飲茶三昧
私は香港に行くと必ず一度は飲茶をしてしまう。庶民的なところは早朝からやっていて、体育館のような広い店の中にお客が満員で、店の中が人の声でどわーんとなっていて、その中を点心入りのカートを押しながらおばちゃんが点心の名前を連呼しつつ歩き回っている。そういうところでぼやーっとしているのが好きだ。
最近は点心の名前が並んだオーダー表に希望数を記入して、持ってきてもらうシステムが増えてきているらしいが、やっぱり私は上記のようなシステムの方がいい。なんたって点心を直接見て選べるし、おばちゃん達がとても親切なのだ。
私の好きなシステムの店での飲茶の仕方は大体こんなもんである。
まず人数を告げて席に案内してもらうと、ウェイターがお茶の種類を聞いてくる。そこで何も答えなければジャスミン茶が出てくるのだが、私はたいていプーアル茶を注文する。
広東語がわからなくても大丈夫。「○×△*ちゃぁ?」と聞かれるので「ぽーれい!」と答えればいい。他にも「ろんじん」や「さうめい」など種類があるのでこれは自分の好みのものを探して欲しい。
お茶が運ばれたらそれを飲みつつおばちゃんの押すカートを探そう。
カートの前におばちゃんが持っている点心の名前が書かれた札がぶら下がっている。広東語で「エビ餃子と腸粉だよ〜」とかも言ってるらしいが、私にはわかるわけがないので、まずはこの文字を見て食べたい点心の目星をつける。点心の名前はガイドブックを見れば大体のものが載っているのでそれを覚えておけば見当がつけられる。おいしいものにありつこうと思えば、これくらいのお勉強は必要だ。
欲しい点心が見つかれば、そのカートが近づいてきたらおばちゃんに意志表示をする。自分の所に来てくれたら、あとは札を指差せばOK。点心を出してくれて、テーブルに置いてある伝票にハンコを押してくれる。伝票は点心の種類(金額)によってハンコを押す場所が違っていて、たくさん食べて、どんどん蒸籠が下げられていってもどれだけ食べたかがわかるようになっている。
札の漢字を見ただけではどういう点心なのかわからない場合は、直接見せてもらう。ガラス張りのカートならば中身を見られるが、蒸籠が積まれたカートや汁ものが入っているカートだと何が入っているのかわからないのだ。カートに近づいて、カートの中をのぞき込むなど「見せて」の意志表示をすれば、おばちゃんも慣れているので快く全種類見せてくれる。外国人だとわかってしまえば、おばちゃんが群をなして点心を見せにやって来てくれることもある。欲しいものがあれば指差せばいいし、要らなかったら首を横に振ればいい、別に全部要らないといっても怒られたりはしない。
ガイドブックで見た点心をどうしても食べたいのに自分で見つけられないときは、誰でもいいからおばちゃんを捕まえて本を指させばいい。あればすぐに持ってきてくれるだろう。
そうこうしてテーブルに点心が並べば、あとは食べるのみ。お茶もおかわりが欲しければ、ポットの蓋をずらしておけばすぐにお湯をつぎ足してくれる。食べ足りなければ再びカートを探せばいいし、たくさん頼みすぎて残してしまったときは、ウェイターに頼めばたいていのものはお持ち帰りにしてくれる。
カートのおばちゃんはとても目ざとい。目が合ってしまうとすぐに寄ってきてくれる。お腹がすいている時には大変嬉しいのだが、満腹になって、ただただおばちゃん達の様子を見ていたいだけの時にも寄ってこられて困ることもある。こういうときにはこっそり眺めて、おばちゃんがこっちを向けば目をそらしている。
帰るときには席に座ったまま伝票をぴらぴらさせると、ウェイターが伝票を持っていって計算してくれる。蒸しタオルで手など拭いていると、計算書を持ってきてくれるのでお金を挟んで渡すとおつりを挟んで返してくれる。チップはお気持ちを残しておけばそれでいい。庶民的なところで食べるとお腹いっぱい食べてもそんなにお金はかからないので小銭程度で十分だと思う。
そうして朝から大量に食べてしまった私は街歩きにくりだしていくのであった。
こんな点心があるよ!
