【公開口頭審査会にて代表7人の陳述】

 

                                                                                         審査請求人陳述書(1)

                                                                                                         ルネ大津対策協議会
                                                                                              京滋マンション管理対策協議会
                                                                                                                          市吉淳子

私は、ルネ大津の管理組合理事長を経験し、その後、約10年、京都と滋賀のマンションの管理組合の運営をサポートする活動に参加しています。200を越える会員の研修を企画したり、相談業務にあたるなど、マンションとの関わり・情報収集を重ねてきました。

此の度の超高層建築マンションの建設につきましては、当初から関わり、建築許可がおりる前から、大津市の建築指導課に伺い、住民の声を反映していただくようお願いしたり、建築会社にも、滋賀県の宝物・琵琶湖の景観を配慮して、法律ぎりぎりの建設は止めて欲しい旨の訴えをしてきました。市長や市議会にも働きかけをし、議会は、請願書の趣旨を理解して下さり、湖岸の高さ制限等について協議・検討することを決めて下さいましたが、議会決議を前に「建築許可」が下ろされてしまいました。
また、当該マンションの建設地は、「ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例(風景条例)」で「琵琶湖景観形成地域」に指定されている風致地区であるにも拘わらず、「総合設計制度」を利用した超高層が計画され、このことについては、「建築審査会」で審査の上、建築許可が下りることを知りました。対策協議会として、審査委員の皆様に現地をご理解いただき、審査に反映していただきたく、文書をお届けさせていただいたりもしましたが、「建築許可」は下りてしまいました。

対策委員会の文書を読んでいただいていたにも拘わらず、「建築許可」が下りたことに疑問を持った私たちは、大津市の情報公開制度を利用して、「大津市議会」、「建設消防常任委員会」と「審査委員会」の「議事録」を取り寄せました。その議事録を読む限り、それぞれの会議で建築指導課は説明不足があります。また、それぞれの会議で、私たちが指摘したことについて説明し、そのことについて協議され、私たちの言い分か不当であるならば止むを止ませんが、全く触れずに「総合設計制度」導入の方向で進められたのは如何なものかと思います。

  審査委員の皆様には、建築指導課の説明を拠りどころに判断を下されることになろうかと思いますが、建築指導課を何度も訪問し、意見交換をする中で感じられたのは、法律が基盤になるとはいうものの、法律は誰のために・何のためにあるのかということでした。当該におの浜地区は、昭和43年の新都市計画を受けて昭和47年「商業地域」に指定され、その後、マンションが建ち、多くの人が住む地域になりました。これまでは、商業地に建つマンションでありながら、日照や景観にも配慮し、近隣のバランスを考えた建築がされてきましたが、これは、事業主との話し合いの結果であって、人が住み、生活の場になったこの地域について、30年間、何ら住民(市民)のための法的背策を行わず、そのまま放置したために、今回のような超高層建築申請に対して、しっかりした指導が出来ない有様です。また、「総合設計制度」の適用に際し、「自由裁量権」を使われました。しかし、行政及び政策上の必要に応じて認められている「自由裁量権」は、その行使に必然性と行使すべき法律的根拠が認められる場合にのみ行使出来るものです。裁量幅も、社会通念上妥当性が認められる範囲に限定されています。「におの浜湖岸エリア」は、前述の「風景条例」により、高さ制限はないものの、「周辺環境との調和」が求められ、「大津市総合計画」にのっとっての解釈とはいえ、周囲の建物群から突出した超高層マンションを建てることは、条例制定の趣旨に違背しますので、法律上の根拠として「自由裁量権」を持ち出すことは、筋違いのものです。

このような大津市の行政対応の遅れや、無理な法解釈(自由裁量権)の「ツケ」を住民に回すというのは如何なものでしょうか。

近隣マンションの人たちの思いも含め、請願書に込められた1万人の要望を是非、汲んでいただきたいと思います。事業主が、これから大津にも参入してくるであろうことを考えると、建築申請時に湖岸での建築について協力をお願い出来なかったものか、すぐ横に人が住んでいるのだから、工事協定だけでなく、話し合いの機会を作ってもらえなかったものか、これからの課題でもあります。因みに、工事協定書の協議をすすめ、調印するばかりになっていたのに、建築許可が下りてからは協定書の締結を拒否し、代わる「差し入れ書」を以って工事に当たるという約束も反故にし、現在、工事をすすめています。

ルネ大津に入居後、湖岸の高い建物はルネが最後になる筈と言われた。その後、打出浜からにおの浜の湖岸に建つ建物は、商業地にも拘わらず、同等の高さに揃っている。風景条例に高さ制限がなくても、近く着工される県警新庁舎を含め、周辺環境と調和した、風景条例の制定趣旨に沿った風景が保持されてきた。

高層マンションが街の活性化につながるという考え方は、高度成長期の遺物で、セカンドハウス・空室があるとマンション管理は大変です。「マンションの管理の適正化に関する指針」では「マンナション管理に関わる関係者が相互に連携をとるとともに、関係者のネットワークを整備する必要がある。」と指摘しています。京都市は、「住宅マスタープラン」に早急かつ重点的に展開すべき施策の一つに「マンション管理」を位置づけ、マンション管理に関わる幅広い分野の関係者の参加する意見交換会「2002京都市マンションフォーラム」を開催されています。

