時々日記:2005.4.16-4.30

 恒例の
 2005.4.16(Sat)
学科の新入生歓迎会。例年通り各講座ごとに炭火コンロを使って食べ物を出すのだが、うちの講座(3研究室合同)は持ち回りで今年はうちの研究室が担当の年で、先生の独断?でなぜか「テーマは名古屋」になったのは先日も書いた。いちおう理由は研究室に僕も含めて愛知県出身者が4人もいることと、万博だの新空港だの盛り上がっているから、ということらしいが…、うーむ。10:30過ぎに叡電で上賀茂試験地へ向かう。着いたらまだ研究室の学生は誰も着いていなかった。しばらく待つとみんな到着、さっそく準備を始める。炭火を起こして待機。

13:00過ぎから歓迎会。意外に味噌トーストも小倉トーストもよく捌けた。リピーターがいたかどうかは謎だが(^^;;)。それ以上に注目を集めた?のは今年うちの研究室に入った4回生のツテで入手したブラジル産ソーセージ。これがまた旨かったのよ。特に今年は例年牛肉バーベキューをやる研究室がBSEの影響で肉を入手できずクレープに変えてしまったせいもあったのか大好評。焼いているのを待つ列ができたのはウチの研究室では珍しいかも(笑)。そんなこんなで16:00頃に終了。

MacOS X v10.4 "Tiger"が今月末に発売されるが、残り2週間もないこの期に及んで10.3.9アップデートが出た。とうとう小数点2桁を使い切ってTigerに繋ぐか(笑)。どのへんが改善されたのか、いまいちピンとこないんだけど…。Tigerは導入することになるだろうけど、どうもDVDによる供給になるらしい。まぁ今となってはDVDドライブ装備も当たり前だし、ディスクが1枚で済む利点が優先されたかな。噂ではちょっと前のG3 Macでも結構な性能アップができるということだが…。

明日、大阪で桂枝雀追善公演を聴くためAOIさんがやって来たので、夜は狂授と3人で飲み食い。狂授もすっかり落語な人になったなぁ…(笑)。

 さくら(行列)
 2005.4.17(Sun)

AOIさんの御供で大阪へ。朝10時に京橋でラテン系関西人氏と待ち合わせ、JR東西線で移動して造幣局の桜の通り抜けへ。此処はほとんどが八重桜のためソメイヨシノより開花が遅い。しかしまぁ凄い人出だこと。ここの桜は低い木が多く、それだけ間近に花を楽しむこともできるのだけど、写真を撮るとどうやっても人ばかり写ってしまう(苦笑)。かなり珍しいものも含めてさまざまな品種の桜があり、色や形状の違いを楽しむことができるのは此処くらいではないかと思う(街路や桜の名所の多くはたいてい単一の品種で揃えている場合が多いので)
 そのあと難波へ移動、道頓堀のあたりをうろうろ。ひさしぶりにグリコ看板「かに道楽」本店の蟹や「づぼらや」の河豚やくいだおれ人形を観た気が(笑)。ウインズ道頓堀に立ち寄ってAOIさんが馬券を買った後に昼食。そのあと御堂筋線に乗り、梅田で桂枝雀追善公演を聴きに行く2人と別れ、淀屋橋からおけいはんに乗って出町柳へ。そのまま研究室へ直行、お仕事。火曜日のゼミの準備。

という訳で皐月賞はテレビでは観られず、後からニュースで観たのだが…、さすがにディープインパクト強いなぁ。しかもスタートで躓き武豊が落ちそうになる程で完全に出遅れながら最後は2馬身半の圧勝。体格の小ささやこれまでフルゲート18頭の競馬をしたことがない不安も全部吹っ飛んでしまった。考えようによっては、あの出遅れで馬群に包まれることなく後方で脚をためて最後に爆発させる事ができた、という見方もあるけど。ただ、流石に武豊もかつてのシャダイカグラの桜花賞のようにわざと出遅れる作戦をとった訳でもないだろうし、あの躓きが後から響いて体調を崩したりでもしない限りダービーもこのまま行きそうな気もするなぁ。夏を越した後はどうなるか分からないけど。
 数年前、アグネスタキオンが出てきた時に皆が見て、しかしすぐに見果てぬ夢となってしまった久し振りの「三冠馬」への期待が再び高まってしまうのは仕方ないかな。ま、ともあれ秋まで無事で行って欲しいもの。

