君の想い、その願い    (とっぷがんさんのレビュー)  評価: 4.5 
▼ タイトル 君の想い、その願い
▼ ブランド tumugi
▼ ジャンル 哀傷恋愛ADV
▼ 対応OS Win98/98SE/Me/2000/XP
▼ メディア CD-ROM
▼ 定価 \8,800
▼ 発売日 2003/10/24
▼ 購入 
/ オリジナル特典 Getchu.com
 あり
【CG観賞モード 】
【 シーン観賞モード 】  あり
【 BGM観賞モード 】  あり
【 メッセージスキップ 】  あり(未読・既読判別あり)
【 メッセージ履歴機能 】  あり(ホイールマウス対応)
【 選択肢リターン機能 】  なし
【 オートモード 】  なし
【 ヒント機能 】  なし
【 セーブ数 】  50個
【 エンディング数 】  6個


<あらすじ>
 主人公、景志(けいし)は卒業と同時に上京し、医学部に通う学生。
 ある日、幼馴染の夏希(なつき)からの電話で、かつての恋人「天宮 悠」が亡くなったとの連絡が入る。
 体が弱かった悠のため、医者になるという彼の決意。
 だがその決意は、多忙の余り疎遠になり、ついに彼女の容態の急変すら知ることが出来なかったことへの失意へと変わる。
 目標を失い、諦念を抱えたまま故郷へ戻った景志に、様々な女性との出会い、そして懐かしい人達との再会が待っていた。
 幼馴染、従妹、悠の妹、看護婦、先輩…。
 偶然と言うべきか、それとも、亡き悠の想いのかけらなのか。
 愛した人の願い、彼女たちの想いに、景志の心は彷徨う。
 彼が求める「救い」とは?
 そして、彼が与える「救い」とは?
 形のないその答を求めて、ただ愛する人を救いたい…。


<キャラクター紹介>
高原 夏希
 同じ幼稚園に通っていた頃からの幼なじみ。
 いつしか主人公のことを好きになってしまうが、主人公は悠とつきあっていた。
 幼い頃からのつきあいのせいか、ある意味では誰よりもよく主人公のことをわかっている存在である。
 思いやりがありやさしく、どこか芯が強いところがあるせいか、自分の本意を決して口に出さない頑固な面もある。
 基本的には家庭的で「いいお嫁さんになるね」と言われるタイプで、お料理とお洗濯が大好きで、料理の腕前はかなりのもの。

倉本 沙奈
 遠縁の従妹。
 3歳の時に両親を亡くし、一時、主人公の家で暮らしていた。
 親のぬくもりを知らない彼女にとって、頼りは常に主人公だけだった。
 幼い頃以来、会ってはいないが、電話の声の彼はいつもやさしく、淡い恋心を芽生えさせた。
 人見知りで、おとなしい性格。
 寂しさのあまり泣いていることもある。
 イマドキの女の子とは違うタイプなせいか、男子生徒からの人気は高いが、たとえ告白されても、ただただ困ってしまうのが彼女らしいところ。

天宮 佳織
 天宮悠の妹。
 姉が入院しているのに、とうとう一度も来なかった主人公を憎んでいる。
 明るく活発でクラスの人気者タイプ。
 少し男まさりなところもあり、悠とは正反対な性格。
 姉に憧れ、姉のようになりたいと思い髪を伸ばしたり、少し背伸びをしている。
 しかし所詮、姉にはかなわないと思いこんでいるフシがある。
 語気は強めで、気の強い印象を受ける。
 イヤなことがあるとプールで泳いで解消する、
 スポーツ少女らしい一面の裏側で、偶然を装いつつ主人公に会える展望台にあえて足を向ける、女の子らしい一面も。

赤羽 響子
 悠が入院していた病院の外科看護師。
 繊細で控えめながら、細やかな心づかいのある温かい人柄。
 責任感もあり、マジメで職場では好印象。
 だがそれ故、問題が彼女を苛む結果となる。

