あやめいろの夏    (たろんなーどさんのレビュー)   評価: 4 
▼ タイトル あやめいろの夏
▼ ブランド BiT
▼ ジャンル 伝奇ミステリーAVG
▼ 対応OS Win98/Me/2000/XP
▼ メディア CD-ROM
▼ 定価 税込\9,240(税抜\8,800)
▼ 発売日 2004/05/28
▼ 購入   あやめいろの夏 / オリジナル特典 Getchu.com
【 CG観賞モード 】  あり
【 シーン観賞モード 】  あり
【 BGM観賞モード 】  あり
【 メッセージスキップ 】  あり(未読・既読判別あり)
【 メッセージ履歴機能 】  あり(バックログでの音声再生あり)
【 選択肢リターン機能 】  なし
【 オートモード 】  なし
【 ヒント機能 】  なし
【 セーブ数 】  100個
【 エンディング数 】  6個(BADEND除く)


<あ・ら・す・じ>
 時代の流れから取り残されたかのような東北の地「山臥村」
 奥深い山々に囲まれた村には、今も太古の神々を祭る神事が存在する。
 主人公「山守恭司」(やまがみ きょうじ)は、村を平安の昔から守り続けてきた「山守一族」の末裔である。
 成人を迎え、正式に一族の58代目当主となった恭司が「山臥村」に帰郷する事となった日から運命の歯車は回り始める。
 懐かしい故郷で、幼なじみの少女達との再会。
 大人に変わりつつある彼女達との、陽だまりのような幸せの日々。
 そんなひとときの幸せを徐々に漆黒の闇が飲み込んでいく。
 日常は形を崩し始め、村に脈々と続く忌まわしい因習と狂気が主人公の周囲を包み始めていく。


<キャラクター紹介>
平山 規子(ひらやま のりこ)CV:榎津 まお
 主人公の親友の後輩、石沼江美の友人で、主人公のことは昔から知っていたようだが、主人公にとってはあまり印象に残っていない地味な後輩。
 現在では当時の印象とはことなり、大胆で魅力的な美少女である。

山瀬 奈美(やませ なみ)CV:萌木 唯
 主人公の元後輩で、当時は生徒会役員として一緒に仕事をしていた。
 当時から主人公のことが好きで、主人公が帰郷したことで、再び積極的にアプローチするようになる。

北川 郁(きたがわ いく)CV:楠 鈴音
 村で唯一の病院によく現れる病弱ではかなげな少女。
 主人公は病院の院長の紹介で家庭教師を引き受けるが、赤面症で主人公を避けるような態度をとる。

石沼 江美(いしぬま えみ)CV:西郷 明美
 主人公の親友、望の妹で主人公のことを呼び捨てにしている勝気な少女。
 元気が良く、良く近くの沢等で泳いでいることが多く、勉学は苦手。

山守 未来(やまがみ みく)CV:葉月 さくら
 主人公のいとこで、育ての親である叔父の娘。主人公にとっては妹のような存在。
 家事全敗が得意で、剣道も県大会で優勝するほどの腕を持つ。

北山 恭子(きたやま きょうこ)CV:彩世 ゆう
 主人公が実家の裏にある山中で出会う巫女。
 主人公のことを知っているようだが、主人公の前に出ることを避けている様子。

山守 恭司(やまがみ きょうじ)主人公・リネーム不可
 今年成人を迎え、山臥村で代々指導的な立場にあった山守家の当主になった青年。
 普段は都市圏で教育学部の学部生として一人暮らしをしているが、叔父の強い勧めで夏休みの間帰郷することになる。


このホームページはBiTより一部文章を抜粋しています。
素材の著作権はBiTに帰属します。



<音声>
 女性のみフルボイス。キャストは上記の通りです。
 演技のほうは問題ないと思います。
 声的にやや声質が細い方が多い気がしますが、まぁ、そういうキャラクターが多いですから、これはキャラにあっているということでしょう。
 特に違和感も無く、キャストにも合っていて問題はないかと。


