パルフェ〜ショコラ second brew〜 (とっぷがんさんのレビュー) | 評価: 9 |
▼ タイトル | パルフェ〜ショコラ second brew〜 | |
▼ ブランド | 戯画 | |
▼ ジャンル | メイド喫茶ADV | |
▼ 対応OS | Win98/Me/2000/XP | |
▼ メディア | DVD-ROM | |
▼ 定価 | 税込\9,240(税抜\8,800) | |
▼ 発売日 | 2005/03/25 | |
▼ 購入 | パルフェ〜ショコラ second brew〜 /オリジナル特典 Getchu.com | |
【 CG観賞モード 】 | あり | |
【 シーン観賞モード 】 | あり | |
【 BGM観賞モード 】 | あり | |
【 メッセージスキップ 】 | あり(未読・既読判別あり) | |
【 メッセージ履歴機能 】 | あり(音声リピートあり、ホイール対応) | |
【 選択肢リターン機能 】 | なし | |
【 オートモード 】 | あり | |
【 ヒント機能 】 | あり(移動先キャラ表示&イベントシート) | |
【 セーブ数 】 | 99個+オート10個 | |
【 エンディング数 】 | 13個 | |
【 メディアレス起動 】 | 可 |
<あらすじ>
来店されるお客様には、現実の世界から離れて、ひとときの安らぎを…。
中世ヨーロッパの街並みを再現した大型ショッピングモール・「ブリックモール」。
なぜかそこで真向かいに鉢合わせた、同じコンセプトの欧風アンティーク喫茶。
「キュリオ3号店」と、「ファミーユ」…。
圧倒的な人気を誇るキュリオを真向かいに、奮闘を余儀なくされる主人公。
その前に店の制服を着込んだバイト志望の少女、由飛が突然現れる。
彼女の笑顔と心惹きつけられる歌声に主人公は、なんとなく、なんとかなりそうな気がしてしまう…。
<キャラクター>
風見 由飛(かざみゆい)
ファミーユ開店前日に滑り込みで応募してきた新入店員。
ひたすら元気で何事にも前向き。
初対面でも物怖じしない…というか、馴れ馴れしい。
失敗は多いのだが、持ち前の明るさとやる気で、失敗が失敗に見えない。
持ち前の性格でファミーユの看板ウエイトレスとなっていく。
仕事中によく鼻歌を歌い、注意される。
花鳥 玲愛(かとりれあ)
curio3号店のチーフウエイトレス。
ハッキリしたタイプの美人で外面もよく、お客様の人気も高い。
主人公の店に対して敵愾心を燃やし、何かと突っかかってくる。
自分にも他人にも厳しい完璧主義者。
ライバルのはずのファミーユを目の仇にしながらも、理にかなったアドバイスを残していったりする。
雪乃 明日香(ゆきのあすか)
入店1年目のアルバイト。
バイトを始めて半年くらいで、ようやく慣れてきたところに店が全焼。
今回、主人公たちを助けるためにバイト復帰。
以前から主人公が家庭教師をしており、「センセ」と呼んでなついてくる。
お店の休憩時間にも、制服姿のまま「てんちょ(主人公)」に勉強を教わったりする。
おとなしめの、素直で可愛い性格で、お店のマスコット的存在。
意外と巨乳。
涼波 かすり(すずなみかすり)
老舗和菓子屋の一人娘。
開店当時からのスタッフ。
不況のあおりから経営危機に陥った父親の店のために洋菓子とのコラボレーションを考えている。
外見は一見清楚で落ち着いた大人の女性なのだが、性格は気さくであけすけ、いつもちょっとどこかずれたようなとぼけた調子。
ファミーユが火事で閉店になった後は実家に帰っていたが、迎えに行った主人公をこれ幸いと駆け落ち同然に家出、主人公を許婚だとうそぶく。
杉澤 恵麻(すぎさわえま)
主人公の3つ上の義姉。未亡人。
主人公の兄が帰らぬ人となったため、実質的な結婚生活は皆無。
性格はおっとりとていて優しい。
不幸の塊のような女性だが、笑顔で頑張ってないように頑張るので、スタッフには慕われている。
弱点は朝。
低血圧のため、機嫌が悪いどころか、記憶が飛んでいることもある。
夏海 里伽子(なつみりかこ)
焼失前の店では、チーフを務めていた。
現在の店の方針は、彼女のアイデア。
頭の回転が良く、ドライで愛嬌がない。
『情に流されるとロクなことにならない』が彼女の口癖。
そのため美人で仕事は出来るのに、お客様の人気は今ひとつだった。
今回は、就職活動があるからという理由で、一人だけ復帰しない。
現在主人公が大学に行った時とか、本人が来店した時にしか会えない。
このホームページは戯画より一部文章を抜粋しています。
素材の著作権は戯画に帰属します。
<購入動機>
ショコラが世に出て2年。
その続編が登場すると聞いたらやらずにはいられません。
Cafe Primevere(札幌のメイド喫茶)でカフェショコラを飲みながら発売日を待ちました。
そして満を持してプレイ開始!
