パケット通信とデータ通信

現在ではPHSでも採用されているパケット通信。
データ通信とはどのように違うのでしょうか?

消費者から見た「違い」

パケット(Packet)の語源は、パックつまりは小包。データを小包にして送受信するのがパケット通信であると説明されます(やや正確ではないですが)。回線交換方式(データ通信)が、音声通話と同様に、データのやり取りをしてない間でも回線をずっと占有しているのに対して、パケット通信は回線を数人で共同で占有し、必要に応じてデータのやり取りをします。例えて言うなら、回線交換方式が一人で部屋を借りるのに対して、パケット通信はルームシェアリング(何人かで共同して部屋を借りること)のようなイメージでしょうか。

このことからどのような違いが出るかというと、
 ・パケット通信の方が、回線が混雑してくると伝送速度が落ちやすい
 ・データ通信のほうは伝送速度は安定するが、データのやり取りをしてない間も回線を占有してしまうので、回線の利用効率が悪い

現在のPDCでは、回線交換方式では最大でも9.6kbpsしか速度が出ません。なので、純粋にスピードの上限だけ考えるなら最大28.8kbps(9.6kbpsを3本束ねてる)のパケット通信のほうが速いということになります。でも、実際にはMAX28.8kbps出ることなんてほとんどありませんし、速度の安定性の面でも回線交換方式の方が上です。つまり、料金さえ安ければ、消費者的には回線交換方式の方が快適ということです。

 

では、なぜ各社ともパケット通信を導入するのか

それは、上にも書いたように回線交換方式では回線の利用効率が悪いからです。例えば使い放題のようなサービスを想定した場合、回線交換方式でそれをやるとすれば、元旦並み(笑)の回線の混雑(輻輳)が予想されます。そこで、比較的回線の利用効率のいいパケット通信を導入しているわけです。

また、現在携帯電話各社のパケット通信はいずれも従量課金(送受信するデータ量に応じた課金)ですから、データ量の少ないテキストベースのサイトを閲覧したり、短めなメールの送受信については、パケット通信の料金体系がマッチしているという点もあります。

もっとも、従量課金=パケット通信という定義は必ずしも正しくありません。現に、J-PHONEやTU-KA(TD11だけですが)では、回線交換方式でも従量課金となっています。またパケット通信でも、DDIポケットは基本的に時間課金です。つまり、回線交換方式かパケット通信かはあくまで事業者にとっての都合で、ユーザーとしては課金方式の方がよほど重要なのではないかと思います。(J-PHONEのJ-SKYはデータの送受信ごとに回線の接続/切断を繰り返していますが、DASという技術のおかげでそれほど遅くも感じませんし。)

各社のパケット通信課金の比較(※詳しい比較は後述)

NTTドコモ

 

 

iモード

0.3円/1パケット

30万パケット以上は0.2円

Dopa

0.3円/1パケット〜

ライトプランの場合。他にも料金プランあり。

FOMA

0.2円/1パケット〜

パケットパックなしの場合。パケットパックで最大0.02円に。

au

 

EZウェブ

0.27円/1パケット〜

multiでは標準タイムの場合。割引サービスあり。

PacketOne

0.1円/パケット〜

割引サービスで70%,80%引きに。

J-PHONE

J-SKYパケット

0.3円/1パケット

 
TU-KA EZウェブ 0.27円/1パケット  
DDIポケット

 

エッジeメール
/コンテンツ接続
10円/60秒→無料
15円/60秒→半額
矢印右はスーパーパックLL及びエッジeメール放題、メール&トーク割の場合。

AirH"

定額(5800円)
または準定額

準定額は回線交換とのフレックスチェンジ制。

 

可能性を示すDDIポケット

身近な生活のすべてが無線通信とつながっていくというユビキタス化にとって、定額制の料金体系は必須であるといえます。しかし、業界最大手のNTTドコモがパケット通信についてはほとんど手をつけないのを見ても分かるように、各社ともデータ通信料の大幅な値下げには消極的です。それは、これから音声通話からデータ通信にシフトしていくことが予想される中で、重要な利益源を失いたくないからでしょう。携帯各社はいままで新規加入者獲得のために乱売とも言える販売作戦を展開してきましたが、新規加入者の頭打ちが叫ばれる中、既存の顧客からいかに安定して収入を得ることができるかが急務になっているのです。

