
代替医療とは
西洋医学で直らなかったもの、また末期癌などの患者が漢方など民間療法に頼ったり、健康食品・サプリメントを利用するときに幅広く代替医療なる言葉が使われている。慢性疾患とか生活習慣病で病院・ドクターに相談しない自己管理を含めれば代替医療は今花盛りである。宣伝に惑わされないためにはどうしたらよいか、弱みに付け込む商法、巧みな医学利用記事、自己防衛が必要である。最近読んだ本では、「適切な代替医療」 鈴木信孝編 日本医療情報出版社 が詳しく書いている。
健康食品・サプリメント
癌が消えた、究極の癌治療薬などなど、TV,雑誌、新聞でこの種の記事が目に付かない日はない。文芸春秋 2002・3月号で東北大学医学部の坪野吉孝ドクターが『健康食品にこれだけの嘘』と題して健康食品の氾濫に警鐘を鳴らされている。素人でできるチェックリストを掲げられている。
1 具体的な研究にもとづいているか
2 研究対象は人か 動物実験や培養細胞だけでは当てにならない
3 学会発表か論文発表か 学会発表だけでは割り引いて考えなければならない
4 研究方法は飲んだグループと飲まないグループと層別して投与、効果を確かめているかまたは数年間・数万人
の食生活の追跡調査をやっているか
5 複数の研究で支持されているか
これを基に厳しくチェックしたら大半の健康食品・サプリメントは落第であろう。例えばドクターは緑茶は胃癌に効くとか、ブロッコリーは癌予防に役立つなどはその類という。
また文芸春秋 2003.1月号に「がんになってからの食事療法」で米国対がん協会の「がん患者の食生活指針」を紹介されている。A2 恐らく効果があるが証明されていない、A3 効果の可能性があるが証明されていない、B 効果やリスクについて結論するだけの十分な知見がない などで評価されている。前立腺癌でみるとA2はなし、A3に脂肪を減らす、運動量を増やす、菜食主義の食事、ビタミンとミネラルのサプリメント、ビタミンEのサプリメント、セレンのサプリメントなどがある。何れも普通の食事をしていれば敢えて摂るほどのものではなさそう。意義があるのは脂肪を減らしたり運動量を増やす、野菜・果物を増やすなど常識的なもの、取り入れに慎重になった方が良いものにビタミン、ミネラルのサプリメントがある。誇大広告に惑わされないことだ。
免疫療法は効くのか
キノコとかサメ軟骨など愛用者は多く少しはましだといわれるが、本当だろうか。元小松病院院長の矢吹俊彦さんは論座 2002・3月号で『インターフェロンを私が断った理由』に書かれている。曰く「進行癌には免疫療法では歯が立たず」、理論と実験とそれと臨床応用のギャップを指摘されている、キノコも断罪されている。腎癌手術後再発防止のインターフェロンを後輩のドクターの勧めを断っている理由はその効果が明確に実証されていないからとのこと。免疫療法のキーワードは楽天的、ストレスを和らげることが免疫細胞の活性化を助けるとのこと、それはそうだが分かっていても溺れる者は藁にすがりたくなるもの、強くならねばならないことは確かだが。
品質は保証されているか
効果があるとしてもどこで誰がどんな風に作っているのか、まさか毒薬が入り込んだり、悪性菌が入っていることはないと想うがその確証はない。また副作用も心配だ、薬として認可されるのは50パーセントの人に効けば良いらしいが、薬には副作用はつきもの、ましてや健康食品・サプリメントでよく効くというなら必ず副作用があるはず。友人で肺癌手術後サプリメントを飲み続け肝臓を壊したのがいる。お役所が認可したものでも問題がある、認可がないものにはもっと問題があるのではないか。私はその昔TQC(綜合的品質管理)の仕事をしたことがある。商品・製品の品質保証はそんなに簡単なことではない。しかも口に入れるもの、品質について製造のプロセスにもっともっと神経を使って当たり前と思う。
毎日飲むから気をつけねばなるまい
50年前弁護士の中坊さんが執拗に追及した事件に森永砒素ミルク事件がある。森永乳業は第2燐酸ソーダを原料乳に添加していた。その中に砒素化合物が混入していて、いたいけな乳幼児の奇病が発生した。被害者は1万とも2万ともいう、130人が死亡した。国鉄は第2燐酸ソーダを納品検査して砒素を検出、返品している。森永はノー検査、悲惨な食品公害事件が起こる。人間の肝臓は極めて丈夫だが、毎日毎日飲むものに砒素が入っていたのでは敵わない。飲まされた赤ちゃんは気の毒だが、飲ませた母親もなぜ森永ミルクを飲ませたか、自己嫌悪に陥る。中坊さんは「公害の被害者は2度殺される」と有名な言葉を残した。同じ牛乳関係産業の雪印が食中毒事件を起こした、災害は忘れたころにやってくる、寺田寅彦の言葉だが、こんな人災は真っ平御免蒙る。毎日飲んだり食べたりするものだからこそ、その安全に細心の注意が要る。
信ずるものは救われる
たとえうどん粉であろうとも高価な良く効く薬と信じて飲めば風邪が治る、あながち嘘とは言えない。キノコであろうとサメのエキスであろうと駄目元と言って飲む人は、それはそれで副作用に気をつければ、精神安定剤にもなりストレスを和らげ免疫細胞の活性化になり役に立つとは言えるかもしれない。折からの未曾有の不況、健康ブームで景気を下支えする効果もあるかもしれない。しかし只ではない、かなり高価な代物。入院中飲用する人が増えた、ある患者は奥様と子供様が毎日の食費を切りつめパパの再発防止にと買ってきたキノコをうまくないと言って飲んでいた、まだ49歳少なくとも定年まで生き退職金をもらってから死にたいという、名状しがたい悲しい思いにさせられた。何人かのドクターに肉親が癌になったらサプリメントを薦めるか聞いて見た、本人が飲んだら効果があると思えば良いのではという人もいたが、温泉に入り旨いものを食べたほうが良いなーという人もいる。かく言う私も何回か飲んだほうが良いかもという誘惑にかられたが、その効能を信ずることができず、今も飲んでいない。月にウン万円の金が勿体ない?ケチかもしれない。
再発、末期癌というときには気が弱くなり藁をも掴む思いでサプリメントを愛用することになるかもしれない。人それぞれ信ずる道を行くのが良い、それが心の平静に繋がり癌細胞の活性化を弱め、共存に繋がるとも言えるのではないか。