人工少女2    (たろんなーどさんのレビュー)   評価: 6.5 
▼ タイトル 人工少女2 amazon associates
▼ ブランド イリュージョン
▼ ジャンル 3D美少女くすぐり系ソフト
▼ 対応OS Win98/Me/2000/XP
▼ メディア DVD-ROM
▼ 定価 税込\9,240(税抜\8,800)
▼ 発売日 2004/11/26
▼ 購入   人工少女2 / オリジナル特典 Getchu.com
【 CG観賞モード 】  なし(CG自体ありません)
【 シーン観賞モード 】  あり
【 BGM観賞モード 】  なし(BGM自体ありません)
【 メッセージスキップ 】  なし(テキスト自体ありません)
【 メッセージ履歴機能 】  なし(テキスト自体ありません)
【 選択肢リターン機能 】  なし
【 オートモード 】  なし
【 ヒント機能 】  なし
【 セーブ数 】  80個(8キャラ×各10セーブスロット)
【 エンディング数 】  なし
【 ディスクレス起動 】  不可


<あ・ら・す・じ>
 あらすじなんて有りません……。
 というか、ゲーム内にテキスト自体ありませんし。
 何故か無人島に主人公とヒロインの二人がいて、ひたすらHするだけです。


<キャラクター紹介>
ヒロイン(リネーム可)
 何故か主人公と無人島にいる。
 性格や容姿は血液型などによって設定可能。

主人公(リネーム可)
 何故か無人島にいる。
 ……すいません、これ以上説明のしようが無いです^^;


<音声>
 女性のみフルボイス。キャストは非公開。
 実際のところ、登場人物は主人公とヒロイン1名のみですが、ヒロインは血液型によって性格が変わり、性格によってボイスが変わりますので、実質的に声優さんは4名参加されております。
 また、主人公も一部「おーい」という声だけボイスが入ってます^^;

 演技のほうは基本的にHシーンメインとなりますが、文句もなく、見事に演技されているかと思います。
 ただし、システム上、喘ぎ声が繰り返し&ランダムになりますので、台詞のつながり方が妙なときはありますね。
 同じ台詞を2度繰り返したりしますので…。

 また、名前呼びシステムのようなものあり、代表的な日本人名や特定の名前(イリュージョンの旧作の主人公名)などではニックネーム的なものを呼んでくれます。
 たとえば「かずや」や「かずひろ」等だったら「かずちゃん」「かず君」など(血液型によって呼び方は変わります)、確認しただけでも20種類近く呼び名が(カズ、トモ、ヒロなど)ありますので、本名プレイ派のヒトにはある意味朗報かもしれません。
 なお、登録されている以外の名前だと、「ご主人様」になったりします^^;


<音楽>
 音楽はありません。ちょっと寂しいですね。
 ただし、無人島内それぞれの場面で波の音や虫の声、雨音などの効果音は比較的豊富にあります。


<システム周り>(ver.1.00)
 修正ファイルがあります。
 一部環境では強制終了することがあるそうです。
 私の環境ではありませんでしたが、取り敢えずあてておいた方が良いかと思います。
 また、クリスマス仕様のサンタコスなどの追加衣装がDL出来るようになっています。

 ゲーム内容ですが、フルポリゴンで表現された無人島内で、ヒロインとひたすら歩き回ります。
 どこでも好きな場所でヒロインを抱き寄せHシーンに突入。
 ひたすらその繰り返しです。
 それ以外の要素はありません。また、テキストなどは表示されません。
 エンディング等もなく、ひたすらHする以外の目的もありませんが、一応ヒロインが淫乱になっていくような台詞描写、展開はあります。
 ヒロインとのHを重ねることにより、体位のバリエーションが増えたり、フェラが追加されたり、台詞が変更されていきます。
 ゲームというよりは着せ替え可能なポリゴン女性とのHシーンシミュレーターといった風情でしょうか?
 ゲームの目的としては、Hシーンを保存して鑑賞するくらいしかないですね。

