てのひらを、たいように    (とっぷがんさんのレビュー)  評価: 9 
▼ タイトル てのひらを、たいように
▼ ブランド Clear
▼ ジャンル 恋愛アドベンチャーノベル
▼ 対応OS Win98/2000/Me/XP
▼ メディア CD-ROM
▼ 定価 \8,800
▼ 発売日 2003/01/24
▼ 購入 
/ オリジナル特典 Getchu.com
 あり
【CG観賞モード 】
【 シーン観賞モード 】  あり
【 BGM観賞モード 】  あり
【 メッセージスキップ 】  あり(未読・既読判別あり)
【 メッセージ履歴機能 】  あり(ホイールマウス対応)
【 選択肢リターン機能 】  なし
【 オートモード 】  あり
【 ヒント機能 】  あり(選択肢の色表示)
【 セーブ数 】  100個
【 エンディング数 】  6個(BAD除く)


<あらすじ>
 川の音が聞こえる場所。
 水郷の里。
 ぼくたちはそんなところに住んでいた。
 家から少し歩くと山があって、そこには大きな芙蓉の樹がある。
 そんな風景の中でぼくたちは過ごしてきた。
 夏休みも近いある日。
 ぼくたちの通う学校に一人の女の子が転校してきた。
 女の子の名は永久。
 明るい笑顔と淡く透き通るような髪が印象的な少女だった。
 だが、初めて会ったはずの彼女の顔にぼくはどこか見覚えがあった。
 ・・・
 夢を見た。
 芙蓉の樹の下にある土を掘り返す夢を。
 何か大切なものが埋まっている。
 だからぼくたちは土を掘り返した。
 手が痛くなるまで、ずっと……。
 ・・・
 そして夏休みが始まる。
 蒼穹と純白で彩られた季節の中でぼくたちは無邪気な時間を過ごしていく。
 やがて目の前に現れる出来事も知らないままに。
 水郷の里。
 その名前とは別のもう一つの名。
 さとりの里……そうとも呼ばれるこの町の中で。
 ・・・
 ぼくたちは彼女を助けたかった。


<キャラクター>
春野 明生
 本編の主人公。
 永久の転校をきっかけにこの町に存在する「さとりの伝承」の絡む出来事に積極的に関わっていくことになる。
 友情厚き熱血な少年。

速見 順哉
 明生より一学年上の先輩。
 あまり人に心を開くことはない。
 冷静沈着だが、それが原因で冷たいという印象を受けることもしばしば。
 明生とはまた違うアプローチで「さとりの伝承」に関わっていく。
 本編のもう一人の主人公。

夏森 永久
 夏休みにはいる直前に主人公のクラスに転校してきた少女。
 初対面のはずなのに、どこかその面影にかつて見慣れたものを見つけた主人公は惹き付けられていく。
 純粋なのか天然なのかあるいは何も考えていないのか、その年齢に似合わない無邪気な性格がどこに由来するのか、その一切は謎に包まれている。

佐倉 穂
 強気ですぐに手が出ていじっぱりだけど実はけっこう純情娘。そしてナイチチ娘。
 自宅のティーハウス・ハーヴェストをやっぱりナイチチの母親の穂波と切り盛りする孝行娘でもある。
 主人公・明生とは昔は鼻血が出るほどの喧嘩をしょっちゅうしたけど、いま現在は、明生のほうがさすがにこの歳で女の子は殴れない(チョップは食らわすけど)ということで、最強娘。
 永久、美花と三人でナイチチーズを結成中(明生談)

吉野 美花
 わがまま、なきむし、いじっぱり。バカミカって言われるとすぐにふくれる。
 あきっぽくてなんでもすぐに投げ出す性格だけど、唯一つづいているのが趣味の園芸。
 とくに花を育てるのが好き。ミカの「カ」はお花の「花」。
 しかしあまりの花好きがこうじて周囲とぶつかることも。
 不思議なポケットならぬポシェットを装備。出てくる、いろいろ。