…【↑でも発売日当日に残業を命じられた奴。サラリーマンなんて嫌いだ〜〜(つД`)】
<ゲーム概要>
ゲームスタイルは、マップ選択移動方式のオーソドックスなADVゲーム。
ゲーム期間は、約二ヶ月半ですが、イベント発生日のみ進行していきます。
1日の流れは1回、移動する場所を選択して進んでいきます。
移動できる場所は、「店内フロア/大学」「厨房/駅前」「フードコート/自宅」「ブリックモール外/恵麻のマンション」の4箇所。
移動できる場所は明るく、移動できない場所は暗く表示され、移動先にキャラがいる場合はチビキャラが表示されます。
攻略対象キャラは「由飛」「玲愛」「明日香」「かすり」「恵麻」「里伽子」の6人。
攻略順序に規制があるかは未確認ですが、全体的な物語の分かり易さという点では上記の順番が理想的です。
…【CGギャラリーの配置もそうだし…(-_-;)】
基本的には各キャラともノーマル・トゥルーの2つのEDがありますが、一部のキャラはEDが1つであったり、また別なキャラは3つあったりします。
尚、おまけシナリオ的な要素はありません。
難易度はあってなきが如し
今回採用されている「イベントシート」というチャートに、エピソードをクリアするとそのエピソードのタイトル、関連キャラ、発生条件などが記載され、次回のプレイで参考にすることが出来、前作のように大変な目に遭う事はなくなりました。
思う存分シナリオに集中してください、という感じですね。
プレイ時間は、共通ルート全体で6時間くらい(初回+1時間)、各キャラの個別ルートが2〜3時間くらい、というところでしょうか。
※CVすべて聴いた場合
<システム補足>
メディアは、CD-ROM3枚組。
インストールで使用するHDDは最小で約1.5GB、最大で約2GB。
ゲームの起動時は、CDは必要ありません。
メニューは一通り揃っていて、特に足りないと感じたものはありません。
色々な部分で細かい調整も出来、使い勝手も良好なシステムだと思います。
特に、画面の右側に縦に表示されるセーブデータのセーブ・ロードの反応が良く、セーブデータ全体がクイック化されているような感覚です。
昔の戯画のシステムは、機能的にも操作的にもお世辞にも良いシステムとは言えませんでしたが、「V.G.NEO」あたりからかなり充実してきました。
安定度も含めて良いシステムだと思います。
…【よもや、戯画のシステムに10点を付ける日が来るとは…(←失礼な奴)】
後は発売当日に確信犯的に修正パッチが出るのが何とかなってくれれば…あれ、ありませんね(^_^;)
本来はなくて当然ですが、ないと戯画らしくなくて何か落ち着きませんね…(←無礼な奴)
…と思ったら、4/1に修正パッチが出ました。
エイプリルフールネタじゃなさそうです^^;
と言う事で1点減点します。
うーん、惜しい…(^_^;)
<音楽>
音楽は『Hirasan/桜乃』さん。
音楽鑑賞モードは全部で35曲ですが、一部クラシック作品や過去の作品からの転用が11曲、別アレンジが4曲あるので、原曲は20曲です。
OP曲『Leaf ticket』は、詞・ボーカル:KOTOKO、作・編曲:C,Gmix、I'veサウンドです。
『Cream+Mint』と同じ布陣ですね。
ドラム・ベース・ピアノ・Aギターでリズム&ベーシックを形成する、非常にオーソドックスなミドルテンポの明るい曲調。
『Cream+Mint』と比べると、流れるようなメロディラインの滑らかさを感じます。
この曲からは「春の陽気」「希望」「旅立ち」といったイメージを受けますね。
それにしてもこう言っちゃなんですが、戯画作品はOP曲のボーカルがKOTOKOさんか否かで作品の出来がクッキリ分かれますね^^;
力を入れている作品(丸戸シナリオ作品ORバルドチーム作品)=KOTOKOさんという図式が出来上がっています。
