【私たちの主張とこれまでの取組み】

大津市長に対する「請願書の審議に関するお問い合わせ(付属文書)」より


 大 津 市 長                               
 山 田 豊 三 郎   殿                         
                     郷土を愛しびわ湖の美しさを守る会 
                     ルネ大津自治会会長 矢内幸江 
                     ルネ大津団地管理組合法人理事長 葉山正人

          請願書の審議に関するお問い合わせ(付属文書)

1.私たちは、去る6月5日、20年以上の長期に亘り、大津市湖岸エリアの景観保全に努力してきた地域住民の熱意に支えられ、旧『鳰の浜荘』の取り壊し跡地に予定されている22階建て超高層マンションの建設に反対する立場から、この建設反対運動の趣旨に賛同して下さった方々、合計 9,839名の署名を添えて、大津市議会議長殿あてに請願書を提出致しました。本件請願は、6月15日に開催された市議会建設消防常任委員会において審議され、市議会各会派常任委員殿の多数意見、『本件請願の趣旨には賛成であるが、県当局の景観保全条例に、建築物の高さ規制条項が盛り込まれておらない現状では、継続審議扱いが妥当である』に従って『継続審議扱い』となりました。

2.私たちは、この決定を受けて、『建築基準法、特に、市街地住宅総合設計制度と、ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例』との整合性を尊重することを基本理念として上記建設反対運動を展開して行くことを再確認致しました。

3.私たちが、湖岸エリアへの22階建て超高層マンション(塔屋を含む地上最高高さ75.8m)の建設に反対する最大の理由は、周辺住民の居住環境や湖岸エリア開発の歴史的経緯と景観特性に配慮することなく、企業利益の追及のみを目的として、このような超高層建築物を建設しようとする事業主の姿勢に、地域住民として、強い憤りを覚えるからにほかなりません。市の建築基準法関連条例や県の風景条例に湖岸エリアに高層建築物を建設する際、適用可能な高さ規制条例が盛り込まれておらない現状においては、事業主から提出された建築計画の届出書などに形式上、建築基準法に定められた条項に対する瑕疵が存在しない限り、適法な建築物として、建築確認申請を受理せざるを得ない市当局のお立ち場も理解できない訳ではありません。しかしながら、過去10数年間、数回に亘り規制緩和条項を盛り込まれた建築基準法によって事業主側が手厚く保護されているのに対し、住民側には実質的な意味において法律的に有効な対抗手段が提供されておらないのも偽らざる事実であります。

4.今回の建設反対運動において、私たちが最も悩まされたのも、建設物の設計条件が敷地の用途指定、および建築基準法の規定に形式上適合しているから、適法の建築計画であると言う事業主側の主張でした。

5.私たちは、法曹関係者や学識経験者のご意見を参考にしながら、上記事業主側の主張に道義的観点から眺めた場合、論理的な矛盾点がないか否かを検討すると共に、法律または条例の適用に際しては、本来、その立法精神または制定趣旨に基づいて運用の可否が判断されるべきものであるとの法理念に立脚して、本件建設計画が合法的な根拠を持つものか否かを検討しました。その結果、本件建設計画の場合、『市街地住宅総合設計制度の適用には合理的根拠が見出だされない』との結論に到達しました。このような折りから、6月21日付けの主要新聞各社(朝日新聞、京都新聞など)の朝刊滋賀版で、6月20日開催の滋賀県議会の本会議において、来年度からの施行を目指して『ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例』に大規模建築物の高さ規制条項を盛り込む旨の国松知事の条例改正案が報道されました。このニュ−スは、現行の建築基準法に見られる開発優先の姿勢を見直し、地域特性に合った景観保全計画を策定するための実効性の高い条例改正構想を提案するものとして、私たちが進めている湖 岸エリアへの超高層マンションの建設反対運動に対して大きな精神的支柱になるものではありますが、現実の問題として、上記条例の中に導入されようとしている建築物高さの規制条項は、来年度からの施行を想定して立案されております。今回の条例の見直しは、罰則規定が設けられておらず、知事の指導権限が必ずしも明確でなかった84年制定の現行風景条例の不備を補い、行政指導の実効性を画期的に向上させるものとして、その一日も早い施行が待たれます。