 Hシーンはクリッカブル形式に近いですが、詳しくはこちらは<Hシーン>の項で書かせていただきます。


<CG>
 原画は非公開?
 と言うよりは全面リアルタイムポリゴンのみで、CGや1枚絵などはありません。
 ポリゴンとしては比較的オーソドックスな絵柄で、割合多くの人に馴染み易い絵柄であるかと思います。
 背景などもポリゴンで丁寧に作られていますが、カメラ視点によっては背景パーツのかけらがゴミのように残ってしまう場面もあるのが残念な点。
 また、シーンによっては腕が胸にめり込んだりしているようなときもあり、そういった面で、処理に一部甘さはありました。
 ただ、リアルタイムポリゴンとしては輪郭や身体のラインはきれいですし、出来が良いのではないかと思います。


<Hシーン>
 基本的にはクリッカブル形式に近いシステムです。
 各部位を左クリックすることでつかみ、ドラッグしたまま動かすことでそこを弄るというシステム。
 挿入時は同じく左クリックすることで1回ピストンするというような設定になっています。
 Z、Xボタンがそれぞれ左右クリックに対応しており、同時操作が可能。
 つまり、ピストンしながら胸を愛撫する場合、マウスで胸をクリックしドラッグしたまま動かし、それをしながらZボタンを適度な間隔で押していくという感じ。
 愛撫のスピードや強度はマウスを動かす速度で強弱をつけられ、ピストンも押す間隔によって強弱をつけるシステムになっています。
 視点変更に方向キーやテンキーも使いますので、両手すべてをフル活用する必要があり、なかなかに忙しいHシーンです。
 一応、ドロップしなくてもクリックすれば自動で愛撫等してくれる「オートモード」もついていますが、当然ながらと動かす強度やスピードは一定ですので、いまいち使い勝手は良いようには感じませんでした。

 両手をフル活用して操作する為、プレイ時の実用性はほぼない(^^;)ですが、これを保存して「リプレイ」モードで鑑賞する際は視点変更以外はオートな為、ポリゴンヒロインがOKならば、実用性もあると言えるでしょう^^;
 胸やフェラの動きは、この手のリアルタイムポリゴンモノではトップクラスだと思います。
 尺は基本的に9分間で固定ですが、満足のいくシーンが作れたならば途中で終了することも可能。
 9分経つと自動終了しますが、それまでに頑張れば5回以上イかせるコトも可能です。
 プレイ時はAVを撮影するような感覚でプレイした方がいいかもしれません。

 ヒロインと同時にイク為には、主人公のピストン運動を制御しつつ、ヒロインの愛撫を続けるというアクロバティックな操作を要求されますので、視点変更も最低限にとどめ、シーンの見栄えを良くすることに集中したほうが良いかと思います。
 そして、後ほど自分の作成したシーンを鑑賞する、とそういう楽しみ方をするシーンですね。

 シチュエーション自体は基本的に合意ノーマルHオンリー。
 体位が正常位、立ちバック、騎乗位となり、プラスフェラやオナニーシーンとなります。
 ただし、騎乗位、フェラ、オナニーはある程度ヒロインがHの経験を積まないと発生しないようです。
 あとは背景が違ったり、Hを繰り返すうちにヒロインの行動が変わったりする程度です。

 ただ、少し気になったのは、愛撫時は主人公が映らず、ヒロインのみになっていること。
 なまじっかポリゴンと動きが良く出来ているだけに、ヒロインの胸が勝手に動いているようにも見えてちょっと怖いかも^^;
 挿入してからも主人公は挿入のピストン運動以外ありませんので、触ってないのに胸や秘部を愛撫しているように見えます。
 主人公、念動力の使い手ですか^^;?