<音楽>
 全10曲。うちボーカル曲は1曲。ED曲「あやめいろの夏」(Vo.樋口レン)
 曲数は少なめですが、ストーリー展開上、舞台は田舎の村の中で限定されている為、不足しているとは感じませんでした。
 場面に合っていると思いますし、綺麗にBGMしていたと思います。
 ただ、BGMとしてはオーソドックスすぎて、売りにはならないかな、という感じがしました。

 ボーカル曲もEDらしくスローテンポのバラード調。
 このゲームのEDは比較的バリエーションがありますが、それを考えればどのエンディングにも割りと合う、いい感じの曲だと思います。
 ただ、ボーカルはちょっと高音部が苦しそうでしたが、メロディラインは綺麗でした。


<システム周り>(ver.1.00)
 基本的にはオーソドックスなマップ移動型のノベルタイプAVG。
 ただし、イベント絵の表示されている間はノベルタイプの全画面テキスト表示ではなく、メッセージウィンドウ内にメッセージが表示されるオーソドックスなAVGスタイルの表示になります。
 詳しくは上記参照。
 オートモードが無い点を除けば必要なものは装備されています。
 動作も特に重いところなども無く、軽快と言えるでしょう。
 既読スキップ使用時に画面効果をキャンセルしてくれないのが唯一少し気になりましたが、まぁ、画面効果自体は別に設定でOFFに出来るのでそれほど問題ありませんでした。

 ゲーム内容自体は、ごく普通にマップ移動と選択肢によって好感度が上下し、それによって攻略キャラが変化するタイプのAVG。
 移動先にいるキャラがマップに表示されているので、難易度も低いかと思います。
 1キャラのみ他ヒロインとの好感度も少し必要でしたが、これも比較的分かりやすく、それ程攻略に苦戦することは無いでしょう。
 プレイ時間はスキップを使用せずに1プレイ5時間前後。
 共通パートをスキップして3時間前後というところでしょうか。

 システム周りで特記するほどの特徴はありませんが、マップ移動で、誰もいない移動先にも、比較的きちんとイベントが置いてあり、攻略で何周もする際、目当てのヒロインがいないときでも飽きさせないように…という作りは丁寧だと感じました。
 ストーリーとは関係ないところでも連続イベントがあったり、攻略しているキャラによって、そういった関係のないイベントも変化したりというあたりは、とても好感を持てました。


<CG>
 キャラクターデザインは山下白莉氏、原画は山下白莉、吉木正行、緒尾佐和、ところてんの各氏。
 絵柄自体は綺麗だといえ、比較的バランスも良く、デッサンの崩れなどもそれ程無く、悪くないと思いますが、原画家さんが複数いる為か、立ち絵とイベント絵で同じキャラでも受ける印象がかなり違った感じがします。
 また、イベント絵同士でも同じキャラとは思えない絵もあったりして、少し安定性にかけています。
 特に、キャラクターデザインは同じ方がされており、基本デザインが同じだけに、細部の違いが目立ちました。

 塗り、背景は問題なく丁寧でいい感じだと思います。
 ただ、塗りも出来自体は良いのですが、絵によって雰囲気が違い、ゲーム全体では統一されていないな…、という印象を受けました。


<Hシーン>
 まぁ、いつもどおりに一言で。
 Hシーンには期待しないで下さい、と^^;

 各キャラシーン数は1〜4と回数はそれなりですが、ペッティングやフェラだけだったりするシーンも有り、本番の無いキャラもあったりしますので、シチュ的には期待できません。
 声優さんの演技は悪くないですし、尺も標準程度にはあるだけに残念です。

 少し気になったのが効果音。
 Hシーンの効果音があるのいいと思いますが、なんかピストン運動のときの効果音が少し変な気が…。
 しかも、「ゆっくり動いた」って書いてあるときも速度は一定だったりして微妙に萎えます。
 正直、無いほうが良かったのでは…と思える出来でした。