佐々川 香澄
 悠の同級生で最も仲のいい親友でもあった。
 卒業後、上京して大手企業のOLとして都会暮らしをしていたはずが、主人公が帰郷する数日前、不意に舞い戻ってきた。
 頭の回転がよく面倒見もいい姉御肌タイプの性格だったが、戻ってきた彼女は容貌だけでなく、性格まで豹変している。
 人との接触を避け、たとえ話す機会があっても言葉は少ない。
 何かを求めているような遠い目をしながら、マッチの炎が燃え尽きるのをぼんやりと見つめていることが多い。

天宮 悠
 享年24歳。
 主人公の元恋人。
 幼い頃から身体が弱く、学校も休みがちで主人公より学年的には1つ上。
 主人公を好きな彼女の想いは変わることなく、その死が目前に迫るその時まで、彼のことを忘れたことはなかった。
 穏やかであたたかみのある、品格の人。
 たくさんの人の思いやりによって自分が支えられていることを自覚しているため、どんな病苦にも弱音を吐いたことがない。
 主人公に会いたくて会いたくてしかたがないのに、ただ黙って身をひく。

佐間 景志
 本編の主人公。
 高校を卒業後、医学部学生として都会でひとり暮らしをしている。
 病死した「天宮 悠」とは高校時代につきあっていた。
 物言いこそぶっきらぼうで一見クールな印象があるが、内心は思いやりにあふれたやさしい性格。
 行動に移す前にはじっくりと分析をしてから、というスタイルではあるが、繊細で感情的な側面もある。
 そんな衝動的な自分を鎮めるためなのか、物心ついた頃から、裏山の展望台でひとり星を見るのが習慣になってしまった。


このホームページはtumugiより一部文章を抜粋しています。
素材の著作権はtumugiに帰属します。



<購入動機>
 秋の夜長にゆったりとした純愛シナリオ作品を久しぶりにプレイしたく購入。
 画も好み。
 願わくば、またプレイしたくなるような良作でありますように…。


<ゲーム概要>
 ゲームスタイルは、会話選択方式のオーソドックスなADVゲーム。
 ゲーム期間は、約二週間です。

 攻略対象キャラは「夏希」「沙奈」「佳織」「響子」「香澄」の五人。
 五人をすべてクリアすると、おまけシナリオ「悠」がプレイ可能となります。
 選択肢は共通ルートを含めて、一人につき約35前後くらいです。

 難易度はそれ程高くありません。
 攻略対象キャラに好意的な選択をしていれば、まず大丈夫でしょう。
 (と言いつつ、一回目はBADでしたが…(^_^;)

 プレイ時間は、初回が約3時間、2周目以降は1回当たり2時間、おまけが1時間ってところでしょうか。


<システム補足>
 インストールで使用するHDDは約530MB。
 フルサイズのインストールしかできません。
 ゲームの起動時はCDは必要ありません。

 「コンフィグ」で色々設定できますが、本当に必要最低限の設定メニューだけです。
 シナリオ重視純愛系の作品で、オートプレイの設定がないのはいただけないですね。
 ポテトチップス食べながらゆったりとプレイするという、私の基本スタイルが…(/o\)
 あと、セーブデータのコメントがシステム日付だけ、というのは紛らわしいです。
 同じ日に繰返しプレイすると、ロードするとき判別しにくいです。
 システム時刻の表示もするか、「最新」の表示をするかしてほしかったですね。

 修正パッチが出ています。
 少し手間のかかる更新方法ですが…。


<音楽>
 OP曲『君の想い、その願い』は、ボーカル:海原エレナさんです。
 海原エレナさんは本編のCV担当はなく、この曲のボーカルのみの参加です。
 声優さんでこういうケースは珍しいですね。
 たいがい本編のCVも担当して、テーマ曲のボーカルを担当するというケースが一般的ですが。
 でも、「旅館白鷺」で見せた歌唱力は凄かったですし、中途半端なシンガーを持ってくるよりは遥かに良いかも。
 透き通るような声質が、サビの高音の伸びにマッチして、思わずゾクッとします。

 ED曲『やさしい風』は、ボーカル:南響理子さんです。
 ハッピーエンドにもダークエンドにもうまく合う、しっとりとした曲調です。

 BGMは『梶原正裕』さん。
 音楽鑑賞モードは全部で15曲。(内、ボーカル曲は2曲)
 全体的に静かな感じのピアノ基調の曲が多いです。
 もっとも、テーマがテーマだけに、それが自然なのでしょうけど。
 使われる場面の印象かもしれませんが、「暖かな秋空」が一番印象に残りましたね。