 個人的にポリゴンの動き、反応などはこの手の3Dモノでもいい出来ですし、卑語やフェラシーンの音声など、声優さんもかなり頑張っています。
 そういう意味を含めて、リアルタイムポリゴンHとしてはいい出来だと思います。
 しかし、体位のバリエーションと男性側の動きは少し寂しい感じですので、その辺りが次回作以降(あるならば)の課題なのではないでしょうか。
 何気に中で射精した後、効果音(水音)がハードになるなど、細かいところは良いと思います。

 しかし、このゲームでHシーンを何個も保存しているとロコツに自分の性癖が露呈しますね^^;
 これでもっとバリエーションがあればより露呈するんでしょうね〜。
 ある意味危険というか、他のヒトには見せられないゲームになりそうです^^;
 エロゲープレイを他人に見せるというシチュエーション自体あまりありえませんが…。

 ただ、個人的にはHシーンの視点変更も保存できれば良かったかなという感じもします。
 AV作成Hシーン撮影シミュレーターのようなノリだとより実用度も高まるのではないかと思います。


<感想>
 あ〜、書くことないですね^^;
 Hシーン以外は本当に何もないゲームですので、<Hシーン>の項に書いたことがほぼ全てです。
 シナリオ、テキストも一切なく、なぜ主人公はヒロインと無人島で二人暮ししているのか…、脱出しなくていいのか…、は触れられてません。
 無人島なのに何故学校や廃線、駅に遺跡に温泉など何でもあるのか。
 あ、いや、ゲーム的にはHシーンのバリエーションとシチュエーションを作る為でしょうけど^^;

 ヒロインの服も下着や水着、和服風に、制服、裸エプロンなど、割合バリエーションがありますので、他ゲームのヒロインを再現したりという楽しみは出来ます。
 なお、ヒロインの設定は「目の形」「目の位置」「目の色」「眉」「顔オプション(口紅/ほくろ)」「胸のサイズ」「乳首の色/大きさ」「髪型(前、もみ上げ、後ろ)」「髪の色」「肌の色」「血液型(性格)」がそれぞれ何種類かありその中から選ぶ仕様になっています。
 ただ、個人的には服のパーツは十分ですが、顔や身体のパーツの種類が少し少ないかな、と思いました。
 たとえば目は普通、細め、垂れの3種類に高さが3種類という程度ですが、大きさ3種類(大きめ、普通、細め)、目つき3種類(垂れ、普通、吊り)など増やしていただければなお良かったかな、とは思います。
 髪や目、鼻、や口など顔のパーツを増やすことが出来れば、より思い入れのあるバリエーションを増やすことが出来ると思いますし。

 なぜか胸のサイズはかなりフレキシブルに設定でき、ほとんど無い胸から、「バ○ェラー」クラスの巨乳まで作ることは出来ますが^^;
 また、性格(=口調)も血液型で4種類ですが、もう少し多いと良かったのかな、と思います。
 Hシーンのシチュエーションでものべましたが、そういった部分でのボリューム不足は感じました。

 他に残念な点はこれに対して主人公の服装を選べない点です。
 短パン+シャツか、裸か、輪郭のみか表示しないの種類しかないのは残念。
 せっかくヒロインにメイド服やセーラー着せても、主人公が短パン+シャツではどうにもつりあわないというか、正直ちょっとヘンだと思います。
 かといって、裸や輪郭のみ、非表示もちょっとおかしな感じですし…。

 しかし、リアルタイムポリゴンHを見られ、なおかつ遊べるゲームに仕上げたという意味では、このゲームは素直に賞賛に値する出来だと思います。
 上で述べたようなバリエーションの少なさを、追加ディスクやダウンロードサービスなどで補うことが出来れば、可能性は十分に広がるのではないでしょうか?
 また、こういったシミュレーター形式でのエロゲーの新しい方向性になるかもしれない、そんな一面を見せ付けて頂いたと思います。
 すくなくとも、「技術を使ってこうしたい」そういう気持ちは伝わってきましたし、私としてはこの方向性で突き進んでいただければ、応援していきたいと思います。
 すくなくとも、ポリゴンをただムービーに使うよりは、こうして自由に視点変更できないとポリゴンの意味は無いと思いますし…。
 そういう意味で、プレイヤーにある程度のフリーハンドを与え、テキストAVGの受動性を脱却している為、ある程度やりこみ要素もあり、好奇心とエロ心の赴くままに色々弄ってみると新しい発見があったりして面白い作品でした。