まぁ、ある意味買いやすいんですけどね…(^_^;)
ED曲『つまんない恋』は、詞:丸戸史明/NEKO-EMON、曲:杉本バッハ、編:Z-shimi/杉本バッハ、ボーカル:高槻つばさ(由飛のCV)です。
ピアノ基調のしっとりしたミドルテンポの曲調。
後半に向けて、楽器が一つまた一つと増えて盛り上がっていく感じが良いですね。
ボーカルの高槻つばささんの一句一句ややたどたどしい発音が、初々しさを感じさせてくれます。
ちなみにこの曲のボーカルver.は由飛のトゥルーEDのときのみで、他のEDのときはInst.ver.が流れます。
BGMは当然というか、ピアノ基調の曲が多いです。
全体的に耳に馴染みやすく、使用目的もはっきりした曲という印象です。
アンティーク喫茶店をイメージした「Tea Time」、切ないシーンで使われる「落ちる涙の蒼」、ED近辺で流れる「夢のその先。」あたりがとても印象に残りました。
<原画・CG>
キャラ原画は『ねこにゃん』さん、背景は『草薙』さん。
キャラの目と目の間が微妙に開いているのは変わりませんが、心持ち目のラインが丸みを帯びて顔の輪郭もふっくらした感じになった印象でしょうか。
相変わらず万人受けするような画ですね。
立ち画とイベント画の統一感も概ね取れていると思います。
CGは塗りも線も丁寧で好感が持てます。
画面の基本サイズが800X600なのでフルスクリーンにする必要もなく、終始綺麗な印象を受けました。
色合い的には、前作ではボカした色合いでアンティークさを表現していた記憶がありますが、今作ではクッキリ感が強調された印象を受けます。
影の付け方も背景画もまずまずという感じですね。
CG回想モードは、由飛:58(20)、玲愛:53(17)、明日香:49(16)、かすり:48(16)、恵麻:49(18)、里伽子:42(18)、その他:3(2)合計:302(107)、です。
※括弧内は、表情パターン別を1つとしてカウントした枚数。
この内、えちぃCGは約6割に当たる190(59)です。
シーン回想モードは、全キャラ3個ずつの合計18です。
<演出・効果>
【タイミングと間】
映像が切替るタイミング、音楽が鳴り出すタイミング、止まるタイミング等が、テキストの表示とリンクして非常に臨場感を出してくれます。
他にもテキストのフォントサイズが変わったり、テキストが自動進行になったり、イベントが終了した後の間の取り方とか、地味ですがとても演出面に貢献してます。
シナリオ重視作品は、こういった「タイミングと間」の良し悪しで受ける印象がガラッと変わったりする事もあるので、細かいところでシナリオを盛り上げてくれる最近の戯画システムの充実度がこの辺りにも表れています。
【発射シーン】
えちぃシーンにおいて主人公やキャラがイクときの画面エフェクトも臨場感が良く出ています。
これはショコラのときもそうでしたが、1回フラッシュしてハイ終わり〜という作品が多い中、えちぃシーンに対するこだわりが感じられます。
徐々に画面が白くなっていき、発射のときにフラッシュし、その後残滓を搾り出すごとに更にフラッシュしてゆっくりと画面が普通の状態に戻っていくという感じで、これに関しては良い伝統を継承しているという感じですね。
<設定・シナリオ>
シナリオは『丸戸史明 with 企画屋』さん。
前作のショコラもそうでしたが、今作も全体の設定(ダシ)や各キャラの設定(素材)にはそれ程目新しさは感じられません。
むしろ今作の方が地味になった印象すらあります。
ですがこのライターさんの真骨頂は調理の上手さ。
素材の切り方、配置、火の通し方、隠し味の付け方など、絶妙なタイミングとバランスで調理してくれます。
