歯周病と全身疾患
 1910年代に、歯性病巣感染という理論が提唱された。これは口腔内に原発する病巣感染が二次的に全身疾患の原因になりうるという説であるが、当時はそれを裏付ける技術(研究)が未発達であったが、現在では技術の進歩と共に全身疾患を増悪させる因子として、歯周病が大いに注目されてきている。
 正常な付着上皮を破壊するのが歯肉縁上歯垢であり、その大部分を占めるグラム陽性菌の細胞壁には様々な病原性を示す抗原が含まれ、発生した炎症性病変が慢性化し、歯周ポケットが形成され、その病原性を発揮するのが歯肉縁下歯垢であり、多くはグラム陰性菌で内毒素を有した外膜がある。それらが直接、又はマクロファージや好中球に運ばれ、更に内毒素は歯肉ポケット中の内毒素結合性タンパク質と結び付き、歯肉内縁上皮を貫通し血液中に入り込む。しかし健常者では歯肉ポケット中にあるアルブミン・ラクトフェリン・トランスフェリン等がプラーク細菌と結合して、内縁上皮からの侵入を防ぎ速やかに駆逐する。しかし入り込む細菌数が多い場合や感染に対し低抗力を失った易感染性宿主では殺菌作用がうまく行かず全身的なトラブルを生ずる。
 驚くことに、通常の感染根管処置、抜歯やスケーリングなどの観血的処置においても1分間に万単位の生菌を結果的に血流に入り込んでいて、歯周病がある場合は咀嚼時にも細菌が血流に入り込み、菌血症を起こしている。
                                  
デンタルプラーク細菌
Streptococcus sanguis 最も多い
Streptococcus mitis 血液中に入り、しぱしば重篤な感染症を起こす
Streptococcus pyogenes 健康な状態でも致命的な敗血症を起こす
        (化膿レンサ球菌)

 動脈硬化
 歯周病菌の一種PG菌(Porphyromonas gingivalis)の刺激 によって活性化したマクロファージが血管内膜に入り込んで、サイトカインや化学伝 達物質を産出し、血管内皮でコレステロールが沈着し、血管の狭作を起こし、血栓を作り動脈硬化を進行させる原因を作る。
日本歯科大学教授鴨井久一先生 
 『心筋梗塞で亡くなった方の血管内の血栓を調べてみたところ、そこから歯周病原菌が発見されている』
 『歯周病のある患者では、コレステロール値も高く、虚血性心疾患等も多い。逆に歯周疾患を治療すると血中コレステロール値が低くなる事も明らかになっている』
                                  
日本人の死因
1位 ガン
2位 心疾患
3位 脳血管疾患
※日本人の死因の第2位・第3位は歯周病菌が関係している病気と言われている。
(厚生労働省統計平成10年度調べ)

 『ストレスが溜まりイライラすると、無意識に歯を食いしばり強くかみしめてしまう。歯ぎしりをする力は、物を食べている以上の力が持続的に長くかかり、それが歯槽骨の破壊につながり、歯周ポケットを深くし、さらに歯垢を奥深くためやすくし、歯周病に発展』
 歯根膜の感覚は、1O〜20μの厚さでも十分感じると言われ、ほんの少しの負担荷重がクエンチング等を起こす。
 また喫煙はその三大有害物質の内、タールは発癌性物質であり、ニコチンとCOは末梢血管を収縮させ、血流を阻害し、免疫機能や治癒力を弱める。さらにニコチンは接着剤の様に歯に歯垢を付着させ、歯周病菌が増えやすい環境を作る。

歯ぎしり 80kg
煎餅を食べているとき 10kg
Bruxism(ブラキシズム,歯ぎしり)
1)Clenching (くいしばり)
2)Grinding (狭義の歯ぎしり)
3)Tapping  (カチカチ)

歯周病は簡単に言えば「歯石や変成した象牙細管内の有機質に対して雑菌のアレルギー反応」である。そしてその症状は不規則な生活習慣や食生活、喫煙、アルコール、ストレスなどで増悪する生活習慣病である。