■今シーズンに、今まで2回行って1度の当りも無くて、ホントにこの川には魚が居るのかよ?いや、居ることはいるみたいだけれど、絶対数が少なすぎるんじゃあないのか?漁協は遊魚料でちゃんと放流してんのか?という、自分の腕前を棚上げした疑念を深めつつあった志戸前川に3度目の挑戦である。
不満を抱えながらも未練があるのは、狭すぎず、広すぎない川幅と、過度なストレスを感じさせない穏やかな流れと、周囲に広がる豊かな自然景観が形作る渓相が好きだからなんだと、改めて思う。
3度目の正直か、2度あることは3度目なのか、いずれ今回だめだったら、この川での今シーズンはもう見切りをつけるつもりだったのである。
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前日の夜に届いたSAGEの新しいロッドは、はっきり言ってうまく使いこなせなかった。
ロッドのパワーが空回りして、ラインを失速させてしまうこと度々。
やはり今の腕前では、初心者用がちょうど良いのかもしれない。さっきまで、釣れない理由を川のせいしていた気持ちがちょっと揺らぐ。
相変わらず反応が無いまま、前の晩に思いつきで巻いてみた、アントパターンのいつもよりかなり大きめのフライをやけくそ気味に選んで、アップクロスで投げ込んでみる。
比較的浅瀬の流れに揺れながら流れていたフライが沈んで、急に重くなったラインが、ブルブル揺れるロッド越に手に伝わってくる。ついに約5年ぶりの志戸前川の魚である。
一瞬見えた波間でもがく姿はイワナ模様のようであり、針から必死で逃れようと泳ぎまわって抵抗する姿はヤマメのようにも思われた。
グイグイひかれて大きくしなるロッドに目をやると、ついロッドの値段が頭をよぎる。
今まで買った中で、一番高いヤツだよなあ、コレって。もしこれで折れたらどうすんだ、修理はアメリカ送りだよなあ・・・。
逃げようと暴れる魚を力任せに抑えようとしていた力が、竿をいたわって一瞬躊躇する。
背中のランディングネットを外して掴みながら、ラインを持ち換えて引き寄せようと、一瞬支えていたテンションを緩めた瞬間、そのタイミングを見透したように、フッと竿が軽くなる。
そしてそれっきりであった。
たまたま、バーブレスフックで巻いたフライだったことを思い出す。
どうせリリースするつもりだったからなあと、心の中で納得しようとする。当然納得できるはずもないのだけれど。
せいぜい、20cmをちょっと超えた程度のハズ、いや、もう数センチ大きかったかもしれないけれど、記憶の中で蘇る魚はさらにどんどん大きくなっていく。
次で挽回を、と思い直してさらに釣り上がるも、ヒットしたフライは程なく木の枝に引っ掛けて無くし、フライボックスに残っていたいつもどおりのフライパターンには全く反応が無く、結局その日はそれだけであった。
リベンジしないと気がすまない思いが静かに沸騰しつつあるのを感じながら、約5年ぶりの復活がこの先当分醒めそうもないことをも予感。
志戸前川とは、今しばらくお付き合いを続けることになりそうである。