<原画・CG>
 キャラ原画は『あかり☆かずと』さん。
 キャラの目がみんなタレ目で愛嬌があるのが特徴的です。

 CGは塗りも線も丁寧に処理されていて、特に違和感は感じませんでした。
 画面のキャラの顔にだけスポットライトが当たっている…舞台のような光の表現がやや幻想的な雰囲気を醸し出しています。
 背景のCGも細かいところまで綺麗に描かれています。

 「CG観賞モード」は、夏希:21(14)、沙奈:25(13)、佳織:16(13)、響子:14(12)、香澄:16(12)、悠:11(8)の合計:103(72)です。
 ※括弧内は、表情パターン別を1つとしてカウントした枚数。
 この内、えちぃCGは約3割に当たる、43(21)です。

 「シーン鑑賞モード」は、夏希:1、沙奈:1、佳織:1、響子:3、香澄:4の合計:10です。


<演出・効果>
 特筆するような演出はありません。


<設定・シナリオ>
 この作品はシナリオを期待して購入したのですが、正直なところ本作の要である「想い」や「願い」がうまく伝わってきませんでした。
 その理由は色々ありますが、大きくは以下の3つに集約されると思います。

 まず、本作のキーパーソンである「悠」の描写が綺麗過ぎて、人間味に欠けること。
 只でさえ精神的に不安定な年頃であることに加えて、子供の頃から病弱であれば、気丈に振舞えば振舞うほど、陰でその反動があるのが普通ではないでしょうか?
 気持ちだけ先走って、体がついてこれない事への不安と不満というのは、病人であれば常に抱えていたはずです。
 それはときに両親への憤慨、健康な友人への嫉妬、医師や看護婦への不信など、決して綺麗事で済まない心情の発露があるのが自然ではないかと思います。
 まして、主人公という恋人ができて、その気持ちは一層強まったに違いないことは容易に想像できます。
 そういった人間臭い姿が映し出されて初めて「想い」や「願い」に命が吹き込まれると思うのですが、本作ではそういったいわゆる「泥臭い描写」は殆ど排除されていて、一見綺麗に見える人間の上っ面の表現に終始しているやに感じます。
 あまり重たくならないライト感覚に仕上げたいというメーカーの思惑があったのかもしれませんが、「人の生死」が物語の骨子であり、そこから派生する「想い」や「願い」をテーマとして掲げる以上、このあたりの描写は避けて通れないと思うのですが…。
 光が光らしく輝くためには、影の存在は必要だと思います。(好むと好まざるにかかわらず)

 もうひとつは、主人公「景志」の行動が不自然過ぎて、やはり人間味に欠けること。
 病弱の「悠」を助けたいと考えて医師への道を歩み始めた割には、その力の源になる「悠」に何年も連絡しなかったり、負担にならないようにと連絡したいのを我慢している「悠」に対して、連絡がないのは新しい恋人ができたからだと邪推したり、「悠」が死んでも何日も連絡が取れなかったりと、はっきり言って変です。
 あげくには、「悠」が死んで数日のうちに別の女性に心変わりして「悠ならきっと分かってくれる」「悠なら応援してくれる」と自己弁護のオンパレード。
 「応援するわけないだろ!
 草葉の陰で泣いてらァ!!」

 と思わずツッコミたくなるような自己中まっしぐらです。
 これではとても感情移入などできないですねぇ(^_^;)

 更には、「人の生死」を扱っている割に物語の期間が短すぎること。
 死と戦うこと、死を受け入れること、死を思い出に風化すること、前に歩き出すこと、それらは個人差はあれど相応の時間がかかるのが自然だと思います。
 その時間の中で、昔見えなかった「想い」や「願い」を理解できるようになったり、新しい「想い」や「願い」が育まれたりしていくのだと思うのですが…。
 本作では2週間ですべて決着をつけるように物語が設定されているため、「想い」や「願い」の存在を強制的に押し付けられるような印象が拭えません。
 そしてこの期間の短さが、先の「景志」の行動の不自然さと絡み合って、「想い」や「願い」を強調する台詞を見れば見るほどシラケていく要因になっていきます。