6.とは言いながら、現在、私たちが建設反対を唱えている22階建て超高層マンションについては、現実の問題として、6月20日、大津市建築指導課に『中高層建築物事前協議書』が提出されており、上記改正された風景条例の来年度発効まで若干の時日が必要なことも疑いない事実であります。そのような理由で、私たちの建設反対運動に、正当な法律上の裏付けを付与しておくことは、建設反対運動を有利に展開する上に欠かせない要件であると考えられます。この意味から、以下、総合設計制度の制定趣旨ならびに、市街地住宅総合設計制度と現行の風景条例との整合性の観点から、上記超高層マンション建設計画の概要を説明し、併せて、法律条文解釈上の観点から眺めた場合、上記建築計画にどのような違法性が内在しているかについて、私たちの見解を申し述べます。

7.ルネ大津に隣接する旧『鳰の浜荘』の取り壊し跡地に、株式会社、デ・リ−ドコ−ポレ−ション、およびニッセキ開発株式会社を事業主として、22階建て超高層マンション『デ・リ−ドにおの浜レイクサイドタワ−』の建設が計画されております。

8.私たちルネ大津の住民は、竣工以来20年以上の長期に亘り、建築物の高さの自主規制など、琵琶湖景観形成特別地区に指定されているにおの浜湖岸エリアの美しい景観環境と、生活環境を守るため地道に住民活動を続けてまいりました。今回の問題に対しても自治会および団地管理組合法人の全組織を挙げて『郷土を愛し、びわ湖の美しさを守る会』を結成し、上記超高層マンションの建設計画に反対してまいりました。

9.市議会議長殿にあてて提出した建設反対の請願書は、同日付けで大津市長殿にもその写しを提出しております。市議会議長殿あてに提出した請願書は、6月15日(金)開催の建設消防常任委員会に付託され、建築指導課課長により案件の内容が説明された後、8名の常任委員(1名欠席)によって審議されました。尚、本件請願書の提出に当たっては、緑風会幹事長、市議会議員、金井長純殿のお骨折りで、市議会の各会派、緑風会、政新会、市民ネット21および公明党議員団の幹事長を含む6名の市議会議員各位から紹介議員として請願書にご署名を頂いております。

10.平成13年1月28日(日)に開催された第1回近隣説明会から始まった上記超高層マンションの建設反対運動は、これまでに合計4回の近隣説明会と、2回の対策協議会委員との事前協議会を経て今日に至っておりますが、上記市議会における請願書の審議を以て、新しい局面を迎えました。事業主は、企業利益の追求のみを目的として、湖岸エリアの景観保全と地域住民の居住環境への影響は全く考慮することなく、『最初に22階建て高層化構想ありき』の姿勢で強引に建設計画を押し進めようとしております。

11.事業主との話し合いが進展しない最大の理由は、建築物の設計基準が、建築基準法上の規定あるいは、用途地域の指定条件に形式的に合致しておれば、法律的に問題はなく、適法な建築であるとする企業の経営姿勢にあります。法律は、私たち市民が守るべき最低限度の道徳的規範を提示するものであります。逆説的な表現になりますが、形式的に法律上の規定をクリア−しておれば、その実態はともかく、合法的な計画であると言う事業主側の主張からは、企業家が当然具備すべき社会への利益の還元と言う経営哲学(理念)の完全な欠落が窺い知られます。

12.私たちは、におの浜地区が琵琶湖景観形成特別地区に指定されており、この地区に新たな建築物を建設する際には、『周辺景観との調和に配慮し、まとまりのある形態とすること』が要請されている事実に着目し、用途地域が商業地区に指定されているから、建築基準法の総合設計制度の適用に格別の問題点は認められないとの事業主側の主張を容認し難く、『建築基準法、特に市街地住宅総合設計制度の適用による容積率の上積み』と、『ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例、特に琵琶湖景観形成特別 地区における新規建築物の建設基準』との整合性について、考察し、検討結果を、この第3ペ−ジの第13項以下に集約してみました。

13.昭和60年7月1日付けで施行された『ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例(通称びわ湖条例)』において、昭和61年8月、びわ湖とその周辺地域が、琵琶湖景観形成地域に、また、特に風景の優れた区域や水辺に近い区域が、琵琶湖景観形成特別地区に、指定されております。この条例に盛られた景観保護を実効あるものとするため、琵琶湖景観形成地区内に大規模建築物を建築する際には予め、知事への届出が義務付けられており、この事前届出に基づき、知事から、景観形成基準や大規模建築物の建築基準に基づく指導・助言が行われることが規定されております。また、事業主が知事の助言・指導に従わず、周辺の景観と不調和で景観形成を図る上に著しく支障を及ぼす行為に着手した場合、行為の中止または内容の変更その他景観形成上必要な処置を講ずるよう勧告が行われることが規定されております(但し、現行条例には、違反行為が行われた場合に適用すべき罰則規定が設けられておりません)。私たちは、これまで、4回の近隣説明会と2回の対策協議会委員との事前協議を通じて事業主と交渉を続けてまいりましたが、第1回の近隣説明会以来、事業主は一貫して22階建て超高層マンションの建設に固執し、全く歩み寄りの姿勢を見せておりません。