以下の表はNTTドコモの発表しているオペレーションデータで、契約あたりの月間平均収入を示したもの(APRU)です。これを見ても明らかなように、音声通話料収入の減少・データ通信収入の増加傾向は顕著です。次世代携帯への投資など、資金的な体力を蓄える必要のある携帯事業者にとって、ここは下げたくない領域なわけです。

2002年度予想 2001年度 2000年度

総合ARPU

8,030円 8,480円 8,650円

音声ARPU 6,360円 6,940円 7,770円

iモードARPU 1,670円 1,540円 880円


そんな中、DDIポケットはパケット通信での定額制の提供を開始しました。 価格は月額5800円(年間契約で4930円)と気軽に持つには安くはありませんが、定額制での提供自体に意味があると思います。また、メールやコンテンツ接続機能にもパケット通信を採用したモデルも投入し、Eメールの定額制(定額料は必要)を実現しています。

仮にDDIポケットの定額制が市場を席巻できれば、他者も定額制を考慮せざるを得なくなるかもしれません。

 

いまいち不透明なパケット料金

パケット料金の目安には、たいてい「概算」とか、「約○○円」などと記載されています。多くの人が関心を持つであろうメールの料金に関しても、約1円から、といった感じです。でも、1パケット0.3円なら、10文字くらいのメールはそれこそ0.3円になるんじゃないかと思うはずです。ところが実際には、どんなに短いメールにしても、最低でも0.9円程度はかかってしまいます。

これは、メールの送受信には、メールの本文だけでなくいろいろなデータをやり取りしているからです。通常、Eメールには「ヘッダ」と呼ばれるものがついています。これは、送信元や送信先、使われたサーバなどが記載されたもので、パソコンのメールソフト(例えばOutlookとか)であれば通常確認することができます。しかし、今のところ携帯電話でヘッダの確認ができるものはありません。ですが、実際には送信に際しても受信に際しても、ヘッダなどの「余計な情報」をやり取りしているせいで、見た目よりも多くの料金がかかってしまっているのです。もちろんメールのヘッダは重要な情報ですので本来「余計な情報」ではないですが、だったら携帯電話からでも見れるようにしてほしいものです。そうすれば、なりすましメールなども簡単に見破れますし。

メールのヘッダの例
Return-Path:<*****@**.jp>
Received:*****
Received:*****
Received:*****
Received:*****with ESMTPid <*****>for <*****>; ****
Received:from ****id *****
MIME-Version:1.0
Date:Fri, 6 Sep 2002 00:08:16 +0900
Subject:****
From:"****" <****@****.**.jp>
To:"****" <****@****.**.jp>
Message-ID:<********>
Content-Type:text/plain;******:*****
References:<****>
X-Mailer:Microsoft Outlook Express ****
X-Priority:

たとえ本文が1文字でも、これらの情報をすべてやり取りしていることになるので、結果的にどんなに短いメールでも1円程度の送信料がかかってしまうことになります。なお、NTTドコモやauでは、このパケット代を節約するため、ヘッダ情報の一部を扱っていません。そのため、送信・受信ともにすべてのヘッダ情報をやり取りするよりは安くなっています。これに対して、J-PHONEのスーパーメールではすべてのヘッダ情報を律儀に守っているので、送信料が最低でも3円はかかる計算になります。もっとも、受信の際には逆にすべてのヘッダ情報を無視するようなので、純粋に文字数分のパケット代しかかからないようです。

サイトの閲覧も同様の理由で見た目よりもパケット料金は高くなっています。例えば…
この部分をダウンロードするのに、どれくらいのパケット料がかかるでしょうか?」という文字列を見るのには、
<font color="#008000">この</font><font color="#800000">部分を</font><font color="#FF0000">ダウンロード</font><font color="#000080">するのに、</font><font color="#FF3300">どれくらいの</font><font color="#800080">パケット料が</font><font color="#008080">かかるでしょうか</font>?」というデータをダウンロードすることになります。見た目の文字数の何倍ものデータをやり取りしているわけです。サイト閲覧を割引する「パケ割」などのサービスは、これらのタグ(<>で囲まれた部分)を効果的に減らすことによって、送受信するデータ量を減らし、パケット料を節約しています。

