冷たい手        


 明け方近くに目が覚めた。
薄暗闇の中ゆっくり目を明けると、1番最初に飛び込んできたのは進藤の寝顔だった。
しっかりと閉じられた瞼、口からは規則的な呼吸音が聞こえてくる。
一緒の布団で寝るのは初めてじゃないけれど、やっぱりまだ慣れない。

絶対に手に入らないと思っていた。
でもずっと欲しくて欲しくて。
囲碁以外で初めて何かを欲しいと思った。
この世には望んでも手に入らないものがあるのだということを知ってはいても
望まずにはいられなかった。

そして今彼はここにいる。
ボクの横で静かに寝息を立てている彼を見ていると自然と笑みが零れてくる。

彼はボクのもので、ボクは彼のもの。

ふと気がつくと進藤の腕が布団の上に出ていて、ボクは彼が目を覚まさないように
気をつけながらそっと布団の中にしまった。
進藤は小さく身動ぎながらそれでも起きる気配は無い。

今何月だと思ってるんだ。腕を出して寝ていたら風邪をひいてしまうよ。
ほら手がこんなに冷たくなっている。
ボクは進藤の手を握ると静かに口付けた。

「キミが寒くなったら、ボクがいつでも暖めてあげるよ。」

囁きは果たしてキミに届いたのだろうか。



進藤は微かに微笑んだ気がした。



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