<感想>
 初回限定同梱のDVDonDRIVEとは…。
 >PCゲームを手間のかかるインストールをしないで遊べちゃうと言うシステムです。
 >お手持ちのWindowsマシンのDVDドライブに入れて貰えれば、
 >そのまま『あやめいろの夏』が遊べます。是非、試してみてください。
 >『あやめいろの夏』では、初回ロットに限り同梱プレゼントしています。
 う〜ん、初回限定の付属品がインストしなくても作動するDVD版って…。
 なんか微妙な感じですが…。

 シナリオはあらすじの通り、基本的にはいわゆる伝奇モノで、田舎の村に伝わる因習や伝承を元に、主人公が巻き込まれてゆくという、この手の舞台設定ではきわめてオーソドックスなもの。
 結局、主人公以外はこの舞台となる村の住人なので、何も知らないのは主人公だけなんですが^^;

 シナリオに関しては今ひとつ評価できないところです。
 基本設定、および伝承と因習はオーソドックスながら、全てのシナリオで共通しており、きちんと全てのシナリオをそれに絡めて進展させている点は素直に評価できるところだとは思いますが、反面、場面場面の弱さが目立ちます。
 ひとつには、場面ごとに…特に主人公に顕著ですが、キャラクターの言動が一致していないことです。
 シナリオ展開もそうですが、キャラクター造形も細部においてはブレが出ており、設定や展開をきちんと抑えているのに、シナリオ場面ごとの接続が悪く、断続的な小イベントの積み重ねに見えてしまう点もマイナスです。
 当然ながら、そういった傾向によってキャラクター造形も捉えにくく、魅力的に描写されているとは言いがたいです。
 上で少し述べたように、シナリオ展開も細部では矛盾や齟齬が多少あり、違和感が残ってしまうのも残念なところです。

 また、序盤の展開が正直、手抜きレベルではないかと思えるくらい同じなのもどうかと…。
 未来と恭子以外は主人公が学園の先輩だった頃に一目惚れという展開しかないんですけど…。
 まぁ、理由無く惚れられるのはエロゲ主人公の特権ですが、4人も展開が一緒だと流石に少し飽きが来るというか、プレイしているコッチが呆れます。
 せめてなにか優しくされたとか、助けてもらったとか、そういうベタなイベントでもひとつくらいは入れて欲しかったところです。
 そういう感じですので、恋愛描写は今ひとつです。
 最初から好感度ほぼMAXなうえ、展開にも工夫が無いので無いに等しいと言えます。

 まぁ、上に関連して、主人公のキャラクターも魅力に欠けるというか、人間としてどうなのかな、という性格な気がします。
 ヒロイン相手に優しいところはそれなりにありますし、人間的に悪くないような描写もされていますが、道端で車にはねられた犬を見て「関係ないからとっとと飯を食いに行こう」とヒロインに言えるトコを始め、何気にイヤな性格なのもつらいところ。
 そのレベルでも酷いですが、某キャラクターのENDでは流石に引いてしまいます。
 自分の育った村が酷い状態になって、しかもその原因の一端は主人公サイドにあるのにも関わらず、ああいう態度は普通取れないと思いますけど…。
 自分の興味のあるもの以外には恐ろしく冷酷なキャラで裏表あり過ぎです。
 何気に鬼畜ゲームの主人公向きの性格のような気がするので、出演するゲームを間違ったとしか…。

 と、言うわけで、人間ドラマ的には魅力的ではないヒロイン、薄い恋愛描写、感情移入しにくい主人公と構成要素自体が、かなりダメダメな感じですし、実際展開も期待できません。

 反面、村の伝承、因習を設定としているシナリオの伝奇的部分は悪くありません。
 基本的な設定は抑えつつ、各キャラシナリオに展開と結末にはバリエーションがあり、設定に深みを与えていると思います。
 そういった方向性のさまざまな展開・結末を用意しているせいもあり、細部には確かに齟齬や矛盾も見られますが、伝承としてはこれはこれでありなのではないかな、という気がしました。
 ただ、どうしても上のような恋愛描写でぶつ切りになってしまう上、やや設定がお約束、ご都合主義的な部分もあり、良いと言い切ることが出来るほどではないのですが…。

