11.4cm Dall-kirham 鏡筒

→望遠鏡


1.計画

20年以上前、初めて購入した天体望遠鏡の鏡筒部が物置から出てきました。D114mm、FL900mmニュートン式です。この筒を使ってダル・カーカム式望遠鏡を作る事にしました。

光学系の設計では、主鏡から焦点位置までの引き出し量を170mmに設定しました。これは主鏡、セルの厚み、接眼部及び天頂プリズムの長さから求めたものです。副鏡製作上の都合から、副鏡径がφ35mm以下になるよう計算した結果、光学系は下記としました。

主鏡: φ114(有効112)mm  FL: 450mm  F: 4  パラボラ倍率: ×0.709(楕円面)
副鏡: φ35(有効33)mm  曲率R: 290mm(球面)  引き伸ばし倍率: ×4.5
合成F: 18

2.鏡材の準備

-1.主鏡材

NGWより114mmパイレックスガラスを購入(TPX450)。シンミラー(t17)のはずが厚み28mmで来てしまいました。
中央の穴開けは、おおよその曲率に#80にて荒ずり後、鏡面側を10mm残して裏側より掘リました。ここには石膏を詰めておきます。硬化後の収縮を心配して歯科用焼石膏を使用しました。
鏡面研磨終了後に、表側から残りを貫通させる事にしました。

-2.盤ガラス

ニュートン主鏡(青板)が不要になるので、これを使いました。

-3.副鏡材

適当な鏡材が見つからず、作ることにしました。
不要のパイレックスガラスからφ35mmを2枚、パイプで繰り抜きました。外周が斜めに抜かれてしまう為、2枚をピッチで貼り付け平ガラスの上で直角に削りました。
ピッチ盤は、砂ずりの終了した鏡材を型にして石膏を流し込んで作りました。

 

研磨機の上に箱を取り付け、パイプを垂直に
支持してガラスに穴開けします。
テーブル:140rpm。砂:#120

 

φ38mmのパイプで副鏡材(φ35mm)を繰り抜い
たところ。ガイドに真鍮円板を貼り付けてあります。
貫通時間:45分/15mm

3.鏡面研磨

-1.砂ずり

砂ずりは#80から2000までおこないました。
主鏡は中央の深さが1.75〜1.8になるよう削ります。中央部は掘れますが周辺部が削れないので反転ずりも入れて研磨します。
副鏡は中央の高さが0.50になるよう削ります。

砂ずり(#2000)が終了したところ。
 左上:盤ガラス   右上:主鏡
 左下:石膏盤    右下:副鏡

-2.磨き

盤ガラスにピッチを流し込み、ピッチ盤を作ります。これにセリウムを塗って磨きます。
ピッチは今回、初めてウッドピッチを使用しました。硬目でも鏡面との形合わせが楽に出来ます。もろい為、溝切りはアスファルトピッチよりしにくいようです。

 

副鏡のピッチ盤。ウッドピッチ片を石膏に乗せ、
ヘアードライヤーで暖め指で延ばして貼り付け
ました。溝はナイフの刃を押し付けて。型取り
すると溝が埋まってしまいますが・・・。

 

副鏡磨き。小さくても研磨台を作りました。
左手で台を押さえながら右手で磨きます。
紙コップは埃よけです。石膏には防水の為、
蜜蝋を塗りました。

   ※ 歯科用焼石膏(530円/kg)
          穴埋め、ピッチ盤に使用。
   ガムテレピン油(1000円/0.5L)
          ウッドピッチの硬さ調整用。
   純蜜蝋(700円/100g位)
          ピッチに調合。石膏の防水。 

   (価格は東急ハンズ 平成12年) 
 

主鏡研磨。ハンドルを取り付けて磨きました。
始めはNGWのセリウムで磨いてみました。
ピンク色です。磨きは遅いようです。
   

主鏡と副鏡は同時に進めました。両方が艶出しできた時点でフーコーテスターを用い、正確な曲率半径を求めます。
この結果から再度、光学系の計算をし直しました。

主鏡: φ114(有効112)mm  FL: 434mm  パラボラ倍率: ×0.705(楕円面)
副鏡: φ35(有効33)mm  曲率R: 284mm(球面)  引き伸ばし倍率: ×4.48
主鏡からの焦点までの距離:170mm
副鏡から主鏡焦点まで:110mm
合成焦点距離:1944mm 

 

-3.整形&テスト

主鏡

楕円面ですから、整形は殆んどパラボラ面と一緒です。
フーコーテストにてパラボラ修正量にパラボラ倍率(約70%)を掛けて整形しました。
フーコーテスターは光源・ナイフ可動式にしました。

精度測定には木村さん
Excel鏡面研磨支援ソフトを使用しました。

主鏡測定のマスク

 

副鏡

凸鏡の曲率半径は、盤(凹)ガラスを磨いてフーコーテストにて求めました。
凸鏡は球面ですから、テストはしなくても球面になるだろうという甘い考えで始めたらとんでもないことに気付き、凹面をテスターとしたフリンジテストで進める事にしました。光源は特に用意せず、天井の蛍光灯でニュートンフリンジを見ることが出来ました。しかし整形の方法がわからず満足のいくものには仕上がっていません。いずれ磨き直したいと思います。

中央の穴を貫通させて鏡の完成です。

磨きの途中から使い慣れているNTKのセリウムに
替えました(茶色)。

主鏡の表から穴を慎重に貫通させます。
鏡のメッキはジオマテック社にお願いしました。

写真下中央は比較用一円玉2枚。

ピッチ盤、主鏡、穴の芯、凸鏡

 

4.鏡筒製作

古い望遠鏡の鏡筒を切断して使用しました。
筒に紙を巻いて切断位置を書きます。
ジスクグラインダーに切断砥石を付け、1mm程長く切ってから
ジスクグラインダーで削って仕上げます。

筒先リングはそのまま使いました。

主鏡セルは鏡とサイズが合わず、5mmアルミ板で作り直しました。
鏡を止める枠は塩ビパイプの継手(100mm用)を使い、M3ネジで
取り付けました。

副鏡金具は真鍮をハンダ付けして製作しました。

 

5.完成 

接眼部はボーグの直進ヘリコイドSを取り付けてあります。
鏡筒バンドは四角窓を開けて塗装を削り落としました。

斜め後方

正面

 

6.反省

凸鏡の出来が不十分です(磨きと整形)。
鏡筒の重心が今の位置でぎりぎりです(ファインダー脚が邪魔をする)。
塗装は白の予定でしたが、けがいたマジック線を消さずに塗ったら白では透けてしまい青くしました。