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 「ブドウ中毒」全文訳 たこ

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ブドウやレーズンによる犬の腎不全

Sharon Gwaltney-Brant, DVM, PhD et al ; J Am Vet Med Assoc 218[10]:155

5-1556 May 15'01 Letter 0 Refs ; Renal Failure Associated with Ingesti

on of Grapes or Raisins in Dogs

犬が大量のブドウやレーズンを摂取したときに見られたことについて報告する。

ASPCA動物中毒センターのデータベースを検索して、大量のブドウ(5頭)も

しくはレーズン(5頭)を摂取したものについて検討を行った。うち8頭は1

999年から2001年5月の間に報告されていた。これらのうち4頭では摂

取量が推定でき、0.27〜1.0kgの間(10〜30g/kg)であった。ブドウは、日用品

店で購入したものもあればワイン用のブドウもあった。また、ワインを造る段

階でつぶしたものから発酵したものまであった。5頭のうち3頭では種無しブ

ドウであった。レーズンは大部分が市販されている天日乾燥したものでいろい

ろな製品があった。

すべてのケースで嘔吐が見られ、摂取後数時間以内に始まっている。大部分の

犬では一部消化されたブドウやレーズンが吐物や便中に観察された。元気の消

失(6頭)、下痢(5頭)、ぐったり(4頭)、腹痛(3頭)もみられた。臨

床症状は数日から3週間持続した。

摂取後24時間から数日後までの間に、高カルシウム血症(7頭、Ca:12.3-26mg/dl、

7頭、PO4:6.4-22mg/kg)、Ca×PO4の増加(7頭、81-390mg/dl)、BUN上

昇(9頭、23-209mg/dl)、クレアチニン上昇(9頭、4.3-18mg/dl)がみられた。

このうち5頭では、尿濃縮の有無に関わらず乏尿、無尿状態であった。

2頭は死亡し3頭は治療に反応しないため安楽死をした。5頭では積極的な治

療が功を奏し治癒した。長いものでは3週間を要した。その治療には、点滴、

利尿剤投与(フロセミド)、ドパミン、マンニトールを用いた。1頭では何日

か腹膜透析を行った。乏尿や無尿に陥った個体の予後は不良であった。

病理検査を行った1頭の所見では、軽度の腎尿細管の損傷と、多くの組織にカ

ルシウム沈着が見られたが、これらの所見だけで個体の病状を説明できるもの

ではなかった。その他有害物(重金属、真菌毒)は検出されなかった。さらな

る検査は、結果待ちである。

我々が知るところでは、犬や他の動物でブドウやレーズンを食べたことにより

腎傷害が起こるという報告はない。さらなるデータが出るまで、ブドウやレー

ズンを大量に摂取した場合には積極的に治療することを推奨する。体からの排

泄(つまり、催吐処置、胃洗浄、活性炭の投与)を摂取直後であれば行うべき

である。輸液は48時間以上行い、急性腎不全に移行しないか72時間にわた

りモニターすべきである。

これらの犬でどうして急性腎不全になったかは分かっていない。可能性として

は、カビが生えその毒素由来、高濃度のビタミンD3もしくは類似体、殺虫剤・

重金属・その他環境中の毒物の混入、もしくはまだ見つかっていないブドウ由

来の毒素が考えられる。ASPCA動物中毒センターの獣医スタッフはさらなる調査

を行うつもりである。


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