 ただ、いくらそちらがきちんと設定されていても、登場する人物に魅力を欠いては、せっかくの設定も生かしきれていません。
 また、上で書いたように展開にバリエーションをつけている関係で、どちらかといえばキャラENDもハッピーエンドよりはへこむEND(後味の悪いEND)のほうが多い点も注意が必要です。

 また、このゲームの場合、私はテキストにも違和感を覚えました。
 基本的にこのゲームは1人称、つまり主人公視点で物語が進むため、台詞以外の部分は主人公の思考のような感じで表現されています。
 しかし、それにもかかわらず、3人称視点の小説のような言い回しが頻出する為に、かなり違和感が残ってしまいます。
 たとえば、主人公が「不敵に笑った」という描写があり、間違っているとはいえませんが、明らかに不自然です。
 文章の流れ、前後の文脈からこれはあくまで自分の行動をさしているのであって、「不敵に笑って見せた」などというほうが自然です。
 こういった、不自然な描写が頻出するので、残念ながらテキストに関しては今ひとつという印象を受けました。
 そのほとんどが主人公視点の物語に、他者視点の描写を入れている事によって発生していますので、この点は改善すべきです。
 誤字・誤変換はそれ程多くなく、悪くない感じだったんですけど…残念。

 絵柄のばらつきとテキストのイマイチさを気にしない方で、伝奇好きな方にはそれなりにプレイしてみる価値があるかもしれませんが、そうでなければ正直お勧めはしにくいです。
 特に、エロや恋愛描写、人物描写には期待できないのがつらいところです。


<10点満点での総合評価>
 4点
 微妙に地雷ゾーンの気がします。
 特にテキストには違和感が残りました。


お気に入りのキャラ:北山 恭子
最後に一言:「シナリオが良くても、テキストが駄目だとやっぱり駄目だと思います。
        まして、シナリオもイマイチだった場合には…。」









   らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜    (たろんなーどさんのレビュー)   評価: 7.5 
▼ タイトル らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜
▼ ブランド TerraLunar(テラルナ)
▼ ジャンル 青春群像恋愛ADV
▼ 対応OS Win98/Me/2000/XP
▼ メディア CD-ROM
▼ 定価 税込\9,240(税抜\8,800)
▼ 発売日 2004/06/25
▼ 購入   らくえん / オリジナル特典 Getchu.com
【 CG観賞モード 】  あり
【 シーン観賞モード 】  なし
【 BGM観賞モード 】  あり
【 メッセージスキップ 】  あり(未読・既読判別あり)
【 メッセージ履歴機能 】  あり(バックログでの音声再生あり)
【 選択肢リターン機能 】  なし
【 オートモード 】  あり
【 ヒント機能 】  なし
【 セーブ数 】  48個
【 エンディング数 】  5個(BADEND除く)


<あ・ら・す・じ>
 カノジョ不在18年目の冬。
 ちょっとだけ仲がよかった後輩の女の子に、彼氏がいるって知った。
 別に好きだったわけじゃない。
 なのに、なぜか胸の奥がもやもやしてる。
 そして、受験失敗。
 おめでとう、予備校合格(誰でも合格できる)。
 桜が咲いたことなんか一度もない僕の人生。
 それでもけっこう日々は楽し。
 あの日までは。あの電話がかかってくるまでは。
 あのとき、受話器をとらなければ。
 僕はフツーでのんきな日々を過ごせたんだろう 。


<キャラクター紹介>
杏(あん) CV:草柳順子
 主人公の生意気ではないほうの妹。
 何かと世話焼きで予備校通いのため上京した主人公の後を追って上京してくる。
 おとなしく、気が弱いが家庭的で兄に甘えてくるある意味で理想の妹?

