第四話


オレとツキは、外灯すら無い道を月明かりだけを頼りに歩き出した
他の仲間達は、ゴール地点までチャリンコで先回りして待ってるって言ってた
オレ達、大丈夫なのか?
いろんな意味で…

レイプ通りは100メートルくらいの直線がジグザグと続く、階段を横にした感じの通りで、たぶん最低でも1.5キロはあると思う
ショートカットでこの距離
どれだけ田舎か、わかるだろ?
バスを使えばいい?
そんな便利なモノ、この辺り走ってないよ
誤解があるといけないから言っておくけど、路線が無いって事ね

無言
歩き出して、かれこれ5分
オレは沈黙に耐えきれなくなり、取り合えずボケてみる事にした
「襲われたら、お嫁に行けないわ!」
「オマエは、男だろ
絶対、襲われない
てか、襲えない
逆に襲われそう」
なーんて、ツッコミを期待したオレは甘かった

ツキは、無言でこちらを向き
「不謹慎だ
てか、喋るな
声が低いからバレる」
と、笑いもせず呟き歩き続ける

ちょっと待てーっ!!

って、事は何かい?
声が低いのがバレなきゃ女装は完璧なのかい!?
悪寒が走る
イヤ、こんな姿を見られたら『おかん』が走るだろう
しかも爆走系
ベタですまん



しかたねぇ
真面目な話でもするか
「ツキ、女のコどーなんだ?
精神的にまいってるんじゃないか?」
「下手したらpost-traumatic stress disorder
わかりやすく言うと心的外傷後ストレス障害になりかねないな…」
さすがツキ
訳のわからん医学用語をありがとう
だが、オレも負けんぞ
「survivorって、知ってる?」
「生存者?」
これは、ツキも知らなかったらしい
「そう、生存者
レイプに限らず心的外傷から立ち直った人は、生存者って呼ばれるんだとさ それだけ、立ち直るのが大変って事らしい
そのレイプされたコ
“生存”するといいな」
「なんか、クボらしくないな…」
ツキは、そう言い『ふっ…』と、小さな笑みをこぼした
「ミツに無理矢理塗られたとはいえ、真っ赤な口紅してるオマエもツキらしくないぞ」って、言葉を飲み込む
「(言いたい
でも、ダメだっ!
オレっ!)」
心の中で格闘する
「…何ひとりで、もがいてるんだ?」
ツキは冷ややかに、こちらを見る
「気にするな
行こう」
オレは、冷静を装う
「気持悪いヤツだなぁ」
ツキが、呆れたように言う
「(真っ赤な口紅のツキもな…)」
言いたい


そんなやり取りを幾度となく繰り返しているうちに、ゴールに着いた
みんなが、迎えてくれる
「ふぅ」
一服しようとポケットから煙草を出そうとした時、ミツがオレとツキに労いの言葉をかけてくれる
「おせぇーよ」
逆ギレ
勘弁してください
ミツさん

サクは、空気を察しオレとツキに話しかける
「どう? なんかあった?」
「全然、何も無し」
オレは、軽く首を横に振り答える
「なぁんだぁ」
…残念そうに言うなミツ
この日は、成果無しで解散する事となった

2日目
この日もオレとツキの抵抗空しく囮捜査を続ける事になった
成果無しで解散

3日目
ミツの用意したコスメは濃いからと、百円ショップでコスメを購入
って、言ってもたいしたモノは買ってないよ
マニキュアとマスカラとリップグロス
あと、目を大きく見せるためにアイライナー

やり過ぎ?
やっぱり?

マニキュアなんて実際しなくても問題ないからね
てか、外灯の無いレイプ通りにメイク自体不要か
同じく、成果無しで解散


4日目
慣れって怖いモノで、女装したままコンビニに行けるようになった
メイクはしてるが、スネ毛ぼうぼう
せめてモノ抵抗
気がつけば周りの人に『クラッシュギャルズ』なんて呼ばれてた
確かに、クラッシュしてるかもな…
オレとツキ
またしとも、成果無しで解散
当然と言えば、当然

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