サクラソウを探しに〜絶滅危惧種を追って〜




日本で見ることができるサクラソウ科のサクラソウ属は26種類あります。 そのうち19種類が絶滅危惧種(レッドデータブックに記載)とされています。 その姿形がかわいらしいため、盗掘されたり、また自然破壊で消え去ろうとし ているのです。なくなってしまう前に何とか記録として残しておきたいと思い、 日本中を飛び回ることになってしまいました。 この花の魅力は一体何なんでしょう? たぶん、その場所にしかないという固 有種が多いこと、そして背丈の割に花が大きい、いわゆる高山植物の典型的な タイプが多いから、そして数が少なく、なかなか見つけられないからかもしれ ません。何よりも大好きな北海道に9種類もあるのも原因の一つでしょうが。 サクラソウ属ではありませんが、その姿形がかわいらしく日本で一番探すのが 難しいかもしれないサクラソウ科トチナイソウ属のトチナイソウ、そしてサク ラソウ属にとても似ているサクラソウ科サクラソウモドキ属のサクラソウモド キも追いかけてみました。

***今までに出逢うことが出来たサクラソウ達***

<エゾオオサクラソウ> オオサクラソウの北海道版という感じでしょうか。名前通り北海道でしか見ら れないそうです。はじめ、草丈が少し大きめということもあって、この花には あまり期待をしていませんでした・・・ 2000年5月26日、今年1回目、通算14回目?となる北海道遠征に出掛けま した。この時の目的はずばりサクラソウ!! 金山湖、新冠川、そしてアポイ 岳を周り、サクラソウ5種類とおまけにアポイ岳(襟裳岬の北西にある標高8 00mほどの山)では絶滅危惧種のヒダカソウも見てしまおうという欲張りな 計画でした。2泊3日という短い日程だったので忙しかったです。2回目とな るアポイ岳にてこの花に出逢えました。前回は時期が遅く、ほとんどの花が終 わっていたため今回は時期を早めてみました。アポイ岳を登り始めるとすぐに この花は見ることが出来ました。樹林下にてひときわ鮮やかなピンク色がきれ いでした。最初はポツポツと、次第に一面に咲くその姿は見事でした。もちろ ん、ヒダカソウにも出逢えました。−2000年5月下旬 北海道アポイ岳−
<サマニユキワリ> 様似とは北海道のアポイ岳周辺の地名のようです。このアポイ岳は標高800 mと低いながらも非常に多くの固有種があります。ひとつは超塩基性土壌とい う、通常の植物にとっては生育しにくい環境だからだそうです。とても好きな 山であるアポイ岳にしかないのが、この花です。馬の背付近より上に行けば普 通に見られます。何より群生した姿がとてもきれいでした。 −2000年5月下旬 北海道アポイ岳−
<ユウパリコザクラ> 2年程前の6月下旬、北海道のアポイ岳と夕張岳に花探しに出掛けました。こ の年は季節が1ヶ月ほど進んでいたため、標高1700mの夕張岳でも多くの 高山植物に出逢えうことができました。シソバキスミレ、ユウバリソウ、ナン ブイヌナズナ、そしてユウパリコザクラにも。しかしこの時期の夕張岳は熊の 出現が大変気になり、鈴を鳴らして笛を吹きながらという少々格好悪いもので した。偶然に見つけることが出来たユウパリコザクラの前でしばらく呆然とし たものでした。この時、山で出逢ったのはたったの3人でした。そのうち1人 が熊だったら・・・^^; −1998年6月下旬 北海道夕張岳−
<ソラチコザクラ> 今年一番苦労して見つけたのがこの花です。北海道空知地方にしか見られない というこの花を探しにわざわざ出掛けたのです。手掛かりになるのは、空知川 上流の金山湖と新冠川上流でした。はじめに訪れた金山湖では、既に数年前に その姿を消してしまったと聞き、次なる新冠川へ・・・ 新冠川といっても何十キロもある川のどこにあるんだろう・・・と車で走るこ と?時間、探せど探せど見つからず、諦めかけて降りた崖の斜面にてこの花の 群生に出逢えました。ところが時期既に遅く、新鮮なものは崖の上の方に・・・ 崩れやすい岩だったため、登れることが出来ませんでした(T_T) またいつか行ってみたいです。−2000年5月下旬 北海道 新冠川流域−

