『真夏の夜の夢』(啓介バージョン)


いつもと違う装い

ちょっぴりドキドキして

俺の隣にいる強い人に手をひかれ


「誰かに見られたらどうするんだよ!」


ってさっきから、言い訳しまくってる。

本当は何か恥ずかしいんだ。

いつもと違う装い

歩きずらい浴衣

俺の言葉なんて

聞こえてないかのように

強くひかれる手は

ほてるように熱い…


俺の隣には

ナイスガイが一人

グングン歩み続ける。

まっすぐな眼差し

背中越しに伝わるテレパシー


「誰に見られも平気だぜ」


って俺に語っているようだ。


「でも・・・でも・・・」


俺の心の中で否定し続けてる。

俺は引っ張られる様に後を追う。

神輿を横目で

何処かうわの空

不安で…不安で…

強い人の手を握り返す。


人ごみをかき分け

行きついた先は、小さなお社。

二人で賽銭投げて

願った事は同じ事なのかな?


買ってきてくれたかき氷。

人込みを避けて

お社の裏に俺を導いた。


シャカシャカ…

シャカシャカ…


音たてて

冷たい氷ほおばる。

赤い色の小さな氷山は

次第に形が無くなり

液体へと変わる。


浴衣の懐に飛んだ赤い滴。


「子供みたいな事してるんだ。染みになるぜ」


って飽きれ顔のアニキ。


「ごめん。」


って素直に誤った。

アニキの手が俺の懐に触れて、

照れくさくて、思わず顔をそむけた。


「何考えてんだ。拭いてやっただけだぜ。」


って涼しい顔してる。

俺は少しの期待と恥ずかしさに、

目が合わせなれなくなる。


「お前が期待してた事しようか」


急にアニキの顔近づいて、

唇にキスをした。


「甘い…」


って呟いて、もう一度キスをした。


「アニキ!!」


って慌てて、反論したけど。


「全てお見通しだぜ。」


と制されてしまう。

アニキのまっすぐな瞳は、

俺が否定する事を許さなくて、

嘘がつけない。


甘い口付け。

甘いかき氷。

何処か似ていて。

赤い液体の残る器から

甘い匂い薫り…

苺の薫り…

全ては真夏の夜の夢…