床与 更紗
 のんびり、ふんわりとした性格といえば聞こえがいいが、ただののん気者。
 来年に卒業を控えている受験生。
 といいつつもあまり将来のことを考えてはいない。
 自分がどの可能性を選んだらいいのかとまどっている少女。
 ある日見た夢をきっかけに、夏休みの課題レポートにこの町の神社とそれにまつわる言い伝えのことを調べるようになる。
 いつの頃からかは知らないが手元にあるお守りを大事にしている。
 とにかくよく眠る。

成瀬 凛
 主人公たちとは違う学校に通っている少女。
 大きな土蔵のある家に住み、この町でもっとも古くから住んでいる家系にあたる。
 子供と大人の中間的な存在で、大人でありたいと望む自分がいつつも、無理に背伸びをすることで、結局はまだ子供でしかないことを逆説的に証明している。
 悪気はないが、無邪気な言動で引っ張り回すことがしばしば。

蓮見 まりあ
 明生、永久とはクラスメート。
 町の古くからの家系の一つ、蓮見家の一人娘。
 父親が町の有力者のため、学校内では天下無敵のおじょーさま。
 髪かきあげ&高笑い標準装備。
 明生、永久、穂、美花に、ことあるごとに嫌がらせをしてくるが、理由は不明。
 乾、巽というとりまきを引き連れて、今日も明日も明後日も、四人にえげつない嫌がらせをしかけつづけるのだ。

佐倉 穂波
 亡き夫の残したティーハウス・ハーヴェストを娘の穂ときりもりする。
 とてもじゃないけど娘がいるとは思えないほど若々しいママさん。
 ママさんっていうか、お姉さん?
 明生の母親、美花の母親とは学生時代の友人。
 穂のナイチチはあきらかにこの方の遺伝である。
 でもそのことを口にしてはいけません。
 お店のトレーでバッキバキにしばかれます。
 でもまだあきらめてませんよ?


このホームページはClearより一部文章を抜粋しています。
素材の著作権はClearに帰属します。



<購入動機>
 デビュー作からのデフォ買いメーカー。
 ギャグのセンスはピカイチなれど、作品自体は佳作止まり。
 今回こそはブレイクしてくれよ、と祈りつつ…。


<ゲーム概要>
 ゲームスタイルは、会話選択方式のオーソドックスなADVゲーム。
 ゲーム期間は、約一ヶ月半です。

 攻略対象キャラは「永久」「穂」「美花」「凛」「更紗」の五人。
 私的に密かに期待していた「穂波」は対象外となってます。

 難易度はそれ程高くありません。
 一周目は、選択肢間違えると即バッドエンドになるので、攻略性は皆無です。
 二周目以降は、攻略対象キャラに好意的な選択をしていれば、まず大丈夫でしょう。
 ただ、CGモードを埋めるためには、選択肢は一通りプレイするのが無難です。
 一見、攻略順番は自由に見えますが、実はシナリオの順番が規制されています。
 『てのひらを編』「永久ノーマル」
   ↓
 『てのひらを編』「穂」「美花」
   ↓
 『てのひらを編』「永久トゥルー」
   ↓
 『たいように編』「凛」「更紗」
 この通りに進めないと、シナリオが進行しません。
 但し、「穂」&「美花」と「凛」&「更紗」はどちらが先でも構いません。


<システム補足>
 インストールで使用するHDDは約1GB。
 フルサイズのインストールしかできません。
 ゲームの起動時はCDは必要ありません。

 「設定」メニューで色々変更できます。
 ・一度選択した選択肢の色を変えて表示する
 ・バックログのデータもセーブ・ロードを行う
 ・テキストのフォント変更
 ・キャラの立ち位置による、音声の左右割りを行う…など
 ゲーム中良く使う「セーブ」「ロード」「画面切替」「スキップ」あたりは、ファンクションキーに割り当てられていて、使い勝手が良いです。