14. 私たちが居住しているルネ大津の所在地、におの浜2丁目地区と、これに隣接する上記22階建て超高層マンションの建設予定地、におの浜3丁目地区は、用途地域の分類上、商業地域に指定されており、上記風景条例においては、共に、琵琶湖景観形成特別地区に指定されております。

15.上記地区が琵琶湖景観形成特別地区に指定されている関係で、この地域に建築物を建築する際には、周辺景観との調和に配慮し、まとまりのある形態とすることが要請されております。より具体的には、湖岸に建築物などが建ち並んでいるところでは、湖岸または湖岸道路の陸側路肩から内陸側に向かっておおむね30mの区域までが、景観に配慮すべき対象区域として規制範囲に入ります。上記超高層マンションの建設予定地においては、敷地の北側(なぎさ公園側)の空地部分 21.375 mと、建屋本体の北側部分、 8.525mが景観配慮の対象区域に該当することになります。

16. 建築基準法に導入された市街地住宅総合設計制度は、その制定趣旨から判断すると商業地など、高層のオフィス・ビルなどが林立し、建築用地の取得が困難な一般的な市街地において土地の高度利用を図る目的で導入されたものであると理解しております。従って、その適用に当たっては、建築基準法のほかに、その地域の土地利用の実態、例えば、上記『ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例』などが制定されている地域では、建築物の設計に当たり、予めその地域特有の条例の制定趣旨と整合するように配慮する必要があります。更に、公開空地提供の代償として取得した容積率の上積み分、および上記上積み分を含む敷地内に建設される建築物は、市街地の環境の整備改善に資するものか否か、その立法趣旨に基づいて厳密に判断されるべきものであります。

17. 建築基準法第59条第2項には、(敷地内に広い空地を有する建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合等の特例)として、『その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建築面積に対する割合、延べ面積の敷地面積に対する割合及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの延べ面積の敷地面積に対する割合又は各部分の高さは、その許可の範囲内において、第52条第1項から第6項まで、第55条第1項又は第56条の規定による限度を越えるものとすることができる旨の規定が設けられております。

18. 本件の場合、『なぎさ通り』を挟んで、琵琶湖畔に広大な『なぎさ公園』が設けられており、また、私たちの居住しているルネ大津のびわ湖と反対側のルネ大津提供用地には、近隣住民の利用可能な公共施設として、児童公園も設けられております。換言すれば、オフィス・ビルなどの超高層ビルが林立し、建設用地の取得が著しく困難な東京や大阪の都心部と、周囲に豊かな自然景観が広がり、建設用地の取得に格別の困難を覚えない大津市湖岸エリアとでは、土地の利用条件が本質的に相違しております。22階建て超高層マンションの居住者(185戸)が取得するであろう快適な居住環境と引き替えに、ルネ大津の居住民(423戸、特に3号棟東側に位置している50戸の居住民)に、その反対給付として、日照時間ゼロや眺望範囲の著しい悪化など、受認限度を遥かに越える居住環境の悪化が強制される事実を考え合わせると敷地の一部を名目的な公開空地として公開することによって、上積みされた容積率70%を取得することに正当な根拠があるとは到底考えにくい状況にあります。事業主の経営姿勢は、利益追求のためには手段を選ばない反社会的行為としか思われませんし、これを糾弾する私たち地域住民の憤りは、容易にご理解頂けるものと思料いたします。市街地住宅総合設計制度は、それを適用する地域の特性と、建築基準法本来の立法趣旨を勘案し、両者の間に法律的な見地から整合性乃至社会的公平性が認められた場合にのみ適用可能と判断されるべきであるというのが、私たち一般市民の偽らざる法律感覚であります。これまで20年以上の長期に亘り建物の高さの自主規制を行うなど、湖岸エリアの景観保全に努めてきた私たち地域住民の努力を嘲笑うかの如く、地上最高高さを30〜35m程度に揃えてきた建築物群からなる湖岸の街並の中に、地上最高高さが75.8mにも及ぶ超高層マンションを聳え立たせようとする事業主の経営姿勢は、風景条例制定の精神をないがしろにするものとして、非難されるべきところであります。

