『初恋』

「にいちゃ、ごほん読んで」

おれは、寝る前に必ず絵本を読んでとせがんだっけ。

あにきは、イヤな顔もしないで毎晩おれが寝るまで読んでくれた。

「いいよ、啓介。今日はどれにしようか?」

やさしく微笑んで頭を撫でてくれるんだ。

「うーんと、これがイイ・・」

おれのお気に入り「眠れる森の美女」(スリーピングビューティー )

「啓介は、これがいちばん気に入ってるね。」

可笑しそうにそう言ってくすくす笑うんだ。

男だからって、探検や冒険物だけを好きだとは限らない。

別にキライでと言う訳では無かったけれど。

おれは、オーロラ姫に恋してたのかもしれない・・・

知らないうちにオーロラ姫の物語を語る澄んだ声の人に・・・

あにきに、恋していたんだと思うんだ。

あにきがオーロラ姫と、重なって映っていたのかもしれない・・・

美しくて、気丈で前向きなひと・・・

彼女を、けして待つだけの女なんて思ったことはない。

絶対、彼女が魔法なんかにかからなければ自分で未来を切り開いたに違いない。

彼女を強い女性だと感じて、おれは、胸を熱くした。

目の前の美しくて気丈で前向きで、おれをスキだと言ってくれるひと・・・

いつものハッピーエンドで物語は、終わるからスキなのだ。

当たり前の事だったけれど・・・

あにの唇だったら魔法にかかる様な気がする。

読み終わると、おやすみのキス。

頬になんかじゃなくて、唇にしてくれた。

こわい夢を見ない為の魔法のキスを・・・

懐かしい、幼いときの夢から覚める。

どうやら、居間のソファーで居眠りをしていたようだ。

隣にはいつものようにアニキが雑誌を読んでいた。

俺が、起きたことに気づいたのかちらっとこちらを見る。

「やっと、起きたか?」

へへへーっと俺は、首に手をまわしながら

「あーにき!キスしようぜぇ!」

少し戸惑っていたけどすぐに答えてくれた。

ちゅっと軽くキスをする。

「まったく、おまえにはかなわないぜ・・・」

嬉しそうに今度は、恋人同士のキスをする。

<お願いです。一生解けない魔法をかけて下さい あなたのそのキスで・・・>

らん様から頂きました物語、第3弾でございます。
毎回有難うございます。
幼き日のちゅけがラブリーでした♪
ご感想は深水らん様まで