再びカナダへ移動
早朝空港に行かなければならないのでその日も早起き。なんとその日の朝食は短時間で済ますために前日に買ったパンと日本から持ってきた味噌汁。それもお湯はホテルの人に持ってきてもらえばいいのに朝早くで悪いと思い、洗面所の湯で溶いたものだ。旅に出ると何でもやる私達…。
ニューヨークのツアーを頼んだ旅行社の人が
「カナダに行っている間のニューヨークのホテルの部屋は解約することはできません」
と言っていたのでスーツケースなどの荷物は全部そこに置いて、2泊3日分の着替えだけをボストンバッグに詰めカナダへと出発した。
「ラガーディア空港に行ってください」
タクシーの運転手に言うとわかったと合図をして車は走り始めた。しばらく黙って乗っていたがなんか違う方向へ行っているよう。不安になりもう一度
「ラガーディアに行ってますか?」
と聞いたら慌てて方向を変えた。運ちゃんはどうやらケネディー空港へ向かっていた模様。
初めて来た土地でなぜ私が違う方向へ行っているのに気がついたのか?私は知らない所へ行くときは必ず大まかな地図を頭に入れて行く。そうでないととても不安になるのだ。そして私の頭には方位磁針が入っているらしく、自分がどっちへ向かっているのかだいたいわかってしまう。おかげで私は今まで自分の向かうべき場所とは全然違う方向へ行ってしまい、思いっきり迷ってしまうといった経験はない。
結局タクシーは通常の代金より遠回りした分多くかかってしまったが文句を言う英語力はないし、飛行機の時間には十分間に合っているのでおとなしく料金を支払った。
空港で搭乗手続きを済ませてもまだまだ時間がある。ここの待合室ではセルフサービスで飲み物が飲めるようになっているので時間まで紅茶を飲んで過ごした。
エア・カナダに乗り込みまずはトロントへ。そこの入国審査で面倒が起こった。昨日もナイアガラ観光でカナダに入国しているのに今日もまた入国しているのを怪しく思われたらしい。
「何をしに来たんだ」
「観光です」
「一緒にいる人は何者だ」
「友達です」
「何日いるんだ」
「3日です」
「3日?」
とても私達が怪しかったらしい。その後いろいろまくし立てられたが理解できず、おろおろするしかなかった。しばらくしてこいつらのこの英語力では悪いことはできないと思われたのかどうか知らないが何とか解放された。
次は国内線でカルガリーへ行かなければならない。入国審査でまごついた上、エア・カナダのカウンターもすごい人だかりで搭乗手続きにかなり時間を食ってしまった。慌てて登場ゲートを探すが見つからず近くにいたインフォメーションセンターのおじさんに助けを求めた。
「このゲートはどこにありますか?」
おじさんはすごく困ったような顔をしながら
「I'ts no gate」
と言った。何だと?この番号のゲートはない?どうしようカルガリーへは行けないの?と顔を見合わせる私達。するとおじさんは大笑いし、
「Joke. I'ts CANADA joke」
とのたまった。無事ゲートの場所を教えてはもらえたが、Kちゃんは
「今の私達にそういう冗談は冗談にならないんだよ!」
とおじさんに向かって日本語で怒っていた。
なんだかんだがありながらも無事カルガリーまで来ることができ、心配していたバンフへの定期バスもすぐに乗ることができた。バスでカルガリーの街を抜けるとすぐに建物も見えなくなり、そして気づくとバスはどこまで行ってもまっすぐな道を突っ走っていた。ずっと先に小さく山脈が見えるだけでその他はぐるりと草原が続いている。海の地平線は何度か見たことがあるが、陸の地平線を見たのはその時が初めてだった。
夕方ようやくロッキー山脈の小さな町バンフに着き、ホテルに荷物を置いて晩ご飯の買い物がてら町を散歩することにした。しかしその前にせっかくの憧れのホテルに来たんだからとホテルの写真を撮りまくる。大きなお城をホテルに造り替えたらしく、全景を撮ろうとするとかなり遠くまで歩かなければならなかった。
ホテルの周りはペンション風の建物も並んでいるが民家もある。すぐそばに大きな川が流れ、周りも緑がたくさんでどの家も大きな木に囲まれている。
「いいねーこんなとこ住みたいねー」
などと言いながらふととある民家の敷地に目をやると犬が草を食べていた。?
いや遠目に犬に見えただけでよく見ると鹿だった。私達が呆然と眺めていても別に気にする風でもなく野良鹿はのんびりとずっと草を食べていた。私達がここに滞在していた間、犬猫は見かけなくてもこういう動物は普通に見かけることができた。さすが大自然に囲まれた町。
大きな川の橋を渡るとバンフの繁華街。とは言っても一本道に店が並んでいるだけだし、一番遠くにある店が見えているくらいだからそんなに大きくはない。それに3階建て以上の建物もないようなので本当にこぢんまりとかわいらしい町だ。
とりあえず端から端まで歩いてみる。かわいい小物の店やカウチンセーターの店、それらの中でひときわ客の多い店に入ってみた。入ってから気づいたのだが客は日本人が多く、店員も日本人が多い。なんか変だなと思い外に出て看板を見て驚いた。そこは大橋巨泉の店、OKショップだったのだ。こんな田舎にこんなものがどうして…。しかし大部分のカナダのお土産はここで買わせていただいた。
その後スーパーでも買い物をしてホテルに帰っていった。
実は私はその日何となく体調が悪かった。朝からふらふらしていたが気のせいだろうと思っていた。その日の移動は乗り物だったのでバンフまではたどり着いたが、バンフの町をぶらついているうちに歩くのもつらくなってきた。それでも何とかホテルまでは帰りつき、着替えもせずベッドに横になるともう動けなかった。そのまま寝てしまい、しばらくして物音がするので目を覚ますとKちゃんがひとりで窓際でご飯を食べていた。まだ外が明るいので少しうとうとしただけかなと時計を見ると9時頃で、2時間近く寝ていたらしい。9時が来るというのにまだ明るいなんてさすがに北の国に来たんだなーと妙に感心しつつ、私もご飯を食べようと起きあがろうとしたがまだ動けない。仕方がないので毛布をたぐり寄せ本格的に寝る体制に入ってしまった。