 修正パッチは、version1.02が最新です。
 色々不具合が出てるようなので、確実に当てましょう。


<音楽>
 OP曲『てのひらをたいように』・ED曲『あしたの約束』は、ボーカル:佐藤裕美さんです。
 前者は躍動感に溢れ、後者はしっとりと歌い上げています。
 『てのひらをたいように』は、OPよりも「永久トゥルー」シナリオのEDで流れたのが一番印象的でしたね。
 でも、スタッフロール流れると、律儀に曲が変わっちゃうのですが(^_^;)
 あそこだけは、そのままの曲で行って欲しかったところです。

 BGMは『Cresc』さん。
 音楽鑑賞モードは全部で29曲。(内、ボーカル曲は2曲)
 これだけ、どの曲も良い感じに思える作品は珍しいですねぇ。
 全体的にアコースティック多用で、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
 「日々の流れ」「流れるままに」「流星群の向こうに」の流れ3部作が大関クラスとしたら、「鎮魂の願い」が横綱ですね。
 夕陽を見ながらこの「鎮魂の願い」を聴くと、思わず子供の頃にタイムスリップしそうになります(^_^;)


<原画・CG>
 キャラ原画は『おーじ』さん。
 特徴のあるロリロリ画です。
 慣れるまで少し違和感を感じましたが、慣れるとこの作品にとても合っていると納得します。

 CGは塗りも線も丁寧に処理されていて、特に違和感は感じませんでした。
 髪の毛はのっぺりしてますが…(^_^;)
 背景のCGも細かいところまで綺麗に描かれています。

 「CG観賞モード」は、永久:25(12)、穂:16(8)、美花:19(9)、凛:24(16)、更紗:31(16)その他:40(19)の合計:155(80)です。
 この内、えちぃCGは約2割に当たる、41(19)です。

 「シーン鑑賞モード」は、永久:1、穂:1、美花:1、凛:2、更紗:2の合計:7です。


<演出・効果>
【記憶の波紋】
 忘れていた記憶に刺激を受けるとき、画面の真中から外に向かって、波紋が広がるような演出が行われます。
 その波紋の中に、失われている記憶のシーンが一瞬写ります。
 かなりうまい演出だと思います。

【ステレオ音声】
 「設定」メニューで「キャラの立ち位置による、音声の左右割りを行う」をONにすると、画面の右側に立っているキャラが喋ると右側のスピーカーから、画面の左側に立っているキャラが喋ると左側のスピーカーから音声が聞こえてきます。
 ……いや、臨場感を出そうという意図は分かるんですが、キャラが同時に喋るシーンは殆どないので、あまり必要ないんですけど(^_^;)


<感想>
【設定・シナリオ】
 この作品は「てのひらを編」と「たいように編」という、2つの大きなシナリオによって構成されています。
 ライターさんは「てのひらを編」を『冬雀』さん、「たいように編」を『秋津環』さんがそれぞれ担当されています。

 幼馴染という、心強くもあり煩わしくもある人間関係を土台にして、そこで培われる「友情」「信頼」「約束」など、色々なエッセンスを織り交ぜながら、「さとりの伝承」という伝奇風味の物語を「てのひらを編」では主観的な視点で、「たいように編」では客観的な視点で描いていきます。

 この作品のテーマは、色々な見方があると思いますが、私は『純真な心』だと感じました。
 仲間が大変な時に何とかしようと思う「友情」も、無条件に仲間を「信頼」できることも、一度交わした「約束」は何があっても守ろうとすることも、その源になるのはすべて『純真な心』。

 誰もが皆持っていたはずなのに、大人になるといつのまにか無くしてしまっているもの。
 「青臭いだけでは生きていけない」とばかりに、呷ったアルコールの量の分だけ無くしていくもの。
 一度失うと、二度と手に入れれなくなるもの。
 そんな脆い『純真な心』を持った、魅力的な人物たちが登場します。