 全体的に「悠」がシナリオの都合で単なる便利な一道具としてしか扱われていない、というのが一番悲しかったですね。
 本来「悠」から派生する「想い」を誰かが受け継ぐ、「願い」を誰かが叶える、というのを本作のテーマにすべきだと思うのですが、主眼を各キャラに置いているため、「悠」と全然関係ないキャラが登場したり、「悠」と本来密接な関係にあるはずのキャラが全く関係ない物語を展開したりと、思わず「悠」の存在って一体何?と首を傾げてしまうような一貫性のないシナリオには苦笑せざるを得ません。


<えちぃシーン>
 シナリオがアレな状態なので、せめてえちぃシーンに期待したいところですが、このあたりはシナリオ重視純愛系をきっちり踏襲していて薄いです。
 キャラ1人当たり、回数は1〜4回です。
 回数も少ないですが、えちぃテキストも短めです。
 そして何より、モザイクでか過ぎ!
 下着を脱いだCGが下着を着ているCGよりエロくないなんて、涙なくして見れません(/o\)


<キャラ別感想>
 ※ネタばれ多数あり。「先入観がつくからイヤ」という方はスキップして下さい。
 ◆高原夏希◆
 このキャラのシナリオはメインであり、一番まともではあります。
 「景志」の幼馴染であり、「悠」と仲の良い後輩という設定も、この作品のテーマを表現するにはやりやすいでしょう。
 でも、そのやりやすさに安心して、本来必要と思われる描写がゴッソリ削げ落ちています。
 ・「悠」の見舞いを通して「悠」の心情を思いやるシーンは?
 ・心情を思いやって、自分の本心と葛藤するシーンは?
 ・「悠」が叶えれない「想い」を「悠」から日記で受け継ぐシーンは?
 ・「悠」の臨終を迎えて、託された「想い」を叶えようと気持ちを強くするシーンは?
 最低限これくらいの描写は欲しかったところです。

 個人的には、
 ・「悠」を失って大学へ行く目的を見失いかけている「景志」を「夏希」が説得して復学させる。
 ・「夏希」も栄養士の勉強を名目に「景志」のいる街に押しかけてくる。
 ・「景志」に疎まれながらも、甲斐甲斐しく「景志」の世話を焼き、精神的なフォローをする。
 ・エッチも沢山する(笑)
 ・「悠」を失ったショックから立ち直った頃を見計らって、「悠」に託された日記を置いてひっそりと秋篠町に帰る。
 ・気持ちを整理した「景志」が秋篠町に「夏希」を迎えに行く。
 という感じの流れならまだ良かったのですが。

 EDは二つでハッピーエンドとBADエンドです。
 ハッピーエンドの過程での旅立ちのシーンですが…ダメでしょ、あれじゃ。
 「悠」の死は現実のものとしてちゃんと受け止めた上で、「夏希」だけを見て歩いて行かなきゃ…。
 あれだと辛いときや苦しいときはいつも「悠」の幻影に頼るのでは?
 エピローグは、たぶんこれしかない、という感じの予想通りの落とし方をしてくれますが…。
 BADエンド自体の存在は否定しませんが、ED分岐が何故あれなのかは納得できません。

 CVは「三木本 彩響」さん。
 私は初めての方ですが、特に違和感は感じませんでした。
 元気な「夏希」に合っていると声質だと思います。
 何故か「こちとら、江戸っ子でェ!」という気風の良さを感じます(笑)

 ◆倉本沙奈◆
 このキャラのシナリオは本来必要ないと思います。
 「悠」との接点は何もありませんので。
 それでもこういうキャラを登場させた理由は何かと考えると…
 ・「萌え」の勝利の方程式、「幼馴染」と「義妹」に則った。
 ・話題作りで一般公募した「猫」のマスター的存在が必要だった。
 ・「売れっ子声優@妹」の登用で売り上げUPを図りたかった。
 等々、およそ物語の本質からかけ離れたところに意義を見出す私は歪んでいるのでしょうか?(笑)

