シンクロ
ふと目が覚めると部屋の電気が点けっぱなしになっていた。
放映時間をとっくに過ぎたテレビからは砂嵐のザーザーという音。
隣ではそんなことに気付きもせずに、泥のように眠る男が規則正しい寝息をたてていた。
いつものきつい眼差しも今はなりを潜めて、寝てる時は年相応に見える。
事が終わってスイッチが切れたように眠ってしまった俺達の服があちこちに散乱していて、
なんだか笑ってしまう。
きちんとした性格のこの男が皺くちゃのシーツに平気で寝ているなんて、少し前までは
信じられないことだ。
自分のに感化されてきたのかと思うと少し嬉しくなった。
俺は枕もとに置いていたリモコンでテレビの電源を消し、次に部屋の電気を消そうとベッドから
降りようとした所で自分の左手首が隣で眠る男にしっかり握られていることに気付いた。
腕を軽く振ってみるが、男は手を離してくれそうもない。
まったく、なんでいつもこうなんだろう。
最近ずっと忙しいのは知ってた。
自分と会っている暇も無いくせに、時間を作ってはこうして会いにくるのだ。
「こんなことしてるより、睡眠時間増やした方がいいんじゃないのか?」
俺のシャツのボタンを外している男の手が止まり、顔を上げて俺を見ると男は笑ってこう言った。
「身体が満たされても心が満たされなきゃ意味がないよ。」
バカみたいだと思う。
何が不安なのか。ずっと側に居るのに。
こうやって何度も身体を重ねても、俺のこと信じられない?
俺はお前しか知らないのに。
そっと溜息を吐くと手首を掴んでいる男の指を1本1本外していく。
ベッドから降りて電気を消し、また男の隣に潜り込んだ。
電気を消しても部屋がぼんやりと明るくて、もうすぐ夜が明けるのだということがわかる。
「進藤・・?」
男の目が薄く開く。まだ夢の中とこちらとをウロウロしているようだ。
俺は男を胸に抱き寄せそっと囁く。
「朝はまだだよ。おやすみ。」
男はうっとりと微笑んだようだった。
* * * *
「なんで起こさないんだキミは!!」
「起こしたのに起きなかったのはお前だろー!!」
「起きるまで起こしてくれたら良かったじゃないか!!」
「起きないから今日は休みかと思ったんだよ!」
「今週はずっと休みは無いって言ってただろう!」
バタバタと走り回りながらやっと見つけたネクタイを締めている男を、リビングの椅子に座って
今だパジャマ姿のまま俺は眺めていた。
日頃冷静なこの男が焦っている姿はなかなか面白い。
「次の日仕事なら来なきゃいいのに。」
俺の言葉にギロリと男が睨む。
ただでさえ寝坊してしまって機嫌の悪いこの男のレベル値をまたさらに引き下げてしまったようだ。
彼は何も言わずにカバンを掴むと玄関に向かった。
ああ、もう面倒くさいヤツ。
ふと気がつくとテーブルの上に男の携帯が乗っていて、俺は慌てて後を追うと男はまだ入口で靴を
履いていた。
「ほら、携帯忘れてる。」
俺が差し出すと男は無言で受け取り適当にカバンに放り込んだ。
「なんだか、俺達新婚さんみたい。」
思わず言ってしまった言葉に男は、ドアノブにかけていた手を止めると俺を見る。
自分で言った言葉なのになんだか急に恥ずかしくなって、目を合わせられない。
「あ〜なんかバカなこと言ってしまった・・・。」
俺が思わず呟くと、男は笑って俺を引き寄せキスをした。
それは昨晩のような濃厚なキスではなく、触れるだけの軽いキス。
「いってきます。」
男は笑顔でそう言うと出掛けていった。
そんなことで簡単に機嫌が直ってしまうなんて単純なヤツ。
そう思いながらもどこか嬉しい自分がいたりして、自分もあの男に感化されてきたのかもしれない。
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