[追記]9年越しでの再会です。ちょうど満開の姿に出逢うことが出来ました。右の写真−2009年5月中旬 北海道 ピセナイ山−
<ヒダカイワザクラ> 日高とつくだけあって、北海道の日高山脈でしか見られないものです。日高山 脈の一部であるアポイ岳にて、この花を見ることが出来ました。今年の5月下 旬、アポイ岳の山頂近くの岩場にサマニユキワリと共に咲いていました。草丈 の割にずいぶんと花が大きく、サマニユキワリより派手に感じられました。 −2000年5月下旬 アポイ岳−
<コイワザクラ> 今年、一番早い時期に見たサクラソウがこれでした。富士山の眺望地である三 つ峠に出掛けたのは、5月の連休、標高1500mのこの地はまだ冬の形相で した。あきらめかけていた下りの道で、岩に張り付くこの花に出逢えました。 連れていった山の仲間も大喜び!? で写真を撮りまくりました。 −2000年5月上旬 山梨県三ツ峠−
<シナノコザクラ> 昨年の4月下旬、静岡県の大井川源流にこの花を探しに行きました。本で調べ た場所では結局見つけることが出来ませんでした。たぶん、盗掘で全滅してし まったのでしょう(>_<) 別の情報を頼りに、数株の個体に対面できました。 ところが、この場所も昨年の工事でなくなってしまったとのこと、非常に残念 です。今年もこの花に2回挑戦しました。山仲間のタニシさんが是非見たいと のこと、とある情報を頼りに、山梨県の釜無川上流と、尾白川川上流にチャレ ンジしました。でも、結局見つけることが出来ませんでした。 どうやら、なくなってしまっていたようです・・・  また、来年行かないとなあ^^; −1999年4月下旬 静岡県大井川源流−