 そして語りかけてきます。
 「そんな必死になって走ってばかりいないで、たまには歩こうよ」
 「背中の荷物を地面に下ろして、大きく伸びをしようよ」
 「手のひらを太陽にかざして、昔と変わらない太陽の暖かさを感じようよ」
 作品にこんな台詞はありませんが、何故かそう言っているように思えてなりません。

【えちぃシーン】
 シナリオ重視の純愛系作品なので、一人につき終盤に一回ずつのえちぃシーンのみです。
 ですが、えちぃシーン自体はシナリオの必然性に沿っています。
 ある子は、子供の頃からの想いを成就するため…。
 またある子は、これから成す事への勇気を貰うため…。
 むしろ、この場面でえちぃシーンない方が不自然だろう?
 と思えるくらい自然な形でシーンに突入します。
 ひとつのえちぃシーンでは、だいたい2回戦までいきます。
 なので、テキストは結構長めです。
 ちなみに、一人を除いてみんな「ナイチチ」です……(/o\)

【キャラ別感想】
 ※「先入観がつくからイヤ」という方はスキップして下さい。
 ◆『てのひらを編』「永久ノーマル」◆
 「明生」が学校に行く途中にある公園で、「永久」と再会するところから物語は始まります。
 再会を喜ぶ「永久」に対して、「永久」を思い出せない「明生」。
 そして、同じく再会を喜ぶ「永久」に対して、やはり「永久」を思い出せない「穂」と「美花」。
 何やら、記憶が封印されているようですが…。

 序盤は、「明生」「穂」「美花」が、それぞれ「永久」の記憶を取り戻す過程と、「明生」が「穂」「美花」の信頼を取り戻す過程が、色々なエピソードを交えてゆったり語られていきます。
 (なんか、どこぞのRPGで、バラバラになった仲間を集めていくのに似てますが…(^_^;)
 全体的に、エピソードはひとつひとつが長めで、かつ描写は細かいところまで丁寧です。
 今までの「Clear」の作品のシナリオとは、少し雰囲気が違いますね。
 でも、こういう先を急がない、そしてエピソードをひとつひとつ完結させていくスタイルは、私としてはとても好ましく思います。
 (人によっては、ダレるかもしれませんが…)
 印象的なのは、皆が子供の頃に夕暮れの公園で交わした『誓い』のシーン。
 このシーンはこれ以後、くどいくらい繰返し回想されることになります。
 このくどさ…おそらくこのシーンがこの物語の原点なのでしょう。
 もう1つ印象的と言うか、インパクトが強かったのは、学校に行くのに「永久」が「明生」を毎日迎えにくるシーン。
 「あきーおちゃーん、ガッコーいこー」
 ……小学生ですか…あんたは……(^_^;)
 でも、このときは知る由もないのですが、後にこれが強烈な伏線だったことに気付きます。

 中盤は、記憶を取り戻した「明生」「穂」「美花」が、失われていた期間を取り戻すかの如く「永久」との絆を深めていきます。
 同時に、「永久」の生立ちも除々に判明していきます。
 このあたりから、シナリオにコミカルな要素が少しずつ入ってきます。
 敵対する「まりあ」の意外な弱点、ボケボケしている「永久」の意外とチャッカリしているところ、等々…。
 長めのシナリオで飽きがくる頃を見計らって、少しスタイルを変えてきたのだとすればいいタイミングだなぁ、と思わず感心しました。
 「永久」の生立ちはゲーム序盤から推測はつきますが、担任の「日高」の告発を経て、やがて「永久」本人の口から語られます。
 本人には何の責任もない、理不尽な運命…。
 四人は更に絆を深めていきます。

