さて本題です。
vodafoneブランドが浸透するか、という問いに答えるとすれば、答えは『YES』だと思います。通常、外国の会社が日本に新規参入する場合、もっとも大きな問題の一つが知名度、すなわちブランド力の問題ですが、vodafoneの場合は厳密に言えば新規参入には当たりません。すでに普及している「J-PHONE」というブランドをうまく「vodafone」に移行させればいいわけで、現にそれは行われつつあります。さらに、J-PHONEは携帯電話会社であり、日本国内での認知度は極めて高いことから、ブランドの移行自体は比較的簡単に行われると考えられます。
もっとも、それが商業的な成功を意味するかは別問題だと思います。ブランド変更によってシェアや利益が落ちるようでは意味がないわけです。特に、これはどこの国でも同じ問題が生じますが、自国の企業が他国の企業に買収されることはあまり歓迎されません。「乗っ取り」というイメージは、企業としてはかなりのマイナスになるかと思われます。vodafoneもそのあたりを気にしてかしないでか、「J-PHONEとひとつになる」というような表現を多用しているようです。
他方で、外資に対する洗練されたイメージがあることも事実です。例えば、一般に言う「ブランド物」なんかは、イタリア製とかフランス製に対する憧れがあったりするわけです。このあたりはやはりお国柄に関係しているようで、電化製品などは「日本製」が好まれますし、装飾品なんかはヨーロッパが好まれているように思います。
問題は、携帯電話の場合はどうか、ということです。携帯電話を買う場合、ブランドとしてはキャリア(事業者)とメーカーとがあり、そのいずれも携帯を買う上で重要な選択肢になっています。そこでメーカーについて考えると、NOKIAやエリクソンといった海外メーカーには、たしかにコアなファンがいます。しかし、商業的に成功しているかと言えば難しいのではないでしょうか。携帯はあくまで電子機器であり、デザインやイメージ・ブランドだけでは決められないことがあります。さらに、日本人はわりと機能主義(カタログ主義な点もあり)ですので、多機能なものを望む傾向が見られます。そうすると、いくら洗練されたイメージがあっても売れるとは限らないことになるわけです。
このような理論をそのままキャリアにあてはめるとすると、vodafoneというブランドが仮に浸透し、洗練されたイメージを持たれたとしても、それだけですぐに加入者が増えるわけではない、ということになるかと思います。たしかに、国内を見ればNTTドコモが圧倒的なブランド力を活かし、特に高年齢層の取り込みに成功しています。しかしこれは、単にNTTブランドであることだけでなく、サービス拠点を増やし、窓口の教育などアフターサポートを充実させた結果、「ドコモは安心」というようなイメージを植え付けさせることに成功したのだと考えます。つまり、vodafoneとしてはブランドを浸透させるだけでは不十分で、ブランドにふさわしい実力・内容を伴わなければならない、ということになるかと思います。