早いものであれから20年、2019年5月19日に一緒に探したタニシさんと再挑戦しました。 南アルプス林道の脇にひっそり咲いている姿に再会出来ました!!
<クモイコザクラ> 十文字峠にあるということは以前から聞いていたのですが、清里にもあること を知り、早速出掛けてみました。例年はGW頃に見られるとのことでしたので、 そろそろかなと思い、5月12日に訪れたところ、まだ蕾でした^^; 気を取り直して5月20日に再挑戦!! 雨の降りしきる中で、ちょうど満開 の姿に出くわすことが出来ました。水の滴る岩壁に健気に張り付いていました。 −2000年5月20日 山梨県清里−
<チチブイワザクラ> 埼玉県、秩父市の武甲山、石灰岩の産地であるがためにその山は削られ続けて います。ここでしかみられないこの花は、生育地を奪われ続け、今ではほとん ど自生していないようです(>_<) 昨年の4月下旬、特別な許可を経てこの花 に出逢うことが出来ました。−1999年4月下旬 埼玉県武甲山−
<ミチノクコザクラ> みちのく(陸奥)といえば読んで時のごとく本州の北の端ですね。青森県岩木 山、ここにその花はあります。今年の6月下旬、早池峰山との連続登山のため、 盛岡からレンタカーを借りてひたすら北上し、岩木山に登ってきました。ロー プウエイの整備されている観光地で、他の花は全くありませんでしたが、雪解 けしたばかりの池の周りに群生していました。いやあ、壮観でした。これだけ の群生は初めてでした。若干終わりかけでしたが満足でした(^^) −2000年6月下旬 青森県岩木山−
<エゾコザクラ> 蝦夷とつく花は結構多いものです。でも、蝦夷が付きながら本州で見られるも のも結構あります。でもこの花は、北海道でしか見られません。小型ながら、 とても濃い花の色が印象的です。今年の2回目の7月下旬、大雪山にてちょう ど最盛期のエゾコザクラに逢えました。−2000年7月下旬 北海道大雪山−
<ヒナザクラ> 東北地方でしか見られないヒナザクラ、花の色は白で背が非常に低いため、う っかりしたら見逃してしまうほどです。数年前の栗駒山で初めて見ました。雪 解けと共に群生する姿は白いジュータンのようでした。 −1996年7月下旬 宮城県?栗駒山−
<クリンソウ> 山の麓でよく見ます。背丈も大きく、花は何段にも段に咲く姿から九輪草と呼 ばれています。これは可哀想ですが、見付けてもあまり感激しません^^;
<カッコソウ> 5月に入り、カッコウが鳴く頃になると咲き始めるために、この名前が付いた ようです。群馬県、鳴神山でしか見られないこの花を今年の5月14日、山の 仲間のタニシさんと一緒に探しに行きました。この山は、何とも湿度が高い山 で汗だくになりながら登りました。そして登山道の脇にロープによって保護さ れてはいましたが、かなり多くの個体に出会うことが出来ました。樹林帯の下 ということと、露が降りていたため写真はいまいちでしたが、同時にナルカミ スミレやヒトツバエゾスミレにも会うことが出来ました。 −2000年5月中旬 群馬県鳴神山−
<ミョウギイワザクラ> 群馬県の妙義山、その岩の競りたった独特な景色で有名な山、そこにこの花は あるようです。昨年に続きリベンジ!! 断崖絶壁の鎖場と戦いながら、ようやく 逢うことが出来ました。−2001年4月下旬 群馬県妙義山−
<レブンコザクラ> 花の浮島「礼文島」のベストシーズンである6月上旬にようやく訪れることが 出来ました。何しろ休みづらい時期ですからf^^; この時期に訪れれば、雑草のように至るところでこの花に出逢えます。海岸線 を車で走れば、岩壁がピンク色に染まっています。花付きがとても良く、鞠の ような花も見られます。色も鮮やかでとても可憐でした。 −2001年6月上旬 北海道礼文島−
<テシオコザクラ> 北海道の天塩川流域でしか見られないこのサクラソウは、幌延町にある問寒別川 流域の蛇紋岩崩壊地で見つけることが出来ました。その場所は今にも熊が出そう な山の中で、熊に遭うのが先かテシオコザクラに逢うのが先かというサバイバル ゲームでした。大きな鈴2つをザックに付け、笛を吹きながら歩きましたが・・・ 川沿いのため蚊の襲来もあり、落ち着いて写真を撮れるような状況ではありませ んでした(>_<) −2001年6月上旬 北海道幌延町−
<ユキワリソウ> サクラソウの中で、もっとも早く咲くのがこのユキワリソウです。雪解け早々 に咲く姿からこの名前が付いています。薄いピンク色の花で、他のサクラソウ に比べると少々地味な感じがします。あまり珍しい花ではありませんが、岩壁 に咲く姿を見付けるとなんだかうれしくなります。雪解け直後の谷川岳にて。 −2001年6月中旬 群馬県谷川岳−
<ハクサンコザクラ> 高山植物の中で割とポピュラーなサクラソウです。白馬の八方池の周りや、妙 高山に群落があります。谷川岳にて久々に再会できました。以前はタニガワコ ザクラと呼ばれていたようですが最近はハクサンコザクラと同種とされている ようです。心なしか花が大きく艶やかなイメージを持ちました。 −2001年6月中旬 群馬県谷川岳−
<ヒメコザクラ> もっとも好きな山、岩手県の早池峰山にしかない白いサクラソウです。昨年の 7月1日にこの場所を訪れた時には、既に花は終わっていました。今年は早め に出掛けてみました。この時期、ちょうど高山植物の咲き始めで、新鮮な花々 に出逢うことができました。 −2001年6月上旬 岩手県早池峰−
<サクラソウ> この花を初めて知ったのは小学生の頃でした。花を好きになったきっかけも小 学生の頃でした。担任の先生の花好きが生徒にも広がり、園芸クラブなんてい うものが出来てしまいました。この先生にもらったサクラソウの鉢植えを大変 気に入っていました。それから16年後に長野県野辺山にて初めて野生の姿を 見ることが出来ました。大感激!! 昔は川沿いの湿地などで普通に見られた 野草のようですが、園芸ブームでめっきり減ってしまい近郊では埼玉県田島ヶ 原で保護されたものくらいしか見ることが出来ないようで残念です。 −2003年4月上旬 埼玉県田島ヶ原−
<イワザクラ> 名前の通り岩の上に咲くサクラソウの仲間。関西でしか見られないとのこと 色々と調べたあげく、イワザクラを町の花としている岐阜県の美山町に行く ことにしました。標高1040mと低く、登山道も整備されているため割と 簡単に見つけることが出来ました。花は割と大きめで色も濃く、可愛かった です。 −2003年4月中旬 岐阜県舟伏山−
<ユキワリコザクラ> 北海道に1回、ここ焼石岳に2回通いようやく出逢うことが出来ました。 開花時期が本当に早いようで雪割りの名前がピッタリ来るようです。この 時期でも少々終わり気味、5月中旬くらいから咲き始めているかも知れま せん。ヒナザクラやハクサンイチゲと共にお花畑を飾っていました。 −2003年6月上旬 岩手県焼石岳−
<オオサクラソウ> サクラソウ探しも大詰めになってきました。今年3種目は残雪の多く残る 白馬岳、大雪渓のはじまる白馬尻でした。あるという情報を元に訪れたの ですが、どこにもない・・・ようやく見つけた一株も終わりかけ。でも、 雪渓を少し登ってみると溶けたばかりの斜面にポツポツと咲いていました。 ピンク色がとても鮮やかでしたが、上手く色が出ませんでした。 −2003年7月下旬 長野県白馬岳−
<カムイコザクラ> 3年振りにサクラソウ探しの旅が再開できました。北海道日高山系の山でこの花を見つけました。 今年は雪解けが遅れていたせいでこの時期でも何とか最後の数株に出逢えました。岩壁にひっそり咲く ピンク色は今でも目に焼き付いています。 −2006年7月上旬 北海道日高山系−
<シコクカッコソウ> 約9年の歳月を掛けて日本を歩き回り、とうとう最後のサクラソウを写真に収めました!! 少し薄暗い杉林の下でこの花に逢えました。鳴神山のカッコソウよりも鮮やかで可憐に見えたのは思い入れのせいでしょうか? −2007年5月上旬 四国の山−


