Lost Paradise

佐伯祐司 第7章「愚者







そこにはただ、背徳の光景があった。

紫苑くんがぺろぺろと葵君の素足に張り付いた蜂蜜を舐め取っている。

葵くんは抵抗するのを諦めたのか、紫苑くんの舌の動きに合わせて、時折、身体を反応させるだけだ。

「お願い……やめて………紫苑……」

紫苑くんは狂気の眼差しで、葵くんの太股をむさぼっている。

舌が尻にかかった時、僕は眼を見張った。

葵くんは…下に何も身につけていなかった。

紫苑くんはにやりと笑う。



そして、葵くんの尻の割れ目を丹念に、蜂蜜のついた自分の舌で撫でていく。

つっーーー。

「…!? 」 葵くんの顔が歪む。

紫苑くんはもう一度確認するように舌を這わせる。

つっーーーーーー。

「あうっ!? 」 葵くんが先程よりも大きな反応をする。

「気持ちいいのかい…? 姉さん?」

「はぁ……はぁ………」 葵くんは恨めしそうな顔で紫苑くんを見る。

そんな葵くんに、紫苑くんは態度で返す。

尻の双丘を両手広げ、葵くんの……すぼみに舌を這わせた。

「やっ!? 」

紫苑くんは葵くんの尻の部分を、舌の先でつつくようになめまわす。

「や…めて……お…願い…」



「葵……四つん這いになるんだ 」

紫苑くんは再び、そう命令した。

怯えた顔で…葵くんは戸惑っている。

くそっ!…何てことだ…。

葵くんを救うためには、手出ししてはいけないんだ…。

黙って……見てられるものか…。

紫苑くんと、ふと目があう。

彼は嘲笑していた。

(………僕が苦しむのを…楽しんでいるのか… )