審査委員の皆様には、是非、現地を見ていただき、あの場所に超高層マンションが相応しいかどうか、総合設計制度の導入についても再考を、宜しくお願いいたします。

                                                                                                                                以上

                                     審査請求人陳述書(2)

                                                                                     対策協議会委員
                                                                                           ルネ大津自治会
                                                                                             会長 矢内幸江

(1) ルネ大津は昭和51年に完成した大津市で最初の大規模集合住宅で、1号棟から3 号棟までの3棟に422戸の住民が住んでおります。このルネ大津の自治会を代表して大津市建築審査会の委員の皆様に、私たち地域住民の声をお伝えしたいと思い、この申立書を準備いたしました。経験が乏しく、また、このような建設反対問題に対する専門的知識も持合わせておりません。それ故、論点も十分に整理されておりませんが、今回の超高層マンションの建設によって生活環境が脅かされる地域住民の抗議の声としてお聞き届け下さい。

(2) この建設計画が持ち上がり、昨年4月8日に第1回の近隣説明会が開催され、以後3回の近隣説明会と、5回の近隣対策協議会(ルネ大津自治会と管理組合法人の依頼を受けルネ大津在住の有志の皆様が結成した実務組織)との事前協議会が開催されました。

(3) この間、事業者側は、私たち近隣住民の主張に耳を傾けることなく、22階建て超高層マンションの建設は社運を賭けた建設計画であり、また、総合設計制度の適用による容積率の上積みは大津市から認可されるものだから合法である。従って、ルネ大津側から要望されている建屋階数の低減には一切応じられないという立場を崩さず、建築計画の確認申請が受理された後は、建設反対の横断幕やのぼりを外さないなら工事協定の締結も行わないと通告するなど、地権者の権利だけを一方的に主張して建築工事を強行しております。

(4) 私たちは、におの荘の跡地に一切建物を建ててはいけませんなどと道理をわきまえない主張を繰り返している訳ではありません。ルネ側住民、特に、超高層マンションの建設による被害が最も大きくなる3号棟東側の50戸に住んでいる住民の皆様の生活環境の悪化が受忍限度を越えないよう配慮して欲しいと最低限度の要望を行っているに過ぎません。

(5) けれども事業者側は「最初に22階構想ありき」の態度を一歩も崩さず、超高層化による企業収益の確保を只ひとつの目標として大々的に営業活動を展開しておりますあの建設用地の購入にどの程度の資本が投入されたか知る由もありませんが、総合設計制度の適用による容積率の上積みを利用して22階建ての超高層マンションを建設しなければ採算がとれないような建築計画を立てること自体に問題があるのではないでしょうか。私たちは25年以上、私たちの生活環境と、におの浜湖岸エリアの美しい景観環境を守るため地道に住民活動を続けてまいりました。

(6) このような私たちの努力を無視し、バブル経済の悪しき遺産とも言うべき虚飾のタワ-を建設しようとする事業主の横暴に対し、私たちは抗議の声をあげざるを得ません。におの浜湖岸エリアに企業利益の確保だけを目的にした「におの浜レ-クサイドタワ-」の建設を許す訳にはまいりません。身勝手な一人よがりの超高層マンションを、におの浜湖岸エリアの「ランドマ-ク」として認める訳にはまいりません。

(7) この建設計画による被害は、3号棟東側の50戸に住んでおられる住民の皆様だけでなくルネ大津全体に広がります。この建設計画には、日照権や資産価値の低下だけでなく、この外にも4階建て構造の駐車場の火災事故や地震災害など数え切れない程多くの問題点が付随しております。火災事故に関連して付け加えますと、平成12年度の大津市消防局の統計によれば、同年度の全火災事故発生件数90件の内、放火または、その疑いがあるものが22件(約24%)を占めており、不況による社会状勢の不安定や非行による放火の増加傾向などを考え合わせると、不測の事態による火災事故の発生も懸念されます。

(8) におの浜湖岸エリアは、建物の高さについて特別に配慮することが要請されている琵琶湖景観形成地域です。平野学区自治連合会から得られた情報によれば、近く着工が予定されている県警の新庁舎においては、風景条例の制定趣旨を尊重し、工費の高騰を考慮しながらも、周辺地域の建物と調和するように、建屋の構造を地下2階、地上10階に設定し建屋の超高層化を回避しております。何故、県警と同じような考え方が事業主には出来ないのでしょうか。企業収益最優先で周辺住民の犠牲は考慮に値しないと考えているのでしょうか。私たちは、余りにも不誠実で自己中心的な事業主側の対応に憤慨しております。

(9) この建設計画による被害から生活環境を守り、住み良いルネ大津を作って行くため私たちは、1号棟から3号棟までルネ大津の全組織を結集し、総力で立ち向かって行く覚悟です。私たちは生活環境と社会正義を私たち自身の努力によって守って行くため、万一、審査請求が斥けられた場合には、行政訴訟をも辞さない覚悟で建設反対運動を続けてまいります。私たちの気持ちをお汲み取り頂き、公正な立場で学識経験者としての良心と良識に従い、慎重にご審理頂くよう、ルネ大津自治会を代表して、お願い致します。                                                                                                                                                                                                                                                            以上

                                    審査請求人陳述書(3)

                                                                             ルネ大津対策協議会
                                                                    ルネ大津団地管理組合法人
                                                                              理事長 葉山正人