 桁違いの支配力
 2005.4.19(Tue)
ありゃー、AdobeMacromediaを買収したのか…。これ、ある面ではMicro$oftを上回る帝国ぶりだよなぁ。34億ドルとも言われる買収総額以上に、この買収の持つ意味を考えると日本で騒がしかった例の買収騒動なんてたいしたことないよなぁと思えてしまう。
 かつてAdobeはLiveMotionというSWF作成ソフト(本家Flashよりかなり安かった筈)を出していてGoLiveと抱き合わせ販売などをしていたが、CSが登場した頃にいつの間にか消えてしまった(というよりLiveMotion CSが出なかった)のでどういうつもりだろうと思っていたのだが、こういう目論見が最初からあったのかなぁ。

Adobeも企業買収によって巨大化していった会社で、PostScript・PDFなどの技術やPhotoshop・Illustratorなど画像を扱う基幹ソフトは自前の開発だが、DTPの黎明期に先駆者的存在として名を馳せたPageMakerなどを開発・販売していたAldusを買収した(PageMaker自体はAdobe移行後も開発が続けられ現在もVer.7が販売中だが、より強力なInDesignの登場により現行版が最後になる)り、今もソフトに名が残るGoLiveを買収してきた(それ以前のAdobeはWeb作成ソフトとしてPageMillを販売)ように、技術力のある企業を買収して支配分野を広げていった面も大きい。
 DTVだって初期はVideoshopを出していたSTRATA(旧Avid)などに先行されていたのだけど、いつの間にかPremiereやAfterEffectなどですっかり地位を確立してしまったものなぁ。もっともこの分野は今でもMacが幅をきかせていることの多い世界である上にApple自前のソフト(FinalCutPro・Motion・Shakeなど)の出来が良くて多くのクリエイターが使っているため、Premiereに至っては遂にMac版の開発が中止されてしまったが。…ところで、Macromedia買収発表と同じ日、そのAppleがビデオ/ムービー制作用プロ向けソフトの新バージョンをまとめて発表したのは単に偶然なんだろうか。

そして今回Macromediaを吸収したことで、Web制作環境もほぼ征圧した感がある。残る敵はDTPのスタンダード:QuarkExpressだけになったのかな。QuarkExpressがMacOS Xになかなか対応できなかった(日本語版はさらに2年遅れた)という致命的なエラーでずいぶんInDesignのシェアが伸びたそうだし、PDFを例にとっても、ITに関わる全ての業界で本当にひとり勝ちしているのはMicro$oftではなくAdobeだと思う。考えてみたらMSですらAdobeが支配する分野のソフトは作って対抗しようとしないものなぁ。OpenTypeなどフォントの規格策定でもMSとAppleの両方をむしろ従えている感じだし。

ゼミの発表日。今年度からゼミの形式が一部変更されて、まだ慣れない部分もあるけど。とりあえず今日の発表は先日の学会発表の内容がベースだったが…、色々な意味で疲れました。

 やって参りました
 2005.4.24(Sun)
朝10時から電話を1時間(携帯+固定同時に)かけ続けてようやく小田和正コンサート(6/11・at大坂城ホール)のチケットを確保。立見ですが。いや、e+などの先行予約の頃は学会の時期でそれ処でなく、ローソンチケットの先行予約は3日ほど前だったのだが40分かけて電話がつながった頃にはもう完売でガックリ…という状況で今日の一般発売に賭けるしかなかった次第。そういえば、さだまさしやCHAGE&ASKAはFCに入っていたり人のツテでチケットが比較的楽に取れているので、電話かけまくってチケット争奪に参戦したのはずいぶん久し振りな気がする。
 5月8日に大坂城ホールで催されるさだまさし「母を讃えるコンサート」も先日になって「FC先行予約の時に取り忘れてそのままにしてたけど、流石にもう売り切れかなぁ」と思いつつ試しにローソンチケットで確認したらあっさり取れてしまったが(苦笑)。売れ行き大丈夫なのか? 考えてみたら最近の通常ツアーでは大阪は秋口に2日、年明け2月頃に1日という日程が多く、特に2月の分は10月にも行ったリピーターが多いものと推測されるし、10月の2日間も両方通うコアなヲタの方が結構いる気がするので、大坂城ホールのような収容人数の多い会場で1日のみ、となるとリピーターが期待できない分チケット売れ行きに苦戦するのかも(汗)。これ、9月に武道館で予定されている3333回記念コンサート(2日間通しで1回になるらしい)も平日だし、意外とチケット簡単に取れるかも…と考えてるのは流石に甘いかな?(これまたFC先行予約期間を失念していて2日間通し券を申し込みし損ねた…orz)

