第七話
無意識の中、聴覚だけが動き出しケータイの着信音を捉える
無理矢理、体を動かし眠気を振り払い
赤く光るケータイのディスプレイをうまく開かない瞼を押し上げ覗き込んだ
[02:16 着信 キイ]
「はいよー」
条件反射的に電話に出る
「今『大雄』前の広場に居るからちょっと来い、ヤバいモノ見た気がする…」
改めて、時計を見る
「りょーかい すぐ行く」
オレは、間の抜けた返事をし電話を切ると同時に起き上がり
ベッドの脇に脱ぎ捨ててある、いつものジーンズに足を通した
部屋用のだせぇシャツを隠すために、半袖Yシャツ
靴下!
メンドイから部屋に落ちてる、前に履いた靴下の臭いを嗅いで臭くないっぽいから、それを履いて部屋を飛び出した
おっと
寝癖だらけの髪には、キャップを被らないとヤバいな
オレは、部屋に引き返しトルソーに被せてあるキャップを取り深く被る
よし!
ケータイを見る
[01:20]
22分には、着く
ポケットから、ひん曲がった板ガムを取り出し口へ運ぶ
「えーと… スニーカーでいいか」
なんて言いながら、なかなか入らない踵を押し込み家を出た
『大雄』は、既に閉店しちゃったけど、旧世代のコンビニみたいな店だった
要するになんでも屋
家から走って1分かからないトコにある
今は怪しい団体の事務所になってた
その前には、大空祭りの会場になる広場
1分もかからない内にそこにあるベンチに座るキイを確認できた
ツキも一緒みたいだ
オレは、ふたりに駆け寄り
「こんな時間に何してんのさ?
17にもなって、おばけ程度で騒ぐなよぉ…」と一言
「おばけなら良かったかもな?
暑いし暇だったから、ここでツキと話ししてたんだよね
そしたら大雄の前に車止まっててさ」
「で?別にいいんじゃないの?
大雄の前、自販あるし」
オレは、そっけない言葉を返す
キイは、タバコを一吸いして続けた
「女のコ乗ってた…
そのコ、10才くらいかなぁ?
そんなコが2時過ぎに起きて車乗ってるっておかしくないか?
それに窓に張り付いて、訴えるような目でこっち見てたんだよ」
ツキもキイに続く
「そりゃ 人それぞれ家庭環境も違う訳だし…
夜起きてるから怪しいってのもアレだけど、気になるわな」
無理矢理結びつけるような安直な判断は危険だが、ヒデの彼女が失踪したままになってる今、気にはなる
「でもさ、もう追いかけても見つからないだろ?ナンバーでも憶えてりゃ別だろうけど…」
オレは、半ば諦めたように言った
「テンパってたから、そこまで頭回らなかった…
赤いセダンってだけで探すのもムリだろうしな」
ツキがテンパるなんて珍しい
「てか、何よ?子供ひとりが、こっち見てただけでそんなテンパるの?」
オレの最大の疑問
「わかんない でも、なんかヤバい気がした」
マジ、漠然としすぎ
だけど、ヤバい気ってのはわかる
嫌な予感ってヤツだ
でも、足取りが不明だから
これ以上は、探しようがないし話してても進展しないだろう
それに明日、仕事があるオレは、先にあがる事にした
2日後
話は動きだした