1.私は、平成4年から現在まで、第2代理事長、市吉淳子さんの後を継いで、ルネ大津団地管理組合法人で理事長を務めております葉山正人です。区分所有者の共有財産の維持管理と共同生活の秩序維持の責任を負っている理事長の立場から、また、ルネ大津の一住民として、隣接の超高層マンションの建設反対運動について意見を申し述べます。管理組合は、居住民の皆様からお預かりしている管理費と修繕積立金を管理し、長期改修計画を立案して、建物としての資産価値がいつまでも損なわれないよう微力を傾注しております。管理組合の通常の担当分野は、ルネ大津の資産価値の維持を改修工事や修繕など、財政面からサポ-トするものですが、今回の建設反対運動では事情が若干異なります。住民の生活環境を守る立場から建設反対運動の第一線に立って頑張っている自治会と協力して、反対運動の継続に必要な予算の計上など、主として資金調達面から、この建設反対運動の推進に協力しております。

2.私たちは、隣接地にどのような建物の建築も認めないなどと、無茶な要求をしているのではありません。私権の正当な行使の範囲から明らかに外れた、総合設計制度の適用による容積率の上積みと、これを利用した建物の超高層化に反対しているのです私は法律の専門家ではありませんが、総合設計制度は、土地の高度利用が要請される地域に適用する目的で建築基準法の中に導入された法律制度であると聞き及んでおります。公開空地提供のボ-ナスとして事業主が手に入れる容積率の上積みなどは、周辺地域の都市基盤の整備改善に役立つものでなければならず、この条件が満たされない地域への総合設計制度の適用は認められないことが、その運用基準として公布された許可準則に決められている旨伺っております。この観点から眺めた場合、総合設計制度の導入には合理的な根拠が見出せません。私以外の対策協議委員も陳述されますが、私たちが現在住んでいる、におの浜湖岸エリアには、大津市の財政支出によって、広大ななぎさ公園や、なぎさのプロムナ-ドなどの都市施設が完備されており、また、ルネ大津から、その竣工時に無償で大津市に提供された公共用地には、児童公園や、におの浜保育園などの充実した公共施設が完備されております。デ・リ-ドが新聞広告などを利用して、派手に宣伝している優れた眺望や良好な生活環境などは、私たち地域住民の長年の努力によってもたらされた成果にほかなりません。私たちは、声を大にして抗議します。これらの都市施設の整備改善は、大津市と私たちルネ大津の住民を中心とする地域住民の20数年に及ぶ住民活動の成果として出来上がったものです。決してデ・リ-ドの建築計画、特に、総合設計制度の適用によってもたらされる成果ではありません。今回の建築計画は、私たち周辺住民の努力の成果に只乗りした企業利益優先の事業計画に過ぎません。私たちは、生活環境を破壊し住居の資産価値に低落をもたらすこの超高層マンションの建設に断固反対します。

                                                                                                                                    以上

                            審査請求人陳述書(4)

                                                                    ルネ大津対策協議会
                                                                                                            委員   荒井美紀子

   ルネ大津3号棟東側の住民を代表して発言させて頂きます。

   私たちは、25年この地に住んでおります。
におの浜荘跡地に超高層マンション建設の計画を知り皆住民は驚きました。
このにおの浜地域一帯は商業地域で建物の高さ、日照の制限がないとは言え、ルネ大津 は全部で422戸、私の住んでいる3号棟東側だけでも50戸の約100人の住民が住んでおります。私たちの生活環境に被害を与える22階の超高層マンション建設には絶対反対です。

   土地の用途区分上では、商業地域に分類されていますが、実際では中高層住宅地域であり、日照時間が保障されなくてもよいという考え方は、実状に即したものとは言えません。
東側の住民は、冬には一部日照が殆ど望めず、空も見えないと言う状況になります。今まで当たり前だと思っていた朝日の当たる生活環境が、業者の利益第一の建設計画によって奪われてしまうことが納得できません。

   22階の超高層マンションの建設により様々なことが考えられます。1階から4階までが駐車場という危険な構造になっています。その上が居住部分になっております。そして近頃の不況による社会情勢の不安定などを考えると、治安の上でも問題があると思います。またこの辺りは膳所断層が走っており、地震が起これば液状化現象の問題が発生するかも知れません。、埋め立て地に建つ超高層マンションはとても危険だと思います。

   このような地域住民の不安を無視して工事を始め、未だに工事協定も結ばずに6ヶ月が過ぎようとしています。
業者の一方的なやりかたに私たちは不満をいだいております。
業者が超高層化の恩恵を受ける一方で、周辺に住む私たちが日照時間がゼロ、天空視界実質ゼロなどの受忍限度を超える犠牲を強いられるのは、どう考えても納得できません。

   におの浜湖岸エリア一帯は琵琶湖景観形成地域に指定されています。浜大津からルネ大津一帯までの地域は、国際観光都市大津の顔となる自然環境に恵まれた緑豊かな風致地区です。街並みの面から眺めれば、概ね高さ35m以下の建物が並んだ調和のとれた中高層建築物から成り立っている地域です。このように高さの揃った街並みに75.8mは到底考えられません。

   私たち周辺住民の生活環境に受認限度を超える悪化がもたらされないように、公平な審査をお願い申し上げます。
私たち周辺住民は、私たちだけに犠牲を強いるこのような超高層マンションの建設に絶対反対です。よろしく審査の程お願い申し上げます。
                                                                                                                                   以上

            

