フィアッセの話
フィアッセ・クリステラ。
本業歌手。
臨時で翠屋の店員。
趣味、歌う事。
特技、歌う事。
これはそんな子の話。
フィアッセの話
(タイトル手抜き)
臨時職場の翠屋からほどよく離れたマンションで
金髪の美女フィアッセ・クリステラは目を覚ます。
「おっはよ〜♪」
『小鳥はとっても歌が好き』
という歌から、小鳥と呼ばれているほど歌が好きなフィアッセ。
とうぜん誰も居ない部屋での独り言の「おはよう」も音程とリズムがあり
ファンにとっては……
いや、歌好き(聞く)で あればこれも十分CD化希望である。
部屋を出るとルームメイトのアイリーン・ノアが居る。
このお嬢さん達は寝起きが良い。
おはようドッキリが果てしなくつまらない。
「おっはよ〜♪
フィアッセ〜♪」
ばっと 手を広げてあって
抱きつく。
「アイリーン♪
おっはよ〜」
ちなみに英語で会話している。
二人とも母国語はイギリス英語だからで
かしゃん。
「あ、新聞だ」
ドアを開け。
「おっはよ〜ございます♪
ご苦労さま〜♪」
と、そのまま英語で挨拶するのは最早日課。
「え、えと……
ぐっどもーにんぐ
せんきゅー」
と、新聞配達員がなんとか言える様になったのは毎日の事だから。
「フィアッセ♪」
にやにやとアイリーンが笑う。
「ここ、日本だよ〜」
と、最初は言い合ってた二人だけど……
最近では
「だいぶ発音が良くなってる……」
「うん。ご苦労様って言ったのも解るようになったみたいだしね」
完全に解ってやっていた。
このへんのいたずら好きは母親からの遺伝でもある。
朝食は大抵フィアッセの作。
フィアッセいわく
「アイリーンにまかせるとインスタントなんだもん」
との事。
「ふんふんふ〜ん♪」
水音と包丁が叩くまな板の音も
フィアッセにとっては楽器に等しく。
鼻歌とあわせて数時間歌いっぱなしだった事もあるほどだ。
軽く朝食を取ったら
愛用の車で翠屋へ
その間アイリーンは適当にお仕事へ
「今日はどっちに行くの?」
「歌の方」
「がんばってね♪」
これはお互いの会話で、
二人とも歌ともう一つ仕事をしながら暮らしてる。
「おはよ。桃子」
「おはよ〜フィアッセ〜♪」
すっかり抱きついて朝の挨拶をするようになった高町家から
何時ものように
「いってきます」
呟くような声の男の子を見る。
挨拶ができなくても、その日一日見えれば幸せ。
恋は惚れたら負けなのよ
欲しがります、勝つまでは!
「ああっ!
恭也! 今日も私の燃えるこの想いを無視するかのように学校に行くのね。
私がどれほど恋こがれてもちょっと頬を赤くするのがせいいっぱいなんて……
ああっ! 恭也っ! 恭也っー!!!」
高町家、朝の名物。
玄関あたりで恋の歌をせつせつと歌う金髪美女。
このおかげで近所ではナンパされないフィアッセなのでした。
夕方になると翠屋さんに恭也くん。
恋する乙女丸出しで
恭也くんしか見えてない。
顔だけ恭也くんに向いて
体は普通に接客+給仕。
ある意味……
いや、普通に怖い。
夕食は高町さん家で恋するあの人と一緒に。
恭也くんが入る前のお風呂に入っていざ帰宅。
(これで恭也に私の匂いがっ!)
と、本人は思ってる。
マンションに帰って
近所迷惑になるほど歌って(近所からは好評で)
深夜近くなっておやすみなさい。
これがフィアッセの一日なのでした。
「アイリーン!」
「やぱっ!
本人だ!
ま、ま〜た〜ね〜♪」
「こらぁ!
逃げるなぁ!」
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