vodafoneブランドは浸透するか


12月にスタートするvodafone/J-PHONEの第三世代サービスは、
これまでと異なりvodafoneのブランドで提供されます。
今後、J-PHONEブランドからvodafoneブランドへの移行が進むと予測されますが、
果たしてvodafoneブランドは浸透していくのでしょうか?

vodafone?


まずは読み方ですが、「ヴォーダフォン」ないし「ボーダフォン」と読みます。もともと英国の会社で、世界30カ国に出資会社・子会社を持ちます。社名の語源は音声(Voice)・データ(Data)・電話(Phone→fone)を組み合わせたものだそうです。

もともと日本には関連を持っていなかったvodafoneですが、AT&T(アメリカの通信会社)・BT(イギリスの通信会社)の持つ日本テレコム株を買い受けたあたりから日本テレコム・J-フォンへの影響力を増し、現在では日本テレコムの筆頭株主及びJ-フォン株式会社の大株主として、J-フォンを支配している会社と言えます。

※J-フォン株式会社自体の筆頭株主は現在でも日本テレコムですが、その日本テレコムの筆頭株主がvodafoneであり、J-フォンに対しても間接的な支配力を持っています。

今まで日本ではなじみのなかったvodafoneですが、イギリス・プレミアリーグのマンチェスターユナイテッドに出資していることから、宣伝に日本でも有名なデビッド・ベッカム選手を起用しており、そのせいもあってか知名度は上昇していると言えるでしょう。

 

J-PHONE消滅


J-PHONEというブランド自体は、当時のデジタルホングループ(デジタルツーカーグループを含む)がコーポレートネームとして名付けたもので、もともとは社名ではありません。その後、グループ各社が社名をJ-フォン○○(地域名)と変更し、その地域各社が合併して現在はJ-フォン株式会社となっています。

さて、このJ-PHONEブランドはすでに消滅することが決まっています。vodafoneがブランドの変更を2003年度内にはおこないたい意向を示したからです。とは言っても、日本国内では相当な知名度のあるブランドですので、すぐに消滅させるわけにはいかないでしょう。1年くらいかけて、緩やかに移行させることになるかと思われます。また、メールなどで使用しているドメイン名に関しては、変更について混乱が予想されることから、何らかの救済手段(転送とか)が採られるのではないかと予想しています。

 

vodafoneブランドは浸透するか


さて本題です。

vodafoneブランドが浸透するか、という問いに答えるとすれば、答えは『YES』だと思います。通常、外国の会社が日本に新規参入する場合、もっとも大きな問題の一つが知名度、すなわちブランド力の問題ですが、vodafoneの場合は厳密に言えば新規参入には当たりません。すでに普及している「J-PHONE」というブランドをうまく「vodafone」に移行させればいいわけで、現にそれは行われつつあります。さらに、J-PHONEは携帯電話会社であり、日本国内での認知度は極めて高いことから、ブランドの移行自体は比較的簡単に行われると考えられます。

もっとも、それが商業的な成功を意味するかは別問題だと思います。ブランド変更によってシェアや利益が落ちるようでは意味がないわけです。特に、これはどこの国でも同じ問題が生じますが、自国の企業が他国の企業に買収されることはあまり歓迎されません。「乗っ取り」というイメージは、企業としてはかなりのマイナスになるかと思われます。vodafoneもそのあたりを気にしてかしないでか、「J-PHONEとひとつになる」というような表現を多用しているようです。

他方で、外資に対する洗練されたイメージがあることも事実です。例えば、一般に言う「ブランド物」なんかは、イタリア製とかフランス製に対する憧れがあったりするわけです。このあたりはやはりお国柄に関係しているようで、電化製品などは「日本製」が好まれますし、装飾品なんかはヨーロッパが好まれているように思います。