良い材料を使ってそれなりに美味しい料理をするのはむしろ普通の事で、良い材料を使っても不味い料理が出来てしまう作品も多いなか、こうした普通の材料を使って美味しい料理を作ってくれるライターさんは貴重です。
以前某所で前作のショコラは「寄せ鍋の味」と書いた事がありますが、今回のパルフェは「おでん鍋の味」。
素材(キャラ)が良い味を出して、ダシ(ファミーユ)を通して互いに味を付け合うという点は変わらないものの、ダシや素材に含まれている「家族味」という風味が色濃くなり、洗練度という点ではやや泥臭くなった印象です。
でも、素材に染み渡ったダシの味、鍋を食べ終わった後に感じる暖かさという点では、それを補って余りあるものがあります。
どちらの鍋が良いかというのは好みがあるので一概に決め付ける事は出来ませんが、個人的には今回の鍋の味の方が好みです。
…【まぁ、家族味が入った段階で大きく傾いた訳ですが…(^_^;)】
このシリーズの特徴としてもう一つ挙げなければならないのが、主人公の設定。
色々なキャラと結ばれる関係上、一般的にエロゲの主人公は優柔不断、ヘタレ、色事師的な設定にならざるを得なく、この作品もご他聞に漏れません。
ですが、このシリーズにおける主人公たちは「熱いヘタレ」という感じで、どのキャラが相手でも全力でぶつかって行くイメージがあり、思わず「ヘタレ万歳」と思わせてしまうくらい徹底しているヘタレです^^;
…【訳分からん…(-_-;)】
普通、ヘタレは悪印象になりがちですが、このシリーズに関しては逆に好印象さえ受けてしまうのは、シナリオの骨格や伏線、心情の機微の描写、言葉の選び方やタイミング等、色々な要素が緻密に計算されているからなのでしょうね。
このシリーズのテーマは「等身大の恋」。
決してヒーローではなく、ヒロインでもない、どこにでもありそうなささやかな物語。
それ故に、面映い、ホロ苦い、切ない、そんな日々埋もれてしまいがちな感情をゆっくりと起こしてくれます。
<えちぃシーン>
回数は、1人当たり3回。
全員キッチリ同回数なのは、誠実と言うか、手抜きキャラはいないという表れなのか…(^_^;)
その分、えちぃCGの比率が意外と高い(約6割)です。
テキストは、割と長めで内容も結構濃厚です。
シナリオ重視作品なので、このあたりは若干手を抜いても問題ない気がしますが、これも誠実と言うか、律儀と言うか、シーン突入まで長く待たせるためのサービスなのか…(^_^;)
ただ、物語的に盛り上がったタイミングでシーンに突入するので、シナリオの延長線という解釈の方がシックリきます。
ですので、シチュエーションがどうだとか、バリエーションはどれだけとか、あまり意味がないので割愛しますが、一つだけ書かせて頂くと…
制服は外さない
というこだわりは感じます^^;
<キャラ別感想>
※「先入観がつくからイヤ」という方はスキップして下さい。
◆風見 由飛◆
髪の色は、インディアンレッド。
髪の型は、ロング(紐リボン)。
瞳の色は、インディアンレッド。
ファミーユの歌姫
ファミールが復活する前夜、スタッフ不足に頭を悩ませていた主人公の目の前に、突如現れてスタッフの一員に加わった女神。
何事も感性でこなす仕事のスタイルに、当初は振り回される主人公&他のスタッフ達。
そして時折無意識に奏でられる、ミュージカル調の歌声サービス。
それでも少しずつ成長していき、やがてファミーユの歌姫へと成長していきますが…。
…【いや、アンティーク喫茶店で歌姫と言われても…(^_^;)】
終わりから始まる恋
由飛から受けるキャラの印象は、天然と言うか、天真爛漫といったイメージです。
外見はショコラのメインキャラ「美里」に似た感じですが、天然度はこちらの方が突き抜けていますね。
日常シーンにおいてはギャグ部門担当という感じで、至る所で笑わせてくれます。
