第八話
出逢いや別れの中で人は成長していくらしい
聞いた事にある?
確かにそうかも知れないなって、最近思う
今まで出逢ってきた
たくさんの影響を受けて個人の価値観が形成されていく
いつもの朝
と、言いたいトコだが今日はバイト休みで昼に起きた
一応、日課の新聞に目を通す
はぁ またアホな事件ばっか
バイオレンスに事欠かない街
そんな中に家の近くの住所が書かれている記事を見つけた
『大空町12丁目』
2日前の車が止まってたトコじゃん
慌てて記事を読む
『18日からxxxxさんの長女xxちゃん(4つ)が行方不明になっている事件でxxxxさんの妻xxさんが入信している、宗教法人xxxxxxxに連れ去られた可能性があるとして捜査を進めいたところ昨夜、宗教法人xxxxxxx大空支部(大空町12丁目xx番地)に居るところを保護された。調べによると、xxちゃんの入信トラブルによる誘拐…』
ここまで読んでため息がでた
なんでかって?
その宗教、ミウが入信してるトコだったからだ
オレは、今までミウの人権や信仰の自由を尊重して何も言わなかったが、こんな事が起きたら…
この日は、さんざん悩んだ
翌朝、寝ずにある結論をだした
ふたりが付き合っていくための約束を作る
『1.子供は、自己判断が出来る年齢まで入信させない』
『2.親類、友人に無理な布教はしない』
[1]は、あんな事件があった後だ
将来的にミウとの結婚を考えてたオレは、真先に書いた
[2]は、友達に相談した
『オレの彼女さん宗教やってるんだけど
勧誘されたらどーする?』
『殴る』
てな理由
わかりやすいだろ?
それをミウにメールした
数分後ケータイが鳴る
「いつか、こんな日が来ると思ってた… 別れよう…」
電話越しの声、オレは思わず声をあげた
「は!?なんでそこまでいく!?」
「布教するなって言うのは信仰の自由を奪ってるの…」
「親類、友達を無理に勧誘するなってのが、信仰の妨げになるの?
"人に迷惑をかけない"当たり前の事じゃん」
「今まで、お世話になりました…」
もう、何を言ってもダメみたいだ
目頭が熱くなる
「じゃあね… 電話切るよ?」
ミウの言葉に思わず
「ちょっと待って!」
未練がましい自分に内心驚いた
別れがこんなにツラいなんて初めて知った
涙を堪える
オレは、深呼吸をし
「わかった…元気でな 仕事頑張れよ」
そう言うと小刻みに震える手でケータイのHoldキーを押した
オレとミウには、どーする事も出来なかった
価値観の相違
そして信念
ミウには、絶対曲げられないモノがあり
オレは、それを許容してやれなかった
その日から、オレは不眠症になっちまった
別れってのは、そーとーキツイ!
親が心配して話かけてきたと思ったら
「失恋で不眠症?アンタも人の子だったんだねぇ」
と、ありがたい一言
間違いなくオマエの子だ
ばばぁ
たぶん…
不眠症になったのは
失恋のショックだけじゃない
ミウの事が心配でしかたなかった
欝病にかかったり
両親の仲が悪かったり
でも後日、ミウから手紙に救われた
『クボ君の事が好きで、今でも好きで
たくさん元気にしてもらって、一緒に居れて幸せでした。ありがとう』
人間は、一生かけて
人ひとり救えるかどうかの存在だ
こんな事、誰かが言ってた
ミウが少しでも
幸せを感じてくれてたみたいでよかった
オレは、安堵と久しぶりの眠気に
布団に身を委ねた