「谷川米穀店」(琴南町)

 その日は朝から随分冷え込んでいた。

 それでも徳島を出る頃は天気も良かったし、久しぶりの夫婦揃っての休日ということもあって、私達は香川県に向けて出発した。目指すは琴南町の谷川米穀店。その名の通り本来は米穀店なのだが、昼の3時間だけうどんを出すという知る人ぞしる有名店である。

だが、美馬町から山道に入ったころから状況は一変、道端には雪が残っている。三頭トンネルを抜ける頃には横殴りの雪も混じってきた。

「引き返して帰ろうか・・・?」あすかの言葉を無視して進むと、それでも土器川の橋の麓には車が数台止まっていた。雪の中をゆっくり走ってきたため、既に時間は閉店間際の午後2時前、店の扉を開けて「まだ、大丈夫ですか?」と聞くと、「どうぞ」と、おばさんの笑顔がのぞく。

 店内には数人お客さんがいて、うどんをすすっている。

 熱い麺を頼んで、卓上の醤油、酢と特製の唐辛子(これが辛いけど旨い!)を混ぜてうどんをすすり込む。コシはあるのに優しい麺。

 代金を払うお客さんが、机の上に置いていた乾燥唐辛子をもらって帰っていた。奥でおばさんとおばあちゃんが「今日もいっぱいお客さんが来てくれたねー。」とにこやかに話してた。

 外は相変わらずの雪だったが、なんだか気持ちがあったかくなった。