『クリスマスソング』




吹く風の冷たさに身震いし、

コートの襟を立てて歩いて、

上空から降りる真綿の白い結晶を

手の平に受け止めた。

自分の体温で次第に消えてしまう結晶は

やがて白銀の世界へと誘う。

クリスマスソング流れる街中は、

ネオンに彩られ、人々はその光に見入られている。

俺は待ち人がいる場所へと急ぎ歩く。

大学の講義が長引き、

待ち合わせ時間に遅れているけど

あいつならきっと待っていてくれると確信していた。

頬を膨らませ怒っているであろうあいつの顔を

思い浮かべると思わず笑みがこぼれる。



…ふっ。言い訳ぐらい考えねば…



冷え込んだ空気の中、俺は少し歩幅を広げ、

あいつが待つツリーへ急いだ。

大きなツリーに色とりどりの明かりが灯り、

すでに粉雪で白く化粧されていた。



やっぱり、むくれっ面のあいつが白い息はずませ、

駆けよってくる。



「おそーい。一時間も待ってたんですよ。」



…文句言っている割には、顔が緩んでいるんだぜ…



俺はあいつの言葉を聞き流し、

左手にはシャンパンを右手にはあいつの冷えきった肩をそっと抱く。

あいつが俺に寄り添うと、満面の笑顔で俺を見つめ、



「メリークリスマス…涼介さん…」



と呟いた。



…言い訳なんて必要かったな…



さっきまで考えていた言い訳は、俺の頭の中から消えて行った。



「メリークリスマス…お前へのプレゼントだぜ。」



左手のシャンパンを差し出した。



赤いリボンに結ばれたプラチナリング。

少しキザだけど、この日の為に用意したんだ。



あいつは少し恥ずかしそうに、



「俺にですか?…」



って当たり前の事言いやがる。



「勿論、気に入ってくれると嬉しいが…」



「ありがとうございます。

 でも…俺…何も用意してこなかった。」



「もう貰ってるぜ。」



「えっ?」



聞き返すお前の唇にそっと自分の唇を重ねた。



…お前をな…



  どこからかクリスマスソングが聞こえてくる。

俺の心にもあいつの心にも深く響いていた。



‐完‐



― あとがき ―



キザ過ぎて言い訳もございません。

これを書いている時、実は私ホロ酔い気味だったの。

酒の力って恐ろしい…。

でもアニだったら許されるかな…だめだめな私…



平成13年12月某日 喫茶店にて脱筆