問題は、携帯電話の場合はどうか、ということです。携帯電話を買う場合、ブランドとしてはキャリア(事業者)とメーカーとがあり、そのいずれも携帯を買う上で重要な選択肢になっています。そこでメーカーについて考えると、NOKIAやエリクソンといった海外メーカーには、たしかにコアなファンがいます。しかし、商業的に成功しているかと言えば難しいのではないでしょうか。携帯はあくまで電子機器であり、デザインやイメージ・ブランドだけでは決められないことがあります。さらに、日本人はわりと機能主義(カタログ主義な点もあり)ですので、多機能なものを望む傾向が見られます。そうすると、いくら洗練されたイメージがあっても売れるとは限らないことになるわけです。

このような理論をそのままキャリアにあてはめるとすると、vodafoneというブランドが仮に浸透し、洗練されたイメージを持たれたとしても、それだけですぐに加入者が増えるわけではない、ということになるかと思います。たしかに、国内を見ればNTTドコモが圧倒的なブランド力を活かし、特に高年齢層の取り込みに成功しています。しかしこれは、単にNTTブランドであることだけでなく、サービス拠点を増やし、窓口の教育などアフターサポートを充実させた結果、「ドコモは安心」というようなイメージを植え付けさせることに成功したのだと考えます。つまり、vodafoneとしてはブランドを浸透させるだけでは不十分で、ブランドにふさわしい実力・内容を伴わなければならない、ということになるかと思います。

 

vodafoneのめざすもの…?


前述のように、ブランド戦略というのはブランドを広めるだけでなく、実力・内容を伴わなければならず、そうでない虚飾のブランドは意外に脆く崩れされるものだと思います。では、vodafoneのめざすブランド戦略とはどのようなものでしょうか?そして、理想とするブランドイメージはどのようなものなのでしょうか?

とは言っても、それはvodafoneの経営陣に聞いてみないと分からないですが、ここではそれを推測してみたいと思います。

まず、わざわざ世界中に展開する「vodafone」というブランドに変更するわけですから、国際性を強調するということが挙げられると思います。そのための手段として、第三世代サービスでも国際ローミングをサービスの目玉にしたのではないかと思われます。

次に、やはり「外資」としての洗練性があるかと思います。かっこいいとかcoolとか、そういうイメージでしょうか。ドコモというとちょっとビジネスマンちっくというか、やや大人なイメージがありますが、それに対して若者向けなイメージが想定されます。現在(2002年12月)までに流れているCMの流れを見ると、このあたりをイメージしているのではないかな、と推測されます。

これらはあくまで推測にすぎませんが、こういったイメージならば今のままの戦略で十分に浸透していくのではないかと思います。ただ個人的には、消費者が事業者に求めるイメージは洗練性よりも安心感だと思いますので、たとえブランドイメージの構築に成功したとしても、それがvodafoneの躍進にはつながらないのではないかと思ってます。

 

見た目で勝負か、中身で勝負か。


auも、当初ブランドをIDO・セルラーから変更したころは色々言われました。ブランドだけ統一しても各地で手続きがばらばらだったり、料金プランが全然違っていたり。でも、auはシステム統合(それに伴う障害も発生しまくりましたが…)や料金体系の見直しを経て、統一ブランドとしてのメリットを享受しつつあります(宣伝広告の共通化や顧客管理の共通化等によるコスト削減など)。また、独自のサービスや割引を考案・提供してきた結果、シェアも2位に回復し、当分は安泰そうです。

やっぱり、見た目だけでなく中身も良くないといけないわけで、vodafoneもイメージ戦略だけに拘泥することなく、サービスの充実も図ってほしいと思います。第三世代サービスについても、イメージは良いのですが肝心の中身についてはさっぱり独自性がありません。GSMとのローミングはたしかに他社にはありませんが、ドコモだってレンタルしてしまえば海外で利用できます。そして、海外で利用するニーズがどこまで契約につながるかは未知数です。また、料金体系についてはPDCよりもむしろ高く、パケット料金もドコモのFOMAに追従しただけで、さっぱり魅力がありません。

携帯業界は今まで、競争によって技術面・価格面で進歩してきました。ですから、J-PHONEを引き継ぐvodafoneにも、ぜひとも競争を起こすような独自性・競争力のある戦略をとってもらいたいな、と希望します。

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