 個人的には、
 ・「悠」と同じ病気で「沙奈」が入院する。
 ・「悠」を失って大学へ行く目的を見失いかけていた「景志」に再度目的を与える。
 ・医師になった「景志」が「沙奈」の入院している病院に配属される。
 ・患者の「沙奈」を通して、かつて「悠」が抱いていた不安、猜疑、希望、絶望など色々な心情を窺い知る。
 ・「悠」を助けられなかった心の負債を「沙奈」を助けることで清算しようとする。
 という感じの流れなら登場する意義も見出せたのですが…。

 EDは一つでハッピーエンドです。
 「悠」との関わりがないならないで最後まで通してくれれば良いのですが、EDの過程で「悠さんには会った事がないけど、応援して下さいね」なんて都合の良 いときだけ「悠」を引っ張り出された日にゃ、「想い」や「願い」の重みがどんどん下がっていきます。

 CVは「乃田あす実」さん。
 今回は、引っ込み思案@妹という、この方の王道パターンです。
 そういえば最近このケースは意外とお目にかからなくなりました。
 えぇ、えぇ、破壊力満点ですとも…(/o\)

 ◆天宮佳織◆
 このキャラのシナリオはメインにすべきであったと思います。
 志半ばで逝った「悠」が「景志」を一番託したかった相手は、「悠」が愛してやまない妹だったと思います。
 ですが、本作ではその辺は「夏希」にすっかりお任せで、サブに甘んじています。
 折角の設定が勿体無いですねぇ。
 姉妹での「景志」の取り合いとか、「夏希」との「景志」の取り合いとか、他のキャラとの絡みでもう少し物語の厚みを増して欲しかったです。

 この「佳織」、前半は突っ張って「景志」に敵対心を見せますが、途中から態度をコロッと変え、スリスリ近寄ってきます。
 もともと「景志」が好きなので、「悠」のリミッターが外れたらこうなるのは考えれば分かるのですが、この辺も心理描写が不足していて、テキストを追っているだけでは違和感が先行して、中々すぐ理解できなかったです。

 EDは一つでハッピーエンドです。
 携帯電話の継承のシーンは、この作品で一番印象的でした。
 こういう、「想い」をちゃんと引き継ぐという描写は、形式的かもしれませんが心の区切りの儀式としては必要なものだと思います。
 こういうのを全編にちゃんと入れてくれればねぇ…。

 CVは「如月 葵」さん。
 こちらも私は初めての方です。
 前半部の愛憎が葛藤した搾り出すような演技は結構印象的でした。

 ◆赤羽響子◆
 このキャラのシナリオもどちらかと言うと必要ないと思います。
 設定上、どうしても悪役の印象を拭えません。
 敢えて登場させるなら、徹底的に悪役に徹しさせて、真相を知った「景志」が「悠」の願いも空しく暴走して、BADEND一直線という方が説得力あったでしょう。

 ですが、無理やりこのキャラに純愛シナリオを載せた結果、こういう台詞が登場します。
 「いつからかずっと−−あなたに、佐間さんに抱かれたいって私…思ってた」
 「あなたに会ったその日…ちがうわ、あなたに出会う前から、ずっとあなたのことが心の中にあった−−」
 「名前だけしか知らない…あなたを」
 はぁ?
 純愛舐めてますか?
 もはや、これはシナリオが破綻しているとしか…。

 EDは一つでダークエンドです。
 無理やり純愛にもってった割に最後はこれですか…。
 作品にメリハリをつけたい意図があったのかもしれませんが、これでは作品のイメージダウンの効果しか得られないですねぇ。

 CVは「一色ヒカル」さん。
 役柄的に、常にもの悲しい演技をされています。
 勿論うまいと思うのですが、本来この方は明るいキャラでこそ、その威力を発揮される方だと思うので、なんか勿体無いですね。