 そんなわけで、ポリゴンHシーンがOKで、シナリオが無くても妄想力でカバー出来る方にはお勧めかと思います。
 ただ、バリエーション自体は少し少なめですし、作業的になってしまう部分もありますので、そういった単純作業的なものが苦手な人はあまり楽しめないでしょう。
 上で書いたようにAV作成シミュレーションという感じで楽しめますので、そういったノリでヒロインやHシーンを自作するというコンセプトが気になればやってみても面白いかもしれません。


<10点満点での総合評価>
 6.5点
 私は6.5点をつけましたけど、コンセプト自体、すごく面白いと思いますし、ツボに入れば良作だと思います。
 ポリゴンHにたいする意欲作ですし、ポリゴンがOkな人ならばもっと得点は高くなるでしょう。
 ただ、もう少しバリエーションがあれば良かったですけど…。
 追加DLサービスなどが充実すれば良作と言える……かも?


お気に入りのキャラ:ヒロイン……いや、他にいないですし、登場人物自体。









  最果てのイマ     (GPさんのレビュー)  評価: 8 
▼ タイトル 最果てのイマ 最果てのイマ
▼ ブランド ザウス【純米】
▼ ジャンル ジュヴナイルアドベンチャー
▼ 対応OS Win98/Me/2000/XP
▼ メディア CD-ROM
▼ 定価 税込\9,240(税抜\8,800)
▼ 発売日 2005/07/29
▼ 購入   最果てのイマ / オリジナル特典 Getchu.com
【 CG観賞モード 】  あり
【 シーン観賞モード 】  あり(全イベントあり)
【 BGM観賞モード 】  あり
【 メッセージスキップ 】  あり(未読・既読判別あり応)
【 メッセージ履歴機能 】  あり
【 選択肢リターン機能 】  あり
【 オートモード 】  あり
【 ヒント機能 】  なし
【 セーブ数 】  50個+4(オート)個
【 エンディング数 】  10個(シナリオがループするので最終的なエンディングは1個)
【メディアレス起動】  不可

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<ストーリー紹介>
 幼い頃、とある施設で育った主人公「貴宮忍」には、友達と呼べるものはいなかった。
 そんな忍が、姉の「千鳥」と共に施設を出て最初にしたことは、友達を作ること。
 近所に住むボーイッシュな少女「紅緒あずさ」。
 同じ飼育委員となった、寡黙であり辛辣でもある「本堂沙也加」。
 地域でも有名な一族に属している兄妹「塚本斎」と「葉子」。
 似た者同士といった感じで惹かれ合った「樋口章二」。
 そして、偶然の出会いから近付いた「伊月笛子」。
 彼らと忍、合わせて7人。

 共に友人に恵まれなかった面々が、知り合い、仲間となり、早数年。
 物語は、黄昏に彩られた静かな街で幕を開けた。
 7人の間で繰り広げられる理解と共感、反発と衝突。
 そして、思春期の淡い恋愛感情。永遠に続く友情。
 そんなまどろみのような幸せの中に、ずっといられる―――はずだった。
 ―――『敵』がその姿を現すまでは。
 7人の輪を掻き乱す『敵』。
 忍は、それを許さない。仲間を傷つけるものを許さない。心を傷つけるモノを許したくない。
 それに気付いたとき、忍たちを取り巻く世界が変わる。
 そこにあるべき新たな世界……聖域……に辿り着く。
 これは、そんな。心を描く物語。心の果てにあるものを描く、物語―――