亜季(あき) CV:金田まひる
 主人公の生意気なほうの妹。
 東京に出てきた主人公の部屋に転がり込んでくる。
 家事等は全然ダメだが、要領は良く、勉強しなくても成績が良いタイプ。

御守 みか(みかみ みか) CV:桜川未央
 主人公にとっては理想であり、目標でもある年上の女性。
 三宮出身で関西弁を操るが、のんびりとした性格であまり人の話を効かない。
 おっとりとしていてマイペース。主人公の事をオッチャンとよんでいる。

美柴 可憐(みしば かれん) CV:綾瀬まゆ
 主人公のバイト先の小柄な先輩。
 口が悪くて高飛車で怒りっぽい性格だが、仕事の面では有能で何でもこなす。
 ただし、私生活はややだらしなく、主人公をパシリに使うことも多い。

千倉 紗絵(ちくら さえ) CV:長崎みなみ
 文芸部所属図書委員兼任叫ばない詩人系少女。
 主人公の元後輩で今は予備校でのクラスメート。
 引っ込み思案でぼそぼそとした喋り方をする目立たない感じの眼鏡っ娘。


このホームページはTerraLunar(テラルナ)より一部文章を抜粋しています。
素材の著作権はTerraLunar(テラルナ)に帰属します。



<音声>
 女性フルボイス。キャストは上記の通り。
 演技的にもキャラクター的にも非常に合っていますし、良い感じではないかと。
 歯軋りやため息などの「声で無い」声まで熱演されてます。
 また、隣の部屋からの声はきちんと小さくなったり、エコーをかけたり、挙句には扇風機に向かっての発声まで、声周りも相当こだわっています。
 アクセントや演技も相当こだわっているのが見えて、声周りについては問題ありません。

 それ以外にもテキストでは「以下略」となっているトコロにもきちんと台詞を入れていたり、あえて台詞とテキストを変えてみたりと、細かいところで声周りの配慮がされています。
 まぁ、これらはこのチームの前作「しすたぁエンジェル」のときからありましたが、良い伝統ですね。

 ただ、あえていうなら、キャラの立った男性キャラが多く、なおかつ掛け合いも多かったので男性キャラにも声が欲しかった気もします。
 オートモードでこの掛け合いを聞いてみたいと思わせる熱演ぶりだけに、声の無いキャラがいるのは残念です。
 やはりエロ重視のゲームではなく、「笑い重視」のゲームには男性ボイスも欲しいところですね。
 亜季(金田まひるさん)のハイテンション早口ボイスや、みか(桜川未央さん)の鼻歌など、声優さんの演技力の限界に挑戦!という感じの演技指定と、それに答える声優さん。
 このゲームの笑いは、音声で持っているところも多々あると思います。
 キャスト的にもベテラン&実力派ぞろいなだけあって、プロの凄みを感じるまでのボイスでした。


<音楽>
 全20曲、うちボーカル曲は1曲。
 ED曲「the case of us」はエロゲー曲では珍しい、男性ボーカル、全英語詞で、ロック色あり。
 非常に癖はありますが、ゲーム自体の疾走感と微妙にマッチしています。

 BGMは…なんというか、トラウマになるくらい全編ギターです。
 確かに、きちんと場面ごとにBGMしてますし、ちょっとパンクロック色がある辺り、個人的にも好みではあるのですが、本当にギターメインのサウンドしかないのです。
 そこらへん、好き嫌いは思い切り分かれそうです。
 BGMとしての出来は良いと思いますが、全体としては少し騒がし目なので、エロゲーのBGMとしては微妙かもしれません。
 ただし、このゲームはエロよりも笑いやドタバタメインなので比較的合っていると思います。

 まぁ、とはいえかなり癖があるのは確かなので、この手のギターサウンドが今ひとつ好きでない方には苦痛かも知れません。
 …それしかないですから。
 私としてはそういうのはOKというか、むしろ好みでしたので良かったです。
 「ride on my bicycle, ride out hicksville town」なんかは、非常に良い感じでした。


<システム周り>(ver.1.00)
 修正ファイルがあります。
 音周りの不具合などが中心ですので、当てたほうが良いかと思われます。
 ただ、不具合が出ない方はあてない方が良い修正ファイルもあったりするので、その点はご注意ください。