今回の小田さんのツアーは12月まで続き、大阪公演は6月・12月にあり(他に8月に野外)、11月にも追加公演の噂はあるけれど、秋以降は俺自身がどうなっているか(立場・居住地域ともに)分からないしなぁ。とりあえず6月に行っておきたい気持ちは強かった。久し振りのオリジナルアルバム発表直後だし。さて、今回はどんなコンサートになるのか。新曲も多いかなぁ。(つうかここ数年でテレビにて流れた新曲がまだ未発表てのが多すぎ…)
 小田さんのツアーパンフは前回のツアー開始から今回のツアー開始直前までの間の活動を写真で見せる形式で十数年間続いているが、前回のツアー「kira kira」が2002年5月〜8月だった(あの時はツアー最終公演も含めて名古屋に2度も出掛け、1度目のセンチュリーホールの時はアンコールでASKAが飛び入りしたのを目撃したんだよなぁ…)ので、一昨年8月の富士急ハイランドにてチャゲアスと演った野外ライブの様子や、ここ数年の「クリスマスの約束」や昨年後半の「風のように歌がながれていた」の様子とかも確実に入る訳だな。ふむ。

週明け火曜のゼミ、2週連続で当番が当たっており、今回は文献紹介なので英文の文献を探して読み込み、要約したレジュメを作っておかないといけないのだけど…、選んだ文献がちょっと長かった(泣) 訳すのが大変。専門用語が多いから、PDFのテキストを流し込んで自動翻訳させると、とんでもなく笑える?日本文ができあがってしまうのよねぇ。という訳で四苦八苦。

うーむ、けっきょくドラゴンズがジャイアンツを3タテしたか。流石に今日はキツイかなと思ってたんだが。それにしてもクリーンアップがこれだけ絶不調で、先発投手もドミンゴ・野口に復帰の目処が立たず川上までもが一時離脱したという「底」に近い状態なのに、いつのまにか貯金6でしっかり首位というのは、どうもダマされているような気がする(苦笑)。
 タイガースなんか傍目に見ていても(井川以外は)絶好調に見えるのに、ドラより1ゲーム差で下だものなぁ。きっとよそのチームのファンもこの順位には納得いってないんじゃなかろうか(^^;;)

それにしても古田、やはり凄いなぁと思う。大卒・社会人経由のプロ入りで、しかも捕手という、2000本安打達成には不利な条件があれだけ揃っていて達成したのだから。守備と打撃を完全に両立できたのは彼の師である野村くらいだし、ジャイアンツV9時代の森や西武ライオンズ黄金時代の伊東など長くレギュラーにいた名捕手でも2000本安打には程遠かったことを考えても、やはり古田が異常な存在なんだろうな(今後、ホークスの城島あたりには可能性がありそうだけど)
 で、そういう凄い人だということをあまり感じさせないあのルックスやキャラクターと、去年の選手会長としての活躍もあって、チームを超えて皆が応援するような雰囲気があるのも、敵チーム(のファン)から憎まれ役になりがちな捕手としては珍しいかもしれない。

 うーん…
 2005.4.25(Mon)
深夜…というか殆ど早朝まで文献を読んでいたため午前中はほとんど爆睡していたのだが、昼前に目が覚めてテレビをつけるなり重い気分になった。これだけの事故はそうそう起こるものではないが、線路脇のマンションに激突したとはいえ車両の潰れ方が酷くてショッキングである。まるでアルミ缶を潰したような。
 まだ全員を救出できた訳でもなく犠牲者の数も確定していないし、原因もはっきり確定した訳ではないので何とも言い辛いが、統計的にはもっとも安全な交通機関である筈の鉄道でこういう事故が起きて巻き込まれ犠牲になった方を思うと、月並みなお悔やみを述べる事すら憚られるような気になる。また、原因が確定していない現状では、保線や車両保守に関わる人達も責任感に苛まれているのだろう。