<キャラクター>
紅緒 あずさ(べにお あずさ)
 子供の頃、忍に命を救われたことがあり、それ以来大好きでいつも周囲をうろちょろしている。
 第一の子分のつもりで忠義に厚い(かもしれない)。
 ずっと親しくしていたため様々な面で多大な影響を受けているが、最近ちょっと反抗期気味。

本堂 沙也加(ほんどう さやか)
 何でもそつなくこなす秀才タイプだが、好んで自己主張はしない。
 そのため7人組の中で好んでフォロワー的位置に立とうとする、言わばお姉さん的立場にいる。
 ただ、一見しておとなしいがその思考は苛烈で、味方以外はすべて敵。
 強い破壊衝動を胸の奥に秘めており、実のところその精神力もちゃんとある。

塚本 葉子(つかもと ようこ)
 塚本斎(後述)の妹。天然系のマイペース。万事に動じない。
 ものすごく頭が良いがのんびり屋で、いつもとろんとした瞳をしていて眠そう。
 頭を使っている時だけきりっとしているタイプが、大抵はろくなことを考えていない。
 自分の大切なものだけ大切にして、あとはさくっと切り捨てるタイプ。
 あまり笑わないが、グループの中では時折自然な笑顔を見せることも。

伊月 笛子(いづき ふえこ)
 忍たちとは別の進学校に通う、生真面目&強気な少女。
 ある種の潔癖性で、他人のミスを指摘せずにはいられない。
 その大義名分としての権力を欲する傾向がある。
 そのくせ寂しがり屋で、1人になることを好まない。
 また、精神的に弱く、自己犠牲的なところがある。

イマ
 一切が謎の少女。この物語における最大のキーパーソン。7人の輪にいるようでいない。いないようでいる。
 すべてを知っているようで何も知らず、子供のように笑うかと思えば無機質な目をすることもある。
 失われた輪にからむ、彼女の存在は、果たして……?

塚本 斎(つかもと いつき)
 異常なまでに寡黙な、葉子の兄。忍と葉子、あとはほんの数人だけが、彼の言葉を理解する。
 ただ、幼少期は必要に応じてそれなりに話していた。
 ストイックな性格で、義を重んじる。
 老成しており諦めの早い感はあるが、仲間内では子供っぽい一面を見せることも。

樋口 章二(ひぐち しょうじ)
 忍の親友。口は悪いが、性格は単純で直情的。街でも一目置かれる存在で、情報にも敏い。
 酒、煙草あたりは一通りだが、ポリシー持ってドラッグには手を出さない。
 もともと友人が少なく、家族とは疎遠に育つ。そのため、心の中ではこの7人の輪を神聖視している。
 とりわけ忍に対しては強い信頼と友情を置いているが、全員のことを大切に思っている。
 この輪を壊そうとする者がいた場合、全力を持って排除する意志と力を持っている。

貴宮 忍(あてみや しのぶ)
 本編主人公。名前変更不可。
 両親がいないため、施設で育てられた少年。
 物心つく以前の記憶がほとんどないが、そのことはまったく気にしていない。
 無邪気な少年のように振る舞うこともあれば、円熟味を持った言動をしたりと、不思議なところがある。
 姉の千鳥と2人で暮らしているが、彼女がずぼらなため家事はほとんど自分でやっている。


このホームページはザウス【純米】より一部文章を抜粋しています。
素材の著作権はザウス【純米】に帰属します。



概要
 ザウス【純米】約1年半ぶりの作品。
 未来に希望を持てない主人公貴宮(あてみや)忍が、「聖域」と呼ばれる場所に集う6人の仲間との交流を通して、人間の意思や存在意義の核心に迫っていく姿を描いたADV。


<ビジュアル>
 原画はザウスではお馴染みのあらきまきさん。
 繊細なタッチとやや抑えた感じの淡い塗りは本作にあっていると思います。
 ただ、これは個人的見解によるところが大きいので、購入を検討をされている方はOHPで確認することをお薦めします。