で、パケットによるメール料金をさらに混迷化させているのは、各社の違いです。同じ文字数・同じ料金でもあまりに違います。これは、上述の「余計な情報」をどう処理するか、といった違いや、送信方式の違いによるもので、メールの料金はパケット料金だけでは判断できない、ということになります。詳しい料金については、以下の比較を見てみてください。

 

各社の比較

  基本料金 パケット料金 割引プラン
NTTドコモ 200円(ライトプラン) 0.3円/パケット なし
NTTドコモFOMA なし(基本料に込み) 0.2円/パケット パケットパック20(+2000円)
 パケット料金0.1円、無料通信分2000円
パケットパック40(+4000円)
 パケット料金0.05円、無料通信分4000円
パケットパック80(+8000円)
 パケット料金0.02円、無料通信分8000円
au 300円(multiコース) 0.2円(1:00〜17:00)
0.1円(100パケットを超える分)
0.27円(上記以外)
PacketOneミドルパック(+2400円)
 無料通信料+10000円 超過分の通信料70%引き
PacketOneスーパーパック(+8500円)
 無料通信料+45000円 超過分の通信料80%引き
  200円(@mailコース) 0.27円 同上
J-PHONE 300円(J-SKYパケット) 0.3円 なし
TU-KA 200円 0.27円 なし
DDIポケット 5800円 定額 年間契約割引
 定額料5800円→4930円

ちなみに、メールの送受信料金(概算)は以下のとおりです。
※表示の金額は、送信料/受信料で、各社のカタログ等に基づく。なお、数字は概算で、状況等により若干異なってきます。

事業者 サービス名

割引プラン等

全角64文字 全角128文字 全角250文字 全角3000文字 全角5000文字
NTTドコモ iモードメール PDC 1.7円/1.0円 2.6円/1.4円 4.2円/2.1円 × ×
FOMA Pなし(*1) 1.7円/1.0円 2.6円/1.4円 4.2円/4.0円 31.8円/12.8円 51.6円/19.6円
FOMA P20(*1) 0.9円/0.5円 1.3円/0.7円 2.1円/2.0円 15.9円/6.4円 25.8円/9.8円
FOMA P40(*1) 0.5円/0.3円 0.7円/0.4円 1.0円/1.0円 8.0円/3.2円 12.9円/4.9円
FOMA P80(*1) 0.2円/0.1円 0.3円/0.2円 0.4円/0.4円 3.2円/1.3円 5.2円/2.0円
au(*2) ezweb@mail
(multi・お得タイム)
適用なし 1.0円/1.0円 1.0円/1.2円 1.0円/2.0円 ×/12.8円 ×/19.6円
パケット割 0.4円/0.4円 0.4円/0.4円 0.4円/0.7円 ×/4.7円 ×/7.3円
ミドルパック 0.03円/0.03円 0.03円/0.04円 0.03円/0.06円 ×/3.8円 ×/5.9円
TU-KA(*3) ezweb@mail

1.2円/0.9円 1.5円/1.2円 1.9円/1.9円 ×/17.2円 ×/26.5円
J-PHONE スカイメール 3円/0円 × × × ×
ロングメール 8円/0円 8円/0円 8円/8円 8円/8円 ×
スーパーメール(*4) 3円/0.3円 3.3円/0.6円 3.9円/1.2円 16.8円/14.1円 26.4円/23.7円
ドコモPHS パルディオEメール(*5) 7円/7円 7円/7円 7円/7円 7円/7円 7円/7円
DDIポケット Eメール(*6) 10円/10円 10円/10円 10円/10円 10円/10円 10円/10円
エッジeメール(*7) 適用なし(*6) 10円/10円 10円/10円 10円/10円 10円/10円 10円/10円
エッジeメール放題 0円/0円 0円/0円 0円/0円 0円/0円 0円/0円