事故にあった207系という通勤型車両は14年前からJR西日本が導入している車両だが、ちょっと普通とは異なる発想の構造をしている。この電車に乗った事がある方はご存知と思うが、車両間を通り抜ける貫通路が本来なら妻面(連結面)の中心にあるべきところ、この車両はかなり偏った位置にあり、広く取られた面に大型の窓が取り付けられているため、ちょっと不思議な印象を受ける。
 これには理由があって、近年新造される鉄道車両では非常時の脱出や換気のために一定以上の面積でドア以外の開口部の確保が義務づけられているが、最近の車両は軽量化のために窓が開かない密閉構造が通勤電車でも増えており、車両両端部の側窓だけを開閉可能な構造にしたり一部の側窓を中折れ構造にしたりしている車両が多い(アルミ&ステンレス車の普及以降、車体内部への雨水侵入による錆びの心配がなくなり一時期よく採用された下落とし一枚窓は重量面でかなりマイナスらしい)。で、207系は車体側面の窓をすべて密閉構造にして、そのかわり連結面の窓を大きく取って開口部面積を稼ぐという発想になっている。この軽量化のための構造が今回の事故での潰れ方に影響したかどうかは分からないが。
 JR西日本は車両の軽量化には熱心なところで、モーター1台あたりの出力を大きくして電動車を集約化し、編成中の電動車の比率を減らし、また補機類も電動車に集中搭載して重量配分も電動車に集中させることで効率化を狙っている。こういうことが可能になったのは交流電動機やVVVF制御といった技術の発達で電動車に必要な機器が小型化されたためだが、このためにモーターのない付随車は極端に軽量化され床下はガラ空きの車両も多く、中にはあまりに軽くなりすぎて車両の重心が上がりすぎ危険なため、通常では屋根上に搭載されるエアコン機器を床下に搭載した車両すらある位だ。この点ではJR東日本の209系E231系は車体こそ207系以上に構造の簡素化・軽量化が進んでいるし電動車比率も昔より下がっているものの電気機器類のレイアウトや電動車比率では西日本ほど極端な方法は採っておらず、意外に国鉄的な手法が残っている(というか西日本の手法がかなり民鉄っぽい気がする)
 ただし「ステンレス車体になって軽量化されたから強度が…」という指摘は完全に的はずれ。軽量化されたのは無塗装による塗料の分と有限要素法のよる強度解析の進化で昔よりも無駄な部材なしで必要な強度が確保できるようになったせいです(アルミ車体については別の要素があるので何ともいえないが)。オフセット衝突であれだけの力がかかって変形しないというのが無理。

ただ、ここまで電動車に重量を集中させると、当然ながら付随車と電動車の重量の差が大きくなり、つまり走行中それぞれが持つ運動エネルギー量に相当な差が出る訳で、これが今回の事故のように衝突で停車する時どういうことになるのか。運動量保存則だのエネルギー保存則だの慣性の法則だのを組み合わせて考えていくと(物理が苦手な方は頭がこんがらかって来そうですが)、走行している電車が停止する時には運動エネルギーが何らかの形で消費されて別のエネルギーに変換される。通常の停車ではブレーキシューによる摩擦や熱エネルギーとして空気中に放散されたり、発電ブレーキや回生ブレーキの場合はモーターを発電機として使用するため電気的なエネルギーに変換されていくのだが、こういう衝突事故の場合、しかも前位の車両が建物など障害物で既に「逃げ場」をなくしている場合、慣性で動き続けようとする後位の車両が前位の車両を圧迫する形になる。
 この段階で、障害物にかかる運動量は前位の車両のみのものと考えられる。そして後続の車両の運動量は大半が前位の車両にかかる筈だ。運動している物体が急に止まる場合、進行方向と逆方向にかかる力は質量×加速度ということになるから、強度的に弱い部分に軽い付随車が比較的小さな力で停止するのに対して重い電動車を停止させるのには大きな力がかかることになる。つまり電動車の直前に連結された付随車により大きな力がかかる訳だ。
 電動車の場合、重量的に重いというだけでなく、床下の機器類が構造上の補強材の役目も果たすので強度的にも強くなるが、特にJR西日本車両は機器類を電動車に集中させ付随車の床下にはほとんど機器がないから強度的にも電動車との差が大きいのかもしれない。ということは強度上の弱い箇所(この場合は付随車)で構造力学上の座屈が起きやすい筈だから、ここで座屈が付随車に発生して潰れる。というか潰れることで運動エネルギーを吸収する。最近の自動車が衝突時の衝撃吸収のため客室以外の前後部を「クラッシャブルゾーン」としてあえて変形しやすい構造にしている理由はこのせいだが、電車の場合、最前面が運転台のためクラッシャブルゾーンを設けることが特急型でもない限りほぼ不可能で、逆に運転台付近の構造を強化して変形しにくくするしかないが、車体が変形しにくいということは衝突時のエネルギーが車体の変形によって吸収されない訳で、その分が全部、車内の乗客に向かってしまう危険が高いんだよなぁ…。難しいなぁ。
 今回の事故の場合は2両目が大きく変形している(先頭車は完全にマンション内部に突っ込んでいるため見えず不明だが、やはり相当な衝撃を吸収している筈)ように見えるが、これ、もしかしたら付随車で直後の3両目が電動車じゃないのかなぁ。以前、ドイツのICEが脱線事故を起こした時もこういうことを考えていたが、実際、京急では列車同士や自動車との衝突事故を考慮に入れて、わざと重い電動車を編成の両端に集中させているそうだ(京急は他にも色々と独特の技術的ポリシーがあり、その考え方を読み解いて他社と比較するのはけっこう興味深い作業である)。JRや関東民鉄では先頭車は付随車であることが多いけれど、今後は変わってくるのかもしれない。