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写真がぼけているのでよくわからないが、一番奥は [豆支] 汁蒸鳳爪。鶏の脚先を蒸して、トウチとオイスターソースで味付けしている。鶏のうろこ状の脚がわかるので逃げてしまう人もいるかもしれないが、勇気を出して挑戦して欲しい。一度食べればもう病みつき。
手前は餃子。左は腸粉という米粉で作った皮に、エビを巻き込んでいるもの。油と醤油をかけて食べる。つるんとした食感。
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小龍包。噛むと熱い汁が出てくるので、猫舌の人は気をつけよう。私はだいぶ冷めてから食べるようにしている。取るときに皮を破ってしまうと悲しい気分になるが、ひと口では食べられないので、結局汁は流してしまう…。
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手前の皿は牛肉球。肉団子に椎茸をかぶせてあるのだが、これでも焼売の仲間らしい。中にクワイが入っていて、さくさくとした歯触りがおもしろい。横の蒸籠は蝦餃(エビ餃子)ホントにエビだけしか入っていない。それもぷりっぷり!のエビ。「蝦餃」の文字を見つけたら必ず頼むべし。
後ろは腸粉。これは挽肉入りだったかな?腸粉とひとことで言ってもいろいろ入っているのだ。
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手前はタロイモ(?)のコロッケ。外はサクサク中はねっとり、このままでもおいしいけれど、ソースをかけたらもっとおいしいのにと思った。左は形は違うがゴマ団子。好きなので見つけるとついつい頼んでしまう。一番奥はまたまた腸粉。どうもこののどごしがたまらなくて…。
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これが蛋撻!(卵プリンタルト)。香港は卵自体がおいしいので、卵を使ったお菓子は本当においしい。これは飲茶の際だけでなく、街のパン屋等にも売っている。
店ごとに皮がクッキーだったりパイ生地だったり、また大きさも値段もまちまちなのでいろんな店で食べてみるのもいい。私は1個1ドルというのも見つけてしまった。それは一口サイズではあったけれども。
飲茶の時はまだ熱いうちに食べるべし。またパン屋などで焼きたてに出会えるとたいへんラッキー。できるものなら個人輸入して家でも食べたいなどと考えてしまう。
たいていは地元の普通の人たちが行く店ばかりに行ってしまうのだが、一度だけ、老舗の飲茶屋さん「陸羽茶室」に入ったことがある。坂を上っていくと緑のでっかい看板、ものものしい立派な扉、入り口にはなぜかターバンを巻いたインド人が立っていて扉を開けてくれるのだ。
ガイドブックなどでは一見客には無愛想とかあまりいいことは書かれていないので入り口のこの状態で少々ひるんでしまったが、入ってしまうと全然そんな風には感じられなかった。
老舗らしく店内の格調は高いし、点心の値段も高いけれど、店のおじさん達はプライドを持って仕事をしている。不必要に近寄ってくることはないが、客の様子をきちんと見ていて、空いた皿はすぐ片付けてくれるし、お茶もすぐつぎ足してくれる。店がすいている時間帯に行ったのでその分点心も少なかったのだが、静かで優雅な時間を過ごすことができた。帰りにはインド人のおじさんに「サヨナラ」と日本語で言われてしまった。
ここに入ってしまったらもう怖いものもなくなってしまって、次は福臨門の飲茶もしたいなどと考えている私。夜なら万札を何枚も握って入らなければならないけれど、飲茶なら3000円位で入れるらしいから。高級な点心は洗練されててこれまたおいしいんだろうな…。フカヒレ大王の福臨門だから、フカヒレ餃子入りスープなんかもうほんとにおいしいんだろうな。じゅる。
ちょっと重いページだけど、陸羽のWEBも見てみてください。英語で書かれているけれど、点心の写真を見るだけでも楽しいです。