<サウンド>
 20+歌2曲の全22曲。
 ピアノを多用した静かで落ち着きのある曲が多いです。
 エロゲーとして一風変わっているのが、エリック・サティ(18世紀〜19世紀初頭のフランスの作曲家)の作品を4曲使っている点。
 「ジム・ノペティ」や「ジュ・トゥ・ヴ」など、おそらく一度は聴いたことあるだろう曲を使い、作品の雰囲気にもなかなかマッチしていたので、いい選択だとは思います。
 それにしても、エロゲーでこういう既存の曲を使うのは珍しいですね^^;
 ちなみに個人的なお気に入りはEDテーマの「あの頃の僕等に」。
 歌詞もメロディも伴奏ももの凄くシンプルなのですが、とんでもなく複雑で壮大な話(詳しくは後述)の後には逆にこのシンプルさが妙に心に染み入ります。

 音声はなし。
 確かにフルボイスならそれはそれで良かったとも思います。
 しかし、プレー時間30時間オーバー、声無しだからできる謎かけ、さらにこの独特のテキストの妙味を生かすなどのことを考えると、音声なしで正解だったではにでしょうか。
 1年後にフルボイス版なんて発売しなければの話ですけど^^;


<内容>(ネタバレ多数、見たい人は範囲選択、見たくない人はスルー)
 本作はゲーム性があるわけでもなく、特別エロいわけでもなく、とにかくストーリー一本で勝負する作品です。
 こういった作品はサウンドやビジュアルやシステム、演出面といったものも評価の対象ですが、本作の場合それらは全て高レベルです
 しかし、やはり評価の分かれ目は田中ロミオさんのテキストとシナリオに集中します。

 本作の話を大きく分けると、
 @4人のヒロイン個別ルート(序盤でどのルートに入るか決まり、クリアすると冒頭部分にループする)
      ↓
 Aヒロイン個別ルート2回目(@に加え、いくつか謎を明かすシーンや違った展開が追加される)
      ↓
 B謎が明かされる戦争編(ここから一本道)
 の3つに分かれます。

 まず@ですがこれは単純に面白いと思います。
 主人公貴宮忍、元気な幼馴染の紅緒あずさ、クールな本堂沙也加、天然の塚本葉子、委員長タイプの伊月笛子、友達思いの樋口章二、寡黙な塚本斎(いつき)と言う個性的な7人の仲間達が「聖域」と呼ばれる廃工場での日常的なやり取りは素晴らしいです。
 会話やイベントは癖があるけどコミカルだし、あずさ、沙也加、葉子、笛子の四人のヒロインは萌えも個性もあってみな魅力的です。
 そしてなんといってもテキストが凄いです。
 例えばあずさルートの一場面、

 ほのかな甘み。
 やわらかくほぐれる繊維。
 夢中になる。
 ふかした芋は人を生のままにするのだろうか。
 古代の記憶が呼び覚まされるのかもしれない。

 一見凄そうなことをやっているみたいですが、これ、ただ単に商店街でふかし芋食っているだけです^^;
 普通なら「ふかし芋を食った、旨かった」程度で済まされる出来事もこの作品だとこうも感慨深いものになります。
 「いくらなんでも大袈裟すぎだろ」と思いつつもついつい引き込まれてしまう、そんな日常の何気ない光景を独特な着眼点や語彙で雰囲気のあるものに仕上げる田中ロミオさんの文章力は脱帽です。

 次にAですが、これは基本的な内容は@と一緒で、ただ所々次の戦争編につながる視点が追加され、さらにどのルートも後半はがらりと展開が変わります。
 そして、この辺から徐々に複雑に、難解になっていきます。
 時の流れが、急に次の日になったり過去に飛んだりとバラバラになる上に、主人公含め、どのキャラクターも妙に思わせぶりな台詞を言ったり、ろくに説明がないまま訳の分からない新キャラが出てきたりで、プレーヤーを混乱させることもしばしば…。
 こういったものは@でも見られましたが、Aではさらに拍車がかかります。
 恥ずかしながら、筆者はこのあたりから微妙に話についていけなかったり…。

