<『Oh!YU』初代編集長のページ>
(平成10年6月7日)
「短編:電子メール その2」 (自作だけど同じ様な話しが既にあったら許してね(^_^;))
ている・・・・・
俺は大手の製薬会社で不治の病の特効薬開発スタッフのマネージャとして不眠不休で研究を重ね,完成の最終段階まであと一歩
のところまで来ていた。
現状で使用すると従来の薬に比べ飛躍的に効果は認められるのだが,その副作用も大きく精神に重大な障害をもたらしてしまう可能性
が高いのである。
化合物の問題点は把握しているのだが,それをどのように変更すればよいのか,スタッフ全員の知恵を絞ってもわからない最後の壁に直面していた。
そんなおり,あろうことか俺自身がその病に感染してしまったのである。
社内恋愛で結婚を半年後に控えていた俺にとって一転して絶望の淵に立たされてしまったのである。
病院に持ち込んだコンピュータには毎日,同僚や友人から多数のメールが送られて来ていたがはげましの言葉を見るたびにより一層,悲嘆した気分に
陥っていた。
今日も多数のメールが受信されているが,ふと見覚えの無いアドレスからの1通のメールが目に留まり間違いかと思いつつ開いてみた。
そこのは,俺が開発中の特効薬の化学式が記述されていたが一点だけ異なる個所がありそれはまさしく副作用に対する明確な解答であった。
俺は目を疑い差出人に確認する為,返信メールを送信したがアドレス不在で戻って来てしまった・・・・・
そこで開発スタッフに転送し確認を求めたところ完璧な内容であり,スタッフは中断していた作業を再開し数日のうちに完成させてしまった。
第一被験者となった俺は完成されたその薬のお陰で1週間で完治してしまったのである。
それから数ヶ月後,俺は予定通り結婚式を迎えられ,その1年後にはめでたく娘の誕生を祝う事が出来たのである。
年頃になった娘は俺と同様に医学に興味を持ち,その方面の学校に進学した。
或る日,コンピュータに向かいメールを打ち込んでいる娘に向かって 「彼にメールばかり送っていないで,勉強をきちんとしろよ!」と声を掛けコンピュータ画面を覗こうとした。
娘は、 「見ちゃ駄目!!」 と画面を隠した。
彼に対する甘い言葉で綴られた文章を親の俺に見られるのは恥ずかしい事だろうと思いつつも,やはり俺としては気になるものである。
更に覗き込もうとして俺に対し
「私自身の存在に関わるの!!」
(わからない事を言う娘だ・・・)と感じながら俺も意地になりその画面を無理矢理見て見た。
そこには現在使っていない10数年前の俺のメールアドレスと,特効薬の化学式が綴られていた・・・・・
<編集長の平成9年3月 9日>「短編:電子メール」(自作だけど同じ様な話しが既にあったら許してね(^_^;))
を起動させ目を閉じた。
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