                                        審査請求人陳述書(5)

                                                                               ルネ大津対策協議会
                                                                                                            委員     大関眞

  この度の問題に当初から、関係当局との折衝に携わってきた委員の一人としまして、案件処理を巡る法的解釈の違いについて、疑問に思う何点かを思い返しながら、改めてそれらの問題を提起し、ご審理願いたいと思います。

   建築指導課とは、再々諸問題についてご相談し、ご指導も受けて参りましたが、その中で、平成13年6月1日建築指導課訪問の時のことです。
   総合設計制度に関する見解の一つの例として、デ・リード社が総合設計制度を適用した問題について、建築指導課は、「大津市総合計画の中に総合設計制度を積極的に導入することが盛り込まれており、建設予定地は商業地域であるから総合設計制度の適用に問題はない」と明言されました。私達の住んでいるにおの浜湖岸エリアは、商業地域であるとは言うものの風景条例では琵琶湖景観形成地域に指定された地域であって、これまで発言していますように、土地の高度利用を目的とした総合設計制度の適用など必要のない地域であります。

   平成13年6月15日私達の請願を審議する初の「建設消防常任委員会」を傍聴した時のことです。
  建築指導課が核心の総合設計制度を説明する段階で、デ・リード社作成のパネルを利用する一方で、私達の請願趣旨には全く触れず、一方的に「建築基準法の規定によれば公開空地の設置に違法性は認められない。将来、資生堂・アヤハレークサイドホテルが取り壊された時には、計画されたこの道路状公開空地と、これらの建物の取り壊し跡地に設けられる道路が繋がることによって、オープンスペースとしての利用性が更に高まるとして、この建築計画を正当化する」など、私達の生きるか死ぬかの真剣な問題をこのような仮定の話で、片付けておられましたが、これで良いものでしょうか?
   このように、業者側から提供されたパネルを利用して、必ずしもこの法律問題に精通しておられない委員の方々に、総合設計制度の概要を説明する一方で、この問題に対する私達の主張、つまり総合設計制度の適用に際しての「許可準則」と「風景条例」の制定趣旨を全く論議することなく、総合設計制度の導入を既定の事実として容認した経緯があったことを申し添えておきます。
   後の建築審査会に於きましても、情報公開制度によって取り寄せた審査会議事録には、建築指導課は同様の、私達にとって不十分と思われる説明が繰り返され、不公平な審議結果に終わってしまいました。事務局の建築指導課から、委員の方々に充分な説明がなされておれば、かかる審査会で、総合設計制度適用の違法性が、ご理解頂けたのではないかと返す返すも残念でなりません。

   次いで平成13年7月3日建築指導課を訪問し、意見交換した際、同じく総合設計制度適用の可否を巡る問題で、先にお話しした「敷地内に建設される建物本体のみについてデ・リード社提供のパネルを使用した説明で問題ないと判断している」との発言があり、 また建設消防常任委員会に都市計画課の出席を要請したが、出席して貰えなかった、との説明もありました。
  更に建築指導課は「におの浜地区は、商業地域だから総合設計制度の適用に問題なく、建築基準法に従って審査するのが業務である。住民の声を聞いて、建築確認申請を認めなかった場合、業者から告訴される。京都市と同じように行政訴訟で敗訴することになり、大津市の損害を回避するため、現時点では認可しないわけにはいかない」とまるで、告訴を恐れて認可した、と言わんばかりの発言でした。
   ここでも私達は総合設計制度の適用問題について話しましたが、「許可準則」について、その理念は「敷地の周辺地域における土地利用の実状や都市施設の整備状況まで考慮に入れる総合的な判断に従って審査する」と言う基本原則の必要性を繰り返し強調しました。これに対し建築指導課からは周辺地域の事情まで考慮していたのでは建築案件の審査はできません、との見解が示されました。
   私達が、今後、行政不服審査法に基づく審査請求も辞さない覚悟であることを、ほのめかすと、建築指導課からは「行政不服審査は建築確認申請が認可されない場合、事業主側は請求できるが、ルネ大津側から請求されても、請求人適格なしとして却下される。商業地域に区分されている以上、日照時間ゼロでも不服申し立てをすることはできない」との説明がありました。あたかもあなた達には審査請求の適格性がないから請求を出しても無駄ですよ、と言わんばかりの説明です。しかし大阪市建築審査会の判例で、商業地域であっても請求人としての適格性は、明確に保障されております。

   次は平成13年8月9日建築指導課でのことですが、改めて総合設計制度の「許可準則」の解釈について正しました。 建築指導課は「建築基準法第6条の2と同様、その適用範囲は敷地内に限定していると明言し、「斜線制限」に関する指導基準を引用して「許可準則」は法律ではない、あくまで指導基準に過ぎない」と常識はずれの見解を示しました。しかしながら「許可準則」は正真正銘の許可基準で、その制定趣旨は、前にも述べたとおり総合設計制度の適用に関する一般的な考え方を示すものです。
   更に総合設計制度の適用には「自由裁量権」が認められることを、その後9月3日に建築指導課を訪れたときに聞きました。それは、行政上、政策上の必要に基づき認められると言うものですが、調べたところによりますと、「市当局に、行政上、政策上の必要性に応じて自由裁量権が認められるとしても無制限に行使できるものではなく、関連する法律の制定趣旨や地域の実状などから考えて自由裁量の幅には一定の限度がある」と言うことが判りました。市に、自由裁量権があるとは言え、私達の住むにおの浜湖岸エリアに無条件に行使できるのでしょうか? 総合設計制度を適用しなければならない程、稠密な市街地ではなく、土地の高度利用を図ることが要求される地域でもありません。この「自由裁量権」に関する建築指導課の見解は、行使上の制限を無視しているのみならず、先の8月9日の発言内容とも明らかに矛盾した所があります。即ち、自由裁量権は総合設計制度の適用範囲を敷地内に限定してはならないにも拘わらず、建築指導課は敷地内の建物について自由裁量権の行使を認めようとしていて、この点は明らかに矛盾しています。

