Lost Paradise

佐伯祐司 第9章 「調教」







ぶちゅっ……ぶちゅっ……

ひどく生々しい音が部屋に響いていた。

床には無数の傷痕……

そしてその上にはパーの形に開くよう強制された白い手のひらがあった。

しかしときおりその指が、びくっと何かに怯えるように折れ曲がる。

そしてその都度…何かをこらえるようにして、もとの形に戻っていくのだ。

その姿はまるで罠に捉えられた鹿のようだった。

四つん這いになり、……あえぎ………悶える…。

葵くんは、それしかできなかった。



そして、それの尻の辺りには、前後にうごめく何かが突き刺さっていた。

グロテスクな……男の性器が直角に突き刺さっていた。

それが前後に動く……その度に葵くんという雌鹿はあえぐ。

あまりにも卑猥な生々しい音は、同時に尻からしていた。

葵くんの尻のあたりが濡れていた。

引かれる……………生々しい音がまた響く。

ぶちゅ…

それと同時にその切れ目から白濁とした泡だった液体を伴ってモノが出てきた。

それこそがこの卑猥な音を立てるものの正体。

僕と……葵くんの心を犯しているものの一つ。

「あぅっ! 」

葵くんが美しい声をあげる。

葵くんは尻を犯されていた。

それも無理矢理……。



葵くんは泣いていた。

「あぐっ!!…い……いやぁ! 」

……無理矢理、心をこじ開けられている。

そんな実感があった。 そんな痛みがあった……。

葵くんが…。

しかし、実際の行為はされよりも更に酷いように思う。



紫苑くんは卵を取り出した…。

卵を割って、自分の手のひらにそれの中身を乗せる。

一端、モノを抜き出し…卵の黄身の乗った手のひらに先端を置き…………

何度も犯され、パクパクと口を開くようになってしまった葵くんのアナルに狙いを定め……

それを中に押し込んだ!

「はぅっ!!」

そして何事もなかったかのように前後運動を繰り返す。

そして……すでにローションでどろどろになった

自分と葵くんの尻との結合部分に黄色い黄身の色が混じりだし始めた時……

「さっき何を入れたか分かるかい……?」 と聞く。

「………はぁ………はぁ……?」

息も絶え絶えに…苦しそうな顔をした葵くんが首を紫苑くんのほうに向ける。

「ほら!」

「!!…ああっ!!」

紫苑くんがモノを葵くんの中に押し込んだ。

「……はぁ……はぁ……」

「ほら!」

「あぐぅ!!」

再び……。



女にとって…犯されるとは支配されるということとイコールだった。

この場ではそう言う図式が成り立っていた。

それは…異常なことだった。

「黄身だよ……卵の」

「……!!……はぁ……そ…そん……な 」

葵くんが理解するのに若干の間があった。

「それ……じっくり……味わいなよ……」

「ほら! 」

「!!あぐぅ!! 」

「ほら! 」

「!!あぐぅぅ!! 」



あまりにも酷い犯かされ方だった。

これは水代 葵という女性を陵辱する目的の行為以外の何物でもなかった。

「だいぶ…身体に、卵の黄身が馴染んできたようだよ……姉さん… 」

「……はぁっ………はぁっ…お……お願い……や…めて…ねッ……紫苑…・お願い… 」

「ほら…… 」 紫苑くんは身体を引く…

ひくんっ!と葵くんの体が跳ねる。

「繋がっている部分が黄身の色に染まってきた……」

「!!や…めて! 」

しかしその声は弱い……。

「どんな気分なんだい? 」

「自分の尻の中に生卵の黄身を入れられている気分ってのは? 」

「や…め……てぇ!! 」

「そうか……そんなにいい気分なのか…」

紫苑くんはにやりと笑う。

ずりゅっ!!

