『タブー』

 常識に捕らわれている俺にとって、
 安息の地で有るはずの家は、苦痛でしかなく、
 毎日が苦悩の日々。
 近くに居るお前は近くて遠い存在…
 このタブーを犯してでも手に入れたい思いに、
 お前は気づいているのだろうか?
 こんな俺の事も知らないで、
 お前は子犬のような笑顔で俺を迎えてくれる。
 この思いをお前に打ち明けたら、
 二人の関係が壊れてゆくのだろうか?

「らしくない」

涼介は重い気持ちを振り払うようにソファーから、
立ち上がり、うたた寝している啓介の寝顔を見つめ、
髪を撫ぜてやる。

「うーん…」

啓介は子犬のような声をあげた。

啓介がこのような無防備な姿で居るのは、
実家でしかない。
涼介は勿論そんな事は承知しているが、

 可愛い声あげやがって!
 俺を誘っているのか?
 そのうち、お前を食ってしまいそうだぜ!

と頭の中では思っていても、良心が痛み、
涼介は可愛い弟の唇に、そっとキスをする。
よほど熟睡しているらしく、それぐらいじゃ起きようとしない
啓介に少し苛立ちを感じたが、余り可愛い寝顔なので、
しばらく見とれていた。

― 数時間後 ―

「ふぁ〜。うーん。俺寝ちゃったのか。あっ。サッカー見てたのに。
 アニキ結果どうなった?どっちが勝ったんだよ?」

啓介が起きると、よほど残念だったらしく、まくし立てるように涼介に言うと

「悪い。見てなかった。」

「なんでだよぅ。俺楽しみにしてたんだぜ。アニキ見ててくれてもよかったのに…」

それぐらいで、ぷーうと膨れる弟を愛しそうに眺めなから、

「結果なら、スポーツニュース見れば解るぜ。」

「それじゃ。意味無いんだよ。アニキっTVついてたろ。」

「ああ。ついてたぜ。」

「見てなかったのか?」

「見てなかった。」

  「おかしなアニキ。
 リビングにいてTVついてて見てないなんて
 何してたんだよ。」

「さーあな」

「まーいいや。俺、部屋に帰る。」

そう言うと、啓介はリビングから出ってしまう。

リビングに一人取り残された涼介は、啓介の態度に思わず、
笑みがこぼれる。

 アイツはいつまでたってもガキだぜ・・・
 それで鈍感ときてる・・・
 参ったぜ・・・

涼介は、ため息をつくのであった。

部屋に帰ってみたものの啓介は、何をする訳でもなく、
ベットに座り込み、煙草に火を付ける。
辺りが紫煙に包まれる。
リビングでの事を思い出してみる。
小さい頃よく啓介は兄に添い寝してもらっていた。
必ずおやすみのキスをしてもらってから
眠りについた事を思い出す。

 いつも添い寝してくれて
 忙しい両親の変わりに
 子守唄歌ってくれたっけ。  澄んだアニキの歌声・・・
 いつからだろう・・・
 アニキ歌ってくれなくなったなぁ・・・
 それにしても・・・
 さっきの唇に残る軟らかい感触・・・
 アニキのだったよな・・・
 アニキ?・・・
 俺だってアニキの事好き。
 でもどうしたらいいか解らないんだ・・・

ぼんやりと考え事をしていると
トントンとドアのノックする音がする。
家には涼介と二人っきりなので
ドアの外にいる人物が解る啓介は
さっきの事を想いだし、
バツが悪くなり、
思わず寝た振りした。

「啓介。入るぜ。」

「・・・・」

静かにドアが開き、チームデータが入っている
ノートパソコンを持って涼介が入ってきた。
おそらく打ち合わせがしたかったのだろう。

「返事もないと思ったら寝てたのか・・・」

そう呟くとベットの端に座り、啓介の髪を優しくなぜた。

 アニキ・・・?

涼介はそっと触れるだけのキスをした。
啓介は吃驚して声を上げてしまいそうになったが、
それじゃ狸寝入りがばれてしまうので、なんとか堪えた。

 アニキ・・・
 何をするんだ?!

  頭の良い涼介は勿論、啓介が狸寝入りしている
なんていうことは承知している。
何故、寝た振りしているかも解る。
解っていてもこの想いを止めることは、出来そうに無い。

 可愛い弟・・・
 壊したくなる想い・・・
 どうしょうも無く苦しい・・・
 ここにお前がいるのに・・・
 辛すぎるぜ・・・

  涼介はもう一度、啓介に深く熱い口付けをする。

 「うっ・・・うっふ・・・ぐふっ・・・」

息も出来ないぐらいの口付けで、
啓介は思わず声をあげてしまう。
と当時にうっすらと開いた唇を見逃すはずもなく、
涼介は啓介の舌を絡め取る。
最初は戸惑っていた啓介だが、徐々に慣れてきて、
想いに答えるようになってきた。
お互いの息が上がりやっと開放されると啓介は