特に客の注文取り、配膳、ミスの誤魔化し等で時折披露される、ミュージカル調の歌声はかなり楽しませて貰いました。
このシナリオをプレイして思い出さずにいられないのは「告白」という儀式のタイミング。
二人の恋愛感情の成熟度に差異がある場合の、恋愛成就の難しさ。
相手の恋愛感情がまだ未成熟状態と知る由もなく、勢いに任せて放出したエネルギーが跳ね返された時の戸惑い、焦燥、絶望、後悔、等々…。
思わずリセットキーがあるなら押したいと真剣に願ったり、時間を遡る切符があれば欲しいと切実に望んだ、何年か前の自分自身を投影してプレイしてました(^_^;)
このライターさんのシナリオは、こういうリアル世界にゴロゴロ転がっている題材が使われるケースが多く、それ故に似た経験をしている場合の感情移入度が極めて高いというところにも特徴があります。
自分は違う選択をして消滅してしまいましたが、「終わりから始まる恋はないよ」と自分の選択を肯定したい部分と、「終わりから始まる恋もあってほしい」と自分の選択を否定したい部分をゲームに託す気持ちがない交ぜになって、ややホロ苦い思いを感じたシナリオでした。
ミュージカル調
CVは「高槻つばさ」さん。
私は初めての方です。
通常シーンの間延びしたような間の抜けたような(すみませぬ)演技が中々上手いです。
でも何より歌姫シーンの歌声がやっぱりインパクトがありますね。
これは声優さんのアドリブなのかちょっと分かりませんが、もしそうだとしたらこれはこれで凄い才能だと思います^^;
◆花鳥 玲愛◆
髪の色は、カーキ(ブロンド)。
髪の型は、ツインテール(黒リボン)。
瞳の色は、ライトスレートグレイ。
キュリオのフロアチーフ
ショコラの舞台となったアンティーク喫茶店キュリオ。
そのキュリオの3号店がファミーユの向いに開店し、そのフロアチーフとして働いています。
当初はファミーユを目の敵にして色々張り合う毎日。
でもその言動とは裏腹に、時折指摘される的確なアドバイスに主人公は当惑しますが…。
愚直なまでに真摯
玲愛は、最近の風潮に倣う表現で言うと「ツンデレ娘」という感じです。
口やかましく、すぐ突っかかり、すぐ熱くなる、一見どこにでもいるような勝気娘。
ですが物語が進むと、自分のみならず相手にまでそれを要求してしまう真面目さと、馬鹿が付くほど愚直で不器用な純粋さが見え隠れしてきて、徐々に受ける印象が柔らかいものに変わっていきます。
特に姉への心情を主人公に語るくだりのシーンは、認めたくない本心を生々しく吐露する事によって、本当は脆い玲愛の真実が具象化する名場面であり、一番印象に残ったシーンでした。
このシーンを迎える事で、玲愛というキャラに命が吹き込まれたと感じます。
玲愛の魅力は玲愛トゥルールートよりも、むしろ由飛トゥルールートにおいて発揮されていると思います。
愚直なまでに真摯な玲愛は、傷付いている人間の横は素通りできない。
自分のためには出来なかった事でも他人のためには出来る。
たとえそれが、後で自分の新しい傷になったとしても…。
…【うーん、いい娘だなぁ…(-_-;)】
余談ですが、別ルートにおいて玲愛が「鍋奉行」であるエピソードを読んだとき、あまりにイメージにハマり過ぎてしばし笑いが止まりませんでした^^;
生意気ボイス
CVは「松下美希」さん。
玲愛の挑発的でこ憎たらしい物言いの演技がかなりシックリきます。
バツの悪さを誤魔化すシーンの演技も中々で、生意気なシーンの演技との落差に上手さを感じますね。
◆雪乃 明日香◆
髪の色は、ブラウン。
髪の型は、ショートポニーテール(黄色リボン)。
瞳の色は、ブラウン。
ファミーユのマスコット
明日香は消失した前のファミーユ時代からのスタッフで、今回再建されたファミーユでも引続き働きます。
