早くもアメリカの洗礼を受ける

 朝のニューヨークに着いたその日は同じ飛行機で来た他のツアー客と一緒に一日市内観光だった。国連などを回った後お昼ご飯の時間になり、初めてのアメリカでの食事に私達はどきどきした。まず長径30cmはありそうな楕円形の皿に山盛りの生野菜サラダ。薄切りキュウリは直径10cmくらいある。

「おお!これがアメリカか、やっぱりでっかいね!」

と変に感心する私とKちゃん。ぽりぽりと食べていると大きなパンが配られた。

「ふーん、パンとサラダか」

文字で書くととても物足りないメニューだが量が多いのでアメリカのメニューはそんなものなのだろうと納得し食べ続けた。おなかがいっぱいになってきた頃もうひとつ皿がやってきた。

「うっ…」

サラダの皿と同じ皿にスパゲティーが大盛りだった。先に言っておいてくれればセーブして食べたのに…。丸々残すのも悪いので少しつついてみたが到底全部食べられるわけがない。うう気持ち悪いようと思っていたらもうひとつ皿が来た。

「げっ…」

日本で売れば3人分ぐらいありそうな大きなアイスクリーム。でもデザートは別腹だよとひとくち食べる。

「……」

甘い。甘いもの好きの私でもこれは甘すぎる。よけいに気持ち悪くなったまま食事は終わった。そりゃあこんなの食べているアメリカ人が太るのは当たり前だよ。

宿泊ホテルinNY

 市内観光が終わりホテルに案内された。私達のお宿はウォルドルフアストリアホテル。旅行会社の人が

「いいホテルですよ。なんたって映画の『星の王子ニューヨークへ行く』でエディー・マーフィー(とある国の王子様)のお父さん(とある国の王様)が泊まっていたホテルなんだから」

と言っていた。日本に帰ってからその映画を見たら本当にそうだったので感動した。しかしやはり私達はツアー客なのでカーテンを開けると隣の壁しか見えないような部屋だった。ただ驚いたのがバスルームの広さ。6畳くらいの中に浴槽と洗面台、そして隅っこにぽつんとトイレがあった。あまりバスルームとしては必要のないスペースがたくさんあったので私達はそこに洗濯ひもを張りめぐらし毎日洗濯物を並べていた。しかしそんな洗濯物が並んだ隅っこのトイレに座っているととても落ち着かなかった。

 そして面白かったのが部屋に置いていたバケツ。ポットやコップと一緒にバケツがいつも置いてあり、何に使うのだろうとずっと疑問に思っていた。そしてホテルの廊下にも変な機械があってそれも何かわからなかったのだがある日それらが何か知ることができた。ホテルの別の客が廊下の機械にバケツを入れ、ボタンを押して氷を出していたのだ。早速私達も氷をいただいたのは言うまでもない。

 そしてもうひとつ、エレベーターを待っていた時のこと。ここのエレベーターは2台並んでいるのだがその間に妙な空間があり、ぼーっと眺めていたら白いものが上から下へと落ちていった。

「?」

と思いよく見ると『MAIL』と書いてあり手紙を入れられる口もあった。きっと一番下に集まるようになっているのだろう。これは使わないと!と絵はがきを書いてはせっせとここに落とした。とてもつまらないことだけど海外旅行素人にはどんな小さな事でも面白いものなのだ。

最初の大失敗

 市内観光から解放されて、部屋で一休みしてから、夕方ホテルの近くにある化粧品屋に行った。早いうちに会社の人へのおみやげに口紅などを買っておくのだ。いくつかを選んでレジに行き、支払いには日本で作ってきたトラベラーズチェックを出した。そしたら店員にパスポートを見せろと言われた。こういうことがあるとは聞いていたし、本物のパスポートを持ち歩くのは怖いからとコピーを何枚か取って来ていたのでカバンの中を探した。が、どこにもない。そういえば日本ではまだ必要ないからとスーツケースに入れたままでニューヨークまで来てしまい、カバンに入れ替えずにホテルを出てしまったのだ。もう一度探してみたがあるわけがなく、だんだん店員が不機嫌になってきた。そうこうするうちに閉店で店のシャッターまで下り始めた。ひきつり笑いをしながらもう諦めて帰ろうかなーと思ったら店員が

「何か他の証明になるものはないか」

と言うので財布の中に入っていたものを全部出してみた。旅行には必要のないものもあったがひとつだけクレジットカードがあり、それを見て

「まあいいでしょ」

という感じでレジ打ちをしてくれた。

 とりあえず初買い物は無事終了。お釣りでアメリカドルも手に入れたのでそのまま近くの総菜屋さんのような店で晩ご飯を買い、ホテルに帰ってすぐパスポートのコピーをカバンに入れた。

 晩ご飯は量り売りの焼きそばと焼きめしだった。結構おいしかったのでこの店はその後何回か通った。