1998.12.14
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◆タマのアンプ◆
朝起きて、自宅の2階からの階段を降りる途中でふいに突然、累積状態の私的懸案事項群が竜巻のごとく一斉に頭の中を渦巻いて、それ以来気分は急激に萎え萎えとなり、へろへろの鬱週間の気配である。先週のリバウンドかも知れぬ。
いつもの事ではあるけれど、こーなると、なんだかみーんな空しくなってしまうのである。
ところで気を取り直して、頼んでいた管球アンプのキットの話しである。
昨日の昼前に我が手に届いたのであって、電話番号しか知らなかった販売店の市外局番093は遠く九州博多の局番であった。
改めて、♪はーるばるきたーあぜ・・・♪という雰囲気なんである。黒猫さんごくろうさま。
早速組み立てを行った。
たっぷり半田付けをやって、久しぶりにリード線の皮剥きもやって、間に散歩をさせろと騒ぐ2匹の犬の散歩を挟んで正味3時間のお楽しみで完成であった。
俺って天才?
やってることの意味も分からず、ひたすら半田付け労働者に徹しただけなんだから、ひとえに組立説明書をつくった人が偉いのである。
一応これが組立前の部品群と、チープでレトロっぽい梱包の箱。実は日本語文字は左から書いてるところがご愛敬。
![](PIC00015.jpg)
そしてこれが完成後、オプションのノイズ低減コンデンサ含み税込み送料共21,800円也の可憐なお姿である。
![](PIC00017.jpg)
電源を入れると2本の真空管にホンワリと明かりが灯っちゃって、2本のスピーカーからちゃんと音が出た。
真空管といえば、昔ムカシの幼少のみぎり「赤銅鈴ノ助」を聴いたラヂオや、高校生の時使ったステレオポータブル電蓄のイメージで、スイッチを入れたあと暫くしてからブーンとハム音が聞こえて来るもんだと思っていたら、ブーンもフーンも無く、CDのソースが鳴り出するまでは組立失敗したかと思ったほどS/N比がよろしい。これも技術の進歩か。
とはいっても所詮2W/ch、音の力が不足で重心が高く、特に低域が物足りない。
そのかわり中高域はなかなかしっかりした音が出る。
それではってんで、12帖居間から部屋を移動して、アタシの3.75帖巣窟状態の隠れ部屋で鳴らしてみたら、これがなんとも艶っぽく、信じられないほど透明で張りのある良い音を奏でるのであった。中国製の真空管侮り難しである。
旧ソビエトでは真空管でジェット戦闘機を飛ばしてたって話しだしな。
いずれ、こーいった器具は、それなりの特性に適した使い方をすれば、かなり魅力的な実力を発揮する事を再認識したのである。
オーディオはCDプレーヤーの普及で趣味という市場を失った。と思ってるけど、アタシの持論としてもう一つ、アンプのスイッチング電源の利用が普及価格帯の見せかけの音質向上を実現し、オーディオ不況を決定的にしたと思っている。
一応解説すれば、スイッチング電源というのは半導体技術をつかった電源強化技術で、詳しい事は昔そっちを仕事にしていた友人から説明を受けたけどもう忘れてしまった。
とにかく、大きく高価な電源トランスを使わなくても必要充分な電力を回路に供給出来るって技術であり、オーディオアンプで利用すれば、安価小型でパワフルな低音が得られる願ったりかなったりの技術なのである。
ただし、当然旨い話しには裏があるし、効く薬ほど副作用が強い訳であって、コレを使うとその特性としてパルスノイズの発生という問題を抱え込むこととなり、高級オーディオ等のクリティクルな世界ではそれによって音の濁り等の問題が出るため、結構毛だらけとはいかないのである。
とはいっても、まああんまり細かい事を議論する必要の無い音楽を聴くための、実用品としての道具の場合はその恩恵は大なのである。
昔は安いアンプといえばヘナヘナシャラシャラした音しか出なかったけれど、今じゃ安モンのアンプでも電源強化の恩恵で、見事締まった低音が出せるようになってドガスカシャラシャラになってしまっている。
おかげで、ドンシャリであれば魅力的に聴こえる音楽を支持する大多数の消費者をすっかり満足させることとなり、音質向上思考的購買意欲の殆どを失わせたところである。
その結果、大半の大手家電メーカーのオーディオ商品は壊滅し、唯一残った低下価格帯商品は音質の勝負による差別化は二の次となり、機動戦士ガンダム風や安物インテリア家具風の風貌勝負となってしまっているのが現状。
音質で直球勝負するぞ的純情可憐純朴な違いが分かる大人をくすぐる製品はこの価格帯には殆どなくなっているのである。
そんな世の中だから、今回のアンプは、オールマイティーな性能ではないけれど、使う条件さえ限定すれば市販品には無い強烈な魅力を発揮する逸品であると思って結構惚れてしまったのである。
これってなんだか、人物評価との同義性を感じてしまう話ではあるな。
ところで、真空管アンプの事を球のアンプといいまして、相対するトランジスタ等半導体アンプを石のアンプと言うわけですが、タマに対する石って膀胱や腎臓に貯まる石の事かい、と人間ドック帰りのアタシとしてはつい連想してしまう訳である。
ちなみに今回組み立てたアンプ、ちゃんと玉は2個であった。
この世界踏み込んでしまって、なんだか癖になりそな気配で危なくなってきた。
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