月の光が空の雫と交わるころ
一つの溜め息が部屋に染み渡る。

「あれから毎年一緒なんだから」

 隣の部屋でかちゃかちゃと何かを作る少女
彼女が初めて私にプレゼントをくれた日
それをなんとなく思い出してみる。




 時間と共に、その……
いかにもって言う構われ方をした。
その家族があわただしくなる。

「さくらみたいな子だと良いなあ〜」

「そうだね〜
女の子だったら。さくらちゃんみたいな子が良いね」

 末っ子のさくらを実に
ただただ
甘やかした、さくらの姉が選んだ男は姉以上にさくらを甘やかした。

 そんな二人もこれで親。
(やっと開放される……)
子供……しかも生まれてすぐなら自分に構う余裕もなくなるだろうと
猫かわいがりされた少女は視線を本に戻す。

「大丈夫
我が子と同等には可愛がるから」

「そうそう。愛するさくらの事をほっとく訳ないでしょ?」

 この二人は……
しっかり聞こえてたらしい。

「ふぅ……
私の事より 生まれてくる子をちゃんと育てるんですよ。
姉さん?」

 困り顔のさくらが姉を諭す
どうもこの姉は親になる自覚が足りない
と、さくらの最近の悩みである。

「平気よ〜
きっとさくらに似て良い子よ
絶対!」

「私じゃなくて……姉さんに似るんでしょうに……」

 げんなりとしたさくらがつぶやくように反論する。

「まぁ、姉妹な訳だし
姪っ子が叔母に似てもちっともオカシクはないだろう」

「はいはい」

1〜3行ほどで呼ばれるので
大好きな本も読めない
最近は新刊が出る楽しみよりも
出るまでに読みきる苦労のが大きくなって居る。





それも昔の話
子供が生まれてからは予想通りにさくらに構う余裕は無くなった。
けれど……
さくらの方が赤ちゃん……命名「忍」に当時の姉夫婦にように構いだした。

心が刃のような綺麗で強くなるようにとつけられた女の子は
男の子のような元気さを見せた。
それが姉夫婦には残念でならないのか
たびたび怒鳴り声が響く。

「へっへっへ〜
また怒られちゃった」

「今度は何をやったの?
忍」

「見よ!
この黄金をー!!」

その手に捕まえられた兜虫。

「大きいのを捕まえたわね」

「うん」

満足そうに微笑む このこをどうして可愛気が無いと思えるのか。

「さくら」

「何?」

「食べる?」

「それは食べ物じゃないから」

「そうなんだ……なかなかの珍味だと思ったのに」

 雲は遠き夏の空
その子は土にまみれていた。



「さくら これ面白いよー」

「忍は機械が好きなのね」

「歯車をちょっと変えるだけでね」

「はいはい」


 何時しかこの少女は科学に恋をした……


「忍。
いいからスカートの似合う女の子になってね」

「い・や。
そう言うのは さくらに任せれば?」

「忍!」

「いってきまーす」

「もう……あの子は……」

忍の姿はもう見えない。

「平気よ
姉さん。忍はちゃんと可愛い所があるもの」

「そう?」

「ええ。可愛い妹を信じて
ね?」

「まぁ……さくらがそう言うなら」

「ただいまー」

「おかえりなさい。忍」

「うん。
でね。さくら
はい。プレゼント」

「うん?」

「今日はさくらの誕生日でしょ?
ママがケーキ焼いてたもん」

「忍!」

「どうせ バレてるって」

「まぁ、毎年の事だしねぇ……」

「ふふ……ありがとう。
忍、姉さん」

「さくらー
開けないの?」

「開けて欲しいのね?」

「うっ……」

「ふふ。
じゃ、開けさせてもらうから」

 それは桜の木
宝石箱の中に一本の桜の木。
鳴り響く桜と言う曲に
目頭が熱くなり
それは 頬をつたう。

「あ……
さくら」

「嬉しいと涙が出るものなの
ありがとね 忍」

「ううん。私のがいっぱい貰ってるし……」

 両手の人差し指を合わせて顔を伏せる。
恥ずかしさで赤くなる頬を隠すように。

「う〜
もっと良いもの作ってくるー」

 そう言って忍は駆け足で自分部屋に飛び込んでいった。

「本当ね……」

「でしょ?」

「あなたの方が忍の親みたいね」

 少しの寂しさ。

「違うわ。
私は育てなくて良いから気楽なだけよ」

「ほんと
さくらみたいに良い子にならないかしら」

「忍はもう私以上に良い子よ」

「そうだとしても
もうちょっとおしとやかにして欲しいわね。
血の事もあるし」

「姉さんったら
恋人とか彼氏って言ってよ……」

「ま。さくらもまだ居ない事を考えると関係ないのかもね」

「ええ。
関係無いですよ。きっと」






 まぶたを開けると夜の闇
日付が変わってすぐの頃
「できた!」
の声といっしょに部屋に転がり込んでくる
可愛い姪っ子。
今日 一番思っていた可愛い子。

「今年の誕生日ぷれぜんと〜」

その笑顔が一番のプレゼント。

「毎年ありがとうね
忍」

「決まり文句は中身を見てから♪」

「じゃ、開けるね」

ぷれぜんとBOXの中身は………………

「どう?
今年のは自信作よ〜♪」

満面の笑み。

「忍……」

「どう 感動の涙が流れるでしょ〜♪」

「ええ……
たしかに初めて貰った時は出たわ………………」

「ありゃ?
同じの誰かに貰ってたの〜
な〜〜んだ。ちぇ……」

「くれたのは
あなたよ。忍」

「へ?」

「忍が最初に作ってくれた機械。
覚えてないの?」

「うーん?
う〜ー?
んんんんんんん???
あーーーーーー!!!」





 彼女の毎年増える宝物に
一種類だけまったく同じものが二つあります。
可愛い可愛い姪っ子がくれた
桜の木のジオラマが入ったオルゴールが……








後書き
急いで書いたせいか。無駄なシーンが二つもあります(笑)
でも、そう言うシーンに限って気に入ってるのでそのまま掲載(苦笑)
どこかわかった方や、このシーン不要とか言う観想お待ちしてます。
それ以外も当然待ってます(笑)
読んだってだけの感想でも欲しいものなのですよ〜♪