「あぐぅ!! 」 



かりっ……

また床に一つ傷がついた。



紫苑くんはモノを一端抜き、近くに置いてあった鞄から何かを取り出した。

葵くんは不安で…泣きはれた目を紫苑くんの方に向ける。

ぱりぃ……。 ブルーを基調とした容器…。

それは……

紫苑くんはそのふたを開けている。

そして紫苑くんはその白い中身を、自分と葵くんの尻との結合部分にこぼした。

…そしてそれを自分のモノに塗りつけた。

「次はヨーグルトだよ」

「ひっ……! 」 葵くんは心底、青ざめる。

首を正面に戻し…目を見開いている…。

まるでこれからされることを心が受け入れる準備をしているように…。



紫苑くんはそんな葵くんを見て、満足した顔でうなずく。

「尻はいいよね…姉さん 」

ずりゅっ!

「ああっ!! 」

生卵の黄身に続いて、由記美の尻にヨーグルトが注入された。

「特に姉さんの尻はいい…最高だよ 」

「!!!! 」

紫苑くんはまるで何かに愉悦しているかのように虚ろな目をしていた。

その眼は…正常の域を脱し始めていた。



かりっ…。 床にまた傷が走る。

「あううっ! 」 葵君の意思に反して…、紫苑くんの行為に屈服した声があがる。

「いい気持ちだろ…滑らかな黄身とヨーグルトが身体の中に溶ける気分は 」

葵くんの尻から白と黄色の入り混じった液体が泡となってでてくる。

「どんな気分だい? 黄身とヨーグルトに尻の中を犯される気分は? 」

「…は…はぅっ……あうっ…」 葵くんはとどめなく涙を流す。



そしてまた、紫苑くんが鞄から何かを取り出そうとする。

(………まだ……何かするつもりか…)

僕は……歯をこれ以上ないくらいに噛み締める。

血が出るほどに固く固く、拳を握りしめる。



紫苑くんはそんな僕を横目で見ると、…笑った。

そして…ぴとっ…と葵くんの尻の穴に何かが当てられる。

「次はチョコレートだよ…」

「!!!!!!」

悪夢の宣告だった。

「も……もぅ………もぅ…やめてぇ!!!」

葵くんがありったけの力を振り絞って絶叫する。

だがその最後の力を振り絞った願いは、身体に突き刺さる感覚と共に踏みにじられた。

紫苑くんは一端モノを抜くと、その先端と葵くんの尻の穴のあいだにチョコのかけらをはさみ、

一気に葵くんの内部に押し込んだのだ。

そして葵くんの内部にチョコのかけらを埋め込むと、またモノを抜き…

再び、チョコの欠片を…葵くんの尻と自分のモノの間に挟み込み……、

ぐじゅっ……と押し込んだ。



「あぅっ!! 」

そしてまた抜かれる…

「もう……もう…や……め…て…」

ずりゅっ!!

「はぅ!!」

それが何度も何度も繰り返される。

チョコがなくなるまで……。

「…今までのものと違って、チョコは本当に狂うよ………」

「どういうことか分かるかい……姉さん? 」

「……………………」

「姉さんの身体の中で溶けるってことだよ。 姉さんの尻の中でね! 」

「姉さんの尻で溶けたそれは吸収され……姉さんの全身に周るのさ…」

「いや……いやぁ! 」



「そうだ。 想像しろよ。 僕が入れたチョコが姉さんの体全体を巡るんだよ! 身体の隅々まで! 」

「やだ!! 」

「姉さんがいくら嫌がっていても、もう遅いよ… 」

「姉さんは、もう僕を受け入れることしか出来ないんだ!! 」

「いやぁ!! 」

「それもただのチョコじゃないよ……とっておきの媚薬入りだよ…。ははは 」

「それが効いてくれば姉さんの全身に僕が…僕の気持ちが周ったってことだ 」

「姉さんが僕を受け入れたってことだよ。はははははは!! 」

いつしか…葵くんは四つん這いで立たなくなっていた。

そんな気力は失ったのだろう。

葵くんは自らがつけた床の傷痕の上に顔をあずけた。

そして……その傷痕を虚ろに眺めていた。

それは……葵君の心につけられた傷そのもののように見えた。



そして僕は………僕も…虚ろな心のまま…いたような気がする。

そんな僕は…壊れ始めていたのかもしれない。

目の前で、僕の大事な人を、その弟に凌辱されて…。







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佐伯祐司 第9章 「調教」