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2003年12月20日、大阪市立大学法学部棟11階大会議室にて、第1回大会が開催されました。

13:10−13:50 研究発表1:「Zelda and Dora Onstage―Clothes for a Summer HotelPortrait de Doraと併置させる―」
 発表者: 坂井隆 
(大阪市立大学大学院文学研究科言語文化学専攻後期博士課程2回)
 司会者: 山本秀行 (神戸大学)
14:00−14:40 研究発表2:「『嵐が丘』における潜在する笑い」
 発表者:吉田真希子 
(神戸大学大学院文化学研究科文化構造専攻後期博士課程3回)
 司会者:廣野由美子 (京都大学)
15:00−15:50 講演1: 「トランスアトランティック、トランスパシフィック――グローバル文学の『伝統』――」
 講演者: 巽孝之 (慶応義塾大学文学部教授)
 司会: 田口哲也  (同志社大学)
16:00−16:50 講演2:「エイリアン・ベッドフェロウズ ――女性SF論――」
 講演者:小谷真理 (SF&ファンタジー批評家)
 司会者:荒木映子  (大阪市立大学)
17:00−18:00 茶話会

大会レポート

▲開会の挨拶をされる中村裕子さん
▲会場の様子。多数のご参加ありがとうございました。


▲坂井隆氏(大阪市大)による発表
  (「Zelda and Dora Onstage―Clothes for a Summer HotelPortrait de Doraと併置させる―」)
▲司会の山本秀行先生(神戸大)

Zelda and Dora Onstage―Clothes for a Summer HotelPortrait de Doraと併置させる―(坂井隆)
 Tennessee Williams(1911-83)の後期の戯曲の特徴は、単線的プロットの廃止、台詞の断片化、そしてcharacterではなく figureとしての人物の造形などである。これらの特徴は、当時の劇評家からは手厳しい批判を招いた。しかし、Williamsは、当時としては斬新な演劇形体を目指していたと考えられる。
 そこで本発表では、彼の晩年の戯曲Clothes for a Summer Hotel(1980)の分析を通して、彼が目指した新しい演劇とは如何なるものであったのかを明らかにする。特に今回は、その分析を、Helene Cixousの戯曲Portrait de Dora(1979)との比較を通して行う。両作品とも「狂女」(前者はフィッツジェラルドの妻ゼルダ、後者はフロイトの患者ドラ)を中心人物に据え、また、ある種本(前者はナンシー・ミルフォードの伝記『ゼルダ』(とヘミングウェイの『移動祝祭日』)、後者はフロイトの「あるヒステリー患者の分析の断片」)を戯曲化したものである。この比較分析を通して、最終的に、Williamsの後期戯曲の根幹には、「エクリチュール・フェミニヌ」的なものを演劇化しようとする彼の戦略があることを明らかにする。


▲吉田真希子氏(神戸大)による発表
  「『嵐が丘』における潜在する笑い」
▲司会の廣野由美子先生(京都大)

『嵐が丘』に潜在する笑い(吉田真希子)
 『嵐が丘』と笑いについて考えるとき、まず、頭に浮かぶのは、ロックウッドやネリー、あるいはジョウゼフなどといった登場人物であろう。彼らの言動のうちにある滑稽な要素は、批評家らによっても指摘されている。だが、物語を読み進めるにつれて、笑いに関連する人物は、ヒースクリフやキャサリンといった人物に変化していく。ただし、ここでいう「笑い」は、ロックウッドらが生み出す笑いとは異なる。すなわち、それは、作品の表面において見出されるものではなく、作品の、とりわけ悲劇的な場面に潜んでいるものとしてあるのだ。潜在しているからこそ機能する「笑い」は、最も悲劇的な場面において、より研ぎ澄まされたものとなるのである。
 今回の発表では、特に、女主人公であるキャサリンが、作品のちょうど真ん中あたりで死亡する場面に焦点をあて、そこに潜在する「笑い」とはどのようなものなのか、そして、それが作品をどのように規定していると言えるのかを考えていく。


▲巽孝之先生(慶応義塾大)の講演
▲演題は「トランスアトランティック、トランスパシフィック――グローバル文学の『伝統』――」
▲司会の田口哲也先生(同志社大・写真右)

 ※今回のご講演と関連する内容のご論考‘Literary History on the Road: Transatlantic Crossings and Transpacific Crossovers'が PMLA Jan 2004の`Literatures at Large'という特集に掲載されております。
▲小谷真理先生の講演
▲演題は「エイリアン・ベッドフェロウズ ――女性SF論――」


大会アンケート
 会場でいただいたご感想・ご意見を、転載の許可をいただいたものに限り掲載いたします。参加者の皆様、貴重なご意見をありがとうございました。今後の運営の参考にさせていただきます。

・地域・ジャンルをこえた研究会ということで楽しみにしておりましたが、期待どおりとても良い刺激をいただき勉強になりました。(博士課程院生)

・興味深く拝聴。二つの研究発表は、主題をほりさげ、提示するための参照枠をもっと広く取る必要があります。文学を専攻していない聴衆にも興味・関心を抱かせ、はっと驚くような話し方、材料の分析を、今後期待します。(大学教員)

・テネシー・ウィリアムズの作品についても有名なものしか読んでいなかったので、改めて知ることが多かったです。巽先生の講演をもっと聴きたかったくらいです。とても楽しかったです。(大学教員)

・講演の方にしか参加できませんでしたが、たいへん刺激を受けました。(大学教員)

・有意義なお話をありがとうございました。Moby Dickのお話はとても興味深かったです。(非常勤講師)

・講演からの出席でしたが、お二人とも著書から想像していたとおり、旺盛な好奇心と強靱な知性の持ち主で、お話にぐいぐい引き込まれました。文学史の生成・読者の受容のあり方など、自分の研究にも多いにインスピレーションを受けました。小谷先生のジャーナリスティックなアンテナの感度のよさには見習うべき点が多かったです。読みたい作品もたくさん紹介していただきワクワクしました。(大学教員)

・若手研究者の発表について。司会者のフォローが親切すぎるように思いました。司会者が発表内容をまとめて伝えるのは定石ですが、この研究会の性質からすれば、発表者が司会者の質問を受けながら自身の伝えようとする事柄を自分なりの言葉遣いでまとめて行く方が望ましいのではないでしょうか。複数の領域を含み込もうとすれば、「通常の」学会よりも「力強い」議論を戦わせる必要があると考えます。(大学教員)

・作品論から見事な文化・時代論が展開される非常に示唆に富む講演で、大変勉強になりました。(博士課程院生)

・1000円では安すぎるぐらいたのしかった。

・研究発表と講演のバランスが良かったと思います。(院生)

・おもしろかったです。勉強になりました。

・非常に盛りだくさんのプログラムで多いに刺激を受けました。特に2講演は楽しく拝聴いたしました。(非常勤講師)