 ゲーム自体はごくごく一般的な選択肢型AVG。
 取り立てて変わった要素もなく、普通にAVGしてます。
 細かいシステム周りは上記参照。
 基本的なところは押さえていますし、不満は無いですが、此方も特別なものはなく、普通って感じです。
 スキップが少々遅めなほかは軽いですし、…って何故かシーン感想がありません。
 いまどきのゲームとしてはエロ重視でなくとも致命的な感じが多分にするのですが…。

 難易度はやや高め。
 選択肢にキャラ名が出てこない分かりにくいものもあり、またフラグ管理もきつめで入りにくいルートがあったりします。
 ただし、選択肢の数自体はそんなに多くないので、総当りをすればそんなに時間はかかりません。

 総プレイ時間は10時間強。
 音声を全部聞くと結構長いですが、音声飛ばす派の方だいぶ短くなるでしょう。


<CG>
 原画はやまとなをゆき氏。顔の輪郭と刺さったら痛そうな髪が特徴的ですね。
 絵柄はかなり個性のある感じですが、絵自体は非常に安定感があって良い感じです。
 アングル・表情に関わらず、きちんとキャラの個性を押さえていて特徴が出ています。
 バランス面で言えば、全体にちょっと手が大きめなのが気になりましたが、それ以外は特に問題ないと思います。
 絵によってはデフォルメはかなりきつめですが、もともとコミカル色の強い絵ですので、むしろ絵柄的にはあっているのではないかと。

 立ち絵も差分や表情は豊富です。
 コミカルなデフォルメ絵もほとんどのキャラに沢山用意されており、通常の立ち絵と合わせると各キャラごとの枚数はかなり多めです。
 ただ、このゲームではそういう通常版の立ち絵と4頭身位のデフォルメの効いた立ち絵が同時に入り乱れて表示されます。
 コメディメインな作品ではあり、すぐに慣れると思いますが、比較的シリアスなシーンでも1クリックごとにデフォルメ絵と通常絵が入れ替わったりしますので、そういうのが苦手な方はご注意ください。

 背景は…う〜ん普通ですね。
 塗りは抑え目で地味ですが、リアリティよりはディテールを重視するような感じで、雰囲気は出ていると思います。
 ただ、塗りは背景とキャラ絵で結構雰囲気が違う感じがしますので、妙にキャラが浮いて見えるのは少しいただけません。
 単独で見ればどちらも悪くない塗りだと思いますけど…。

 また、ゲーム内で出てくる作品での原画/キャラクターデザインをアリスソフトの「夜が来る!」「ぱすてるチャイム」で原画を担当しているKaren氏が手がけています。
 やまとなをゆき氏とは全く違うタイプの絵ですが、なかなか良い感じです。
 アリスソフトの塗りでないこの方の絵も、魅力的ですね。
 まぁ、イベント絵の枚数にすれば10枚くらいですが…。


<Hシーン>
 各キャラ基本的に本番は1〜2シーン。
 それ以外にフェラやペッティング、パイズリなどのシーンが1〜3くらい装備されてます。
 中には足フェチみたいなマニアックなものもありますが、基本的にはオーソドックスで和姦オンリー。
 特徴としては、ヒロイン、主人公も含めて基本的に耳年増で知識が先にたっているような感じなのが基本線という感じでしょうか。
 そのせいか、実際の経験は初めてだったり少なかったりというキャラが多い割には尺は長めで、上で挙げたようなシチュでも結構頑張っています。
 ただ、挿入してからはちょっと短めな感じですかね…。
 ここら辺はリアリティーを追求しているのかな^^;?

