やめます、ハードウェアメーカー

普通ゲーム機の製造中止のような出来事は、世代交代がある程度進んだ頃ひっそりと報じられるものだと思うが、今回は違った。
もちろん、SEGA"Dreamcast"(以下DC)製造中止の事である。
何故、SEGAはここまで敗北してしまったのか?
ここでは私見(偏見)を大いに交えて考えてみる。

そのゲーム機は前世代"セガサターン"(以下SS)での敗北を受けて、起死回生を図るべく大胆な戦略を以って登場した。自虐的な内容のCMを流し、マイナスイメージからの脱却を図ろうと今までにないカラーを多用したが、結果として多くのユーザーに受け入れてもらう事はついにできなかった。発売当初に生じた一部プロセッサの大量不良による供給不足や、初回ソフトウェアラインナップの貧弱さといった問題が起きた事も影響があるにはあるだろうが、こうした事はどのハードでもよく聞かれる話で結果としては理由にはならない。それはPlayStation2(以下追伸2)でも多くのトラブルが伝えられていながら売れている事からもいえるはずだ。
では何が問題か?SEGAという会社が持つ体質なども色々いわれるだろうが、まず一般的にいわれている事として二つあげてみる。
一つ目はやはりソフトウェア不足である。それはファイナルファンタジー(以下FF)やドラゴンクエスト(以下DQ)といった大作ロールプレイングゲーム(以下RPG)を取り込めなかった事に代表される意見である。今回の報道でもDCについての街頭インタビューを聞くと、判を押したように「面白いソフトが無い」というある意味意図的とも勘繰りたくなる程同じ意見がまとめられていた。
二つ目はハードウェアの特色であるが、追伸2のポリゴン描画能力と下位互換、そしてDVD再生機能といったものと見比べた場合の魅力薄なところがある。DCはモデムを標準装備して安価でインターネットを楽しめるハードという特色は持ってはいたが、通信などのインフラが高価かつ不充分な現状と、ネットゲームそのものの未成熟さもあって十分に機能を果たせず、ようやく「ファンタシースターオンライン」というネットゲームのキラータイトルを得るも、時既に遅しの感が強いのはご承知の通り。
だが、以上の点というのは果たして敗北の最大の要素たり得るのか、自分には疑問である。
一つ目については、追伸1及び2のセールスの状況を見れば、実はゲーム業界そのものが縮小傾向にあるという事が伺えるからだ。ハードウェアのけん引役にFFやDQにすがるという、いつまで経ってもそんな化石タイトルに頼っている現状が情けない。こうしたタイトル以外ではついにミリオンセラーとなるようなものが現れず、数十万本単位で売れたものも続編ものなどが中心で、ユーザー側の保守化もますます顕著である(携帯ゲーム機での状況は今回は割愛する)。そんな状況でソフトハウス側に冒険できる余裕などそうそう生まれる事も無いだろうから、ますますタイトルが手堅いものばかりになってしまう。そんな中でSEGAは斬新であったり、その実結構無謀とも思えるようなタイトルをいくつか出している。少しタイトルを列記すると、有名なところでは「サンバDEアミーゴ」「スペースチャンネル5」、他に「クレイジータクシー」「ジェットセットラジオ」、私好みでは「ルーマニア#203」と、他にもあれもあるぞという意見もあるだろうが、取りあえずあげたこれらは結構評価も高く、プラットフォームが違えば、良くも悪くももっと認知されていたであろうものばかり。。.である。だから追伸2に比べてDCは「面白いソフトが無い」という認識は偏見であって、実はゲームそのものに対する期待が一般的認識として低下していると考えるほうが正しいと思える。 。
それから二つ目についてだが、描画性能の優位は後発の強み、下位互換はやはり魅力があるのは事実として、DVD機能についてだが、これは逆に無くてもいいというのがここしばらくの考えである。CD−ROMが登場した時、当初から音楽CDが聴ける機能は大体どのハードも有していたが、それをわざわざ売り文句にするような機種は無く、またそれに期待するユーザーも皆無であったろう。
だがSONYはわざわざこれを喧伝するセールスをした。これは今見れば余計な事だったと思っているクリエイターが実は多そうな気がする(あくまでも気がする)。もう想像はついてると思うが、ゲーム目的で追伸2を買う人の少ない事少ない事。追伸2はDVDビデオの市場拡大には大いに貢献したが、自らの存在理由であるゲーム市場を食ってしまったのだ。音楽CDならば別の機器でかけながらゲームをするという共存もできるが、ゲームとDVDビデオをモニター2台並べて同時にプレイするというマヌケな状況はそうはあるまい。こんな自己矛盾を抱えるくらいなら、オマケ程度にカタログの片隅に紹介するか、いっそその機能を外した方が身の為である。その意味で任天堂の次世代機である"ゲームキューブ"の選択は如何にも同社らしい思想で、今回ばかりは正しい判断と評価できる。
ではDCのモデム機能はそうした観点から矛盾があったかといえば、そうともいえる部分はあるが、ゲーム目的での利用がある以上必ずしも無駄ではなかったと思う。それは今後登場する何れの機種でも何らかの形で採用されている辺りからも明らかといえるし、酷な言い方になるが、その意味でDCは家庭用ゲーム機におけるネットゲームのカナリヤ的存在となってしまったといえるかもしれない。
さて、以上の二つが敗北の主因と考えないのなら、何があるのか?
それらは上記要素の要因でもあるのだが、多くを語ると空虚になるので一言で。
ブランドイメージ」の敗北。
今後のSEGAにはコンテンツ提供企業としての再スタートにあたり、そのソフトウェア開発力を今まで食わず嫌いをしていたユーザー達に見せつけてもらいたい。今度はSEGAがハードウェアのシェアの決定権を握るメーカーになってくれる事に期待したい。
でもやっぱりSEGAのハードでSEGAのゲームをする事が難しくなってくる事は悲しいけどね。DCの発色の良さとローディングの速さは追伸2には無いしなあ。

何とも感傷的な内容であったが、最後にもひとつくだらない事をば。

 黒くてデカくてフロントローディングのマシンはスタンダードになれない

というジンクスがあると自分は勝手に思っている。
これら何れかの要素にかかった機種は悉く失敗している、という歴史的事実。
悲しいかな、3D0、NEOGEO−CD、メガCDは条件をすべて満たしている。
黒いという要素では、Nintendo64、マスターシステム、メガドライブ、ジャガーなど。
デカいという要素ではPC−FX、SSなどがあげられる。
さて、追伸2及びこれから登場するX箱もこの条件に見事にクリーンヒットしているが、このジンクスを跳ね除けられるか、ひそかな楽しみにしている。(何て底意地の悪い奴)
そういやDCはどれも引っかかってないなあ。まあ、例外もあるという事で・・・。

[reports-05] 2005.08.15再編