Lost Paradise

佐伯祐司 第8章 「後ろ」







葵くんの顔が苦悶に歪んでいた。

開いていた手は床を掴むように掻き毟るように立っていた。

紫苑くんは……とろけそうな顔で…愉悦していた。

その瞬間、僕の感情がはじけた。



「やめろ!! 」

僕は紫苑くんに飛び掛って、葵くんから引き離そうとする。

「せんせい…」 紫苑くんがつぶやいた。

僕はその言葉にとまった…。

「わかっていますね。 そこから先の行動は…

「今回の事に関しては、EDENは黙認しています 」

「僕の一人だけの遊びをサポートしてくれる形です 」

「ですが、先生がそのルールを破るとなると…彼らにも参加してもらう事になりますよ 」



僕は、その言葉にすさまじい圧力を感じた。

EDENの連中。 彼らがやってくれば、おそらく何でもやってのけるだろう。

この場で僕を殴り倒し、葵くんを拉致し、二度と姿を見せない。

それぐらいの事をなんのためらいも無く、恐ろしいほどの手際でやってのけるだろう。

彼らは、そういう…人種だった。

そうなれば今度こそ…。



葵くんが悲しそうな目を僕に向けてくる。

僕は…その目を…受け止める事しかできなかった。

葵くん……すまない………。 

僕は…何も…できない。



「わかってくれたみたいですね 」

紫苑くんが悪魔のような微笑を見せる。

「黙って…見ていてくださいね。 先生は大事な観客なんですから」

「目を逸らすことも許しません。 じっと見てください 」

「葵が…姉さんが、僕にどんな形で犯されるのかを…」

「僕に置かされる姉さんがどんな顔で喘ぐのかを…」

「本当に嫌がっているのかという事を観察してくださいね 」

「この苦悶に満ちた顔がどう変わっていくかを、ゆっくり見てください。

「僕はそれを知っていますけどね、はははっ 」

そして…紫苑くんはゆっくり腰をグラインドし始めた。



かりっ。床にもう一つ傷がついた。

「あ………あぐっ!! 」 葵くんの身体が前にずれる。

それを紫苑くんは腰をつかんで防ぐ。

葵くんの顔が苦痛に歪む……。

綺麗な葵くんの身体のライン……

その後方、丸くなだらかな尻にグロテスク極まるものが直角に突き刺さっていた。

「んぐっ!!…… 」 葵くんの頬を汗が伝う。

それは苦痛に耐える冷や汗だった。

ぽたっ………それが葵くんの顔の真下に落ちる。

その上に葵君くんの開いた手のひらが移動して来る。

かりっ……。その立てられた爪は葵くんの心に対するものだったのかもしれない。



「まだ、きついな……さすがに 」

紫苑くんは、そういうと床に置いてあった瓶のような物を手にした。

自分のモノと結合した葵くんの部分に、その中味をこぼす。

それは、どろっとした潤滑油のようなものだった。

そして、少しひねりを加えた。

「…………ぐ……!!……あぐっ!」 葵くんが苦痛にあえぎ、手のひらがずれる。

かりっ……。そこでまたあらたな傷がついた。

「……手は、ぱーだ。」 紫苑くんが宣告する。

「…………」 

葵くんは苦しみながらも、何とかそのとおりに保とうと意識をそっちに集中する。

恐らく…葵くんもEDENや僕を引き合いに出されて、命令されているのだろう。

そんな葵くんが…たまらなかった。



潤滑油が紫苑くんのモノとともに中に入り、そして出てくる。

ぶちゅ……思いきり卑猥な音が葵くんの肛門からする…。

紫苑くんが腰を引くたびに、葵くんの尻の肉が少しだけ引っ張り出される。

(こんなものを…見せるのか……)

(葵くんのこんな姿を…)



「あっ!!」 手が思いっきり開かれる。

……かりっ!! 床に傷が刻まれた。

「……!!………」

しかし……葵くんはなんとか手を折り曲げるのを第一関節だけにとどめる。

「……くくっ。健気だね、姉さん。……そんなに先生のところにいきたいのかい? 」

「それとも、EDENの連中を呼ばれたくないのかな? 」

「……… 」 

葵くんはただ、耐えている。

女として……これほどの屈辱はないと思う。

ペニスを尻に入れられているのだ……。

そして、それに抵抗することさえ、葵くんには許されていないのだ。

そして、僕にも…。



紫苑くんは自分のモノが突き刺さっている葵くんの尻の穴に指を這わせた。

「!!……」 葵くんはそれに、ただ耐える……。

つーーーーーー。紫苑くんの人差し指が葵君の尻の穴の周囲をなでる。

「!!……」 葵くんはそれにただ、ただ、耐える……。

これはもう、一方的な凌辱でしかなかった。

ただ、一方が……弱いものを嬲るだけの……舞台でしかなかった。

そしてその饗宴はまだつづくんだ……。



「!!あぐっ……」 あえぐ事しか葵くんにはできない。

尻に苦しいものが刺さっているのだ。

「姉さん……姉さん!!」

「!!……や!!……はぐぅぅ!!」 一瞬の拒否を示すも、苦悶にあえぐ。

「いとおしいよ………。」

紫苑くんは、そんな葵くんに両手を伸ばした。

尻から腰、そしてわき腹、胸……両手が伸びていく。

それを嫌がって葵くんの身体がくねる。

紫苑くんは、両手を胸から葵くんの髪へ伸ばした。

そして頭をつかむ。苦悶の表情をした顔が固定される。



紫苑くんは葵くんのウェーブのかかった髪をかき回す。

「!!…」 嫌がる。

「!!……やぁ。」  嫌がる。苦悶…。

「姉さん……姉さん! 僕の姉さん! 」

「?!! 」 悩ましげで悲しげで苦しみの極限の顔。

葵くんのそれは酷く被虐的な色合いに染まっていた。

無理やり起こされた色気……。

「そろそろなじんできたようだね 」

そういうと、紫苑くんはゆっくり葵君の後ろの穴を侵し始めた。

「!!あっ。」前に……

「!!あぅっ。」後ろに引く……。

「!!えぅ。」そしてまた前に………。

「!!はうぅ。…や…やめ…!! うぐぅ!!」

葵くんが犯される。

ぶちゅっ。くちゅっ。

あまりにも卑猥な音がそこから流れる。

紫苑くんのペニスが出入りする…葵くんの穴から、白濁した潤滑油が泡を立てて吹き出てくる。

あまりにも卑猥な光景。 そこに葵くんがいる…。 僕はただそれを見ている…。

「!!も…もう………やめてぇ!!」 葵くんがとうとう泣き叫んだ。



このあまりにも酷い儀式の対象になった、女性……。

葵くんはひとりの女性だった。

そして、紫苑くんはその女を犯し続ける。

酷く卑猥な音とともに。

…ぶちゅう。…くちゅう。

葵くんの夢が喰われていた。

もっとも酷い形で。もっとも酷い行為で。

「あぐうっ!!」

それは葵くんの生の声であり、生の心の叫びだった。







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佐伯祐司 第8章 「後ろ」