バードパークに行ってみた

 バードパークはシンガポールの西のジュロンという所にある。私たちは行きは地下鉄と乗り合いバスで行ったが帰りは面倒になってタクシーに乗った。地下鉄とは言っても町中を抜けると地上に出てマンションや住宅街の中を通っていくので、現地の人の生活を垣間見ることができて楽しい。しかしタクシーはほとんど高速を走るので景色はあまり楽しくなかった。

 シンガポール旅行が決まってから私とNさんはここでとあることをするのを何よりも楽しみにしていた。ただそれをしたいがためにシンガポールに行くことにしたと言ってもいいくらいだ。TさんやMさんに相談したら、珍しいことなので自分たちもやってみたいと同意してくれてバードパーク行きは現実となった。朝起きるとぱらぱらと雨が降っていたのだが私たちはそんなことは気にせずにバードパークへ向かった。ようやく着いた頃雨は土砂降りになっていて、とあることができる場所に行ってみたのだが「雨なのでお休みです」と書かれてあった。大ショック。とあることとは大きなオウムを頭や肩や腕に乗せて一緒に写真を撮ることだった。

 旅行最大の目標を叶えられなくてしばらく愕然とした私たちだったが、せっかく来たのでそのまま帰るわけにもいかず中を見て回ることにした。まずモノレールに乗る。歩いて敷地内を一周することもできるが、モノレールに乗っていれば主な鳥は見て回れるので疲れなくていい。だいたいの所をそれで見ておいて気に入ったところやモノレールで行けないところを歩くというのがベストだと思う。モノレールに乗ってウォーターフォール・エイビアリーで降りた。ここはとても大きな鳥かごの中に鳥が放し飼いにされているところだ。鳥かごとは言っても中に人工の滝や川、遊歩道があって場所によれば熱帯雨林の雰囲気を出すために人工の霧まで発生させているほどなのでめちゃくちゃ大きい。空を見れば網が張っているのだが、普通に歩いている分にはただの鳥がたくさんいる散歩道だ。

 再び元の乗り場に戻ってきてその周りを歩いてみた。夜行性の鳥がいる小屋があったので入ってみるとフクロウやオオバズクの部屋が並ぶ中、TVで見てかわいい!と思っていた笑う白いフクロウもいた。笑うと言っても目を閉じた顔が笑っているように見えるだけなのだが、こっちを向いて口を開けてにっこり笑う姿を見るとぎゅーっと抱きしめたくなる。(実際抱きしめようとすると死ぬ目に遭うだろうけど)

 話す鳥ばかりがいるところもある。鳥ごとに名前や話せる言葉を書いた札がついているので人間たちは鳥に向かってその言葉を言ってみるのだが機嫌が悪かったのかほとんどの鳥は話してくれない。それどころか

「あんた何言ってんのよ」

とぷいと横を向かれたりもしてしまう。

話してくれない鳥に向かって

「ウォーアイニー」

などと言っている自分が少し悲しくなってきた。端から見れば相当間抜けかも。 そこを過ぎるとペリカンがたくさんいる池に着いた。池の柵にもたれて休憩していると突然ペリカン達が騒ぎ出した。驚いて周りを見てみると飼育員がトラックからゴミバケツを下ろしている。どうやらペリカンはご飯の時間のようだ。おじさん達がゴミバケツから魚を出して池に投げるとペリカン達が戦争になっている。するとおじさん達が私達を見て

「やってみるか?」

と言ってバケツのふたに魚を乗せて渡してくれた。客が餌をやらせてもらえるなんてめったにない機会なので喜んで受け取り、池の方に魚を持って差し出したらおじさんに

「そんなことをしたら危ない!」

と怒られた。

「こんな事をしていたら噛みつかれるんだよ」

とおじさんが魚を池に差し出したら本当に噛まれてしまった。おじさんが流血までして教えてくれたのでそれからは魚を1匹ずつ放り投げ、私達の横にいた韓国人のカップルにも魚を渡して一緒に楽しんだ。それにしてもペリカンの口はとても大きい。長いくちばしを上下に広げるだけかと思っていたら下のくちばしは横にも広がるのだ。ペリカンはご存知の通りくちばしの下に袋があるので正面から見ると体が見えなくなるほどだ。大群のペリカンができるだけ大きく口を開けて魚を食べようとする様子はなかなか壮観だった。とても楽しい経験でオウムと一緒に写真を撮れなかった悔しさも紛れ、おじさん達に感謝をした。しかしウェットティッシュで拭いたくらいでは手の魚臭さは取れなかった。