学生と二足の草鞋を履き、平日は学校が終わった後閉店まで、休日は一日中働いて店を盛り立てます。
店が終わったあとはそのまま居残って、家庭教師でもある主人公から勉強を教えて貰う日々。
やがて明日香は、主人公と同じ大学を目指したいと思い始めますが…。
リアル世界のベストシスター
明日香は2次元の仮想世界における妹としては微妙ですが、リアル世界にもし存在していたらとても可愛い妹という感じですね。
ちゃんと自分の世界も持っていて、兄が道を踏み外しそうになったら首根っこを捕まえて引き戻すような強さもあり、やや憎たらしいところもあり、でも最後は敢えて兄の手の平で踊ってくれる、そんなしっかりしていて可愛いらしい印象を受けます。
「妹よりも恋人になりたい」
ごく当たり前の心情の移り変わりもさることながら、それを具体化するためのやや控え目だけどストレートな行動力と、したたかなバイタリティ、そして何よりも恋人として知人に紹介されたときのこぼれるような笑顔が、この年頃の女の子の表現としてとてもよく表れていたと思います。
この作品のキャラで一番の年少であり、主人公にとっては明日香の頭をポンポンと撫でている時が一番無意識に心が和んでいる時なのかもしれません…。
…【うーん、お持ち帰りしたい…(-_-;)】
それにしても、主人公の教師としての葛藤と恋人としての鬼畜(^^;)ぶりのギャップは笑わして貰いました。
定番ボイス
CVは「MIENO」さん。
「三重野亜未」さんだと思いますが…芸名変えられたんですね。
戯画作品ではお約束の声優さんです。
最初は妹キャラはミスマッチかと思ってましたが、こういう明日香のようなひたむきさを併せ持っているキャラは、逆にこういう声の方が確かに合っていると感じます。
「てんちょ」「せんせ」「せんちょ」のラブリーボイスも素敵♪
◆涼波 かすり◆
髪の色は、ブラック。
髪の型は、ショート。
瞳の色は、ブラウン。
ファミーユのマルチプレーヤー
かすりも前のファミーユ時代からのスタッフで、実家に帰っていたのを主人公が迎えに行き復帰します。
恵麻が復帰するまではキッチンの全てを、恵麻が復帰した後はキッチン、フロア、ショーケースの全てで縦横無尽に活躍します。
恵麻を尊敬していて、何とかその技術を身につけたいと奮闘する日々。
ですが、天才肌の恵麻は人に物を教えるのが致命的に下手で…。
No.2が望んだもの
かすりには、実家の和菓子屋をしきる頭のあがらない姉がいて、修行先には永遠に追いつけないと思える恵麻がいて、必然的にNo.2にならざるを得ない立場にいます。
飄々として、軽いノリでそれを気にする風でもないように振舞いますが、いい関係になりかけた主人公が未だ里伽子の影を引き摺っていると知り、恋でもNo.2に甘んじてしまう危惧に囚われたとき、心の奥底にある真実の発露が始まります。
「No.2が望んだもの」
それはNo.1の座ではなく、かと言ってNo.2を続ける事でもなく、まして逃げることでもなく…。
ただ、オンリーワンでいたかった…ということなのでしょうね。
このシナリオは一番地味な印象ですが、題材がリアル世界の至るところで存在する物語であり、一番現実感を感じたルートでした。
それ故に地味に感じるのでしょうね。
それにしても、ケーキ対決シーンのBGMが「Venus Games」(V.G.NEO)だったのは個人的にはツボでした。
気孔弾のCGまで出てくるとは思いませんでしたが^^;
…【これは何気に次回作が『V.G.NEO2』である事を仄めかしているのだろうか…(-_-;)】
飄々ボイス
CVは「神月あおい」さん。
この方も初めての方です。
軽いノリの飄々とした口調がキャラに合っていて良い感じです。
時折見せる諦めた感じのやや投げやりな演技も中々ですね。
◆杉澤 恵麻◆
髪の色は、グレー。