 ◆佐々川香澄◆
 このキャラのシナリオも本来必要ないと思います。
 このキャラは「悠」の親友という設定なので、実は内心一番期待していたキャラでした。
 《序盤》
 接触してもケンモホロロ、まともに会話してくれません。
 (ウーム、「悠」となにか確執があったのだろうか…)
 《中盤》
 会話してくれるようにはなるが、過去に何があったのかは話してくれません。
 (…じらしか?じらし戦法なのか?最後に大どんでん返しが来るのか?)(わくわく)
 《終盤》
 やっと過去の出来事が話されます。
 香澄「会社でもプライベートでも誰にも頼れなくなった四面楚歌の私に…たったひとりだけ、やさしく接してくれる人がいた」
 香澄「その時の私にはまるで…救世主みたいに見えた」
 (おーーーっ、いよいよ「悠」の登場か!)
 景志「それはいったい−−」
 (「悠」だよ、「悠」しかいないだろ!)
 香澄「直属の上司」
 はい?
 香澄「傷ついた私をすごくいたわってくれて」
 (…)
 香澄「会社を辞めないように取りはからってもくれた」
 (………)
 香澄「けれど…数週間が経った頃−−」
 (……………)
 ふう……。
 ………
 …
 いやぁ、これほど設定が生かされないキャラは久しぶりにお目にかかりました。
 意気込みの反動で一気に睡魔が…。
 この作品の「想い」「願い」はこれで「重い」「眠い」に変わりました…。

 EDは一つでダークエンドです。
 こちらも「響子」同様、一瞬ハッピーエンドを匂わせといてダークに落とすという、作品のテーマを無視したエンディングです。
 果たしてこのエンディングに何の意味があるのか、メーカーに問いたいですねぇ。

 CVは「本条 真琴」さん。
 こちらも私は初めての方です。
 役柄的に、常に重苦しい演技をされています。
 通常ボイスの低音とえちぃボイスの高音が、コントラストで良い感じですね。

 ◆天宮悠(おまけシナリオ)◆
 本編で随所に回想された「悠」との思い出を、「悠」の視点で日記風に描いたシナリオです。
 でも殆ど本編に出てきたエピソードなので、目新しさはないです。
 個人的には、このシナリオをもう少し膨らましてプロローグにして欲しかったですね。
 そしてその後オープニングを経て本編に入れば、結構この作品の印象は変わったのではないでしょうか。
 他のキャラで散々この作品のテーマがぼやけた後でこのシナリオをやっても、殆ど感慨はありません。
 むしろ、このシナリオを生かせなかった他のシナリオに対して再度怒りが湧いてくるだけです。
 作品の構成、という要素を改めて考えさせられるシナリオですね。


<総評>
 シナリオ以外は及第点だと思います。
 でも、エロ重視の場合シナリオが駄目でもエロが良ければ良作にもなりえますが、シナリオ重視でシナリオが駄目だと致命的です。
 本作の場合、個々のテキストは決して悪いわけではありませんが、各シナリオに作品のテーマが十分に生かされていない、というのが個人的な評価です。
 テーマが生かされている前提で、目先を少し変えた変化球を使うのは構わないのですが、どうも変化球に頼りすぎの感を受けました。
 あくまで、直球の威力があってこその変化球だと思います。

 このメーカーが次回、どういう作品を制作するか興味があります。
 安易な作品を作って市場から永遠に葬られるか、意地を見せて地位を確立するか…。
 個人的には勿論、後者を期待していますが。


<お気に入りのキャラ>
夏希 沙奈 佳織 響子 香澄
シナリオ
性格
音声
CUP
えっちぃ
合計 36 33 33 26 24
  と、言う事で『夏希』です。


<10点満点での総合評価>
シナリオ 一部破綻
原画 タレ目
CG 結構良い
キャラ 不要キャラ有り
音声 無難
音楽 もの静か
システム オートは欲しかった
演出 特になし
エロ モザイクが…
ボリューム 総プレイ時間12時間
合計 56
  と、言う事で5.5点と言いたいところですが…。
 テーマがシナリオに生かされていない事について、特別減点1点を行い4.5点とします。