   次は県側の風景条例に関する問題ですが、建築確認申請審議に必要な各関係部署事前協議の中に、「風景条例」に照らして認可の可否を判断した文書があります。国松県知事名で認可が下りたお墨付きの文書です。この問題を確かめるべく、9月19日、県の自然保護課を訪れ、私達は、係の方にこう質問しました。「申請された建築計画に対して、風景条例の規定に適合しているとの認定は、条例の如何なる部分に適合していると言うのか?更に条例に『周辺の建物と調和するように建物の形態に配慮すること』が規定されているにも拘わらず、今回の建築計画は22階建て最高高さ75.8mで、ルネ3号棟の2倍以上の高さがあり、周辺の建物と調和のとれた形態と言えるのか?また比較する建物の形態とは何を意味するのか?」すると係員の曰く、私見ですがと断りながら、「条例に言う建物の形態に高さの概念は含まれず、ルネ大津の隣りに倍の高さの建物が建っても、調和が取れていれば問題ない。仮に、高さの異なる複数の建物が並んでいる時、その上に共通の屋根を設け、その建物群を一体に考えれば、形態の調和は保たれる」とのあきれ果てた見解が示されました。私達は県のこの非現実的な見解に、全く開いた口が塞がりませんでした。
   何度も例に出しますが、平成7年度完成予定の滋賀県警本部新庁舎建設計画において、当局が尊重されたのは、将に「風景条例」の制定趣旨であります。少なくとも琵琶湖景観形成地域に指定されている「におの浜湖岸エリア」や「打出浜湖岸エリア」において建設される建物の高さを、周辺の建物群から突出させないよう設計することは、当然の配慮であり、県警本部の設計ポリシーは、「風景条例」の制定趣旨を充分に尊重したものと評価されます。それに反し、デ・リード社の、「風景条例に高さの規定条項がないから、風景条例には違反しない」と言う、無定見きわまりない設計思想には社会倫理の欠落が感じられ、激しい憤りを覚えます。
   県職員が、満足に条例の解釈もできず、このような非論理的な回答しかできないなら、そのような紛らわしい条例は要らないと言うべきか、もう少し条例の解釈について勉強した方が良いと言うべきか、何れにしても言うべき言葉も見つかりません。

   他にも言いたいことがありますが時間がありませんので、最後にお願いをして終わらせて頂きます。
   とうとう業者が一歩も譲らない内に建築確認申請が認可されました。事業主は工事協定を結ぶと言いながら、一方的に約束を破棄し、工事協定書を締結しないまま、現在基礎工事が進行中であります。最近になりまして、大型タワークレーンが稼働し始めると、旋回部分が市道上にはみ出すため、使用許可届けが必要です。しかしこれも届出せずに設置したため、道路管理課から指導して頂くよう、お願いしたこともありました。他人の迷惑など頭になく、私共も我慢ならないので、建築指導課を訪れお願いしましたが、「建築確認申請が下りた後の住民の被害・迷惑は民事上の問題だから、当事者間で解決せよ」と取り合って貰えませんでした。業者が売り逃げなら、行政も認可が済んだら、ハイさようならと、業務とは言え、無責任極まりない対応振りです。 最後に、委員の先生方にはもう一度、 明確な審査基準と審査慣行に基づき、公正且つ公平な裁定を下されますよう、切にお願いしまして陳述を終わります。

                                                                                                                                    以上

                                           審査請求人陳述書(6)

                                                                              ルネ大津対策協議会
                                                                                   委員 三宅新一

1.私たちルネ大津の住民は、建築審査会の委員の先生方に、近隣説明会および、それに先立って私たち対策協議会の委員との間で行われた事前打合わせ会においてなされた事業主デ・リ-ド社側の交渉担当者の常軌を逸した発言や回答に注目して頂きたく以下、その要旨を抽出して述べさせて頂きます。

  (1) 風景条例に関する見解を尋ねた私たちに対し、デ・リ-ド社側の交渉担当者は、「私たち事業者は、過去数か月間、この建築計画に風景条例上の問題がないか否か検討した。その結果、風景条例には、建物の高さ規制条項や、この条例に違反した場合の罰則規定がない事実を見出だし、総合設計制度の適用に踏切った」と答弁しました。これに対し私たちは、「法律や条例は市民として守るべき最低限度の社会的規範ではないのか。形の上で法律や条例の規定に抵触しなければ、どのような建築計画も違法ではないと判断しているのなら、社会倫理上許し難い違法行為である企業として採算が取れる建築計画であれば、周辺住民の居住環境やその周囲の地域の景観環境には配慮する必要がないとの経営姿勢には問題がある」と反論しております