*1…FOMAのカタログには250文字以下のメール送受信について、パケット料金の目安が記載されていませんので、PDCのものをそのまま使いました。FOMAのパケットパックなしのパケット料は0.2円/パケットですからPDCより安くなるはずなのですが、カタログの数値を見る限り、どうもFOMAのメールシステムは余計なヘッダとかが多いみたいなので、同じくらいなのではないかと考えました。
*2…auのもカタログには、送信で250文字で1円・500文字で3円、受信で100文字で1円・500文字で3円との記載だけあります。それ以外の数値は右の数字からの予想です。
*3…TU-KAについては、送信で100文字で1.35円・250文字で1.89円、受信で100文字で1.08円・250文字で1.89円との記載だけあります。その他の数値は右の数字からの予想です。
*4…J-PHONEのスーパーメールは、発表された資料によれば送信の際には9パケット分のヘッダがつくようなので、送信料は最低でも3円になります。逆に受信の際にはヘッダ等を完全に無視するので、文字数にそのまま応じた金額になっています。
*5…パルディオEメールは7円/10秒なので、3000文字や5000文字などの長いメール、電波状況により14円かかっちゃうこともありえます。また、1000文字より多い文字数を送受信できる機種は限定されます。
*6…データパックminiの場合は15円です。スーパーパックLLまたは年契+メール割引サービスで半額。また、オプションライトEメール放題で100文字前後の送受信は無料に。
*7…対応機種のみ。

NTTドコモ

ドコモは当初(501のころ)、端末の性能が低いせいもあり、メール送信はブラウザ上から行うという処理をしていました。現在でもそのシステムは健在(苦笑)で、相変わらず送信メールはブラウザメールのようなことをしています。そのせいで、送信料は受信料に比べかなり高くなっています。受信は普通にしてますが、ヘッダなどのパケット料もかかっていますので、文字数の計算よりかなり高めです。また、FOMAとPDCで料金が違いますが(パケット料の差以上に)、これはFOMAとPDCではシステムもサーバも異なるためと思われます。

au/TU-KA

比較的素直な課金体系で、多くの人が利用する250文字以下では、概ねドコモよりも安くなっています。ただ、同じEZウェブなのにauとTU-KAで料金が異なるのが微妙といえば微妙なところでしょうか。

J-PHONE

スカイメール・ロングメールは1通当たりの課金ですので、文字数に関係なく送信3円/8円になります。受信は全角192文字まで無料で、それ以降はロングメール受信料8円が必要となります。受信が無料なのは、受信にベル信号というものを用いているからで、同様の技術で位置情報サービス・ステーションの受信料も無料となっています。なお、192文字までの受信が無料なのは、スカイメール64文字を単に連結受信して3つつなげているだけです。
で、2002年から導入のパケット通信では、送信に9パケット分の「余計な情報」代がかかり、受信は逆にこれらの「余計な情報」代が一切かからない仕組みになっているようです。受信料が単純にメールの文字数だけで計算されるのはうれしい限りですが、送信の際の9パケットは謎です。9パケットといえば、文字数にして全角576文字分にも当たります。そんなにも大量の情報を、いったい何に使っているのでしょうか…?

DDIポケット

DDIポケットでは、データ通信のAirH"に加え、一部の機種でメール・コンテンツサービスにもパケット通信を導入しました。もっとも、定額制はメール送受信だけで、コンテンツ接続(サイトの閲覧)は従来の半額となるにとどまっています。なお、ポケットのEメールはパソコンでメールチェックするようにセンターにつなげてユーザー認証を行ってメールの送受信をするので、メールの送受信を同時に行えば5円で送信/受信の両方をしてしまうことも可能です。複数のメールがあっても料金は同じです。また、いままでメールの通知が「Eメールアリ」みたいなもので、内容も全然分からなかったのですが、ライトEメールを利用すれば少しは本文も確認できるようになりました。

ドコモPHS(※ドコモPHSはパケット通信の話ではないです)

Eメールの課金方式はDDIポケットと同じですが、ポケットが60秒10円(割引で5円)なのに対し、10秒7円です。添付ファイルがあったりすると10秒はちときついかなという感じです。なお、633S/642SではPOPメールが使えますので、P-p@cを利用すればかなり安価にメールを利用できます。例えばP-p@c20の場合、3200円で20時間通信できますから、1分2.7円という計算になります。しかもP-p@cは定額料金内は秒単位の計算ですから、一回の送受信を20秒で行ったとして1回0.9円になります。そうすると、メール料金は最安値になります。うーん、マジックのような(笑)計算ですなあ。実際にはP-p@c20の20時間を上記の計算で全部使い切るとすると、3600回(1日に120回)メールを送受信しなければいけませんから現実的ではありませんが、P-p@cは同様にウェブにも使えますから、併用していけば使い切れるかもしれません。というより、いままで「高い」としか思えなかったPALDIO「の」Eメールが、他社並みに安くなりえるということだけでも少しうれしかったりします。

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