 「どうしてアニキ?・・・アニキ・・・・」

 「お前が思っている事と同じだ」

 「えっ。でもどうして俺なんだ?」

 「好きになることに理由が必要か?それにお前は俺を拒もうとしない」

そう言うと、涼介は再び啓介に口付け、徐々に首筋へと唇をうつす。

 「ア・ニ・キ・・・やめ・・ろ・・よ・・あっ・・・」

服の上から胸の蕾を優しくなぜて、時折つまんだりしてみる。

 「う・・っふ・・・あ・・あ・・・」

 「可愛いぜ。啓介」

反応を確かめてから、パーカーの下からたくし上げて、
直に胸の頂きをなぜて、既に熟した頂きを唇で含む。

時折転がすようにする。
啓介は、我慢していた想いをぶつけるように、
美しい旋律を奏でる。
首筋、鎖骨へと愛撫しながら
幾つもの刻印を残し続ける。

「あっ・・・あ・・あああ・・・」

そんな啓介を口の端だけ笑みを浮かべ、
涼介は時折上から、苦痛とも歓喜とも言えない表情の
弟を眺める。
踏み込んでは行けない聖域に、入ってしまったという後悔と
このままではいられないと言う情熱。
複雑な思いのままの情事はやるせなく、
それでもお互いの気持ち確かめるように、行動は続けてゆく…。

「ア・・ニ・・・キ……手・・握っていて…」

啓介はやっと絞りだすように言う。

自分から求めているみたいで、恥ずかしい思いと、
でももっと乱れてみたいという欲望…
互いに相反して入り混じり、頭の中でグルグル回る
何かが壊れていくような不安な気持ちに、
啓介は押しつぶされてしまいそうだった。

涼介は啓介の気持ちを理解し、啓介の手と自分の手を重ねる。
ぎゅっと握り返す手の平に汗がにじんでいる。
重ねた手の甲に口づけると、
静かに空いてる手を下方へて進めてゆく。
啓介の猛りまで到達すると、
じれったくなり膝の下まで一気に下着ごと
ズボンを下ろすと、

「あっ……」

急に外気に触れた感触に啓介は思わず
小さく呟く。
既に先走りで濡れている猛りを
始めはゆっくりと、徐々に強弱をつけて
追いこんでゆく。
滴に濡れる物を口に含む。

「ふぁ〜ん・・ア・・ニ・キっ・・・」

啓介のひときわうわづった声を聞き逃す訳もなく、
涼介は滴をすくい一番敏感な蕾に触れる。
始めは浅く、徐々にほぐすようにしてゆくが、
触れた指を少し深く蕾に沈めてみる。

「痛いっっ。」

行為になれていない啓介の蕾の入り口は狭く、
硬く閉ざされている。

「大丈夫か・・・?」

「…もっと…ア・・ニ・・キのが欲しい・・・・」

「啓介…まだ・・・お前・・・?」

「・・・一番・・深い・・所で・・感じて・・みたい・・・」

「少々痛いかもしれないぜ?」

そう言うと啓介の肩足を肩に担ぐような格好で、
一気に貫いた。

「うっ…」

「うわぁーあっぁー」

  「大丈夫か…?」

「一つに…一つに…」

「そうだ…動くぜ…」

「あっ・・・うん」

緩やかに徐々に激しさを増し、探るように行う行為は、
今までの心の溝を埋めるように続く。
今まで抑えていた気持ちに逆らうかのように…。

「ふぅ…啓介…愛してる…」

「俺も…俺も…ア・・ニ・・キの事を…」

そう言うと…猛る物を一気に一番深くに沈めた。

「うっうー」

「ああぁ〜あー」

二人ほぼ同時に昇りつめ、目の前が白く、白く視界が途絶えた。

ひとしきり抱き合った後、二人でシャワーを浴び、
服を着るのももどかしく、二人でベットにそのまま横たわる。

何か恥ずかしくて、それても、凄く嬉しくて言葉に
表す事も出来なくて複雑な心の中…
お互い暫く声をかける事が出来ずにいた。
それでも啓介は重い空気にいたたまれなくて、
「なぁ。アニキまた子供の頃のように子守り歌歌ってよ。」

せがむ啓介に

「なにガキみてぇな事いってるんだ。」

一言で返してしまう。
勿論、照れ隠しの意味ではあるが、

「俺はアニキの前だと素直になれるんだよっ。歌ってよ。」

「お前がさっきまで俺に歌ってくれてたぜ。」

「なっにいってるんだよっっ。あれは、あれはアニキが・・・」

先程までの情事に恥ずかしくなり、しどろもどろになってる啓介に

「…冗談だよ。」

不的な笑みをもらす。

「アニキ・・・いつからそんな悪いジョーク言うようになったんだ?」

「さぁーな」

…俺もお前の前だと素直になるんだぜ。

って心の中で呟いたアニに気付かない。

意地悪なアニにキャンキャンとまとわりつく
子犬のようにせがむ啓介に

「少しだけだぜ…」

って珍しく少し照れた表情で涼介が言う。

涼介が子供の頃と同じ『ムーンリバー』を口づさむ。

このまま二人で
いつまでも二人で…
永久(とわ)を誓おう。
俺たちなら大丈夫。
2人の間にいくつもの
障害あっても…
俺たちは大丈夫。
例えこれがタブーだとしても…
俺たちはこれが自然なのだから…

自分に言い聞かせながら涼介は、
弟の為に歌い続ける。
まるで幼子を寝かしつけるかのように。
やがて啓介はスヤスヤと
寝息をたて眠りについた。
涼介は天使のような弟の寝顔を
しばらく眺めていようと思っていたが、
目が開けてられなくなる。

啓介…お前は俺が守ってやっているつもりで・・・
実は…お前に…………
夢の中でも…お前の側にいさせてくれ…

時計の音だけが、やけに響く部屋の中で、
二人の時が、これから刻み始める。

−END−

≪思いっきり言い訳させて〜!!≫

祝!!裏一号です!!(自分で祝ってどうする)
初めてH書いたよぅ〜。
穴があったら入りたいでござる〜。
こんな意味不明な駄文につきあって
頂き有難うございました(逃)