 終盤は、「さとりのさと」という童話を中心に、それまで隠されていた色々な事実が明らかになっていきます。
 序盤からたくさん配していた伏線が、ひとつひとつ帰結します。
 ここらあたりのシナリオも急ぎすぎず、かといって間延びもしない、適度なリズムで進んでいきます。
 途中「明生」が今までの出来事を回想するシーンがありますが、これは非常に有難かったですねぇ。
 この段階までくると、前半のエピソードはかなり記憶が薄れてきてましたので。
 これは「明生」の回想という形をとった、ユーザーへの配慮だと思います。
 一通り思い出してもらってからラストを盛り上げる、ということなのでしょう。
 ラストでは、序盤から繰返し回想されていた最大の伏線が昇華します。
 いやぁ、見事に盛り上がりますなー(^_^;)

 えちぃシーンは終盤に一回。
 これも前半からの伏線が生きて、自然な形でシーンに移るようになってます。
 思わず「えちぃシーンあって良かったな、永遠」とホロリとさせられたり。

 CVは非公開となっていますが「まきい○み」さん……かな?
 舌っ足らずの特徴ある声なので「朱」の「ファウ」役と同じ方ではないかと。
 最初は少し違和感がありましたが、ゲームが終わる頃には、もうこの人以外には「永久」のCVはありえない、と思えるくらいしっくりきます。
 特に一番使われる「あう…」というセリフは、「クィーンオブあう」の称号を差し上げたいくらいハマりまくります(笑)

 エンディングは唐突にやってきます。
 ちょっと唖然。
 何故なんだ、永遠…(/o\)
 (累計8時間)

◆『てのひらを編』「穂」◆
 「まりあ」の妨害から、ティーハウス「ハーヴェスト」を守ることができるのか…?
 そして、気が強い性格の中に内包された秘められた想い、果たしてその想いは届くのか…?

 「穂」シナリオは、「永遠」シナリオをクリアしたのちにプレイ可能となります。
 一周目にはなかった選択肢が色々増えて、分岐できるようになります。
 ですが、「てのひらを編」のヒロインはあくまで「永久」。
 「穂」シナリオは、残念ながらサブ的扱いです。
 大半が共通シナリオで、ところどころ個別シナリオが入るという形です。
 でもこの個別シナリオ、短めなんですよねぇ(^_^;)
 お父さんが亡くなったときの経緯とか、「穂波」さんとの日常生活とか、もう少しエピソードが欲しかったところです。

 それにしてもこういう女の子、私の学生時代にも確かにいました。
 普段は口やかましく、喧嘩ばかりして憎たらしいのに、時折見せる純真な心。
 何気ないその仕草に、思わずドキッとさせられたり…(/o\)(遠い目)
 なので、短いながらも妙に感情移入して、テキスト読みながら自然とウンウン頷いてる自分がいました(笑)

 印象的だったのは、告白のシーン。
 気の強さと弱さが葛藤するシーンの描写は絶妙で、思わず唸ってしまいました。
 いやぁ、うまいテキストだわ(^_^;)

 えちぃシーンは終盤に一回。
 こちらも思わず「えちぃシーンあって良かったな、穂」と思ったり。

 CVは「奥森○由」さん……かな?
 「みずいろ」の「進藤さん」役をやった方ではないかと。
 「家族計画絆箱」の「末莉」にも似ている気もしますが…。
 シャキシャキした語り口が特徴的です。
 なので、役柄にビッタリのキャスティングですね。

 それにしても、「穂」の女の子バージョン、ちょっと反則でわ?
 思わず萌えちまったぞ(笑)
 (累計10時間)

◆『てのひらを編』「美花」◆
 今は亡きお母さん「一花」との約束。
 その約束通り、「美花」は花を咲かす事ができるのか…?