 で、問題のB戦争編。
 これが相当な曲者でして、この戦争編をどう捉えるかで作品全体の評価ががらりと変わってきます。
 戦争編の内容は、公式サイトやマニュアルのストーリー紹介にも出てくる、忍たちの聖域を脅かす「敵」の正体が明らかになり、忍がこれと戦っていく姿を描いています。
 この「敵」というのがとんでもない奴でして、なんと人一人とか組織とかじゃなくて、なんと訳の分からない化け物みたいな奴なのです。
 若干のネタバレになりますが、実はこの戦争編は、これまでの青春ドラマではなくて、人類を崩壊させる存在に対して特殊な能力を駆使して戦う壮大なSFファンタジーなのです。
 ヒロインの個別ルートで忍が散々「僕たちに未来はない」とか言っていましたが、これは喩えとか、将来に対する不安とかじゃなくて、文字通り「人類滅亡で未来がない」ってことだったのです!
 …さすがに、この話の展開にはついていけないプレーヤーも多いでしょう。
 正直筆者もついていけませんでした。
 青春ドラマに少しSFやファンタジーの要素が絡むのかな、と思いきや、まさか世界崩壊云々が出てくるような壮大な話になるとはさすがに読めませんでした…。

 作品のコンセプトを根源から覆しちゃうようで悪いのですが、正直この戦争編って必要だったか、少々疑問に思います。
 せっかく今まで人間関係や人の心の機微を繊細に描いていたのに、最終的に人類滅亡だの世界崩壊だのと言った壮大な(大雑把な)話が出てくることによって、今までの繊細さや妙味がチャラになってしまうような気がします。
 「不安定な青年期の友情や愛情を描いた青春ドラマに(必要なら)少しSFやファンタジー要素を絡める」
 おそらく本作購入前の印象はこんな感じでしょうし、実際前半はこのとおりでしたが、いっそのことこれで最後まで突っ走った方が良かったのではないかなぁ…と個人的には思います。

 色々言いましたが、この戦争編、話の流れは決して悪くありません。
 南レイとかシャーリー磯下とかの戦争編で新しく出てくる人物はそれなりに魅力的ですし、何よりこれまでに張りまくっていた伏線をきっちり纏め上げたエンディングはやはり見事です。
 ゲーム起動時に出てくる最初の文章や、地の文(会話以外の文)を三人称の視点で書かれていたことにまで意味があったとはさすがに読めませんでした。
 まぁ、筆者はこういう「後半にやたらと壮大な展開(あるいは急にSFやファンタジー展開)になる」というのが(特にエロゲーだと)嫌いなので、特に色々言いましたが、別にこういうのが平気な方なら特別気にはならずにスムーズに戦争編の世界に入り込めると思います。

 ただし、そういう方なら無条件で戦争編が楽しめるかと言うと、必ずしもそうとも言えないのがこの作品が一筋縄ではいかないところでして…。
 この作品には実はもうひとつ非常に特徴的で評価の分かれそうな部分が(特に戦争編に)ありまして、それが「難解な専門用語や学術用語、さらには作品独自の難解な造語があまりにも多すぎる」点です。
 例えばユングの「集合的無意識」ってなんだかわかりますか?
 「レヴィ=ストロース」って聞いて「ああ、あの人ね(ちなみに人名です)」って思えますか?
 いずれも心理学や人類学、現代思想の範疇ですが、とにかくこの手の単語が戦争編ではオンパレード。
 この時点でかなりのプレーヤーが置いてきぼりを食らうことでしょう。
 筆者自身はたまたまこういった学問を多少かじったことがあるので「まだ」大丈夫でしたが、何とかプロトコルだの模倣子だのと物理学とかコンピューター用語になると根っからの文系人間である筆者にはお手上げ…。
 エロゲーやるのに「現代用語の基礎知識」使ったのなんて生まれて初めてです^^;
 まぁ、それにすら載ってない単語もいくつかありましたが…。

