漢方茶に挑戦
銀菊茶
子供の頃、近所のよくお世話になっていた内科医院で、ある時なぜか処方薬に漢方薬を 使うようになった。いつものように風邪をひいて行ったらいつもと違う茶色い粉をもらって 飲んでみたら苦いわまずいわ…。それからはいつもの白い粉に戻してもらってまずい漢方薬は 大人になるまで飲むことはなかった。しかしここ数年、漢方薬の方が体にいいような気がして 必要時にちょこちょこ飲むようになったら、やっぱりまずいのは変わらないけどだいぶ 味に慣れてしまった。
香港で試してみたいものに漢方茶があったけど、苦い・まずいと言う評判なので敬遠していたが、 ふと考えてみれば日本で飲んでいる漢方薬も同じじゃないかと言うことに気づき、ちょうど 喉がイガイガしていたこともあって甘くて飲みやすくて喉に効くと言う銀菊茶から初挑戦 してみることにした。よく宿泊するホテルの1階には漢方茶屋さんがあって、いつも店の様子を うかがっては逃げ帰っていたが、その日は堂々と店の前に立ち熱いのを注文した。 お店には入らず地元の人のように店先で立ち飲みするのだ。
漢方茶屋さんには店先に下の方に蛇口のついたでっかい容器がいくつも置いてあるので 店名を確認せずとも一目でわかる。注文するとそこから注いでくれるのかと思ったらそうではなく、 カウンターにいくつかお椀に注いでフタをした状態で並べておき、注文があるとフタをはずして 目の前に差し出してくれるシステムだった。茶色い液体が目の前に出てくる。しばらくまじまじと 見つめる。お椀は両手で包めるくらいで思ったより大きい。もしも一口飲んであまりのまずさに もうこれ以上飲めないと思ってもそのまま残して帰るのは悪いし、だからといって鼻つまんで 一気飲みするのも厳しい量だ。恐る恐るすすってみる。後口に「漢方〜」という味が残って おいしいものではないけど、ほのかに甘いので飲めなくはない。熱いので少しづつ冷ましながら 飲んでいると全身から汗がだーっと流れてきた。そのまま部屋に帰って寝ると次の日には喉の イガイガは治っていた。本当にお茶が効いたからなのか単にひと汗かいたからなのか よくわからないけど、それ以来漢方茶屋さんは行きつけの店になってしまった。
感冒茶
またある時、私は冷房に当たりすぎて少し風邪気味になっていた。日本にいる時なら 無理をせずにゆっくり休めばいいのだけれど、せっかく香港まで来ているのでできるだけ 動きたい、でも歩くのもちょっとつらい。今日は立ち飲みはやめて店の中に座り込む。 やっぱりこれは感冒茶だな…。お椀に入った黒い液体がやってきた。ずずっとひと口。 めちゃ苦い。苦いけれどやっぱり漢方薬の苦さなのでそれらが飲める人なら大丈夫な苦さ。 でも感冒茶は効いたのかどうかは実のところはわからない。その後も日本から持参した風邪薬も 飲んだからだ。ただこれらで何とかそれ以上ひどくはならなかったし、日本に帰っても 寝込んだりする事はなかった。
酸梅湯
これはPOCHIが大好きなのだけれど私は飲めない。基本的に梅が嫌いなので。 でも一度味見だけさせてもらったら真っ黒に焦がした梅をジュースにしたの?という味だった。 梅酸っぱくて、甘くて、焦げの味。変なの。でもこれはPOCHIにとっては手放せないもので、 夕食前、あるいは今日もたくさん食べた寝る前のシメに必ず冷たいものを1杯ひっかけている。 胃をすっきりさせてくれるのだ。前にちらっと書いた「話梅」という甘い干し梅も胃を すっきりさせてくれる作用があるし、梅ってそういうものなのね?そして次の日も彼は朝から 元気に食べまくっているのであった。
火麻仁
こんな事をしていいのかどうかわからないけれど、私はこれを薬としてではなく ジュース感覚で飲んでしまっている。何度も注文するので広東語での注文も完璧だ (?) 。 歩き回って疲れた、のどが渇いたなんて時に漢方茶屋さんの店先に冷たい火麻仁がくるくる していたら(果汁などで沈殿しないようにかき回してる容器あるでしょ?それに入っているのだ) 思わず「小さいのちょうだい!」と言ってしまう。冷たいものは紙コップにフタ&ストロー付きで くれるので店の前で座り込んで飲んでもそのまま持っていってもOKだ。これは何に効くかというと 便秘、旅に出ると出なくなっちゃうの〜なんて人にはおすすめの飲み物だ。日本語では ケシの実ジュースと訳しているガイドブックもあるけれど、実際の所これが何からできて いるのかは私にはよくわからない。しかしほんのり甘いゴマ系の味がしてとてもおいしいのだ。 一度お試しいただければ私がジュース感覚で飲んでしまっている気持ちがわかってもらえると 思います。
亀苓膏
出ました、日本語で「亀ゼリー」と紹介されゲテモノ食扱いされているあの黒くてぷるぷるした ものです。日本のデパートの中国物産展なんかで缶詰状態で売られているものの果たして 何割が純粋に食べられるために売れているのでしょう?香港に行った人がお笑い土産として 嫌がる友達に無理矢理握らせているのでは?実は私もそうしてました。生臭い、苦い、 胃薬の味がする、亀の甲羅の腹の部分と薬草を煎じて云々とあんまりいい話は聞かない亀苓膏、 でも体の熱を取ったり吹き出物をはじめ体の悪いところいろんな所に効くらしい。これは一度 試してみないといけません! でも一番苦みが少ないというお店でどちらかというと 食べやすいという冷たい方で挑戦。……反省しました。亀苓膏様、今までの私は大馬鹿者でした。 あなたは素晴らしい、これから香港に行った際には必ず一日一個は食べさせていただきます〜。
そのお店のものは亀苓膏自体の味はほとんど気になりません。キビ砂糖シロップをかけて 食べるのでそのシロップの甘苦さの方が気になるくらい。私が甘味屋で好きでよく食べている 「涼粉」という薬草ゼリーがあって、それは少し苦味があるけれどもそれよりも気にならないのだ。 もっともその「涼粉」も「ん?コーヒー味?」って程度の物だけど。そして見た目の大きさの割に 食後のおなかいっぱいの状態でもぺろっと食べられてしまう。チェーン店なのでおやつの時間 にでも食後のデザートにでも見つけたときにサッと寄って食べることができるのがなんともいい。
そして何よりも私が崇拝してしまった理由は次の日の体調も良くなるし、おなかの調子も 大変良くなること。朝てきめんにとってもいいお通じがやってきます!(キタナイ話で すみませんが)私がお腹の調子がいいことなんてそうそうないのに、これを食べていた間は快調 でした。今となっては体の調子が悪くなると「亀が食べたい〜」とのたうち回るほどに。 近所にあったら通うのにな。
ただお店ごとに値段は違うけれども、ここのお店は1個50HK$。デザートとしてはちょっと高い。 旅行中だけの贅沢!ならできるけれども実際近所にあっても毎日は通えないですね。
はじめは恐る恐る行ってみるという感じだった漢方茶屋。でも通い慣れてくると病院に 行くほどでもないけどちょっと調子が悪いというときにふらりと寄って1杯飲んでいくこの店の システムがすごくいいと思うようになってしまった。どうして日本ではこういうのがないのだろう? せめてドラッグストアの隅にでもあれば、仕事の帰りにちょこっと…なんてできるのに。 これが当たり前の生活の香港人がとてもうらやましい。