 また、Hシーン中はト書きやモノローグの文のときにもあえぎ声のループがかぶせられています。
 声優さんもかなり頑張っていますし、もとより実力派声優さんですので、声のプラスも考えれば実用度は純愛和姦メインのゲームとしては高い方かと…。


<感想>
 まぁ、なんですか、いわゆる「アンタ(主人公)よりも100倍すごい連中が200倍努力して、年間600もの作品を市場に送り込む、戦場」「最悪で最低な、最高に最強なアタシたちの世界」(by可憐)が作品の舞台です。
 OHPの紹介で明記されていないので詳しくは書きませんが、まぁ、このレビューを見ている皆様ならおそらく一度は関わったことがある(主に消費者として)業界ではないかと。

 ある意味で言えば反則かも知れませんけど、コンセプト勝ちというかそんな感じです。
 今までこの業界をネタにしたゲームが無いわけではありません…というか幾つかはあります。
 しかし、その中でもこの作品が際立っているのはそれをメイン中のメインに持ってきたことでしょう。
 ある意味では、キャラクターの恋愛劇は飾りです。
 書きたかったのは多分、「最悪で最低な、最高に最強なアタシたちの世界」そのもので、コレに対しての愛情というか、愛着というか、そういうものが前に出てきているからこそ、関わったことのある人にはたまらないシナリオになっていると思います。

 実際、濃いキャラクターとギャグメインなテキストによってオブラートに包まれてはいますが、シナリオ内容は比較的シリアスで、重いシーンも結構あります。
 ただ、キャラクターたちが真面目にバカをやる…そんな作品ですので、その重さすらも笑いになってしまう部分もあります。
 苦々しくてツラくて痛々しい、それすらも乗り越えてここにある。
 そんなキャラクターたちの一風変わった青春群像劇とでも言うべきなんでしょうか。

 そしてこのゲーム最大の売りは、笑いに特化した演出ではないでしょうか。
 デフォルメキャラと普通なキャラの立ち絵が普通に隣に並び、効果音やイベント、音や画面いっぱいの文字など全て、テキストを生かし、笑いを強化するために使われています。
 例えば効果音で言えば、某巨大匿名掲示板をネタにしたパチンコ台で「今だ開放台ゲットーーーー。」というテキストにズザーッというすべる音を重ねたり、決め的台詞にファンファーレを重ねたりという感じで、効果音、音声、画面、全てが笑い…それも掛け合いメインの会話の笑いに特化している感があります。
 ただ、笑いのツボは人によって全然違いますから、合わない人も結構いるかもしれません。
 某巨大匿名掲示板用語の多用とか、ヲタク同士の共通理解を前提にしたギャグなんかは嫌いな人は嫌いだと思いますし…。
 ただ、ギャグ自体の好みはさておき、それを効果的に見せる為のノリと勢いをシステム面や音声などで補っています。

 シナリオ内容自体は、上で述べたようにキャラクターたちの成長がメインのオーソドックスな青春ものですが、コンセプト自体のネタとそれをフィクション的に都合良く変えてしまったりしない、取り組みの真摯さが非常に好感を覚えます。
 そしてその、コンセプトは少なくとも、このレビューを見る方には伝わりやすいものだと思います。
 それを笑いと演出で綺麗にまとめ、「魅せる」物語として構成させているのはお見事ですね。

 内容やコンセプトが気になった方にちょっとだけ。
 (以下ネタバレ)
 このゲームのネタはエロゲ業界です。
 主人公はエロゲ原画マン、可憐はCG、みかはライバル会社の原画、杏は制作進行、亜季はエロゲ声優、紗絵はシナリオライターという、ヲタク度で言えば巨○打線なみの強力ラインナップ^^;
 ですので、エロゲーマーだったら結構楽しめると思います。
 ただ、ジャンルどおりご都合主義ではあるものの、基本的に上にも書いたように変に美化などはしていないので、逆に製作に関わったことのある方は相当イタいゲームになってしまうかもしれません。

 (ネタバレ終わり)


<10点満点での総合評価>
 7.5点
 上で述べたように、人を選ぶゲームです。
 しかしその対象はおそらくこの手のページを御覧になる方なら満たしていることでしょう。
 そういう意味では広くお勧めですね。


お気に入りのキャラ:御守 みか
最後に一言:「みかシナリオのエンディング…これがある意味このゲームを象徴している気がします。」