  (2) 私たちは、「ルネ大津の建設時に、公共用地として敷地面積の約27%にも及ぶ広大な土地を無償で大津市に提供したこと、およびこの無償提供用地を利用して、「児童公園」や「保育園」などの公共施設を整備し、都市基盤の整備改善に寄与してきた事実を指摘しました。におの浜湖岸エリアにおける都市基盤の整備改善は、大津市および私たち地域住民によって達成されたものであり、今回の建築計画、特に、デ・リ-ド社による総合設計制度の採用によって達成されたものではありません。事業主デ・リ-ド社により申請された道路状公開空地は、その南端と東端が隣接の建屋によって遮断されており、この超高層マンションの居住者と、この建築物に出入りする自動車のための専用通路としての役目を果たすだけで、総合設計制度にいうオ-プン・スペ-スとしての機能は全く持合わせておりません。また、この道路状公開空地と建屋の間の広場状公開空地は、このマンション入居者専用の前庭として使われるだけで、公共用地として利用できるものではありません。このような観点から、今回の建築計画で申請された公開空地は、におの浜湖岸エリアの都市基盤の整備改善に何等寄与するものではありません。容積率の上積みによる建屋の超高層化手段として申請されたものに過ぎず、公益上むしろ有害な建築計画である旨主張しました。これに対しデ・リ-ド社側の交渉担当者は、「ルネ大津建設時に公共用地として大津市に土地を無償で提供したことと、今回の建設計画は全く無関係である。ルネ大津提供用地に設置された公共施設への立ち入りを快く思わないのであれば、入居希望者にこの事情を説明し、これらの公共施設への立入りは自粛して貰ってもよいと考えている」と答弁しております。入居者と近隣住民の共存に全く留意しない「売り逃げ的対応」の無責任さは、目に余るものがあります。

2.超高層化による日照時間の激減問題に関連して、建物階数の低層化を求めた私たちに対して、デ・リ-ド側の交渉担当者は、「日照時間の減少は必ずしも悪いものではありません。特に夏場などは、日陰になることによって涼しい居住環境が得られるという利点もある」と答えております。大津市による総合設計制度の容認を根拠にして、周辺住民の居住環境の悪化に対して全く配慮するところのないデ・リ-ド社側の対応に、私たちルネ大津の住民は、深い憤りを覚えざるを得ません。

3.建築基準法の改正によって、現在、近隣説明会で討議された内容について、周辺住民側の同意は不要とされています。私たちは、法律以前の道義的責任の問題として、近隣説明会の議事録には、協議内容の正確な記載が義務付けられているものと理解しております。しかしながら、事業主側は、以下に述べますように、近隣説明会議事録の改ざんや、議事録正本の未送付など不誠実極まる対応を続けて来ました。これらの事実を申し述べ、企業倫理上の観点から、本件建築計画の違法性を説明します。

 (1) 第1回近隣説明会に先立ち、平成12年12月に、デ・リ-ド社側交渉担当者からルネ大津の前年度自治会長夫妻に対し建設計画の概要が説明されました。総合設計制度の適用による容積率の上乗せなど、本件建築計画の中心的な課題については全く説明がなされませんでした。建築法規に必ずしも精通しておられなかった善意の前年度自治会長夫妻は、建築計画の容認と、3号棟東側住民との個別協議による補償金支払い交渉の応諾など、事実誤認に基づく問題解決手段に合意してしまいました。この議事録が、ルネ大津全体の組織としての承認を得る事なく合意事項の公式記録として大津市に提出されたのは、極めて異例な事態であり、公文書偽造または公文書不実記載とも言うべきこの違法行為によって、市当局は私たちが、この建築計画を認めたと誤解し、また、私たちルネ大津の住民は、計り知れない迷惑と損害を被りました。念のため申し添えますが、この事前協議会の議事録は、前年度自治会長に送付されておらず、この議事録が大津市当局へ提出する公式議事録であることすら説明されておりませんでした。私たちは、大津市の公開審査情報で初めてこの事実を知り、事業主側の信義をわきまえない違法行為に深い憤りを覚えております。このような事が許されて良いのでしょうか?

 (2) 平成13年4月に開催された第2回近隣説明会において、ルネ大津側の出席者は本件建築計画への総合設計制度の適用は違法であることを指摘し、建築計画の見直しを要求しました。この要求に対し、デ・リ-ド社側の交渉担当者は明確な回答を避けました。ところが、後日届けられた議事録においては、総合設計制度適用の違法性を指摘したルネ大津側の記録が全面的に削除されておりました。このような不法行為に対処する目的で、私たちはデ・リ-ド社側に近隣説明会議事録の全面書替えを要求し、それ以降は、両当事者の認証印を押捺した後、公式議事録として市当局に提出することを申し入れ今日に至っております。

4.以上申し上げました3項目の内容は、事業主側の違法行為を証明する証拠物件として、文書、ビデオ・テ-プまたはカセット・テ-プ等に記録し保管しております。これらの証拠物件は、建築審査会から要請があった場合、証拠方法として提出することが可能です。必要に応じてこれらの証拠方法の提出を要請されるよう希望します。

