「はりや」(高松市)

 日曜日の昼時ということもあって、店内はごった返していた。その上に前日から泊まりがけで、うどん食べ歩きツアーを敢行している我々が団体で押しかけたのだからたまらない。人の波は狭い店内ではおさまらず、行列は店の前までできていた。天麩羅を揚げる奥さんは今にも泣きそうな顔でてんてこ舞いしていたが、若く、ちょっぴり二枚目の御主人は次々にとおる注文を手際よく捌いていた。

 これは急いで食べて早々に退散しなくちゃいけないなぁーと思っていると、私の前に程なく頼んだカレーうどんが出てきた。丼の真ん中にちょこんと乗った福神漬けが可愛らしいカレーうどんは見かけによらず大人の味がした。忙しく仕事をこなしながらもカウンター越しに御主人が「辛い?辛い?」と何度も聞いてくる。この状況でお客さんに感想を求めるとは余裕があるなぁと感心していた次のせつな、隣の席を立とうとした知り合いらしい子供連れ客に「うどんが間に合わんで廻っていかんから、もうちょっとゆっくりしていって。」と耳打ちして軽く片目をつぶって見せた御主人を私は見逃さなかった。

 戦争状態で殺伐としていた店内がとたんに居心地良く感じだし、御主人のためにという勝手な理由をつけて居座る事に決めた私は、先ほどより少しゆっくりめにうどんをすすり込んだ。