 本作以前にもこういった学術用語や複雑な造語を使った作品はあります。
 が、だからと言って本作はいくらなんでもやりすぎのような気がします。
 ただでさえ、世界観が独特すぎたり、時間の流れがバラバラだったりで分かり難い話なのに、それに加えて難しい用語のオンパレードでは、話の良さ云々の前に、そもそも「何が起こっているのか」を理解するレベルにすらたどり着けません。
 確かにあえて難しい言葉や世界観を構築して「知的なものに触れる楽しみ」というのはあります。
 「この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO」とか「Fate/stay night」等が良い例でしょう。
 ただし、それはあくまで二次的なものに留めるべきです。
 エロゲーの可能性を狭めてしまうので、あまり言いたくはないですが、これってエロゲーでしょう?
 もう少し噛み砕いた物言いにしないとついてきませんよ?
 「可愛い女の子のHな姿を見てドキドキする」ってのが第一の目的ですよね?
 同じザウス【純米】でも「Floraria」なんかはその辺が良くよくできていたんですがねぇ…。
 (でなければ別に18禁じゃなくてもいいじゃん、っていうことになるのでは?)

 どうしてもこういった単語を使いたいのならせめて、高校レベル程度に留めた方がいいと思います。
 レヴィ=ストロースなんて大学あたりで文化人類学をかじらないと出てきません。
 コンピューター用語にしたって、いくらPCゲームの話の中だって限度が…。
 まぁ、結局これも「お前(筆者)の頭が低スペックすぎるからだろう」と言われればそれまでなのですが…。
 もしこれらの単語が全部理解できるという博学でかつ読解力のあるプレーヤーなら本作は素晴らしい傑作になるでしょう。

 と、文句を言ってしまいましたが、結局最後までやったんですけどね^^;
 はやり引き込むシナリオ力、読みやすい(文章以外の)環境(システム・ヴィジュアル等)は流石の一言でした。


<エロ>
 誰が許しあるいは誰が眉をしかめるのか。
 用ならざる問題に思えた。
 忍は倫理に悩む。
 極度に高まった興奮は、瞑想と同義だ。
 平時には決して届かぬ結論に、今の忍は頼った。

 上記のように、ストーリー同様主人公とヒロインは、行為の最中も意味深な問答と思考のオンパレード
 おかげでプレーヤーの理性や知性はビンビンに刺激されるのに欲望や下半身への刺激はほぼ皆無、と言う稀有なHシーンです^^;
 確かに、このゲームらしいと言えばそうですが、Hシーンくらいわかりやすくてもバチは当たらんと思うのでが^^;

 まぁ、田中ロミオ作品でエロを期待している人は、かなり少ないでしょうけど^^;

 忍「○○のおまんこ(ちなみに本作、なぜか淫語は無修正)、スゴクいいよ…」
 ヒロイン「あ〜ん、忍のおちんちん気持ちいい…イクぅ…」
 こういうのじゃ駄目ですか、ザウスさん?


<10点満点での総合評価>
 8点
 正直本作はものすごく評価に困ります。
 「この独特な世界観と難解すぎるテキストにどれだけシンクロできるか(ついていけるか、理解できるか)」が評価の分かれ目になるでしょう。
 システムやグラフィックや音楽、演出などのストーリー以外の部分は高い水準をキープしているので、ここでは個人的に8点としますが、プレーヤーによっては10点満点というのもありでしょうし、逆に4点なんていうのもありだと思います。
 とにかく人によって、非常に賛否両論分かれる作品だと思います。

 あと2週目は必須です。
 1週だけでは話の流れ、全貌がつかみにくいので…。
 とになく長い作品です^^;


お気に入りのキャラ:子犬系幼馴染の紅緒あずさに萌え萌えです^^;
最後に一言:「ちなみに「ジュブナイル(Juvnile)」は英語で「少年少女」と言う意味です。」