5.平成14年1月24日、建設工事現場に設置される2基のタワ-型クレ-ンの基礎部分の据付工事が開始されました。この事実を確認し、翌25日、届け出の有無を確認するため、ルネ大津の対策協議会委員は、大津市役所の道路管理課と大津市警察署の交通一課に出向きました。問い合わせた結果、いずれも「届け出なし」との回答が得られました。運転時に当該タワ-型クレ-ンの運転台部分が公道(市道中4005号)の上に張り出し、道幅の約2/3 を塞ぐため、道路交通法の規定に抵触するのではないかと質問しましたが、現時点では運転台部分が敷地内に収まっているため、問題はなく、後日、届け出があると思うとの回答が得られました。通常、このような届け出は、据付工事の開始前に提出されるのが普通であるとのことですが、1年8ケ月にも及ぶ公道上空間の不法占拠であり、交通安全上、大きな問題があると判断されます。

6.建築確認申請が容認された後は、工事協定書の調印あるいは、これに代わる差入書の差し入れを拒否し、強引に工事を続行しているデ・リ-ド社側の姿勢には、法律は最低限度の社会的規範であると言う道徳観の無視が感じられ腹立たしい限りです。彼等にとって、法律とは遵守すべきものではなく、抵触を回避し抜け道を探すための手段に過ぎないのかも知れません。業者も業者なら、大津市総合計画に迎合し、総合設計制度の導入について実質的な審査を行うこともなく建築確認申請を容認した市当局も市当局です。審査の形骸化と、大津市政の将来を憂い、陳述を終わります。

                                                                               以上

                                             審査請求人陳述書(7)

                                                                      ルネ大津対策協議会
                                                                          委員 矢内 衞

Ⅰ.ルネ大津自治会および団地管理組合法人の依頼を受け、建設反対運動の実務を担当している対策協議会を代表して意見を申し述べます。大津市建設部建築指導課を中心とする処分庁の審理不尽については、大関 眞さんが陳述され、また、建築確認の申請対象となった建築計画、特に、総合設計制度適用の非合法性については、三宅新一さんが陳述されておりますので、私は主として法律条文の解釈の面から、今回の建築計画の違法性を指摘いたします。

 (1) 私たちは平成13年6月5日、大津市議会に一万名近い署名を添え「大津市湖岸エリアの景観を守るため湖岸周辺建築物の高さ規制を求める請願」を提出しましたこの請願は、市議会の建設消防常任委員会で6月から12月まで合計4回審議されましたが、12月開催の市議会において不裁決の決定が下されました。私たちはこの決定に問題があると考えておりますが、審議の結果よりも、その審理経過と審査慣行に承服し難い問題点を見出だしております。請願書の審議は、総合設計制度の適用を前提にして申請された隣接敷地における超高層マンションの建築計画と密接不可分の関係を持っておりますので、まず、建設消防常任委員会における請願書の審議に的を絞り処分庁の不適切な対応について意見を申し延べます。

 (2) 請願書を提出したのは、私たちルネ大津の住民です。大津市に超高層マンションの建築確認申請を行ったデ・リ-ド社ではありません。それにも拘らず、処分庁である大津市は、この建築確認の申請を最初から認可する方向で建設消防常任委員に総合設計制度を説明しました。即ち、デ・リ-ド社提供の大型パネル2枚を使い、将来予測まで交えて公開空地の説明を行う一方、私たちが提出した請願の趣旨に関しては全く説明しない儘、審議を終らせてしまいました。請願人である私たちルネ大津住民の主張点について全く審査されない儘、4回に亘り継続審議扱いが続きました。結局、建築確認申請の認可によって継続審議の意味が失われたとの理由で、私たちが提出した請願第5号には12月市議会で不裁決の決定が下されました。市議会の全ての会派が請願の趣旨に賛同して下さったにも拘らずこの結末です。私たちは、大津市当局の明らかに事業者寄りの姿勢に対して、審理不尽、並びに請願権と議会民主主義の精神を否定する暴挙として強硬に抗議します。この市議会における審理不尽は、処分庁による建築確認案件の審査に踏襲され悪しき前例を残した儘今日に至っております。

 (3) 私たちは、土地の高度利用が要請される稠密な市街地とは程遠い「におの浜湖岸エリア」における建築計画に「総合設計制度」の適用を求めることには正当な根拠が認められないと主張しております。「におの浜湖岸エリア」は、「風景条例」で建物の形態を周辺地域の建物と調和するよう配慮することが要請されている「琵琶湖景観形成地域」です。建物の形態なる概念に建物の高さが含まれることは、改めて説明するまでもない自明の事実です。近い将来着工が予定されている県警新庁舎の建設計画においては「風景条例」の制定趣旨を尊重し、周辺地域の建物群の高さと調和するよう地上階の最高階数を10階に制限しております(甲第12号証)。この事実からも本件建築計画の違法性は明白に理解することが出来ます。

