第九話


悩む
ひたすら

なんとなく
それも選択のひとつ
流れに身を任せるのも悪くない

今回は、オレ達の中学時代の話
腫れた惚れたで、アホみたいに喜んだり
くだらねぇ事で人生の終りとばかりにヘコんでた頃だ
「次の時間は、進路相談だぞー
出席番号1番から隣の教室来いよー」
梅津先生が、そう言い教室を出る

そいや
オレ達は、梅やんって呼んでいたな
だって先生っぽくなかったんだもん
給食の時間
梅やんがなかなか職員室から戻って来なかったので先に食ってたら
みんなと一緒に「いただきます」言いたかったとイジケちゃう先生だった

可愛いだろ?

そんな梅やんも進路相談はマジだった
そりゃ、初めて受け持った三年
卒業生を送り出す訳だ
進学しない人や受験失敗の人を出したくなかったんだろうな
進路相談の時間、自習と言う事だったがオレ達はひたすらトランプしてた
大富豪

馬鹿ですね
はい すみません

「高校、何処にした?」
サクは、カードと共に進路の話題を出す
次のキイはカードを選びながら答える
「サクと同じトコ、柔道部って言ったらやっぱ、そこかな」

その隣のツキ
「急に4からJまで飛ばすなよパスね パス
高校は、オレもふたりと同じ医者やりたいからさ」
ヒデが不思議そうな顔で聞く
「医者って、ここら辺のたかが一高校出てなれるもんなの?
ほら 学歴とか」

ヒデ、渾身のたかが一高校発言
この街の優秀校を“たかが一高校”で片付けるヒデ
ちなみにヒデの行った高校は
動ける馬鹿を集めたスポーツ校で数年後にオリンピック選手とヤクザを産み出したりしてた

ツキは答える
「医者は医者でも精神科医のほう
しかも場末のね」

みんなの顔に『?』が浮かぶ

よーわからん
場末の精神科医って…


なんだ!?

「んで、クボはどーすんの?」
サクが唐突に話をふる
「あー オレ?高校行かね 絵描く」

またしてもみんな『?』な顔

「高校行って絵描きゃいいじゃん
てか、それ以前にオマエ、美術の成績よかったか?」
ミツがまくしたてる
「美術の成績? 2だよ 2」

「はぁ? オマエ、バカかぁ!?」
一斉に非難
当然と言えば当然か

「だって、先生の求めてる絵とオレの描きたい絵は違うんだもん
確かに絵は下手だけど生まれてきたからには好きな事したいし」
みんな、呆れたのか
それ以上は突っ込まなかった
みんな、それよりもツキの『場末』が気になるらしい

気になるわな


そんな話をしてるうちに女子グループからの話し声が聞こえてきた

「誰だろうね…」
「気持悪い…」
気になったのか、ヒデが話を聞きに席を立つ

「なんかあったの?」

女子はくしゃくしゃに丸められた
小さな紙切れを出した

それを広げて見る
『コロス』
殴り書きされた文字

普段、遊び半分で何気無く使ってた言葉にリアルな殺意が宿る
軽々しく口にしていた言葉ひとつのホントの重さだ

投げ掛けられた人は、たまったもんじゃないだろう

『コロス』

オレ達は、動き出してた
詳しく話を聞くと、その紙切れは下駄箱に入ってたらしい
とんだラブレターだ

発見したのは、昨日の下校時
登校時には、なかったようだから
みんなが学校に居る内に入れられたんだろうな

しかし、1日経ってるってのは厳しいな
その頃、金田一少年の事件簿が流行ってたため
オレ達はアホみたいに犯人を探しはじめた

被害者の女のコが、学年一可愛かったってのと犯人探しは一切、関係無いと敢えて言わせてもらう

困ってる人をほおっておけなかった
断じてコレを気に、仲良くなってなんとなくイイ空気とかになっちゃって
付き合う?付き合わない?みたいな『えへへ…』ってな
幻想と言うか妄想を胸いっぱいに秘めて
「絶対、犯人許せねぇーよ!」
なんて事を真剣な顔で言ったりはしていない
そんなこんなで
オレ達の犯人探しが、はじまった

って、言ってもオレ達が出来るのは、聞き込み程度

まずは、被害者の“学年一可愛い”ユメから

ユメは、明るく誰とでもすぐに打ち解ける
話しやすいイイ娘だ

見た感じは…
お姉さんって雰囲気

個人的な表現としては、可愛いってより美人って感じだった

「犯人に心当たりは?」

金田一の見すぎか普段使いもしねぇ
ノートなんざ広げてメモりながら聞いてみるオレ
刑事か名探偵気取り

馬鹿だなぁ
本人に心当たりは無いらしい

そりゃまぁ
脅迫文書くような人物に心当たりあるほうが嫌だが

しかし、ユメの友達から話を聞いてみると怪しい人物が浮上してきた

該当者4名
1.ナオヒコ 3年1組
ユメにフラれたらしい

2.アキト 3年4組
こいつもフラれたらしい
ユメの写真所持

3.エーイチ 3年4組
下校時、家まで付け回した

4.タクヤ 3年3組
以前、机にラブレターを入れてた

フラれただけで犯人ってのは、些か強引だろうが一応メモる

こんなんじゃ、犯人探せないよな

早速、名探偵達はトリックもない犯人推理に右往左往
結局の所、聞き込みしかないんだよな
1日経ってしまってるため
誰がいつ教室から出たかは特定出来ないが

全員が教室を離れ下駄箱に行けたのは

理科の授業で玄関の向かいにある理科室に行ったのと下校時だけだ

と、言ってもオレ達3年4組以外の容疑者がふたり
そんな事を考えてる内たノ下校時間

オレ達は『捜査会議』の名の元
放課後、残る事にした
机を4つ固めて大きなテーブルを作る

サク、キイ、ツキ、オレが十字に座る

そこにヒデが
一見、小さなアタッシュケースを開ける
中には、麻雀牌

みんな黙々と牌を積む

ヒデは、麻雀出来ないので観戦

一巡目が終わる頃
梅やんが教室に入ってきた

「お前ら、何してんのよー?」


もちろん
この後、梅やんにガッツリ怒られた
渋々、帰ろうと校門をでるとタクヤがいた

3組のタクヤとは、特に話した事も無かったので挨拶せず通り過ぎようとすると
タクヤが行く手を遮るように立ちはだかる

用があるのかと話し掛けてみる

「ん なに?」
「僕のユメちゃんは渡さないぞ…」

「はぁ?」

聞き取れなかった訳ではないが、思わず聞き返す

「僕のユメちゃんは、渡さないぞ!」

「お前のじゃねぇ…」
言い終わらない内に殴りかかってきた

なんでよ!?
もしかして、下駄箱に紙切れ入れたのコイツか?
脳が思考する

だからってケンカなんてした事ないほど貧弱なオレを襲うのよ

校門出た時、帰る方向の違うみんなとは、別れてオレひとり

タクヤは、御丁寧にお友達が5人ほど加勢に
はぁ まいったねこりゃ

タクヤグループもケンカ慣れなんかしてないから
パンチ程度はかわせるし大した痛くもない

けど、いい加減ウザい

逃げようかと思うが体力無いしなぁ


あれ?
もしかして、絶体絶命ってやつ?

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