髪の型は、ロング。
瞳の色は、グレー。
ファミーユの自然派パティシェ
恵麻は前のファミーユの立上げメンバーの一人で、店長&パティシェを務めていました。
亡き夫であり、主人公の兄でもある「一人」が遺してくれたファミーユを盛り立てて頑張る毎日でしたが、半年前のある日放火魔により店が消失してしまい、精神のバランスが崩れてしまいます。
以来、事実上抜け殻となってしまった義姉を救うべく、主人公はブリックモールでファミーユを再興しようとしますが…。
最低にして至高の初恋
恵麻シナリオは里伽子と二律背反になっていて、この作品唯一の選択肢によってそれぞれに分岐します。
恵麻も里伽子も前のファミーユの立上げメンバーであり、他のメンバーより主人公を巡る設定が複雑になっていて、いよいよこの作品全体を通してのヤマ場に近づいてきた事がヒシヒシと伝わってきます。
ファミーユの由来、主人公の兄の肖像、恵麻の本音と建前…。
この作品の根幹を成す物語であり、家族色が色濃く出てかなりドロドロした印象を受けますが、この部分を避けずに真正面から捉えたからこそ、他の恋愛色が濃い各キャラのシナリオが映えるのだと思います。
個人的には、恵麻が「一人」のプロポーズを受けるくだりのシーンは心情的に納得しかねるところもあり、何かジグソーパズルが1ピースだけ埋まらないで終わってしまったような部分もありますが、それでも全体的な心理描写は秀逸でフィナーレ直前としては充分過ぎるデキですね。
何気に、次の里伽子シナリオの予告編的な側面もあり、上手い構成だなと思います。
最低(エゴの塊)にして至高(純粋)な初恋。
その向かうところは果たして…。
それにしても恵麻の弟の溺愛ぶりは、第三者としては面白い見世物ですが、当事者だったら「たまらんな〜」という感じですねぇ(^_^;)
でも物語を知ってしまった後は、そうせざるを得ない心情というのも垣間見えてやや切なさも感じます。
10年後にもやっていたら、只の馬鹿ですが^^;
ブラコンボイス
CVは「Yuki-Rin」さん。
仰々しいまでに一節一節をはっきり区切る物言いと、何気に若さを強調する演技が聴いてて哀れ…もとい、上手いです。
…【といっても、恵麻は23歳の設定なのだが…(-_-;)】
うーん、はまり役ですね(笑)。
◆夏海 里伽子◆
髪の色は、茶ネズミ。
髪の型は、セミロング。
瞳の色は、プラム。
在野のファミーユの元チーフ
里伽子も前のファミーユの立上げメンバーの一人で、フロアチーフを務めていました。
ですが、復活したファミーユでは現職に復帰せず、あたかも影の参謀的な役割を果たします。
前のファミーユが火事で焼失した後、それまで良い雰囲気になりかけていた主人公を振り、そのくせ未練タラタラの主人公の前から去るでもなく、中途半端な関係を維持し続けますが…。
情けないほど純粋
恵麻シナリオとの二律背反のもう片方にして、最終シナリオです。
過去の家族を取るか未来の家族を取るか。
家族という軸を中心にした、選択しがたい二律背反。
これは同時に、主人公が自立出来るか否かという、困難な命題を突き付けられているのと同義でもあります。
ですので主人公は苦しみます。
情けなく悩みます。
無様に逃げようとします。
でもこの解答を出さなければ決して前には進めない。
…そして出した答えは…。
このシナリオは、里伽子という媒体を通した主人公の自立の物語だと思います。
勿論、里伽子自身も充分魅力的で切ないシーンも満載なのですが、でもその切なさはすべて主人公に跳ね返る設定になっていて、泥臭くのた打ち回る主人公の情けなさが今度は里伽子に投影され、更にそれが主人公に…。
という感じで、どんどん痛くなるキャッチボールをしているかのようです。
そして一番最後に沢山釘が刺さっているボールをちゃんと受け止められるかどうか。