「どうしたんだい? 姉さん 」

紫苑くんは姉と言ったり、葵と呼び捨てにしたりする。

姉を支配している…それを実感したいのだろうか…。

いや、おそらくは、葵くんと僕に、それを知らしめるためなんだろう。

「早く、四つん這いになってくれよ……いつもみたいに 」

その言葉を聞いて、葵くんの顔が悲しみに満ちる。

くそっ!……僕に聞かせるためにそんなことを…。

いや、僕はいい。

たまらないのは、それを僕に告げられて、葵くんが苦しむことだ。

紫苑くんは、きっと・・・それも承知の上なのだろうが…。



悲しそうな顔をした葵くんを、紫苑くんは本当にいとおしそうに見る。

それを見て、僕は気づいた。

きっと……紫苑くんは本当に葵くんの事を慕っているのだろう。

だが、葵くんが僕に心を向けるようになって、その気持ちの行き場がなくなったんだろう。

だから、暴走した。

それだけ、彼は葵くんが自分に向けてくれる気持ちに、心を頼っていたのだろう。

そういえば…誰かが、葵くんは紫苑くんを溺愛といえるぐらいに可愛がっていると言っていた。



この、誰にも良いものを与えない、醜悪な劇を終わらせなければいけない。

僕はそう思う。

この目の前で繰り広げられている酷い光景を最後にしなければならない。

この劇の一員となっている僕にはそれが出来るはずだ。



まず……床に…てをつく。

葵くんの手……

右手から……

そして、左手も……それに添えるように……。

そして、ストッキングもはいていない、剥き出しのひざをついた……。

「尻をこっちに向けるんだ…」

「うぅっ…」 葵くんはそれに従う。

「もっと高くだよ、姉さん。 それじゃあ、入れられないじゃないか」

その言葉に葵くんの体がびくッと反応する。

「何を……」 するつもりだ…

僕は血を吐くような言葉を飲みこむ。



葵くんの姿を、紫苑くんはこの上なく慈しむように見る。

葵くんは紫苑くんの言われるまま、四つん這いになってふるえていた。

紫苑くんは・・・葵くんをじーーーーっと見つめ始めた。

あらゆる方向から、あらゆる所を。

「い…いや。 見ないで……お願い……」

そんな紫苑くんに葵くんは羞恥心を覚え、身体をもじもじさせ、手をすぼませる。

「手は開いて 」 紫苑くんの命令が飛ぶ。

「……」

「開くんだ、姉さん。 紅葉のように」

そして葵くんはそのとおりに動く。

ぱーの形にして、葵くんは床に手をつく形になる。



その時、紫苑くんが異常なほど葵くんの尻に関心を向けている事に…僕は気がついた。

紫苑くんは葵くんが全く気づかないほど、ひどく優しく、慈しむように、

葵くんの尻の割れ目をそっ…と羽毛でなでるかのように、

それこそ触れるか触れないかわからないぐらいに密かに、

全神経を集中させるかのように、ゆっくりと…時間をかけて……上下に愛撫していた。

それは異常なぐらいの関心度だった。

紫苑くんの羽毛のような愛撫に反応してか、葵くんの尻がわずかにぴくん…と反応した。

あまりにもささやかすぎる自分の身体の反応に葵くんはまったく気づいてなかった。



「楽しみだよ。 佐伯先生の前で…姉さんが、どんな声で鳴いてくれるのか」

さらっとそういうと、紫苑くんはゆっくりと一物を取り出した。

「や……やめろ!! 」

僕は自然にそう反応する。

それは、恐ろしいほど屹立と脈打っていた。先からは透明の液体が少し漏れていた。

「姉さん…これ……なんでこんなになっているか、わかるかい? 」

葵くんはふと、そちらに眼をやると、見ないように目をつぶった。

「……………」 葵くんは応えない。

「姉さんの身体を見て興奮してるんじゃいよ。

 これはね………佐伯先生の前で、姉さんを汚せるの嬉しくて、そのことに興奮してこうなってるんだ 」

「……!! 」 言葉が楔となって僕と葵くんの胸に突き刺さっていく。

それはこれからも続く背徳の行為に対して…

「今から、姉さんを汚すことに期待してこうなってるんだ 」



紫苑くんが葵くんにさらに身体を寄せる。

「い!……いや! や……やめて! こないで… 」

しかし、紫苑くんは葵くんの腰を両手でつかむと……。

「先生のところに戻りたくないのかい? 」 といった。

葵くんの身体がびくっ!と動いた。

「ふふっ、そう。 そういう風に人形みたいにおとなしくしてるんだよ……。

 嫌がることは許してあげるから、動かないで……… 」

なんて酷い言われ様だろうか…。

抵抗する事は許されない…。ただ、泣き叫べと言っているのだ…。

葵くんは、手をひろげて床につき、膝をつけずに腰を高く上げ、

心持ち内股になって四つん這いになっている。



『その床には爪の跡がいっぱい残っていた 』



今、そこは傷一つない綺麗な床だった。。

そこに葵くんは手をついている。



「あっ! 」 葵くんは声をあげる。

紫苑くんの一物が葵くんのスカートに触った。

先が、スカート真ん中辺りをついている……。

ちょうど、太股の間だった。

その先には、葵くんの性器がある。

スカートが邪魔をして、そこに届かない……。

そんな感じだった。少なくても、僕はそう思った。



紫苑くんはそんな僕や葵くんの心を知ってか知らいでか、一物をスカートに押し付ける。

やはり、葵くんの性器には届かなかった。

僕も葵くんも少しほっとしたのだろう。 緊張が緩んだ。

少なくても、最悪の時間はまだ少し延びそうだった。

しかし、紫苑くんはそんな僕達の事を笑っていたんだと思う。。



葵くんは息をつく。

紫苑くんはもどかしげにスカートに先を押し付ける。

その時、紫苑くんの一物の濡れた先が、すっと生き物のように……

葵くんのスカートの上を……

上の方向に……すべった!!

一物のすべったその先には……

尻の割れ目があった……。



『その時、何回目かの傷が床についた。

床は濡れていた。

水じゃない、温かな液体だった 』



かりっ!綺麗な床にひとつ、傷が走った。

その傷の上には……何かをつかむような…握りしめようとするような形をした、手があった。

その床に汗が落ちる……。

それは心地よさとは無縁の汗…

それは涙に似ていた。



………………突然、悲鳴が一つ起こった。

それは声にさえならない悲鳴だった。

「あぐぅっ!!!!!!!」



ずむっ!!僕は確かにそんな音を聞いた気がした。

…………………………

葵くんの尻に、紫苑くんの一物が突き刺さっていた。

性器よりも…もう少し上のように思う。

(まさか……本当に…)

紫苑くんの一物…・・その先には……葵くんの尻の穴しかなかった。



かりっ。床にもう一つ傷がついた。

「あ………あぐっ!!」 葵くんの身体が前にずれる。

それは………肛姦といわれているものだった。

少なくても正常な行為ではない。

僕はそんな行為を強要される葵くんを、ぼーーっと眺めていた。

そしてそれは、葵君の尻に対する、容赦のない徹底的な調教のはじまりでもあったのだ。







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佐伯祐司 第7章「愚者」