 (4) 私たちは、総合設計制度の適用に関する見解をお聞きするため、何度も建築指導課を訪問しております。建築指導課は、当初、建築基準法第6条の2と同様「敷地内の建物に限定して総合設計制度適用の是非を判断する」との見解を示して居られました。建築基準法第6条の2は、規制型の法律制度であり、自由裁量権の行使は認められておりません。これに対し「総合設計制度」について規定する建築基準法第59条の2は、誘導型の法律制度であり、その適用に当たっては、「許可準則」に示すように、「敷地内だけでなく、その敷地の周辺地域における土地利用の実態まで考慮に入れて適用の是非を判断すべきことが規定されております。しかしながら、建築指導課の見解はこれと異なり、「総合設計制度適用の是非」は、あくまでも敷地内の建物に限定して判断すべきであるとの事でした。建築基準法第6条の2は規制型の法律制度ですから、この処分庁の見解に従えば、自由裁量権の行使は当然認められない事になります。事実、建築指導課長殿は、全く見当違いの総合設計制度における「斜線制限」の適用検討表(乙第2号証)を引用して総合設計制度適用の正当性を主張されました。しかしながら、この判断には看過すことの出来ない誤りが内在しております。「斜線制限」の計算式について規定した適用検討表は、「許可準則」に規定する一定の要件を満たしている敷地内の建物について「斜線制限」を計算する際に用いられる「指導基準」に過ぎません。総合設計制度に係る許可に関する一般的な考え方を示す「許可準則」の規定に適合しているか否かを判断する以前に「斜線制限」の適用検討表を持ち出して議論するのは全く無意味な事で審査の正当性を証明する根拠にはなり得ません。『見解をお聞きしている対象は、指導基準である「斜線制限」の適用検討表ではなく、あくまでも甲第1号証に示す「許可準則」です』との私たちの指摘に対し、今日に至るまで処分庁の大津市から納得も行く説明が頂けなかった事を私たちは非常に残念に思っております。

 (5) これを契機にして「総合設計制度」特に「許可準則」に関する処分庁の解釈が逆転しました。つまり、『総合設計制度の適用に際しては適用単位は街区または地区単位に限定されるものの、自由裁量権の行使が認められるから、他の条例、例えば大津市総合計画の導入などに基づき、裁量幅を自由に調整することが出来る』と従来と全く正反対の見解が示されたのです。ご都合主義もよいところです。法律条文の解釈において鉄則とされている「禁反言の原則(クリ-ン・ハンドの原則)」が公然と破られたのです。まさに無定見極まりない論理のすり換えです。「許可準則の尊重が前提条件である誘導型の法律制度である「総合設計制度適用の是非」を規制型の法律制度である建築基準法第6条の2と同様の法律解釈に従って判断していた審査基準適用の誤りを市当局自身が認めた訳で、この一事を以てしても本件建築計画への「総合設計制度導入の違法性」は明瞭に理解されます。私以外の陳述人の皆さんも指摘しておられるように自由裁量権の行使には一定の制限があり、裁量幅も自由気ままに拡大することは出来ません。「総合設計制度」の導入に際し考慮すべき条例として「大津市総合計画」の外に「風景条例」も制定されております。「総合設計制度」の導入に際しては、地域の都市基盤の整備状況に応じてこれらの条例や施行規則との整合性を考慮する必要があります。

 (6) 処分庁の法律的解釈にこれ程重大な間違いがあったにも拘らず、私たちの指摘は審査庁である建築審査会に届かず、建築基準法第6条の2と、同法第59条の2の解釈が入り交じった不可解な審査基準に基づき「総合設計制度の適用」が承認されてしまいました。今回申請された建築計画が大津市における最初の「総合設計制度導入案件」であり、審査プラクティスに不慣れな点があったと言う事情があったにせよ、処分庁に事業主と周辺住民の権利に同等の配慮を払うという行政姿勢が定着しておれば、このような事態に立ち至ることは避けられた筈です。大津市の建築指導史の上に苦い教訓を残した審査事例として残念に思われてなりません。「過ちを糺すにためらうことなかれ」の諺があります。処分庁の誤った法律判断が、そのまま建築審査会で援用され委員の先生方が困惑された様子が情報公開制度を利用して取り寄せた審査会の議事録から窺い知られます。今度こそ正しい法律解釈の原則に則り、公平な立場から審査がなされることを願っております。私たちは、生活環境と、におの浜湖岸エリアの景観環境を守るため、そして、新旧住民間に社会的公平と正義がもたらされることを願って、この建設反対運動を闘ってまいりました。私たちは無意味な論争を好むものではありませんが、万一、審査請求が斥けられた場合には、行政訴訟の提起も止むなしとの決意を固めております。建築審査会委員の先生方の見識と公平な判断に期待し、宜しくご審議の程お願い申し上げる次第です。

 (7) ここで一言付け加えさせて頂きます。審査庁は1月21日付けの通知において、『審査請求人が求める図書、平成13年度大津市第1回建築審査会の省略のない議事録ほか2件については、当審査請求事件の審理に必要ないので、当該物件の所有人にその提出を求めないことになった』との見解を示しておられます。処分庁からの通知であれば、理解できない訳ではありませんが、公平、公正たるべき審査庁のご判断としては納得でき兼ねます。不完全な公開情報で判断に困っている請求人の立場から省略のない公開情報の提供を要請しているのに、中立的な立場にたって審査に当たるべき審査庁(建築審査会)がこの要求に答えないのは、不適当ではないでしょうか?

Ⅱ.今回は図らずも相反する立場に立って争う事態に立ち至りましたが、私たちは、ふるさと大津の自然を愛する市民として住民自治の精神に則り、市政の円滑な推進への協力を拒むものではありません。市当局あるいは山田市長殿から要請があれば、今回の経験を生かし、問題解決のため、建設的な提案を行う用意があることを申し添えます。例えば、国際観光都市、大津市に相応しい総合設計制度導入基準の見直し、「風景条例」への建物の高さ規制条項の導入など、市当局の責任において推進すべき課題は山積しております。市当局におかれては、常に“市民のための市民による市民の政治”を念頭に置いて市政の推進にご励み下さい。以上で私の陳述を終わります。

                                                                               以上

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