、
ああ、朝一緒に歩くって事だから

「考えすぎですよ。
こうして私達も朝歩いてるじゃないですか」

「あぁ……ぁぅ……そうですね……」

「ふふ。
もちろんそっちの意味でも良いですけどね」

「きっ、綺堂さん!?」

「さ、そろそろホームルームですよ」

「む〜
ごまかし方が相川先輩そっくりです」

「ありがと♪」

先輩と似てるといわれて自然と顔がほころぶ
似るほど一緒の時間をすごしてると言う事なのだから……



 時間は流れてお昼。
今日はお弁当じゃないの?
と、周りの子に言われる
先輩のお弁当が美味しいからって何時も何時も分けたりしませんからね?

「あ、綺堂さん
また、チキンサンド」

「思い出の品ですから」

「また、井上さんが答えてる」

「お昼に綺堂さんがお弁当じゃない度にするよね。
このやりとり」

「で、綺堂さんが嬉しそうに微笑むと……」

「楽しいんだけど……綺堂さんが黙っちゃうのが欠点よね……」

「口挟みにくいテンポだからねぇ……」

「解ってるならどこかで止めなさいよ……あんたたち……」


と、何時ものやりとり後放課後になる。
待っていた時間
クラスメイトには悪いけど
それでも、愛した一人の人に会うことの方が私には愛しい


「こんにちは。先輩」

「うん、
こんにちは。さくら」


今日もデートの時間です。






後書き
さくら側から見た。
デートまでの時間の話
なんか書こうと思って浮んだのがこれでした。
こう言う甘さも良いと思うんですが
どうでしょう?
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