 

まだ続く動物シリーズ

 その日の夜はナイトサファリに行った。これはツアー料金の中に含まれていたので他の知らない人達とも一緒に行動することになる。そこにあるレストランで夕食を取り、サファリの中を移動するトラムカーの乗り場に行くとすごい人だかりになっていた。さすがに世界初の施設、観光客はみんな来るんだろうな。

 かなり長い時間待たされてようやくトラムカーに乗れた。真っ暗な中を走っていくと青いライトに照らされた夜行性の動物が現れる。私は夢中になってカメラのシャッターを切ったのだが、現像するとトラムに乗っていた間の写真は全部ブレていた。フラッシュを使ってはいけないのできれいに撮りたいなら歩きで回った方がいいだろう。

 トラやゾウなど大型動物をトラムカーで見た後は歩きで小動物を見て回る。しかし薄暗いし動物が小さいのでどこに何がいるのかほとんどわからない。(私の目が悪いのも原因のひとつかも)唯一フクロウだけはよくわかって写真に収めることができた。(どうしてもフクロウが好きなのだ)

 

まだまだ続く動物シリーズ

 最終日の午前中に前日行ったナイトサファリの隣にあるシンガポール動物園へ行った。これはタクシーを使っての個人行動。自然あふれる中に動物がたくさんいるとてもいい所だった。

 中に入るといきなり人がたまっている所があった。近づいてみると金色の毛の猿がいる。それも触ることができる。さすがにオープンシステムの動物園。どんどん歩いていくとライオンやレイヨウも見える。日本だとライオンなどはしっかり檻の中に閉じこめられているのだが、ここでは低い柵と池や穴で仕切られているだけ。やる気があればこっちに来れるんじゃないかと思ってしまう。

 もうひとつ驚いたのが涼をとる小屋が所々にあること。木陰に隠れるぐらいでは暑さをしのぐことができないのでこういったものがあるのだろう。広い敷地を歩いて暑くて倒れそうになった時にクーラーのある小屋に入れるというのはとてもうれしい。

 ひときわ賑やかな所があったので行ってみるとヘビのショーをやっていた。ここでNさんは忘れてしまっていたもうひとつの旅行目的を思い出した。

  ヘビを首に巻いて写真を撮ること

ガイドブックを見たらいろんな所でできると書いてあったようで彼女はこれをやろうと私達に訴えた。オウムならともかくヘビは・・・と私とTさんとMさんは嫌がったが、せっかくの彼女の希望をむげに却下するのもかわいそうなのでそういう場所を見つけた時には彼女だけがヘビとたわむれ、私達はカメラマンに徹するということになった。しかしそんな場所は見つからず私達はすっかり忘れてしまっていた。もしかしたらそれをここでできるのではないか、ショーが終わった後に一緒に写真を撮りたい人は手を挙げてくださいとか言ってくれるのではないか、もしそうなったらこれが最初で最後のチャンス、Nさんその時はしっかり手を挙げるのだよとショーの終わりを待った。しかしショーが終わると出演者達はさっさと裏に引っ込んでしまった。Nさんはがっくり。やっぱりそんなうまい話はないのねと慰めていたら、なんとニシキヘビを首に巻いたお姉さんが裏から出て客席にやってきた。観客にヘビを触らせてくれているので

「せめて触ってくるのよ」

とNさんを行かせ、残りの3人でその様子をカメラに収めてあげた。するとNさんが

「みんなも触ったら?こんな事できるのも一生にそうないよ」

と言う。確かにそうかも。ヘビを見るとおとなしく触られまくっているので勇気を出して私達も触ってみた。ヘビはぬるぬるしているものだと思っていたが、何だか乾いたお風呂マットを触っているような感触だった。

 動物園の後はこの近くにあるマンダイ蘭園に行くことに。初めのうちは歩いていくつもりだったが、広い動物園内だけで疲れてしまい、結局停留所ひとつ分、バスに乗ってしまった。蘭園は立派なものを想像していたが、蘭だけしか売っていない植木市のような感じだった。実際売っていたし。