***サクラソウ属ではないけど見てみたいサクラソウ科の仲間***

<サクラソウモドキ> モドキというのは少々可哀想な名前です。サクラソウ属に非常に近縁なサクラソウ モドキ属は1属1種でこの花しかないのです。北海道から樺太にかけてでしか見ら れない貴重な花なのです。 −2001年6月上旬 北海道礼文島−
<トチナイソウ> 今、日本中で最も探すのが難しい花かもしれません。実はこのリスト、サクラ ソウ属だけを集めたもののはずですが、この花があまりに可憐だったので属は 少し違うのですが含めました。この花は、大好きな早池峰山と北海道の礼文島 と一部の地域にしかなく、かつ個体数が極端に少ないのです。おまけに、異常 に小さく、草丈は3cm位、花の大きさは5mm位でしょうか。ここにあるよ と言われても見逃してしまうほど・・・ 過去に2回挑戦していましたが、見つけられませんでした。すっかり諦めきっ ていましたが、ネットで写真を何枚か見つけたので、開花時期を探りつつ、天 気予報と睨めっこして、再挑戦してみました。早池峰山は10数年ぶりかも・・・ 事前に色々と情報を集め、最近は開花が早まっているとのことでしたので、 少し時期は早めかと思いましたがの挑戦してみました。 下りで見つけるのは難しいとの情報を元に、登りは樹林帯を抜けたあたりから 目を皿のようにして探し回り・・・見つけました!! 小さい花なのに白色が とても目立っていました。感激でした!! −2016年6月19日 早池峰山−




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