境 界
窓から差し込むポカポカした光に脳が働かなくなってくる。
ずっと雨ばかり続いてたのが嘘のような今日の天気。久しぶりの優しい太陽に久しぶりの休日。
外は結構風が強いみたいで庭の木の葉がさわさわ揺れているのに、部屋の中はこんなに穏やかで
暖かくて平和だ。
ああ、なんて気持ちがいい。落ちてくる光がまるで麻酔のようにボクの体の自由を奪う。
瞳を閉じる瞬間、進藤が一生懸命棋譜を見ている姿が映った。
そのままボクは深い眠りへと落ちていった。
誰かがボクの髪の毛を弄んでいる。やがて人の気配が近付いたと思ったら、すぐ離れていった。
瞳を閉じていてもわかる。じっとボクを見下ろしている。
再び手が触れると、今度はボクの前髪をそっとかきあげた。
暖かい手から伝わってくる体温に覚えがある。いつも触れている子供みたいに高い体温。
もっと熱い部分だってちゃんと知ってる。
額にかかる吐息の次に降りてきたのは柔らかい唇。
変なの。起きてる時ならこんなこと絶対しないじゃないか。キスをしても照れて横を向いてしまうし、
誘うのだっていつもボクの方だ。
好きの気持ちを計りにかけたら絶対ボクの方が重いに決まってる。
そう思っていたけれど。
まるで子供にするように、優しく頭を撫でる手が気持ち良すぎて目が開けられない。
ずっとこうしていたい。なんて贅沢な時間だろう。
手を止めないで。ずっとそうしていて。
もう少しでちゃんと覚醒できるから。
ボクの願い空しく、優しい手は離れていった。
ボクは少しがっかりして、もう少し寝ようかな、なんて思っていたら突然唇に触れてきた指。
ゆっくり唇をなぞる。
次に来る彼の行動を期待して、薄く唇を開くと柔らかい感触が降りてきた。
キミからキスしてくれるなんて奇跡に近い。このチャンスをボクが逃すはずもなく。
腕を彼の首に回して、軽いキスを深いものへと変えていく。
驚いた彼から漏れる抗議の声。
「んんッ!?んー!!・・・・とッ塔矢ッ!!」
ゆっくり瞳を開けると予想通りの人物。
肩で息をつきながら睨んでる瞳が、薄ら潤んでいてなんだかかわいい。
離れてしまった唇がちょっと惜しいけど。
「お前っ!起きてたのかっ!?」
「起きたんだよ。」
「いいいいいいいいつからッ!?」
「ん〜?キミがボクの髪にキスしてくれた時からかな?」
ニッコリ微笑むと真っ赤になった進藤が、横を向いてあ〜とかう〜とか唸っている。
そんな彼の腕を思い切り引っ張り、畳に転がったところですかさず彼に跨った。
「まだ、昼間なんだけど。」
「誘ったのはキミだよ。」
「なッ!?誘ってねぇよ!!」
「じゃあ寝込みを襲われた。」
「・・・お前が無防備で寝てんのが悪いんじゃん。」
「それは悪かったね。」
「塔矢って寝てるといい感じなんだよな。なんか・・・綺麗だし、触りたくなる。」
「起きてる時は?」
「起きてる時はいいの。お前が触ってくるから。」
「お許しが出たね。」
進藤は一瞬しまった、という顔をしたけれど、諦めたのか近付くボクの唇を受け止めてくれた。
ボクは自惚れてもいいのかな。キミが回した腕から、繋がった唇、触れた部分から伝わる体温からも
流れてくるボクを好きだという気持ち。
窓から差し込む日差しは相変わらず優しくてボク達を柔らかく包み込む。
隔離されたような空間、なんて平和な戦士の休日。
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