たん吸引など医療行為、養護学校の教員も…厚労省決定
 厚生労働省は19日、重い障害のある児童生徒のたんの吸引など一部の医療行為を、全国の盲・ろう・養護学校の教員にも認めることを決めた。高齢者や障害者の介護現場では、日常的な医療行為をヘルパーらにも認めるよう求める声が高まっており、同様の解禁を加速するものとして注目される。今月中にも通知を出し、態勢の整った学校から実施する。
 教員に認められた医療行為は、管によるたんの吸引、鼻などに管を通して栄養分のある液体を流し込む経管栄養、管を使って尿を体外に排出する導尿。いずれも、「咽頭(いんとう)より手前の吸引」など、安全性が確保できる範囲に限る。教員への研修の実施や、保護者と主治医の同意、看護師との連携などの条件も設けている。
 国が、医師や看護師、家族以外に医療行為を認めたのは、昨年7月、在宅のALS(筋委縮性側索硬化症)患者のたんの吸引をヘルパーに解禁したのに続き2例目。今回は、病気や障害の種類にかかわらず認める。
 養護学校には、重度の脳性まひなどで、日常的に医療的ケアを必要とする子が少なくない。盲学校やろう学校にも、重複障害のため同様のケースがある。文部科学省によると、こうした児童生徒は、公立の盲・ろう・養護学校(計935校、昨年5月)の在学者約9万2000人の5・7%にあたる約5300人いる。
 医療の発達で、重い障害を持って生まれた子の生存率が高まり、通学する子の数は増えつつある。だが、看護師の配置義務がないため、看護師がいなかったり、配置されていても、数が足りないことが多い。このため、保護者が同伴し、30分おきにたんを吸引するなどの医療行為を行うケースが多い。文科省では、保護者の負担軽減などを目的に、1998年度から学校現場での実践研究や大規模なモデル事業を実施。無事故だったうえ、授業がスムーズに進むなどの効果が見られた。これを受けて、厚労省が解禁の是非を検討、「許容可能な段階」と結論づけた。
(2004年10月19日 読売新聞)