 「美花」シナリオも、「永遠」シナリオをクリアしたのちにプレイ可能となります。
 そして「美花」シナリオも、やっぱりサブ的扱いです。
 こちらも、お母さんが亡くなったときの経緯とか、お父さんとの日常生活とか、もう少しエピソードが欲しかったところです。

 実は、「美花」シナリオは一番感情移入できないと思ってました。
 我侭言いたい放題、人の迷惑は一切関係なし、うるさい、てなキャラですから。
 でも、その行動の裏にある、ささやかなメッセージ。
 自分に自身がもてない「美花」の精一杯の主張に気付いたときから、このキャラを愛おしく感じるようになるでしょう。

 印象的だったのは、花園のシーン。
 「美花」の笑顔が一番輝くシーンです。

 えちぃシーンは終盤に一回。
 思わず「やるな、明生」とか思ったり(^_^;)

 CVは……分りません。
 聞いたことあるような気がする声ですが…。
 でも、こちらも役柄にピッタリの声優さんです。
 「美花」の口癖「む…」の威力を最大限に引き出しているのではないかと。
 こちらの方にも、「クィーンオブむ」の称号を差し上げたいところです。(謎)

 それにしても「美花」が持ち歩いているあの謎のバッグ…
 あれは一体何で出来てるんだ?
 (累計12時間)

◆『てのひらを編』「永久トゥルー」◆
 「永久」「穂」「美花」の各シナリオをクリアしたのちにプレイ可能となります。
 「永久」シナリオの完全版に相当します。
 前半は最初の「永久ノーマル」とまったく同じシナリオなので、唖然としたエンディング以降の部分が実質の「永久トゥルー」シナリオになります。

 「明生」「穂」「美花」は『誓い』を守ることができるのか…?
 そして、永久の運命は…?

 このシナリオでは、メインキャラはもとより、サブキャラがそれぞれ要所要所で活躍して物語の厚みを増してくれます。
 特に「遅れてきた最後の友達」が登場するに至っては、思わず「やられたー」と感嘆すると同時に、改めてこのライターさんの只ならぬ力量を感じました。

 印象的だったのは、何と言ってもエンディングシーンですね。
 実はこの物語のエンディングは果たしてどの方向にいくのか、最後の最後まで気になってました。
 でも、こういう形で終わらせてくれて非常に満足しています。
 「永久」…本当にいい笑顔です。
 (累計15時間)

◆『たいように編』「凛」◆
 「てのひらを編 永久トゥルー」をクリアするとプレイ可能となります。
 もう一人の主人公「順哉」の視点で「たいように編」を補完するシナリオです。

 「たいように編」のシナリオのリズムは、いつもの「Clear」節という感じですね。
 個人的には『秋津環』さんの独特のギャグは結構ツボにはまります。
 (これ目当てにデフォ買いしてたりして…(^_^;)
 今回も健在ですが、「たいように編」は「てのひらを編」のサブ的な位置にありますので、少し控え目です。

 そして「てのひらを編」では割と「イヤな奴」に思えてた「順哉」。
 「もう、純粋な心なんて、持ってないよ」と自嘲気味に語る「順哉」。
 表面上はクールですが、でもその行動は結構熱かったりします。
 こちらのシナリオでは、逆に「明生」がガキっぽ過ぎるように映ります。
 うまくマルチサイトの特性を引き出しているシナリオだと感じました。

 「凛」シナリオでは、町の旧家の娘という視点から、この物語に関わっていきます。
 「順哉」とのコンビで、図書館で色々調査を進めていくうち、やがて自分の家の秘密を知ってショックを受ける「凛」。
 そして、心の負債を清算しようと決意するこの「友達になれなかった友達」は、やがて前向きに足を踏み出していきます。

 えちぃシーンは終盤に一回。
 「順哉」に勇気を貰います。

 CVは……分りません。
 こちらも聞いたことあるような気がしますが…。
 そして、こちらも役柄にピッタリの声優さんです。
 「順哉」を呼ぶときの「にいちゃん」の威力を引き出しています。
 こちらの方にも、「クィーンオブにいちゃん」の……以下省略。

