上奥歯抜くと記憶力が低下、脳細胞も減少!(岩手医大・歯学部:マウス実験で研究報告)
 上の奥歯がなくなると学習・記憶能力が低下するなど脳機能に悪影響を与えることが17日、岩手医科大歯学部の田中久敏教授ら研究グループのマウスを使った実験で分かった。
 歯を失うことと脳機能の関係を動物実験で裏付けたデータは珍しく、今後高齢者の歯の喪失とアルツハイマ−病などの病気の関連を研究する上で注目される。7月に仙台市で開かれる日本老年歯科医学会で発表する。  生後30週(人間換算年齢30〜40歳)のマウスを使い実験。上の奥歯・下の奥歯・上下の奥歯−のそれぞれを抜いた場合と抜歯しないに分けた後、学習・記憶能力を調べるために放射状になっている迷路の先端八カ所にえさを置いて7週目、20週目ごとにマウスの行動を観察した。
 その結果「一度入ったえさ置き場に再ぴ入るなど間違えた(エラー)回数は7週目で上奥歯を抜いた場合、抜歯しないケースと比べ約12倍と大幅に増加した。上下奥歯を抜いた場合は約7倍、下奥歯の場合は約2倍弱だった。20週目の実験でも同じ傾向が見られた。さらに解剖して、脳の記憶や情報伝達をつかさどる海馬錐体(かいばすいたい)神経細胞を調べた結果、抜歯しない場合と比べ下奥歯を抜いたときの細胞数が10%台の減少率だったのに対して上奥歯は約40%、上下奥歯は約25%それぞれ減少した。
 研究グループは、上奥歯がなくなることで脳とつながっている上あごの神経回路が途切れ、脳細胞が働かなくなったのではないかとみている。田中教授は「今後はアルツハイマー病との関連性についても研究を進めたい」と話している。
(中日新聞、平成10年6月18日)