また、基本的に鉄道車両は側面からの衝突をあまり考慮した強度構造になっておらず(想定されていないだろう)、これを指摘する声も今回挙がりそうだが、これは仕方ないと思う。車体自体にはかなりの強度や剛性が必要だから、それは床や屋根の部材で確保している筈だが、公共交通機関の輸送機器である以上、側面にはドアという大きな開口部がある訳で、通勤車両なら4箇所。全体として非常に細長い寸法(20m×3mくらい)の上に、しかも全幅の大部分を占めるような大きな開口部が何カ所もあるのだから、これで高い強度を維持するのは無理に近い。また、近年の自動車で義務づけられている側面衝突時の変形を減らすためのサイドインパクトビームを組み込むのも鉄道車両では難しい気がする。
 今回の事故はE231系を開発・製造しているJR東日本や、その派生型を採用しつつある関東大手民鉄にも相当な衝撃だろうし車体構造を見直すことになるかもしれない。また、西日本も少し前に207系の後継車両となる321系の登場を発表しているが、これも急遽設計変更がされることになるのかどうか。

そういうことを考えると、車体構造よりも問題は路線の線形やATSなどの保安設備にあるような気がする。基本的にはどんな場合でも電車が脱線しないための対策が最重要であって、今回ももし脱線事故の直後に反対側の線路を列車が通過していたら二重衝突が発生してさらに被害が大きくなっていた筈だ。
 しかしJR宝塚線(福知山線)にATS-Pが導入されておらず(目前ではあったようだが)、初期型のATSに近いATS-Swで運用されていたというのは驚きだった。ATS-Pが登場してから15年くらい経過しているが、これには地上設備だけでなく車両の改造も必要なので、どうしても運転密度が高く投資効果の出やすい都市近郊路線が優先されることになるのは確かだけど(危険度を考えると、むしろ踏切や単線区間が多いローカル線を優先すべきのような気もするんだが)、民営化後のJR西日本は関西民鉄の雄・阪急をかなり意識していて、競合する東海道線・福知山線の一部区間に「JR京都線」「JR神戸線」「JR宝塚線」と阪急線と同じ呼称をつけている位だし、順調に利用客が延びている学研都市線-JR東西線とも直通する福知山線大阪口はJR西日本にとってかなり優先度の高い路線の筈なのだが。
 ATS-PはJR東日本の首都圏近郊の通勤路線では導入がかなり進んでいるし、更に安全度の高いATCを採用している路線も多く、それも近年は新型のD-ATCに更新が進められている(最近、山手線がE231系を新造して取り替えられたのは、車両改造でなく新造でD-ATCに対応し、ATS-P対応の従来車をよその路線に回す意図もあった)。これに対してJR西日本の方ではあまりATS-Pへの更新が進んでいないらしく、東日本以外のJRも事情はたいして変わらない筈だ。もっともこれはJRに限った話でもなく、大手民鉄でもATS-Pレベルの保安設備を持っているところはきわめて少ない。主要路線のCS-ATC化をほぼ達成している東急がむしろ例外的な存在といえる(東京メトロを含めて地下鉄はCS-ATCを完備)
 今後、JR西日本でもATS-PやATSの導入区間拡大に相当な重点と費用がかけられることになるだろうと思う。関西圏のICOCAシステム導入はほぼ完了しているし車両更新は進んでいるから、その余波を受けるのは広島・岡山近郊区間やローカル線に対する設備投資ということになってしまうだろうけど。