19. 上記問題に関連して、若干説明を補足いたします。問題となっている超高層マンションの建設予定地は、元来、滋賀県労働金庫の所有地で、取り壊し前は、公共的宿泊施設『鳰の浜荘』が建っておりました。そのような関係で、取り壊し跡地の購入者、ニッセキ開発株式会社は、『新たな開発行為ではない』との解釈から『土地の提供義務』を免除されております。この土地提供義務の免除は、私たちの居住しているルネ大津に、竣工時に公共用地およびグリ−ンベルト用地として大津市への土地の提供が義務付けられていたのと好対象をなします。土地の使用目的が、公共的な宿泊施設から営利を目的とする大規模集合住宅に変更された訳ですから、土地提供義務の免除に対しても若干の疑問は残ります。百歩を譲って上記土地提供義務の免除を合法的な処置であると仮定しても、事業主は、提供義務を免除された敷地の一部を、市街地住宅総合設計制度による公開空地と位置付けすることによって、容積率の上積み分を取得しようとしており、このように、同一の敷地を二重、三重に利用することによって容積率の上積み分を取得することは、法律の悪用ともいうべき反社会的行為にほかなりません。企業の利益追求の皺寄せが私たち周辺住民の居住環境の悪化となって跳ね返って来る事実を考え合わせると、社会正義と受益者負担の公平を実現するために適切な運用が求められる法律や関係法令の運用に諮意的な解釈を持ち込む事業主の姿勢に対して私たち地域住民は、強い憤りを覚えざるを得ません。公開空地とその代償として事業主に与えられた容積率の上積み、並びにその上に建設される超高層マンションに、周辺住民の生活環境や景観環境の破壊などの悪影響が及ぼされる事実を考えるとき、景観の保全が特に要請される琵琶湖景観形成特別地区に、本来、東京や大阪など高層建築物群が密集状態で林立している大都市の商業地区に適用されるべき『市街地住宅総合設計制度』をそのままの形で導入しようとすること自体、違法であり、事業主の判断に、法律の悪用以上の意味を見出だすことは不可能であります。この事実は6月17日に開催された第4回近隣説明会における事業主側答弁責任者、(株)京阪都市設計 企画開発部長 松岡源一氏の発言『・・・私たちは数か月以上の長期に亘り本件建設計画を検討し、滋賀県の風景条例に建築物の高さ規制条項が設けられておらない事実を見出だし、この超高層化計画を立案しました・・・』なる発言からも明瞭に理解され得るところであります。この不用意な発言は、上記近隣説明会で撮影されたビデオ・テ−プにおいて、冒頭から約41分の部分に記録されており、企業利益の追求を第一義とする事業主の経営姿勢に、地域社会の住民の居住環境および景観環境の保全への配慮が計画当初から欠落していた事実を、如実に証明しております私たちは、主張の正当性を証明するため、市当局から要請があれば、上記ビデオ・テ−プの提出が可能であることを申し添えます。

20. 容積率の上積みにより建築物を超高層化し、企業収益の確保を図る本件事業の反社会性は、厳しく糾弾されねばなりません。びわ湖湖岸エリアへの建築物の建築に際し『市街地住宅総合設計制度』を導入することには、如何なる観点から考えても法文解釈上、合理的な根拠が見出だせません。事業主のこのような建築計画は、まさに合法を装った脱法行為にほかなりません。市当局におかれましては、本案件について慎重にご審議頂き、『市街地住宅総合設計制度の適用には合理的根拠が認められない』旨の決定を早急に下されますよう切望いたします。なお、本件に関連して、私たちは、必要であれば、9月度開催の市議会に更なる請願書の提出を予定している事実を申し添えます。本件は、市街地住宅総合設計制度の適用を視野に入れた大津市で最初の事例と伺っております。法律本来の立法精神に則り、総合的な見地から法律適用の可否についてご判断頂き、湖岸エリアにおける街並景観と居住民の生活環境が両立可能な都市計画のマスタ−プランをご検討頂きたく、伏してお願い申し上げます。併せて、県当局による風景条例改正の動向を先取りし、大津市の建築指導史に名を残す画期的な行政判断を下されますよう切望しつつ、ひとまず筆を置かせていただきます。

                                           以上


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