普通のボールに戻すことが出来るかどうか。
キャッチボールを終わらせることが出来るかどうか。
すべての耳目が集中するクライマックスを迎える頃には、主人公の代わりに自分がディスプレィの中にいる錯覚を起こす程、感情移入していました。
未練タラタラはみっともないよなぁ…仁。
一言一言に気を使わされるのは勘弁して欲しいよなぁ…仁。
突飛な行動に振り回されるのも辛いよなぁ…仁。
でも、好きなものはしょうがないよなぁ…仁。
たとえ泥臭くても、情けなくても、プライド潰しても、欲しいものは欲しいよなぁ…(しみじみ)。
里伽子はきっと待っていたのだと思います。
「しょうがないなぁ、仁は」
と軽く笑いながら、仁が自分の場所まで成長してくれるのを。
そしていつか
「しょうがないなぁ、里伽子は」
と言って貰えるその日が来る事を。
…【あー、みっともなく久し振りに泣いたなー(^_^;)】
ハスキーボイス
CVは「浅野麻理亜」さん。
やや掠れた声が、素っ気無くて実は繊細な里伽子のイメージにピッタリですね。
「憎いよぉっ!」の台詞が暫く耳に残っていそうです(^_^;)
これもはまり役でした。
<総評>
一言でいうと「へタレ主人公成長記」という感じです。
ヘタレ〜な主人公が、沢山の魅力的なヒロイン達に助けられ一人前に成長していく物語…というのが最終的な感想です。
シナリオは、ほんの一部分だけ不満を感じるところはありますが、それを補って余りあるくらい骨格も伏線も描写も見事な内容です。
エロは、シナリオ重視純愛系にしては内容も濃く、律儀さやこだわりも感じられます。
原画・CG・音楽もレベルが高く、音声のキャスティングも中々良いです。
システムの充実振りも目を見張るものがあり、それを土台にした演出面も見事です。
欠点らしい欠点は見当たりませんね。
この作品は、シナリオ重視の純愛系が好きな方に強力にお薦めします。
前作のショコラを未プレイでも、話が独立しているので問題ありません。
現実的にありそうな暖かくて切ない恋愛物語、たまにはいかがでしょうか。
力が入っている作品と力が入っていない作品の落差が激しいメーカー「戯画」。
これからも力が入っている作品だけ買わせていただきます^^;
<お気に入りのキャラ> |
由飛 | 玲愛 | 明日香 | かすり | 恵麻 | 里伽子 | ||
シナリオ | 10 | 9 | 9 | 9 | 11 | 12 | ||
性格 | 8 | 10 | 9 | 8 | 8 | 10 | ||
音声 | 8 | 9 | 9 | 8 | 9 | 9 | ||
萌え | 9 | 10 | 9 | 7 | 6 | 8 | ||
CUP | D | B | E | B | E | C | ||
えっちぃ | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | ||
合計 | 51 | 52 | 53 | 46 | 51 | 54 | ||
と言う事で、シナリオでは『里伽子』、萌えでは『玲愛』、総合で『里伽子』です。 |
<10点満点での総合評価> |
||
シナリオ | 10 | 現実感覚の恋愛物語 |
原画 | 9 | 一般受けしそう |
CG | 9 | レベル高い |
キャラ | 10 | 魅力的なヒロイン達 |
音声 | 9 | 好キャスティング |
音楽 | 9 | ピアノ基調 |
システム | 9 | 惜しい… |
演出 | 9 | 好システムの裏付け |
エロ | 7 | 純愛系としては濃い |
ボリューム | 10 | 総プレイ時間18時間 |
合計 | 91 | 総プレイ時間24時間 |
と、言う事で『9点』とします。 |
最後に一言:「キュリオ3号店はなんで昼の制服じゃないんだろ…(^_^;)」