最後に一言:「これじゃ「悠」は成仏できないなぁ…(^_^;)」











  Piaキャロットへようこそ!! ヒロインズ Fun Box   (氷室さんのレビュー)  評価: 2 
▼ タイトル Piaキャロットへようこそ!! ヒロインズ Fun Box
▼ ブランド ホロン
▼ ジャンル タイピング練習ソフト
▼ 対応OS Win98/2000/Me/XP
▼ メディア CD-ROM
▼ 定価 \6,800
▼ 発売日 2002/12/20
▼ 購入 
/ オリジナル特典 Getchu.com
 あり
【CG観賞モード 】
【 シーン観賞モード 】  なし
【 BGM観賞モード 】  なし
【 メッセージスキップ 】  あり(未読・既読判別なし)
【 メッセージ履歴機能 】  なし
【 選択肢リターン機能 】  なし
【 オートモード 】  なし
【 ヒント機能 】  なし
【 セーブ数 】  0個
【 エンディング数 】  0個


<ゲーム(?)内容>
 「Piaキャロットへようこそ3!!」のヒロイン達がタイピング型ミニゲーム集となって登場!
 各ヒロインを主役とした7+1ステージのミニゲーム集で、ゲームの成否で貴重な豪華ギャラリー集181点が変化します。
 全てが新規録音された完全フルボイス。


<購入動機>
 Piaキャロだから。
 これに尽きます^^;


<システム>
 Macromedia Directorによるシステムです。
 タイピングゲームとしては、良く出来ていると思いますが、致命的な欠陥があります。
 ゲームクリアするとご褒美としてギャラリーにCGが追加されるのですが、たとえランキング1位になっても1回のクリアにつき1枚しか増えません。
 その為、CGの枚数は全部で180枚ほどあるので、同じ内容のタイピングを180回は繰り返さねばならない訳です。
 ですので、どんなにタイピングが上手くても180回以上タイピングゲームをクリアしないとCGを全て拝むことは出来ない訳で…。
 そんなにできるか〜〜!!
 わしゃーエロCGが見たいんじゃ〜!

 まったく何を考えているんでしょうかね〜…。

 キャラの数だけ無理矢理タイピングゲームを用意したので、ホームポジションの練習などかなりレベルが低いものもあり、ゲーム性はかなり低いです。
 (それ以前にゲームと呼べるか疑問ですが…)

 これでCGが全部描き下ろしとかなら救いがあるのですが、ただの設定画ですので、全部見ようと思う意欲も湧きません。
 また、通常の起動(さやかのアイコンをクリック)では画面が強制フルスクリーンになり、設定の変更は不可能。
 しかしなぜか、インストールしたフォルダにあるpiafunbox.exe(Macromedia Projector)から起動すると640×480のウィンドウモードが可能です。
 何で隠し仕様になっているのか分かりません。
 最近の液晶ディスプレイはアスペクト比を維持できないものが多いので、強制フルスクリーンはやめてもらいたいですね。


<音楽・音声>
 本編と同じで、特に見るべきものはありません。
 本編から間が空いたせいか、声優さんが元の演技を忘れているようで、一部のキャラは違和感がありました。


<感想>
 18禁ゲームのファンディスクですが、エロは一切ないです。
 PCの「Piaキャロットへようこそ!!」ですよ?
 「ヒロインズ Fun Box」ですよ!?
 コンシューマじゃないでんすよ!
 なしてエロCGがない(つД`)
 ましてや、高井さやかの補完エッチなんてのはありません。

 Piaキャロシリーズには散々貢いだので、毒を食らわば皿まで、ということで購入しましたが、期待に違わぬダメっぷりでした。
 ここまで酷い作品は初めてですね…。
 よくこんなものに6,800円もつけたものです。
 (こんなものに手を出す私も私ですが…(つД`)

 時間の無駄、HDD容量の無駄ですので、購入しない方が無難です。
 パッケージやCGのコレクションとして割り切ってなら購入してもいいかもしれません。
 本来の使い方としてタイピングソフトとして使っても良いかもしれませんが…いまさらという感じも…。


<10点満点での評価>
 評価は0点にしようかとも思いましたが、パッケージが綺麗なのと、バグがない(あったら話になりませんが)、タイピングとしてはまともということで2点にします。
 タイピング目的なら「さらに倍」でも良いと思います。
 (でもでも…「Piaキャロットへようこそ!!」って名前付けててエロなしとは…)


お気に入りのキャラ:高井さやか
最後に一言:「高井さやかの追加(補完)シナリオは結局出ないのですかね…。」