 それにしても、海水浴のシーン…
 すくみずでスイカ割りは反則でわ?
 あぁ、お姉ちゃん属性が妹属性に引き戻されていく……(/o\)
 (累計20時間)

◆『たいように編』「更紗」◆
 こちらも「てのひらを編 永久トゥルー」をクリアするとプレイ可能となります。
 ひょんな事から「芙蓉の樹」にまつわる言い伝えを調べ始めた「順哉」「凛」「更紗」達は、やがて「さとりの伝承」に行き着き、驚愕の事実を知る事になりますが…。

 「更紗」シナリオでは、「謎のお守り」を持ち歩いている娘という視点から、この物語に関わっていきます。
 「順哉」とのコンビで、町のお年寄りから色々話を聞いて調査を進めていくうち、やがて「さとりの伝承」を知り、最後には「謎のお守り」の意味を知ってショックを受ける「更紗」。
 そして、すべてを受け入れようと決意して、やがて前向きに足を踏み出していきます。

 えちぃシーンは終盤に一回。
 やるときは、しっかりやります。

 CVは……乃田あ○実さん。
 うーむ、このお方が出演されている作品をプレイしたのは、今年一体何作目だろう…。
 今回はおっとりお姉さん風味です。
 聞いてて「はにゃ〜〜〜ん」て感じですねぇ……。(謎)

 それにしても、あのえちぃシーン…
 神の怒りに触れないのか?(笑)
 (累計24時間)


<総評>
 開始直後は、色々な部分で戸惑いがありました。
 いつもと違う雰囲気のシナリオ、ロリロリなキャラ、違和感のあるCV…。
 ひょっとして完走できないのでは?とも思いました。
 でも、プレイするこちら側の意識を、思い切り子供の頃の感覚まで下げてみると、この作品は最大級の破壊力を発揮します。
 そういう意味では、プレイする人が結構限定されてしまうかもしれませんが、たまにはこういう作品も良いものです。
 久々に後味の良いハッピーエンドを堪能できました。
 受け方によっては「泣き」もあるかも。

 作品の総合的な評価としては、シナリオ、音声、音楽はレベル高いと思います。
 原画は好みが分かれるところだと思いますが、この物語には合っているのではないかと。
 反面、演出面が少し弱いかなと感じました。
 いや、普通の作品であればこの演出でも充分だと思いますが、他の部分がなまじレベル高いので、ちょっと物足りなく感じます。
 特に「永久トゥルー」のクライマックスなんかは、映像的にもう少しインパクトが欲しかったところです。
 …少し欲張りかもしれませんが(^_^;)

 ちなみにこの作品の適性としまして、
 ・ノスタルジックな雰囲気は好き
 ・長めのテキストに耐性がある
 ・ロリキャラに耐性がある
 ・子供の頃、日が暮れるまで外で遊んでいた
 ・最近、心にゆとりがない
 ・最近、体が疲れやすい
 ・休みになると家でゴロゴロしている
 これらの条件を満たせば満たすほど、この作品にハマるでしょう。
 効能は……心が軽くなります(笑)


<お気に入りのキャラ>
永久 美花 更紗
シナリオ 12
性格 10 10
萌え 10 12 10
音声 12 10
CUP
えっちぃ
合計 57 52 47 50 53
 何と言っても『永久』ですね。
 (穂波さん攻略できれば拮抗したかも)


<10点満点での総合評価>
シナリオ 10 ノスタルジック伝奇物
原画 好みが分かれるかも 
CG なかなか
キャラ 10 ハマる人はハマる 
音声 10 最高のキャスティング
音楽 ノスタルジー
システム 問題なし
演出 心持ち弱い
エロ 純愛系だし…
ボリューム 10 総プレイ時間24時間
合計 90
  と、言う事で『9点』です。

最後に一言:「今度田舎に帰ったら、昔よく一緒に遊んだアイツの家に泊まりに行こうかな(/o\)」